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3章
将軍の観光
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大都会だからこそ暑いのかもしれないが、やっぱり暑い。それでも歩いていられるのは横に恋人がいるからかな。のんびりと歩きながら街並みを見る。今日は一体何をしようか。
「今日は城でも見に行こうか」
「城かぁ。いいね」
この街にも城がある。かつて天下統一をしようとした戦国武将の出身だ。城くらいあってもおかしくはない。かつて栄えた城下町は形として残っていないが、おまけに大都会が出来上がっていた。その城はここから少しだけ歩く。歩いた先には大きな城が待っていた。
「これかー!」
「でかいなぁ」
「大きいね」
春には桜で視界が覆い尽くされるという城は、もはや聳えるという方が表現が正しいんじゃないかと思うほど。そんな城にも堀があり、本体もある。早速ながら、入っていくことにした。
「おー」
「仁は初めてか?」
「いや、地元の城には行ったことある。こんなに立派じゃなかった気がするけど」
「そうか」
「ま、これでも一応過去の戦国武将と同じ名字だからね」
「俺もそうだよ」
豊臣と徳川。その名前は、日本なら知らない者はいないだろうというほど有名な戦国武将だった。その二人が、今こうして城の敷地内を歩く。改めて感じる自分の身長とは比べ物にならないほどの大きさの何か。いつかはこんな城が欲しい。なんて夢も子供の頃に見た。門を抜けて、しばらく歩けば城に入ることができる。
「いよいよか」
「楽しく誰かを討ち取るのか?」
「いやそういうわけじゃないけど」
本物の戦国武将であるかのような会話をする。討ち取るなら大学の教授がいい。そんなことを考えながら歩く。中は立派だった。天守閣は大きいし、城そのものも見事だった。城巡りをしても楽しいかもしれない。中を見て回りながら感じたことだった。
「俺も城を回るのは久しぶりだ」
「賢は行ったことあるのか」
「他の城にはな」
「そっか」
「ここほど大きな城に来るのは初めてかもしれん」
「そうなのか」
賢はいろんなことを知ってるなぁなんて呑気なことを考えながら、城を出て街に戻ってくる。時間はすでに13時を回っていた。
「いろんなところを回ると時間が経つのが早いな」
「そうだね」
「そろそろお昼にしよう」
「了解」
二日目の昼食。特に何も決めていなかった。この辺りに美味しいご飯屋さんがあるのかどうかもわからない。こういう時はマップで検索。二人で色々と条件を変えて調べてみる。
「この辺はまぜそばが有名らしい」
「そうなんだ」
「行くか」
「うん」
駅の方まで戻り、まぜそばの店を探す。観光もひと段落した。あとはグルメだけだ。まぜそばというものを食べたことがない二人は、ラーメンの延長にあるのか、なんてことをぼんやりながら考えていた。
適当にマップを見ながら歩けば、看板も上がってない店が、その店だった。
「危うく見逃すところだった」
「マップはすごいね」
「本当だね」
店に入るとそこは、世間一般に表現されるラーメン屋とは違う雰囲気だった。不思議な雰囲気の店に入り、メニューを見る。
「これだ」
「これだね」
メニューを見て、一目でそれだと分かった。店主を呼んで、注文を済ませる。少ししてからまぜそばがくる。そのラーメンとは明らかに一線を画す麺類に、なぜかドキドキした。
「思ってたよりはラーメンじゃなかったな」
「そうだね」
見慣れない見た目のそれをひとまず食べてみることにする。休みの日の昼にしては空いている店内は静かだった。
「おいしい」
「おいしいな」
味も食感もラーメンとはやっぱり違った。気がつけば、食べることに夢中になっていた。
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさま」
食べ切ったあとは手早く会計して店を出る。時刻は14時だった。涼しい店内から出てみると一転、灼熱地獄の街が待っていた。やることがあるわけでもなく、観光もすでに終わった。何をしようと考えていた。
「そろそろ帰る準備するか」
「え、うん」
「一泊二日だとどうしても短くなるけど、多分今から帰ると家に着くのは16時ごろだ。そう思えばまぁ悪くない時間だし」
「なるほど」
確かに、無理にやることを見つけて動くよりは、いいのかもしれない。
「駅まで歩くかぁ」
「そうしよう」
デートも終盤。しかし、ちゃんと帰るまでがデートであることは間違いない。全力で楽しめたデートだった。
「今日は城でも見に行こうか」
「城かぁ。いいね」
この街にも城がある。かつて天下統一をしようとした戦国武将の出身だ。城くらいあってもおかしくはない。かつて栄えた城下町は形として残っていないが、おまけに大都会が出来上がっていた。その城はここから少しだけ歩く。歩いた先には大きな城が待っていた。
「これかー!」
「でかいなぁ」
「大きいね」
春には桜で視界が覆い尽くされるという城は、もはや聳えるという方が表現が正しいんじゃないかと思うほど。そんな城にも堀があり、本体もある。早速ながら、入っていくことにした。
「おー」
「仁は初めてか?」
「いや、地元の城には行ったことある。こんなに立派じゃなかった気がするけど」
「そうか」
「ま、これでも一応過去の戦国武将と同じ名字だからね」
「俺もそうだよ」
豊臣と徳川。その名前は、日本なら知らない者はいないだろうというほど有名な戦国武将だった。その二人が、今こうして城の敷地内を歩く。改めて感じる自分の身長とは比べ物にならないほどの大きさの何か。いつかはこんな城が欲しい。なんて夢も子供の頃に見た。門を抜けて、しばらく歩けば城に入ることができる。
「いよいよか」
「楽しく誰かを討ち取るのか?」
「いやそういうわけじゃないけど」
本物の戦国武将であるかのような会話をする。討ち取るなら大学の教授がいい。そんなことを考えながら歩く。中は立派だった。天守閣は大きいし、城そのものも見事だった。城巡りをしても楽しいかもしれない。中を見て回りながら感じたことだった。
「俺も城を回るのは久しぶりだ」
「賢は行ったことあるのか」
「他の城にはな」
「そっか」
「ここほど大きな城に来るのは初めてかもしれん」
「そうなのか」
賢はいろんなことを知ってるなぁなんて呑気なことを考えながら、城を出て街に戻ってくる。時間はすでに13時を回っていた。
「いろんなところを回ると時間が経つのが早いな」
「そうだね」
「そろそろお昼にしよう」
「了解」
二日目の昼食。特に何も決めていなかった。この辺りに美味しいご飯屋さんがあるのかどうかもわからない。こういう時はマップで検索。二人で色々と条件を変えて調べてみる。
「この辺はまぜそばが有名らしい」
「そうなんだ」
「行くか」
「うん」
駅の方まで戻り、まぜそばの店を探す。観光もひと段落した。あとはグルメだけだ。まぜそばというものを食べたことがない二人は、ラーメンの延長にあるのか、なんてことをぼんやりながら考えていた。
適当にマップを見ながら歩けば、看板も上がってない店が、その店だった。
「危うく見逃すところだった」
「マップはすごいね」
「本当だね」
店に入るとそこは、世間一般に表現されるラーメン屋とは違う雰囲気だった。不思議な雰囲気の店に入り、メニューを見る。
「これだ」
「これだね」
メニューを見て、一目でそれだと分かった。店主を呼んで、注文を済ませる。少ししてからまぜそばがくる。そのラーメンとは明らかに一線を画す麺類に、なぜかドキドキした。
「思ってたよりはラーメンじゃなかったな」
「そうだね」
見慣れない見た目のそれをひとまず食べてみることにする。休みの日の昼にしては空いている店内は静かだった。
「おいしい」
「おいしいな」
味も食感もラーメンとはやっぱり違った。気がつけば、食べることに夢中になっていた。
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさま」
食べ切ったあとは手早く会計して店を出る。時刻は14時だった。涼しい店内から出てみると一転、灼熱地獄の街が待っていた。やることがあるわけでもなく、観光もすでに終わった。何をしようと考えていた。
「そろそろ帰る準備するか」
「え、うん」
「一泊二日だとどうしても短くなるけど、多分今から帰ると家に着くのは16時ごろだ。そう思えばまぁ悪くない時間だし」
「なるほど」
確かに、無理にやることを見つけて動くよりは、いいのかもしれない。
「駅まで歩くかぁ」
「そうしよう」
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