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距離
しおりを挟む結局のところ、服屋では何も買わなかった。高島さんは僕が買うのをやめた後、もう1枚別の服を買っていた。時刻は15時。何気に時間は経っている。店内とは真逆の冷たい空気の中を行く当てもなく歩く。
「これからどうする?」
「これからねー。なんかしたいことある?」
「んー。特には思い浮かばないなぁ」
「えー、でもこのまま解散というのは惜しいなぁ」
「まぁ、そうだね」
「でもクリスマスもあるし」
「年末年始もあるよ」
「なるほど。うーん、でもなぁ。うーん」
悩んだまま、何も思いつかない。僕は散歩しようかと言い出したかったけれど、勇気が出なかった。しかし、高島さんもその思考になったようで、目を輝かせてこっちを向いた。
「そうだ!こういう時は散歩をすればいいんだよ!」
「うん、僕も言おうか迷ってた」
「えー!早く言ってよー!」
「ごめん」
「大丈夫!私も散歩したい!」
「うん」
「落ち込まなくても大丈夫だよ!私もしたいんだから!」
「ありがとう」
断られたらどうしようと思った自分が情けなくなった。どこまでも明るく振る舞う高島さんを見ながら、自分もそれくらい臆せずに行動できれば、もっといいことがあるのだろうか。高島さんと関わりが始まってもうすぐ1年が経とうとしている。高島さんとの距離感は、本当にこれで正解なのか。もっと近づくべきなのか、遠くにいるべきなのか。今の僕には答えが出せなかった。
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