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3章
勇気
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噴水が出るという公園は、とても大きな公園だった。ベンチがあったので、2人で座る。
「しかしまぁ暑い」
「夏だからね」
「タオルがすぐビショビショになるな」
「本当にねー」
最近は35度を平気で超えてくるような気温の日本。今旅行をしている街も例外ではなかった。スマートフォンの表示を見ると今日は37度なんだそうだ。このままいけば常に人の体温より高くなる時が来るのではないか。
なんの根拠もないが、この暑さだとそんなことも考えてしまう。ベンチに座ってしばらく喋っていると、歓声が上がった。
「なんだなんだ」
「あそこ、噴水だ」
「お、これが噂の」
「なかなかの規模だね」
「こりゃすごい」
その公園の噴水は、高さも大きさも十分にあった。見応えがあって、見た目が涼しい。これは見事だと2人で称賛の声をあげる。
高さ5メートルはあるであろうその噴水を見ながら改めて都道府県を渡ってきたんだと実感する。3分ほどの噴水が終わり、それでも人は掃けていかない。この季節だからということもあるだろう。涼しさを求めて人は動いていた。
外で遊ぶ子供やシートを敷いてご飯を食べている人もいる。かつて仁が歩んできた世界とは違う世界だった。そんな世界に目を向けていると、賢は話しかけてくる。
「噴水、良かったな」
「うん」
「せっかくデートに来たんだから」
「うん?」
「手を繋ごう」
「う、うん」
その言葉に動揺する。今まで意識をしていなかっただけに意識をするとドギマギしてしまう。少しずつ手を出していく。すると、急に握られる。
「大丈夫だよ」
「うん、わかった」
なんとか平静を保とうとするが、バレているだろう。自覚するほどの心拍数だし、おそらく汗も出ている。そう思えば諦めもつく。横でニコニコしている恋人はやけに満足げだ。そして、スタスタと歩いていく。仁もそれについていく形で横を歩く。
「どこ行くのー?」
「ちょっと早めの昼ごはんだな」
「ほーい」
テクテクと歩いていく。どこにいくのかと思っていたが、これは駅の方向だ。仁は少しだけ方向音痴だが、この街はやけに高い建物が多い。
駅は取り立てて高さがある。それでなんとなく理解した。二人で手を繋ぎながらのんびりと駅まで戻る。当然同じだけの時間がかかったが、その頃には11時30分だった。動き始めたのはいい時間だったかもしれない。普段の昼食よりは少しだけ早いが、動いたり頭を使ったりしていたから、お腹が空いていた。
「なんかお目当てでもあるの?」
「ここの味噌煮込みうどんが美味しいらしい」
「へぇ、行こっか」
「そうだな」
味噌煮込み。うどんなら名前だけは聞いたことがあったが、食べるのは初だ。どんな味なのか。駅の中の商業施設を通り抜け、店の順番を取る。まだギリギリ混む前だったらしい。満席に近いが、空きはある。席に通されてから、店員が来て、一通り説明がある。メニューを見ながら真剣に悩む。
「俺はこれかなー」
「あー、俺もそれにしよう」
「味噌煮込みうどん。多分これが一番有名」
「そうなのかぁ」
半分くらい分かっていないが、有名ならおそらく美味しいはずだ。美味しそうな匂いがする、なんて呑気な会話をしていると料理が運ばれてきた。
「美味しそう!」
「いいね、この感じ」
「食べよう食べよう!」
「そうだな」
賢の提案だったにも関わらず、それよりも興味を持っていたのは仁だった。食べ物に弱いというより初めて見るものに弱いという方が正しいのだろう。微笑ましい姿だと思った。
見た目がすごいが、味は美味しい。家で作ってみたいが、焦げついたら大惨事になるだろうことはすぐ予想できる。普段からそんなに自炊をするわけじゃない賢は、もうちょっと鍛えてからだなと思った。
うどんの熱さと格闘しながら食べていると、いつの間にか食べ終わっていた。仁も食べ終わっていたようだ。
「昼からどうする?」
「うーん、まだなーんも考えてない」
「じゃあ、ちょっとここで一休みしてから出よっか」
「そうだな。ま、奇跡的に取れたホテルの街に行っていいんじゃないか?」
「そうしよう!」
「ま、もうちょっとだけゆっくりしてからね」
「そうだね」
真夏の街を歩いて汗だくになった後だ。少しぐらい涼んでもバチは当たるまい。しかし長いようで短いデートももう昼である。さっきまで新幹線に乗っていたかのような感覚に陥っていた。ここを出たら、少しだけ都会から離れる。その前に、この時間を享受するとしようか。
「しかしまぁ暑い」
「夏だからね」
「タオルがすぐビショビショになるな」
「本当にねー」
最近は35度を平気で超えてくるような気温の日本。今旅行をしている街も例外ではなかった。スマートフォンの表示を見ると今日は37度なんだそうだ。このままいけば常に人の体温より高くなる時が来るのではないか。
なんの根拠もないが、この暑さだとそんなことも考えてしまう。ベンチに座ってしばらく喋っていると、歓声が上がった。
「なんだなんだ」
「あそこ、噴水だ」
「お、これが噂の」
「なかなかの規模だね」
「こりゃすごい」
その公園の噴水は、高さも大きさも十分にあった。見応えがあって、見た目が涼しい。これは見事だと2人で称賛の声をあげる。
高さ5メートルはあるであろうその噴水を見ながら改めて都道府県を渡ってきたんだと実感する。3分ほどの噴水が終わり、それでも人は掃けていかない。この季節だからということもあるだろう。涼しさを求めて人は動いていた。
外で遊ぶ子供やシートを敷いてご飯を食べている人もいる。かつて仁が歩んできた世界とは違う世界だった。そんな世界に目を向けていると、賢は話しかけてくる。
「噴水、良かったな」
「うん」
「せっかくデートに来たんだから」
「うん?」
「手を繋ごう」
「う、うん」
その言葉に動揺する。今まで意識をしていなかっただけに意識をするとドギマギしてしまう。少しずつ手を出していく。すると、急に握られる。
「大丈夫だよ」
「うん、わかった」
なんとか平静を保とうとするが、バレているだろう。自覚するほどの心拍数だし、おそらく汗も出ている。そう思えば諦めもつく。横でニコニコしている恋人はやけに満足げだ。そして、スタスタと歩いていく。仁もそれについていく形で横を歩く。
「どこ行くのー?」
「ちょっと早めの昼ごはんだな」
「ほーい」
テクテクと歩いていく。どこにいくのかと思っていたが、これは駅の方向だ。仁は少しだけ方向音痴だが、この街はやけに高い建物が多い。
駅は取り立てて高さがある。それでなんとなく理解した。二人で手を繋ぎながらのんびりと駅まで戻る。当然同じだけの時間がかかったが、その頃には11時30分だった。動き始めたのはいい時間だったかもしれない。普段の昼食よりは少しだけ早いが、動いたり頭を使ったりしていたから、お腹が空いていた。
「なんかお目当てでもあるの?」
「ここの味噌煮込みうどんが美味しいらしい」
「へぇ、行こっか」
「そうだな」
味噌煮込み。うどんなら名前だけは聞いたことがあったが、食べるのは初だ。どんな味なのか。駅の中の商業施設を通り抜け、店の順番を取る。まだギリギリ混む前だったらしい。満席に近いが、空きはある。席に通されてから、店員が来て、一通り説明がある。メニューを見ながら真剣に悩む。
「俺はこれかなー」
「あー、俺もそれにしよう」
「味噌煮込みうどん。多分これが一番有名」
「そうなのかぁ」
半分くらい分かっていないが、有名ならおそらく美味しいはずだ。美味しそうな匂いがする、なんて呑気な会話をしていると料理が運ばれてきた。
「美味しそう!」
「いいね、この感じ」
「食べよう食べよう!」
「そうだな」
賢の提案だったにも関わらず、それよりも興味を持っていたのは仁だった。食べ物に弱いというより初めて見るものに弱いという方が正しいのだろう。微笑ましい姿だと思った。
見た目がすごいが、味は美味しい。家で作ってみたいが、焦げついたら大惨事になるだろうことはすぐ予想できる。普段からそんなに自炊をするわけじゃない賢は、もうちょっと鍛えてからだなと思った。
うどんの熱さと格闘しながら食べていると、いつの間にか食べ終わっていた。仁も食べ終わっていたようだ。
「昼からどうする?」
「うーん、まだなーんも考えてない」
「じゃあ、ちょっとここで一休みしてから出よっか」
「そうだな。ま、奇跡的に取れたホテルの街に行っていいんじゃないか?」
「そうしよう!」
「ま、もうちょっとだけゆっくりしてからね」
「そうだね」
真夏の街を歩いて汗だくになった後だ。少しぐらい涼んでもバチは当たるまい。しかし長いようで短いデートももう昼である。さっきまで新幹線に乗っていたかのような感覚に陥っていた。ここを出たら、少しだけ都会から離れる。その前に、この時間を享受するとしようか。
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