68 / 107
5章
研究室
しおりを挟む
2限が終わって仁が帰ってくる。昼休みに昼食に誘うか悩みつつ、ガンガンに聞いたクーラーに当たりながら今日もパソコンと格闘。
一章を書いたところで教授に添削をお願いした。前よりはマシになったが、それでもまだまだだろう。
こんなペースで果たして書き終わるのか。そんな不安も賢にはあった。本当に行き詰まった時は仁に相談してもいいかもしれない。未だに喧騒がやまない研究室は、まさしくカオスと呼ぶべき状態だった。
「どう?進んでる?」
「ま、なんとか」
「そっか、それならよかった」
何事もないかのように横に座る仁。少しだけドキドキする。賢の隣で相変わらず本を読んでいる。前から気になっていたことを聞いてみる。
「そういえば仁はフィールドワークとか調査とかしないの?」
「うーん、調査できるツテがなくてねー」
「あー、なるほどね。わかる」
「そうなんだよねー。アンケートとかしたいんだけど」
「講義の中とか全学向け講義とかでアンケート取ってみたら?」
「あ!それいいかも」
知識は詰め込むだけでは機能しない。吐き出しながら、実感を持ちながら固めていくことが大事なのである。その意味で、仁は色々とした方がいいことが多い気がしていたのだ。本を読むことだけが勉強ではない。パソコンと格闘しながら、仁は本を読みながら、そんな話をする。
「そういえば、学祭とかどうする?」
「うちの研究室はこの有り様だから出せないだろうなぁ。まぁ見て回ることはできるよ」
「そっか、賢が出してたのは部活だったんだっけ」
「まぁ、部活というかサークルだね」
「なるほどね」
三年の今の時期くらいまではサークルで活動をしていた。そんな時期までサークルをやって、よく今卒論がかけているな、と自分でも思う。学祭の出し物は今年は断念だ。その代わり、仁と色々と見て回ることにする。それも、楽しみの一つだ。パソコンと格闘しながら、そういえばと思う。
「昼はどうする?」
「うーん、まぁ食堂でいいんじゃない?」
「了解、もうちょっとしたら行くか」
食堂にもラッシュがある。どうせこのあと時間がないなら、ゆっくりしてから行ってもいいだろう。昼休みが終わったらすぐに閉まるわけでもない。
「論文、終わりそう?」
「正直分からん」
「応援してる!」
「応援を頼むかもしれん」
「この前みたいなやつ?」
「そうそう」
「了解しました」
終わるかどうかは正直分からん。それでも気合で終わらせるしかない。クーラーが効いた部屋でパソコンと格闘する日々はおそらく冬まで続く。その頃には冷房から暖房に変わってるだろうが、今より人口密度が増えているに違いない。相変わらず本を読んでいる仁を横目で見ながら、付き合ってもらうことが少々申し訳ない気がした。
「別に気にしなくていいんだよ。俺も楽しいし」
「そうか。ありがとう」
考えていることを見抜かれたようだ。仁が楽しいのなら、それで問題はない。
教授は相変わらず最近やっと始めた奴らの相手をしている。大変そうだと思いながら、絶対に関わらないようにしないと、恐ろしいことになりそうなのも分かっている。だからこそ、端の方で話をしているのだ。
「そろそろご飯に行くか」
「行こう」
時間も少し経ったところで食堂へと向かう。まだまだ続く、今日の戦いに向けて。そんなことを思いながら、仁と2人で研究室を出た。
一章を書いたところで教授に添削をお願いした。前よりはマシになったが、それでもまだまだだろう。
こんなペースで果たして書き終わるのか。そんな不安も賢にはあった。本当に行き詰まった時は仁に相談してもいいかもしれない。未だに喧騒がやまない研究室は、まさしくカオスと呼ぶべき状態だった。
「どう?進んでる?」
「ま、なんとか」
「そっか、それならよかった」
何事もないかのように横に座る仁。少しだけドキドキする。賢の隣で相変わらず本を読んでいる。前から気になっていたことを聞いてみる。
「そういえば仁はフィールドワークとか調査とかしないの?」
「うーん、調査できるツテがなくてねー」
「あー、なるほどね。わかる」
「そうなんだよねー。アンケートとかしたいんだけど」
「講義の中とか全学向け講義とかでアンケート取ってみたら?」
「あ!それいいかも」
知識は詰め込むだけでは機能しない。吐き出しながら、実感を持ちながら固めていくことが大事なのである。その意味で、仁は色々とした方がいいことが多い気がしていたのだ。本を読むことだけが勉強ではない。パソコンと格闘しながら、仁は本を読みながら、そんな話をする。
「そういえば、学祭とかどうする?」
「うちの研究室はこの有り様だから出せないだろうなぁ。まぁ見て回ることはできるよ」
「そっか、賢が出してたのは部活だったんだっけ」
「まぁ、部活というかサークルだね」
「なるほどね」
三年の今の時期くらいまではサークルで活動をしていた。そんな時期までサークルをやって、よく今卒論がかけているな、と自分でも思う。学祭の出し物は今年は断念だ。その代わり、仁と色々と見て回ることにする。それも、楽しみの一つだ。パソコンと格闘しながら、そういえばと思う。
「昼はどうする?」
「うーん、まぁ食堂でいいんじゃない?」
「了解、もうちょっとしたら行くか」
食堂にもラッシュがある。どうせこのあと時間がないなら、ゆっくりしてから行ってもいいだろう。昼休みが終わったらすぐに閉まるわけでもない。
「論文、終わりそう?」
「正直分からん」
「応援してる!」
「応援を頼むかもしれん」
「この前みたいなやつ?」
「そうそう」
「了解しました」
終わるかどうかは正直分からん。それでも気合で終わらせるしかない。クーラーが効いた部屋でパソコンと格闘する日々はおそらく冬まで続く。その頃には冷房から暖房に変わってるだろうが、今より人口密度が増えているに違いない。相変わらず本を読んでいる仁を横目で見ながら、付き合ってもらうことが少々申し訳ない気がした。
「別に気にしなくていいんだよ。俺も楽しいし」
「そうか。ありがとう」
考えていることを見抜かれたようだ。仁が楽しいのなら、それで問題はない。
教授は相変わらず最近やっと始めた奴らの相手をしている。大変そうだと思いながら、絶対に関わらないようにしないと、恐ろしいことになりそうなのも分かっている。だからこそ、端の方で話をしているのだ。
「そろそろご飯に行くか」
「行こう」
時間も少し経ったところで食堂へと向かう。まだまだ続く、今日の戦いに向けて。そんなことを思いながら、仁と2人で研究室を出た。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!
をち。
BL
公爵家の3男として生まれた俺は、家族からうとまれていた。
母が俺を産んだせいで命を落としたからだそうだ。
生を受けた俺を待っていたのは、精神的な虐待。
最低限の食事や世話のみで、物置のような部屋に放置されていた。
だれでもいいから、
暖かな目で、優しい声で俺に話しかけて欲しい。
ただそれだけを願って毎日を過ごした。
そして言葉が分かるようになって、遂に自分の状況を理解してしまった。
(ぼくはかあさまをころしてうまれた。
だから、みんなぼくのことがきらい。
ぼくがあいされることはないんだ)
わずかに縋っていた希望が打ち砕かれ、絶望した。
そしてそんな俺を救うため、前世の俺「須藤卓也」の記憶が蘇ったんだ。
「いやいや、サフィが悪いんじゃなくね?」
公爵や兄たちが後悔した時にはもう遅い。
俺には新たな家族ができた。俺の叔父ゲイルだ。優しくてかっこいい最高のお父様!
俺は血のつながった家族を捨て、新たな家族と幸せになる!
★注意★
ご都合主義。基本的にチート溺愛です。ざまぁは軽め。
ひたすら主人公かわいいです。苦手な方はそっ閉じを!
感想などコメント頂ければ作者モチベが上がりますw
勇者の股間触ったらエライことになった
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。
町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。
オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。
ブラックベリーの霊能学
猫宮乾
キャラ文芸
新南津市には、古くから名門とされる霊能力者の一族がいる。それが、玲瓏院一族で、その次男である大学生の僕(紬)は、「さすがは名だたる天才だ。除霊も完璧」と言われている、というお話。※周囲には天才霊能力者と誤解されている大学生の日常。
白い部屋で愛を囁いて
氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。
シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。
※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。
好きな人が「ふつーに可愛い子がタイプ」と言っていたので、女装して迫ったら思いのほか愛されてしまった
碓氷唯
BL
白月陽葵(しろつきひなた)は、オタクとからかわれ中学高校といじめられていたが、高校の頃に具合が悪かった自分を介抱してくれた壱城悠星(いちしろゆうせい)に片想いしていた。
壱城は高校では一番の不良で白月にとっては一番近づきがたかったタイプだが、今まで関わってきた人間の中で一番優しく綺麗な心を持っていることがわかり、恋をしてからは壱城のことばかり考えてしまう。
白月はそんな壱城の好きなタイプを高校の卒業前に盗み聞きする。
壱城の好きなタイプは「ふつーに可愛い子」で、白月は「ふつーに可愛い子」になるために、自分の小柄で女顔な容姿を生かして、女装し壱城をナンパする。
男の白月には怒ってばかりだった壱城だが、女性としての白月には優しく対応してくれることに、喜びを感じ始める。
だが、女という『偽物』の自分を愛してくる壱城に、だんだん白月は辛くなっていき……。
ノンケ(?)攻め×女装健気受け。
三万文字程度で終わる短編です。
継母の心得 〜 番外編 〜
トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。
【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】
妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?
木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。
彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。
公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。
しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。
だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。
二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。
彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。
※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。
ある日、人気俳優の弟になりました。
樹 ゆき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。
「俺の命は、君のものだよ」
初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……?
平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる