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7章
踏み出したその先は
しおりを挟むふと目が覚めた。枕元に置いてあるスマートフォンを取り、時間を確認する。スマートフォンは6時30分を表示していた。
今日は5連休の最終日。つまり今日はまだ休みだった。もう一眠りしようと思ったところで、隣の賢がもぞもぞと動く。
「んー、今何時?」
「今6時30分だよ」
「はーい、そろそろ起きようかな」
「もう起きるの?」
「眠いけど、今寝たら昼まで寝てしまう気がして」
「なるほど、たしかに」
「仁はもうちょっと寝ててもいいぞ」
「いや、賢が起きるなら俺も起きようかな」
「じゃあ、起きますか」
「うん」
まだ少しだけ暗い空を見ながら立ち上がる。そしてベッドから降りて、洗面台へと向かう。いつも通り洗面台で顔を洗い、歯を磨く。今日は珍しく仁の方が早かった。それもあり、賢が後ろに立っていた。鏡に映った姿を見て思う。やっぱり賢は身長が大きい。そんなことを考えている間に歯磨きも終わり、部屋に戻る。
「今日どうする?」
「今日ねー、どうしようかなー」
「4日間全力疾走だったし今日くらいゆっくりするか」
「うん、それがいいかもね」
「スーパーに買い物はいかなきゃご飯はないけど」
「確かに。昼ごはんと夜ご飯どっちもない」
「朝ごはんは昨日買った?」
「昨日の晩御飯と一緒に」
「そういえば買ったね。食べるか」
「食べよう」
そんな会話をしてから、昨日買ったパンに手をつける。仁も賢も、朝ごはんはパンだった。2人でゆっくり食べる。何事もなくゆったりとした時間が流れる。そして何事もなく食べ終わる。
「さて、どうする?」
「ここであえての二度寝」
「なるほど、ゆっくりするならそういう手もある」
「寝る?」
「寝るか」
ご飯も食べ終わり、することがないまま時間だけが過ぎていく。このまますることもなくゆっくりするなら二度寝するというのもまた一つの幸せの形。それを、この2人は知っていた。
賢がベッドの布団に入り、仁もそれに続く。ふと賢の方向を向くと、賢もこちらを向いていた。そして、頭を撫でられる。
「何?どうしたの?」
「なんでもないよ」
「そう?」
「おう」
「そっか」
「おやすみ」
「おやすみー」
唐突に頭を撫でられたからビックリしたけれど、嫌な気持ちにはならなかった。そんな一幕もありながら、2人はもう一度眠りにつく。
今はまだ午前7時。10時ごろには起きれるだろうか。なんてことを考えながら、仁は眠りに落ちた。
ゆっくり寝て眠気が完全に取れた状態で起きる。スマートフォンを探して時間を確認する。今が何時からないのである。
枕元に置いてあるスマートフォンの表示を見ると、9時30分になっていた。もどもどぞと布団の中で動いていると、あることに気がついた。
「あれ、賢がいない」
「おれはここだぞ」
「あれ?キッチンかな?」
「おうよ」
廊下の方向から声が聞こえた。そしてなぜかいい匂いもしていた。不思議だなと思いながらそれでもベッドに転がったまま出ないでいると、焼けたウインナーが出てきた。匂いの正体はこれだったのか、と納得するとともに、そのにおいに刺激されてお腹が鳴る。
「朝ごはんはもうすぐできるよ」
「ありがとう」
短い会話の後で、ベッドから降りて床に座り直す。いつのまにか用意されていた机に突っ伏しながら待つ。少ししてから、賢が皿にウインナーを盛り付けてリビングに来た。
「持ってきたよ」
「ありがとう」
「食べるか」
用意された2本のフォークのうち片方を持って、ウインナーに突き刺す。何もつけないまま頬張ると、塩気と共にしっかりと焼かれた肉の味が口の中に広がった。
「おいしい!」
「お、そりゃよかった」
「やっぱり料理上手いよね」
「ま、それなりには練習したからな」
「そっかぁ」
どれほど練習したのだろうかというほど上手い訳ではないと思うのだが、それでも普通に料理する人の中ではそれなりに上手い方かのではないかと思う。
手のひらサイズほどの中皿に盛られたウインナーは2人で食べるとそれなりの時間で食べ終わってしまった。食べ終わった後のお皿のフォークを賢が流し台に持っていく。その間に仁は机を拭いて、片付ける。片付けるとい言いつつも、やっていることはベッドにもたれさせるように畳んで置いているだけではあるが。
全てが片付いたタイミングで、賢がリビングに帰ってくる。2人で床に座り、食後の余韻をつく。2人で何をする訳でもなく過ごす。
「これからどうする?」
「うーん」
「散歩でもしてみる?」
「行く場所ある?」
「ない。ないからこそ、歩いてみるのさ」
「どういうこと?」
「普段は見えない景色が見えることもある」
「ふむふむ」
「ま、もう少ししてからだな」
「はーい」
朝ごはんを食べてから二度寝をして、さらにウインナーを食べるという幸せな時間を過ごした後、さらにゆっくりする。散歩はこの後ゆっくりしてからだし、少し膨らんだお腹の様子を見るというのもあるかもしれない。
換気も兼ねて開けていた窓から少し涼しい風が吹く。もう秋も終わりつつある。少しずつ涼しくなる気候を部屋の中で感じながら、ゆっくりと休んでいた。
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