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6章
踏み出して
しおりを挟む「さて、そろそろ寝るか」
「もうそんな時間だっけ」
「23時だな」
「なるほど、時間が経つのは早い」
「布団も敷いてないし、準備しなきゃな」
時刻は23時だった。お互い本を読んだりスマートフォンを操作したり、思い思いの時間を過ごしていた。風呂には入っていた。後は寝るだけなのだが、布団を敷くのが面倒だった。そんな時に、ふと賢のベッドを見る。
「今日、一緒に寝てもいい?」
「ベッドでか?」
「うん」
「いいぞ。耐荷重的には壊れないだろうし」
「やった! 」
「けど、その前に歯磨きだな」
「そういえばしてなかった」
ベッドの上で転がりながらスマートフォンを操作する賢が立ち上がる。それに合わせて寝転がっていた仁も床から立ち上がった。
洗面台へと行き、歯を磨く。賢の言葉が無ければ忘れていた。それほど居心地良く出来る空間だった。いつも通りの歯磨きを終えて、部屋へと戻る。食卓の机は一応片付けてから、ベッドに転がる。その時には賢が布団の中に入っていた。
「ミシミシ言わなきゃ良いんだが」
「多分大丈夫」
「まぁ、この段階でなんともないなら大丈夫か」
「多分ね」
2人用で設計されたわけではなさそうなベッドに転がり、布団の中に入る。思っていたより近くにある賢の顔に思わずびっくりする。賢はそんなこともわかっていたのだろうか。賢は何事もなくこちらを向いたままそのままにしていた。照れ隠しのために、賢に話しかける。
「そういえば、初めてだね。同じ布団で寝るの」
「そうだな。思ってたよりは狭くない」
「そう?」
「俺らどっちも男性の平均以上の身長はあるからな。入らなかったらどうしようかと思っていたところだ」
「そうだったんだ」
賢は笑いながらそんなことを言うが、実際に入らなかったり、ベッドの床が抜けたりしたときは大惨事だっただろうことは間違いない。今こうして同じ布団で転がっているという事実を前にして緊張する。それでも、目の前にいる賢とこれからもいろんなことをしていくための第一歩目になるんじゃないかと、仁は考えていた。難しいことを考えているな、と自分で思い直したところで、賢に話しかけられる。
「じゃあ、そろそろ寝るとしますか」
「うん、そうだね」
「おやすみー」
「おやすみ」
静かに目を閉じる賢を見終わってから、仁も目を閉じる。まだ5連休は明日もある。けれど、今日という日は、賢との関係をまた一歩進めることができた貴重な1日だった。明日という日もまた同じように過ぎていくように祈りながら、眠りについた。
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