12 / 107
2章
話
しおりを挟む
現在の時間は朝の7時。少し早起きして布団に寝転がっていた。寝落ちせず、しかも7時で起きれたのはこれで数回目というくらいだ。今日はめでたい日になるかもしれないな。事務連絡をする元気が出てきたのでスマートフォンを見る。昨晩連絡がなかった仁から連絡が来ていた。
「分かりました!一限の時間に間に合うように向かいます!」
返信時刻は朝の4時を少し過ぎた時間。まさかその時間まで寝てたのか。二年生は大変だ。かつての自分の記憶を思い返してもそんな日があったような、なかったような。
2年前の記憶を探ってから、今日の約束に間に合うように準備する。仁は二度寝とかするんだろうか。してるなら間に合う時間に起きれるのだろうか。なぜかは分からないが賢が不安になっていた。朝ごはんを食べて、着替えて準備して、家の鍵を閉めたらバス停に向かう。なんだかんだと用意すると8時前になっていた。
レポートで苦労している仁を見て、紹介したいものがあった。いつものバスに乗り、大学へと向かう。いつもと変わらぬ景色。そのいつもと変わらぬ景色が残り数ヶ月で終わる。その前に後輩に伝えれるものがあるか。なんてことを老婆心ながらに思った。大学についたのは一限の少し前だった。迷わず図書館に向かうと、最近になって見慣れた姿があった。
「おはようございます」
「おう、おはよう」
「なんとか起きれました」
「あの返信の後二度寝したのか」
「まぁ、はい」
「そっか、なら良かった。行くか」
二人で図書館に入っていく。まだ開館して間もないからか、人は少ない。司書が数人立っている程度だ。学術書は二階にあるので、まっすぐ向かう。
「お勧めしたいのはこれ」
「これですか」
「読んだことある?」
「パラパラっとは」
「おっ、やるなー」
「そうですかね」
賢がお勧めした書籍はどうやら仁も読んだことがあるらしい。その書籍の中の話を一通りして、これがあればしばらくレポートは困らないと思う、という言葉も添えておいた。事実として、賢は数々のレポートをこの一冊で乗り越えてきた実績がある。一つの書籍から得られる情報は一通りしかないが、考える力を身につけるにはとてもいい本だった。レポートに苦しんでいる仁には読んでほしい本だったのだ。静まり返る図書館。恐らく2階には賢と仁しかいない。用事が終われば、特にやることがあるわけではない。つまり図書館から出るのが選択肢としては正しい。どちらともなく歩き始め、図書館を出る。その後、無言のまま二人とも立ち尽くす。
「どうする?研究室くる?」
「うーん、どうしようかな」
「やることないならきてほしいな」
「本当ですか、じゃあ行こうかな」
図書館から歩いて10分。賢が所属する研究室に向かう。仁が入るのは何度目かだが、まだ少しだけ緊張する。研究室の人も、賢とその友人一人と教授にしか会ったことがない。しかし賢はそんな緊張などどこ吹く風という感じで進んでいく。気が付けば研究室の扉の前に立っていたし、賢は仁の緊張を全く汲み取らないように中に入っていった。
「まぁ、そこ座りなよ」
「あ、ありがとうございます」
「特に話題とかあるわけじゃないけど」
「僕も何も用意してなかったです」
出会った頃と比べればかなり緊張せずに話すことができるようになった。仁は、自分の成長を少しだけ感じることができていた。
「しかしなぁ、話題かぁ。あ、仁に話があるんだよ」
「え、なんですか」
「この前の告白の話なんだけど」
「え、それここで出すんですか」
「えっとね、今日の授業終わったらまたここにきて」
「あ、はい」
「そこで話をしようと思ってるから」
「分かりました」
まさかここでその話題が出るとは思っていなかった。しかし、案外早く返答がもらえたということは悪いことではない。
返答がもらえない可能性も十分にあっただろう。しかし、ここで返答がもらえるということは気持ちが固まったということだ。仁の運命はここで決まる。しかし、気まずくはならなかった。しばらく賢との会話を楽しむしかない。
「分かりました!一限の時間に間に合うように向かいます!」
返信時刻は朝の4時を少し過ぎた時間。まさかその時間まで寝てたのか。二年生は大変だ。かつての自分の記憶を思い返してもそんな日があったような、なかったような。
2年前の記憶を探ってから、今日の約束に間に合うように準備する。仁は二度寝とかするんだろうか。してるなら間に合う時間に起きれるのだろうか。なぜかは分からないが賢が不安になっていた。朝ごはんを食べて、着替えて準備して、家の鍵を閉めたらバス停に向かう。なんだかんだと用意すると8時前になっていた。
レポートで苦労している仁を見て、紹介したいものがあった。いつものバスに乗り、大学へと向かう。いつもと変わらぬ景色。そのいつもと変わらぬ景色が残り数ヶ月で終わる。その前に後輩に伝えれるものがあるか。なんてことを老婆心ながらに思った。大学についたのは一限の少し前だった。迷わず図書館に向かうと、最近になって見慣れた姿があった。
「おはようございます」
「おう、おはよう」
「なんとか起きれました」
「あの返信の後二度寝したのか」
「まぁ、はい」
「そっか、なら良かった。行くか」
二人で図書館に入っていく。まだ開館して間もないからか、人は少ない。司書が数人立っている程度だ。学術書は二階にあるので、まっすぐ向かう。
「お勧めしたいのはこれ」
「これですか」
「読んだことある?」
「パラパラっとは」
「おっ、やるなー」
「そうですかね」
賢がお勧めした書籍はどうやら仁も読んだことがあるらしい。その書籍の中の話を一通りして、これがあればしばらくレポートは困らないと思う、という言葉も添えておいた。事実として、賢は数々のレポートをこの一冊で乗り越えてきた実績がある。一つの書籍から得られる情報は一通りしかないが、考える力を身につけるにはとてもいい本だった。レポートに苦しんでいる仁には読んでほしい本だったのだ。静まり返る図書館。恐らく2階には賢と仁しかいない。用事が終われば、特にやることがあるわけではない。つまり図書館から出るのが選択肢としては正しい。どちらともなく歩き始め、図書館を出る。その後、無言のまま二人とも立ち尽くす。
「どうする?研究室くる?」
「うーん、どうしようかな」
「やることないならきてほしいな」
「本当ですか、じゃあ行こうかな」
図書館から歩いて10分。賢が所属する研究室に向かう。仁が入るのは何度目かだが、まだ少しだけ緊張する。研究室の人も、賢とその友人一人と教授にしか会ったことがない。しかし賢はそんな緊張などどこ吹く風という感じで進んでいく。気が付けば研究室の扉の前に立っていたし、賢は仁の緊張を全く汲み取らないように中に入っていった。
「まぁ、そこ座りなよ」
「あ、ありがとうございます」
「特に話題とかあるわけじゃないけど」
「僕も何も用意してなかったです」
出会った頃と比べればかなり緊張せずに話すことができるようになった。仁は、自分の成長を少しだけ感じることができていた。
「しかしなぁ、話題かぁ。あ、仁に話があるんだよ」
「え、なんですか」
「この前の告白の話なんだけど」
「え、それここで出すんですか」
「えっとね、今日の授業終わったらまたここにきて」
「あ、はい」
「そこで話をしようと思ってるから」
「分かりました」
まさかここでその話題が出るとは思っていなかった。しかし、案外早く返答がもらえたということは悪いことではない。
返答がもらえない可能性も十分にあっただろう。しかし、ここで返答がもらえるということは気持ちが固まったということだ。仁の運命はここで決まる。しかし、気まずくはならなかった。しばらく賢との会話を楽しむしかない。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
食事届いたけど配達員のほうを食べました
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか?
そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。
手切れ金
のらねことすていぬ
BL
貧乏貴族の息子、ジゼルはある日恋人であるアルバートに振られてしまう。手切れ金を渡されて完全に捨てられたと思っていたが、なぜかアルバートは彼のもとを再び訪れてきて……。
貴族×貧乏貴族
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる