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3章
夏休み
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七月も終わりを迎えつつある。夏休み2日目にしてすでに暇の気配を感じ取っていた仁は、賢にメッセージを送信する。すぐに返信が来る。仁は今日意味もなく7時起きだと言うのに賢もなかなか早起きだ。
「おはよー」
「おはよう」
「早起きだねー」
「夏休みも変わらず研究室だからな」
「そっか」
「ま、遊びに行くときは一緒に行こうぜ」
「はーい」
四年生は夏休みも変わらず研究室らしい。今の賢の姿を見ると、二年後の自分になると思うと憂鬱になる。研究室に篭る賢の邪魔はしたくないが、構ってほしいと言う気持ちはある。
夏休みを謳歌したいが青春などというものはとうの昔に捨ててきた。今は恋人がいるが遊べる様子もない。
最近の夏にしては少しだけ涼しい気候だった。どうせすることもない。定期の期限も余っている。どうせなら図書館で面白そうな本を探しても良さそうだ。よっぽど暇なら賢に連絡してから研究室にお邪魔しよう。
だらだらと布団に寝転んでいるだけの体を起こし、朝食を食べる。頭と体の両方を頑張って起こしながら、適当に頑張ろうとするが思いの外体が重い。昨日は珍しく夜更かしをした。なんでもないままぼーっとしてたら夜の十一時だったのだ。仁は心の中で自分は悪くないと唱えている。
結局寝たのは深夜一時ぐらいだった記憶がある。風呂に入って歯を磨いてゴロゴロしながら寝落ちした。疲れていたわけではないのだが、気がつけば23時という時点で手遅れかもしれない。
いつもと同じ準備をして玄関へと向かう。のんびり駅まで歩いて、電車に乗る。
いつになっても変わらぬ景色。特に鮮やかなわけでもなく、モノトーンなわけでもない。いつもと変わらぬいつもの景色。電車の最寄駅に着いたら今度はバスだ。適当に乗り込んで空いている座席に座ると、後ろから声が聞こえてきた。
「仁じゃん」
「あっ、おはよう」
「おはよう。今から大学?」
「まぁね。賢も今から研究室かぁ。もういるかと思ってた」
「俺にそんな早起きは無理だよ」
少しだけ笑いながら賢は話してくれる。仁の同性愛を真っ直ぐに認めてくれた数少ない存在だ。賢は人より少しだけ身長が高い。見上げるとまでは言わないけど、ちょっとだけ仰ぐ形になる。二人で話をするのは楽しい。最近は時間が取れなかったけれど、また話ができる時間が増えるように頑張らなければならない。
「じゃ、何かに困ったら研究室においでよ」
「ありがと」
二人で話をしていると気がつけば大学の前だった。賢は定期を出して先に行ってしまったが、仁も早くしなければバスのドアが閉まってしまう。これがあるからこのバスは早く出るに限るのだ。なんとか間に合い、大学に入る。今日もまだ始まったばかりだ。
賢と会えたのが嬉しかった。大学に入って早々に図書館へと向かう。やること見つかるまでのんびりしようと思う。そんな夏休みもいいのではないかと思った。
「おはよー」
「おはよう」
「早起きだねー」
「夏休みも変わらず研究室だからな」
「そっか」
「ま、遊びに行くときは一緒に行こうぜ」
「はーい」
四年生は夏休みも変わらず研究室らしい。今の賢の姿を見ると、二年後の自分になると思うと憂鬱になる。研究室に篭る賢の邪魔はしたくないが、構ってほしいと言う気持ちはある。
夏休みを謳歌したいが青春などというものはとうの昔に捨ててきた。今は恋人がいるが遊べる様子もない。
最近の夏にしては少しだけ涼しい気候だった。どうせすることもない。定期の期限も余っている。どうせなら図書館で面白そうな本を探しても良さそうだ。よっぽど暇なら賢に連絡してから研究室にお邪魔しよう。
だらだらと布団に寝転んでいるだけの体を起こし、朝食を食べる。頭と体の両方を頑張って起こしながら、適当に頑張ろうとするが思いの外体が重い。昨日は珍しく夜更かしをした。なんでもないままぼーっとしてたら夜の十一時だったのだ。仁は心の中で自分は悪くないと唱えている。
結局寝たのは深夜一時ぐらいだった記憶がある。風呂に入って歯を磨いてゴロゴロしながら寝落ちした。疲れていたわけではないのだが、気がつけば23時という時点で手遅れかもしれない。
いつもと同じ準備をして玄関へと向かう。のんびり駅まで歩いて、電車に乗る。
いつになっても変わらぬ景色。特に鮮やかなわけでもなく、モノトーンなわけでもない。いつもと変わらぬいつもの景色。電車の最寄駅に着いたら今度はバスだ。適当に乗り込んで空いている座席に座ると、後ろから声が聞こえてきた。
「仁じゃん」
「あっ、おはよう」
「おはよう。今から大学?」
「まぁね。賢も今から研究室かぁ。もういるかと思ってた」
「俺にそんな早起きは無理だよ」
少しだけ笑いながら賢は話してくれる。仁の同性愛を真っ直ぐに認めてくれた数少ない存在だ。賢は人より少しだけ身長が高い。見上げるとまでは言わないけど、ちょっとだけ仰ぐ形になる。二人で話をするのは楽しい。最近は時間が取れなかったけれど、また話ができる時間が増えるように頑張らなければならない。
「じゃ、何かに困ったら研究室においでよ」
「ありがと」
二人で話をしていると気がつけば大学の前だった。賢は定期を出して先に行ってしまったが、仁も早くしなければバスのドアが閉まってしまう。これがあるからこのバスは早く出るに限るのだ。なんとか間に合い、大学に入る。今日もまだ始まったばかりだ。
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