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5章
次の日
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次の日の朝、大学に向かう途中のバスで賢と会う。昨日の話をしようとすると、賢が話しかけてきた。
「おはよう」
「おはよう」
「昨日はどうだった?」
「まぁ、反対はされなかったよ」
「そうか、なら良かった」
相変わらずバスは人混みの極致かのような人口密度だった。10分乗るのもめんどくさいと思うほどだが、わざわざ自転車に乗るか歩くかと言われたらまだバスの方が通学しやすい。そんなレベルだ。今日は1限と4限。圧倒的に暇な時間が長い。その間は研究室にでも行こうかと思う。
「今日は研究室くるの?」
「多分行く」
「はーい、じゃあまた後で!」
「また後で」
気がつけばバスは大学の前にいた。座っていた席から立ち上がり、ぞろぞろと学生が降りていく。仁も賢もそれに続いて降りる一人だ。
まだまだ始まったばかりの恋。これから先、ずっと幸せである保証はなくても、二人ならきっと頑張っていける。そんな想いを抱えて、授業に向かう。また自己紹介だけで終わったらそれはそれでどうしようと思うのだが、そこはなんとか頑張るしかない。
賢は研究室に行き、仁は講義へと向かった。前期とは違う、一歩進んだ大学生活が始まる。いつもと変わらぬ日々を、少しずつ変えていく日々。そんな人生もきっと楽しい。エレベーターに乗り込み、講義室に入る。しばらくは緊張した毎日だろうけど、頑張ると決めた。
講義室には人がそこそこいて、知り合いの同級生の隣に座った。
「おはよう。めっちゃ眠たい」
「おはよう。仕方ないよ。これも宿命だ」
「悲しい運命でも背負ったのか」
「うん、大学生という宿命がすでに」
「分からなくはないけども」
なぜかは分からないがシリアスな話になった気がする。そんな大層な話をする気はなかったのだけど。二人で横に並びながらだらだら過ごす。程なくしてから教授が来る。
「授業をやります」
来て早々にはじまりの合図。かと思えば自己紹介だった。専攻についての説明もあった。そろそろ研究室を意識しろということなんだろうか。おそらくながら、2年の後期で行きたい研究室が決まっているというのは珍しいのだろう。
そういえば昨日の教授も自分の専攻について話をしていた。つまり、そういうことなのかもしれない。何の気なしに聞いていたが、もう必死になっている同期もいるのだろうか、などと考える。何も考えずにだらだらしていたら教授が部屋から出てしまった。
「あれ?」
「お前聞いてなかったのか?もう終わったぞ」
「あー、まじか」
考え事とは恐ろしいものだ。無意識的に板書が取れていたことがほぼ奇跡だった。
時間がすぐに過ぎてしまう。スマートフォンを見れば時間は9時50分であった。
「うーん、めちゃくちゃ早かったな」
「この後は?」
「彼氏の研究室」
「頑張れ」
「頑張る」
特に頑張ることがあるわけではないのだが、頑張れと言われたら何かを頑張るべきなのだろうか。建物を出たところで友人と解散し、研究室へと向かう。10分ほどのんびり歩けば着く。扉を開ければそこは、喧騒であった。
「おじゃましまーす。これ、入っていいの?」
「大丈夫でしょ」
なんの気無しに返事をする恋人は、卒論を書き始めていた。社会的意義から始まって、手法や結果や考察など、色々書くらしい。なんとなくだけは知っている。恋人は唸りながら書いている。そんな横に座りながら一息つく。部屋の中央では教授と学生が何やらガヤガヤやっている。卒論についてだろうか。特に何をするわけでもなく、だらだらする。すると、賢が話しかけてきた。
「昼ぐらいのタイミングで、ちょっと話がしたい」
「え?うん、いいけど」
どうやら賢から話があるらしい。なんだろう。見当がつかないけれど、いい話だと嬉しい。のんびりとそんなことを考えながら、読書をすることにした。
「おはよう」
「おはよう」
「昨日はどうだった?」
「まぁ、反対はされなかったよ」
「そうか、なら良かった」
相変わらずバスは人混みの極致かのような人口密度だった。10分乗るのもめんどくさいと思うほどだが、わざわざ自転車に乗るか歩くかと言われたらまだバスの方が通学しやすい。そんなレベルだ。今日は1限と4限。圧倒的に暇な時間が長い。その間は研究室にでも行こうかと思う。
「今日は研究室くるの?」
「多分行く」
「はーい、じゃあまた後で!」
「また後で」
気がつけばバスは大学の前にいた。座っていた席から立ち上がり、ぞろぞろと学生が降りていく。仁も賢もそれに続いて降りる一人だ。
まだまだ始まったばかりの恋。これから先、ずっと幸せである保証はなくても、二人ならきっと頑張っていける。そんな想いを抱えて、授業に向かう。また自己紹介だけで終わったらそれはそれでどうしようと思うのだが、そこはなんとか頑張るしかない。
賢は研究室に行き、仁は講義へと向かった。前期とは違う、一歩進んだ大学生活が始まる。いつもと変わらぬ日々を、少しずつ変えていく日々。そんな人生もきっと楽しい。エレベーターに乗り込み、講義室に入る。しばらくは緊張した毎日だろうけど、頑張ると決めた。
講義室には人がそこそこいて、知り合いの同級生の隣に座った。
「おはよう。めっちゃ眠たい」
「おはよう。仕方ないよ。これも宿命だ」
「悲しい運命でも背負ったのか」
「うん、大学生という宿命がすでに」
「分からなくはないけども」
なぜかは分からないがシリアスな話になった気がする。そんな大層な話をする気はなかったのだけど。二人で横に並びながらだらだら過ごす。程なくしてから教授が来る。
「授業をやります」
来て早々にはじまりの合図。かと思えば自己紹介だった。専攻についての説明もあった。そろそろ研究室を意識しろということなんだろうか。おそらくながら、2年の後期で行きたい研究室が決まっているというのは珍しいのだろう。
そういえば昨日の教授も自分の専攻について話をしていた。つまり、そういうことなのかもしれない。何の気なしに聞いていたが、もう必死になっている同期もいるのだろうか、などと考える。何も考えずにだらだらしていたら教授が部屋から出てしまった。
「あれ?」
「お前聞いてなかったのか?もう終わったぞ」
「あー、まじか」
考え事とは恐ろしいものだ。無意識的に板書が取れていたことがほぼ奇跡だった。
時間がすぐに過ぎてしまう。スマートフォンを見れば時間は9時50分であった。
「うーん、めちゃくちゃ早かったな」
「この後は?」
「彼氏の研究室」
「頑張れ」
「頑張る」
特に頑張ることがあるわけではないのだが、頑張れと言われたら何かを頑張るべきなのだろうか。建物を出たところで友人と解散し、研究室へと向かう。10分ほどのんびり歩けば着く。扉を開ければそこは、喧騒であった。
「おじゃましまーす。これ、入っていいの?」
「大丈夫でしょ」
なんの気無しに返事をする恋人は、卒論を書き始めていた。社会的意義から始まって、手法や結果や考察など、色々書くらしい。なんとなくだけは知っている。恋人は唸りながら書いている。そんな横に座りながら一息つく。部屋の中央では教授と学生が何やらガヤガヤやっている。卒論についてだろうか。特に何をするわけでもなく、だらだらする。すると、賢が話しかけてきた。
「昼ぐらいのタイミングで、ちょっと話がしたい」
「え?うん、いいけど」
どうやら賢から話があるらしい。なんだろう。見当がつかないけれど、いい話だと嬉しい。のんびりとそんなことを考えながら、読書をすることにした。
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