軌跡 Rev.1

ぽよ

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5章

研究室

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 2限が終わって仁が帰ってくる。昼休みに昼食に誘うか悩みつつ、ガンガンに聞いたクーラーに当たりながら今日もパソコンと格闘。
 一章を書いたところで教授に添削をお願いした。前よりはマシになったが、それでもまだまだだろう。
 こんなペースで果たして書き終わるのか。そんな不安も賢にはあった。本当に行き詰まった時は仁に相談してもいいかもしれない。未だに喧騒がやまない研究室は、まさしくカオスと呼ぶべき状態だった。

「どう?進んでる?」
「ま、なんとか」
「そっか、それならよかった」

 何事もないかのように横に座る仁。少しだけドキドキする。賢の隣で相変わらず本を読んでいる。前から気になっていたことを聞いてみる。

「そういえば仁はフィールドワークとか調査とかしないの?」
「うーん、調査できるツテがなくてねー」
「あー、なるほどね。わかる」
「そうなんだよねー。アンケートとかしたいんだけど」
「講義の中とか全学向け講義とかでアンケート取ってみたら?」
「あ!それいいかも」

 知識は詰め込むだけでは機能しない。吐き出しながら、実感を持ちながら固めていくことが大事なのである。その意味で、仁は色々とした方がいいことが多い気がしていたのだ。本を読むことだけが勉強ではない。パソコンと格闘しながら、仁は本を読みながら、そんな話をする。

「そういえば、学祭とかどうする?」
「うちの研究室はこの有り様だから出せないだろうなぁ。まぁ見て回ることはできるよ」
「そっか、賢が出してたのは部活だったんだっけ」
「まぁ、部活というかサークルだね」
「なるほどね」

 三年の今の時期くらいまではサークルで活動をしていた。そんな時期までサークルをやって、よく今卒論がかけているな、と自分でも思う。学祭の出し物は今年は断念だ。その代わり、仁と色々と見て回ることにする。それも、楽しみの一つだ。パソコンと格闘しながら、そういえばと思う。

「昼はどうする?」
「うーん、まぁ食堂でいいんじゃない?」
「了解、もうちょっとしたら行くか」

 食堂にもラッシュがある。どうせこのあと時間がないなら、ゆっくりしてから行ってもいいだろう。昼休みが終わったらすぐに閉まるわけでもない。

「論文、終わりそう?」
「正直分からん」
「応援してる!」
「応援を頼むかもしれん」
「この前みたいなやつ?」
「そうそう」
「了解しました」

 終わるかどうかは正直分からん。それでも気合で終わらせるしかない。クーラーが効いた部屋でパソコンと格闘する日々はおそらく冬まで続く。その頃には冷房から暖房に変わってるだろうが、今より人口密度が増えているに違いない。相変わらず本を読んでいる仁を横目で見ながら、付き合ってもらうことが少々申し訳ない気がした。

「別に気にしなくていいんだよ。俺も楽しいし」
「そうか。ありがとう」

 考えていることを見抜かれたようだ。仁が楽しいのなら、それで問題はない。
 教授は相変わらず最近やっと始めた奴らの相手をしている。大変そうだと思いながら、絶対に関わらないようにしないと、恐ろしいことになりそうなのも分かっている。だからこそ、端の方で話をしているのだ。

「そろそろご飯に行くか」
「行こう」

 時間も少し経ったところで食堂へと向かう。まだまだ続く、今日の戦いに向けて。そんなことを思いながら、仁と2人で研究室を出た。
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