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6章
夜
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ふと目が覚めた。外の景色は少しずつ夕焼けから夕闇に変わりつつあった。
ベッドの上で転がりながらスマートフォンを探す。充電コードに刺さっていたはずが抜けている本体を探す。
ゴソゴソと布団を漁って、足元の近くにあるスマートフォンを手で取り画面を見る。17時30分と表示されていた。2時間くらい寝ていたということになる。ベッドの下を覗き込むと、仁が布団でまだ寝ている姿が見えた。起こさないように、踏まないようにベッドから降りて冷蔵庫を開けにいく。
冷蔵庫を開けて、作り置きの麦茶を取り出す。コップに注いで飲んでから食材の確認。今日の晩御飯には何を作るか。玉ねぎ、豚肉、にんじん、ピーマン。もはや作るメニューは一つしか浮かばなかった。野菜炒めだ。
豚肉が入っていても野菜炒めに入るのかは賢にはわからなかったが、きっと不味くはならないと言い聞かせて、冷蔵庫の蓋を閉じる。そのとき、仁が起きてきた。
「おはよう、結構しっかり寝た気がする」
「おはよう、よく寝てたね」
「うん、スッキリしたけど夜寝れるかな」
「それは分からんな」
「だよね。ところでなんで冷蔵庫?」
「麦茶を飲むのと今日の晩御飯だ」
「なるほどね」、今日の晩御飯は決まった?」
「野菜炒めかなー」
「なるほどね」
「ま、もうちょっとしたら作るかな」
「はーい」
冷蔵庫の前から退散して、ベッドに戻る。布団の中に入って寝転がりながら仁に話しかける。
「明日も繁華街だけど今日とは違って本屋に行く予定にしてる」
「本屋かぁ、久しぶりな気がする」
「ここ最近バタバタしてたしな」
「2人ともね」
「ま、勉強のことを忘れて好きな本を見にいくのも楽しいんじゃないか」
「そうだね、そうしよう!」
賢の卒論もひと段落したし、仁はこの5連休くらい勉強を忘れたいと言っていた。ついつい勉強の話題に触れそうになるが、今はその時ではない。ゆっくりと、じっくりと。いつのまにか真っ暗になっていた空を見る。もうそんな時間が経過したのかと思いながら夕食を作る。
野菜を適当に切って、油を敷いたフライパンで炒めていく。
卵焼きやハンバーグとは違う楽な炒め物だった。適当に作って、冷凍してあったご飯をレンジで温めれば夕食を食べられる。
「一人暮らしでご飯炊くと冷凍保存になるんだ」
「毎日1合ずつなんて炊いてられないからな」
「確かに」
皿に盛って、ご飯も温めれば、夕食の完成だ。2人で食べながらいろんな話をした。これからの2人の姿として、どうあるべきなのかも話をした。
「ご飯も食べ終わったし、あとは寝るだけだ」
「ゆったりまったりだね」
「今日1日すごく長かった気がするな。繁華街に付き合ってもらってから帰ってきて卵焼き作って昼寝だもんな。充実した1日だった」
「本当にそうだね!俺も楽しかった」
「おう、そりゃよかったぜ」
「そういえば、同棲したらなんだけどさ」
「どうした?」
「賢と一緒にベッドに入って寝てもいい?」
「おう、別に構わんが、夏は暑いぞ」
「多分大丈夫だよ。多分」
少しだけ笑いながら仁はとても嬉しそうな顔をした。賢が今、寝転がっているベッドは2人以上で寝たことがない。正直耐久面が不安ではある。しかし木で出来ている訳でもなければ、ギシギシというような音も鳴ったことがないので、大丈夫だと思いたい。
仁と2人で寝ることになったら、俺は冷静でいられるのだろうか。ということも考えながら、ベッドで転がる。部屋に静寂が訪れたかと思ったら、仁が話し始めた。
「2人で本格的に同棲が始まったら、出来ることとか、出来ないこととか、いっぱい出てくると思うんだけどさ」
「うん」
「それでも、しっかり前に進んでいこうね」
「そうだな。時には仁に頼ることもあるだろうが、よろしく頼む」
「うん、こちらこそ」
5連休の2日目はこうして終わっていく。ゆっくりと。まったりと。しかし2人の夜はまだ終わった訳ではない。楽しく話をする夜は、まだまだ続く。
ベッドの上で転がりながらスマートフォンを探す。充電コードに刺さっていたはずが抜けている本体を探す。
ゴソゴソと布団を漁って、足元の近くにあるスマートフォンを手で取り画面を見る。17時30分と表示されていた。2時間くらい寝ていたということになる。ベッドの下を覗き込むと、仁が布団でまだ寝ている姿が見えた。起こさないように、踏まないようにベッドから降りて冷蔵庫を開けにいく。
冷蔵庫を開けて、作り置きの麦茶を取り出す。コップに注いで飲んでから食材の確認。今日の晩御飯には何を作るか。玉ねぎ、豚肉、にんじん、ピーマン。もはや作るメニューは一つしか浮かばなかった。野菜炒めだ。
豚肉が入っていても野菜炒めに入るのかは賢にはわからなかったが、きっと不味くはならないと言い聞かせて、冷蔵庫の蓋を閉じる。そのとき、仁が起きてきた。
「おはよう、結構しっかり寝た気がする」
「おはよう、よく寝てたね」
「うん、スッキリしたけど夜寝れるかな」
「それは分からんな」
「だよね。ところでなんで冷蔵庫?」
「麦茶を飲むのと今日の晩御飯だ」
「なるほどね」、今日の晩御飯は決まった?」
「野菜炒めかなー」
「なるほどね」
「ま、もうちょっとしたら作るかな」
「はーい」
冷蔵庫の前から退散して、ベッドに戻る。布団の中に入って寝転がりながら仁に話しかける。
「明日も繁華街だけど今日とは違って本屋に行く予定にしてる」
「本屋かぁ、久しぶりな気がする」
「ここ最近バタバタしてたしな」
「2人ともね」
「ま、勉強のことを忘れて好きな本を見にいくのも楽しいんじゃないか」
「そうだね、そうしよう!」
賢の卒論もひと段落したし、仁はこの5連休くらい勉強を忘れたいと言っていた。ついつい勉強の話題に触れそうになるが、今はその時ではない。ゆっくりと、じっくりと。いつのまにか真っ暗になっていた空を見る。もうそんな時間が経過したのかと思いながら夕食を作る。
野菜を適当に切って、油を敷いたフライパンで炒めていく。
卵焼きやハンバーグとは違う楽な炒め物だった。適当に作って、冷凍してあったご飯をレンジで温めれば夕食を食べられる。
「一人暮らしでご飯炊くと冷凍保存になるんだ」
「毎日1合ずつなんて炊いてられないからな」
「確かに」
皿に盛って、ご飯も温めれば、夕食の完成だ。2人で食べながらいろんな話をした。これからの2人の姿として、どうあるべきなのかも話をした。
「ご飯も食べ終わったし、あとは寝るだけだ」
「ゆったりまったりだね」
「今日1日すごく長かった気がするな。繁華街に付き合ってもらってから帰ってきて卵焼き作って昼寝だもんな。充実した1日だった」
「本当にそうだね!俺も楽しかった」
「おう、そりゃよかったぜ」
「そういえば、同棲したらなんだけどさ」
「どうした?」
「賢と一緒にベッドに入って寝てもいい?」
「おう、別に構わんが、夏は暑いぞ」
「多分大丈夫だよ。多分」
少しだけ笑いながら仁はとても嬉しそうな顔をした。賢が今、寝転がっているベッドは2人以上で寝たことがない。正直耐久面が不安ではある。しかし木で出来ている訳でもなければ、ギシギシというような音も鳴ったことがないので、大丈夫だと思いたい。
仁と2人で寝ることになったら、俺は冷静でいられるのだろうか。ということも考えながら、ベッドで転がる。部屋に静寂が訪れたかと思ったら、仁が話し始めた。
「2人で本格的に同棲が始まったら、出来ることとか、出来ないこととか、いっぱい出てくると思うんだけどさ」
「うん」
「それでも、しっかり前に進んでいこうね」
「そうだな。時には仁に頼ることもあるだろうが、よろしく頼む」
「うん、こちらこそ」
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