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昼休み

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 結局やきもきは昼休みまで続いた。午前中の授業は古典の後に倫理、体育、生物基礎があった。やっとの昼休み。自分の席で昼ご飯を食べようと思ったところで高島さんが飛んでくるかのような勢いで僕の席まで来た。

「ライン教えてよ」
「え、いいけど」
「やったね!」

 何事かと思ったけれど、さっきの手紙の話のようだった。スカートのポケットからスマートフォンを取り出し、ラインのQRコードを読み取る画面を起動する高島さん。それに合わせて僕も自分のラインのQRコードを表示させる。ふと前を見ると、僕の前の席の人はどこかに行ってるらしい。高島さんが座ったことに対して感じた違和感はそれだった。昨日も椅子には座っていなかったような気がする。そしてそこには入れ替わるように高島さんが座っていた。ラインの交換が終わると、持ってきた弁当を僕の机の上に置いて、包みを開け始める。

「あ、山口くんも弁当なんだ」
「まぁね」

 この弁当は母が作ってくれている。小学校や中学校の遠足の時と同じような感じだと母は言っていた。それを毎日作るのはかなり大変じゃないかと質問したが、頑張るという言葉の一点張りだった。僕がバイトをして昼ごはんを買うという提案をしたのだけれど、そんなことはさせないという返答が返ってきた。母に感謝しながら弁当を美味しく食べてから閉じる。高島さんはまだ弁当を食べていた。

「もうちょっと待って!」
「うん」
「山口くんお弁当食べるの早いね」
「まぁね」
「それにしても、授業がめんどくさい」
「めんどくさいね」
「数学ばっかりだったらいいのになぁ」
「高島さん数学好きなんだ」
「そうだよ!楽しい!」
「そっか」
「山口くんはあんまり好きじゃないのか」
「絶望的に苦手だよ」
「そうなんだ」

 残念そうな顔をする高島さんだったけれど、そこまで見栄を張れるほど僕は強くなかった。そして、数学が楽しいと思える高島さんが素直に羨ましかった。高島さんの数学が楽しいというのは、僕の国語が得意なんかより遥かにすごいものなんだろう。そんな考え事をしていると、高島さんが昼ごはんを食べ終わる。

「ごちそうさまでした!」
「ごちそうさまでした」
「じゃあ、また後で!」
「え?あぁ、うん」

 食後の会話があるわけでもなく高島さんは席へと戻っていく。そして次の瞬間に昼休みが終わるチャイムが鳴り響く。時間の経過に気がついていなかった。かなり短い昼休みだったように感じる。午後からの授業もこれくらいの時間で嬉しいのになぁと思った。
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