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二十七:現実じゃ、ないみたいだ。
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花梨の言葉に、すぐに紬は反応できなかった。
そんな彼の反応に苛立ったのか、花梨は続けて同じ言葉をもう一度言った。
「雫が、入院したの。ねえ、聞こえてる!?」
花梨の声は、小さかった。
それでも紬の耳に届くのには、十分だった。
だけれど、それはあまりにも唐突すぎて紬は反応できなかったのだ。
そんな彼にお構いなしに、彼女は苛立ったように声を段々と荒げる。その態度に紬も苛立ちを感じたが、僅かに青ざめて見える花梨の表情から、それが悪い冗談の類ではなく、しかも重篤なものであろうことが伺えて腹の内が、ずしりと重くなった気がした。
「な、ん、だよ、それ」
「……雫、……今回の退院は。健康になったから、じゃなくて……確率の低い手術の前に、少しでも……思い出を作るためのものだったって……」
「なん、だよ、それ!」
花梨の言葉に紬は理解ができなかった。
思わず声を荒げた彼に、花梨はただ眉を寄せた。
彼女も同じように知らされていなかったのだろうということは頭で理解できても、感情が追い付かない。
昨日までは、確かにいた人物が唐突にいなくなるだなんて、誰が想像できるだろうか?
日が沈めば昇るのと同じように、変かは大なり小なりあろうともそこにある日常はあるのだと思うのは、いけないことであろうか。
「あたしも、知らなかったのよ!」
花梨の悲鳴にも似た悲痛な声に、紬はぐっと苛立つ気持ちを飲み込むしかない。
彼が苛立ったところで現状が変わるわけでもないし、雫の入院が変わるわけでもなければ彼女の病魔が消えるわけでもないのだということくらい、紬にだってわかっている。
ただ、何も知らなかった。
また何も知らなかったのだという事実が、紬を苛立たせたし彼を苛んでいるのだからそれを誰かが肩代わりできるわけでもない。
「……あたしも、雫から、メッセージが来て知ったの」
端的に、入院することになりました。今度は長期になるから卒業式は一緒に出られないと思うということが記されていた。
勿論その直後、どういうことなのかと問う返信をしたものの既読は付かずに電話をかけても出ることがない。
中学時代の友人ということもあって互いの自宅の場所も知っていたし電話番号も知っていた。
だが家電に掛けるには深夜だったため躊躇った花梨は、翌日家を出るのが自分が最後なのを良いことに学校を休むことにして雫の家に向かったのだという。
「行ったら、雫のお母さんが出た」
雫の家は一軒家で、会社員の父親と専業主婦の母親、それと雫というごく一般的な家族構成だという。
だから雫の母が呼び鈴に応じて出てきたのは不思議でも何でもなかったし、花梨も何度となく顔を合わせている相手だったのでどことなく安心感があった。
とはいえ、本来学生がいるべき時間に訪れているという後ろめたさがあって、まっすぐに見ることはできなかったらしいが。
「それで、雫が、……入院するって聞いたから、会いたくて来たんだって、説明した」
花梨の来訪、その理由は母親の方もすぐにわかっていたのだろう。
静かな声で、父親がもう病院に連れて行った、と教えられたという。
見舞いに行きたい、病状はどうなのか、卒業が間に合わないってどういうことなのか。
それらを訪ねれば、母親はくしゃりと顔を歪ませてから、ごめんね、と言ったのだという。
「それでね」
震える手が、紬に差し出された。
花梨の指先に、見覚えのある封筒を認めて紬はヒュッと息が止まるかと思った。
それは、あの便箋と同じもの。
つまり、それは、雫からのもの。
「みんなに。預かって、きた」
震える声の花梨は、それだけ言うときゅっと唇を引き結び、それから意を決したように紬を見上げる。
「あたしも、読んだ。今度の手術、……成功しても後遺症が酷いんだって。みんなと少しだけでも高校生活送りたかったんだって! ねえ、なんで雫ったら教えてくれないのかな!」
「……花梨」
「中学の時も病気の内容は教えてくれなかった! それでもそのうち退院するから大丈夫だよって笑ってたの。信じてたの!」
紬は、花梨と雫の中学時代を知らない。
違う学区だったのだから当然と言えば当然だし、彼女たちが中学の頃から仲が良かったとは耳にしていた。だがそれだけだ。
「なのに今度は手術だって。手術! ねえ、そんなに悪かったのに!」
くしゃり。
花梨の顔が歪んで、その目に涙が溜まっていく。
溜まって、溢れて、零れていくそれは花梨の感情そのもので、綺麗だと紬は場違いにも思った。
花梨の声は、鋭さを増し、案じるが故の怒気に溢れ、ぶつけどころのないその感情を紬に向けているのだとわかるからこそ、紬も何も言わない。
同じように『なんで』『どうして』という感情が彼にもあるのだから、雫と付き合いが長く仲が良かった分、花梨の方がそれを強く感じていることも理解できたからだ。
「……そんなに具合が悪かったのに、教えてくれなかったのかな。どうして、あたし、気が付かなかったのかな……!」
それは雫が隠し通したからだろう、なんていう言葉はきっと花梨が望む言葉ではなく。
いっそのこと責めてもらえれば楽になれるのにという気持ちで紬にそれを望んでいるのだろう。
花梨は、紡には決してそれを望めそうにないから。
紬もまた、もし雫のことで叱ってもらうならば花梨を頼っただろう。事実、彼女ならば愚かな自分を責めて酷い男だと言ってくれて、そうだよなと自分を慰めることもできると思ったことがあるからだ。
紡も言ってくれるかもしれない、でもそれは兄弟という立場からすれば、紬を守る側になってしまうその優しさが、辛い。
きっと花梨にとっても同じだ。
紡のことが好きだからこそ、こんな苛烈な感情をぶつけることは躊躇われたのだろう。
好きな人には綺麗な自分を見てもらいたいと思うのは、恋する人間特有の自己満足であり、献身なのだから。
「……どこの、病院だよ」
「教えて、もらえなかった」
「え?」
「雫が、そうして欲しいって、言ったんだって。仲良くしてくれて、ありがとうねって。おばさん……まるで、もう、……」
花梨は思い出して辛くなるのか、言葉を詰まらせた。
ズズッと鼻を啜る音、泣くのを堪えようとするのに失敗して、まるで幼子が泣く前兆のような甲高い声が短く上がるのを紬はただ茫然と見ているしかできない。
泣いている彼女がいたら、その涙を拭ってあげたかった。
苦しんでいるのなら、支える役になりたかった。
だけれど現実はどうだろう?
(雫が、入院? 場所もわからない?)
頭の中が真っ白になったみたいだ。いいや、実際紬の頭の中は真っ白で何も考えることができなかった。
先程までは嵐の中にいるかのように、心が荒れていたというのに。怒りや失望、愕然とした思い。
それが何から来ているのかも理解できないままに、胸の中がぽっかりと空いたみたいだった。
「もう、会えない、みたいなこと言われて。あたし、頭、真っ白で……!!」
どうしよう、どうしたらいいかわかんないよ。
そう言って縋りついてきた花梨を、紬は抱きしめてやることはできなかった。
縋りつかれた衝撃で、一歩だけ足を後ろにやっただけで、茫然と自分の胸の中で泣く愛しい少女を見下ろすだけだ。
(雫が……、まさか、死ぬ、のか?)
誰にも言わずに消えた雫。
その行き先を教えない彼女の家族。
告げられた、これまでへの感謝。
そして、差し出された手紙。
(そんな、現実じゃ、ねえみたいだ)
けれど、それは決して明るい未来を示すものとは紬にも到底思えなくて、ただただ、泣いている花梨の声が現実じゃないどこか遠くの出来事のように、彼の耳に聞こえてくるのだった。
そんな彼の反応に苛立ったのか、花梨は続けて同じ言葉をもう一度言った。
「雫が、入院したの。ねえ、聞こえてる!?」
花梨の声は、小さかった。
それでも紬の耳に届くのには、十分だった。
だけれど、それはあまりにも唐突すぎて紬は反応できなかったのだ。
そんな彼にお構いなしに、彼女は苛立ったように声を段々と荒げる。その態度に紬も苛立ちを感じたが、僅かに青ざめて見える花梨の表情から、それが悪い冗談の類ではなく、しかも重篤なものであろうことが伺えて腹の内が、ずしりと重くなった気がした。
「な、ん、だよ、それ」
「……雫、……今回の退院は。健康になったから、じゃなくて……確率の低い手術の前に、少しでも……思い出を作るためのものだったって……」
「なん、だよ、それ!」
花梨の言葉に紬は理解ができなかった。
思わず声を荒げた彼に、花梨はただ眉を寄せた。
彼女も同じように知らされていなかったのだろうということは頭で理解できても、感情が追い付かない。
昨日までは、確かにいた人物が唐突にいなくなるだなんて、誰が想像できるだろうか?
日が沈めば昇るのと同じように、変かは大なり小なりあろうともそこにある日常はあるのだと思うのは、いけないことであろうか。
「あたしも、知らなかったのよ!」
花梨の悲鳴にも似た悲痛な声に、紬はぐっと苛立つ気持ちを飲み込むしかない。
彼が苛立ったところで現状が変わるわけでもないし、雫の入院が変わるわけでもなければ彼女の病魔が消えるわけでもないのだということくらい、紬にだってわかっている。
ただ、何も知らなかった。
また何も知らなかったのだという事実が、紬を苛立たせたし彼を苛んでいるのだからそれを誰かが肩代わりできるわけでもない。
「……あたしも、雫から、メッセージが来て知ったの」
端的に、入院することになりました。今度は長期になるから卒業式は一緒に出られないと思うということが記されていた。
勿論その直後、どういうことなのかと問う返信をしたものの既読は付かずに電話をかけても出ることがない。
中学時代の友人ということもあって互いの自宅の場所も知っていたし電話番号も知っていた。
だが家電に掛けるには深夜だったため躊躇った花梨は、翌日家を出るのが自分が最後なのを良いことに学校を休むことにして雫の家に向かったのだという。
「行ったら、雫のお母さんが出た」
雫の家は一軒家で、会社員の父親と専業主婦の母親、それと雫というごく一般的な家族構成だという。
だから雫の母が呼び鈴に応じて出てきたのは不思議でも何でもなかったし、花梨も何度となく顔を合わせている相手だったのでどことなく安心感があった。
とはいえ、本来学生がいるべき時間に訪れているという後ろめたさがあって、まっすぐに見ることはできなかったらしいが。
「それで、雫が、……入院するって聞いたから、会いたくて来たんだって、説明した」
花梨の来訪、その理由は母親の方もすぐにわかっていたのだろう。
静かな声で、父親がもう病院に連れて行った、と教えられたという。
見舞いに行きたい、病状はどうなのか、卒業が間に合わないってどういうことなのか。
それらを訪ねれば、母親はくしゃりと顔を歪ませてから、ごめんね、と言ったのだという。
「それでね」
震える手が、紬に差し出された。
花梨の指先に、見覚えのある封筒を認めて紬はヒュッと息が止まるかと思った。
それは、あの便箋と同じもの。
つまり、それは、雫からのもの。
「みんなに。預かって、きた」
震える声の花梨は、それだけ言うときゅっと唇を引き結び、それから意を決したように紬を見上げる。
「あたしも、読んだ。今度の手術、……成功しても後遺症が酷いんだって。みんなと少しだけでも高校生活送りたかったんだって! ねえ、なんで雫ったら教えてくれないのかな!」
「……花梨」
「中学の時も病気の内容は教えてくれなかった! それでもそのうち退院するから大丈夫だよって笑ってたの。信じてたの!」
紬は、花梨と雫の中学時代を知らない。
違う学区だったのだから当然と言えば当然だし、彼女たちが中学の頃から仲が良かったとは耳にしていた。だがそれだけだ。
「なのに今度は手術だって。手術! ねえ、そんなに悪かったのに!」
くしゃり。
花梨の顔が歪んで、その目に涙が溜まっていく。
溜まって、溢れて、零れていくそれは花梨の感情そのもので、綺麗だと紬は場違いにも思った。
花梨の声は、鋭さを増し、案じるが故の怒気に溢れ、ぶつけどころのないその感情を紬に向けているのだとわかるからこそ、紬も何も言わない。
同じように『なんで』『どうして』という感情が彼にもあるのだから、雫と付き合いが長く仲が良かった分、花梨の方がそれを強く感じていることも理解できたからだ。
「……そんなに具合が悪かったのに、教えてくれなかったのかな。どうして、あたし、気が付かなかったのかな……!」
それは雫が隠し通したからだろう、なんていう言葉はきっと花梨が望む言葉ではなく。
いっそのこと責めてもらえれば楽になれるのにという気持ちで紬にそれを望んでいるのだろう。
花梨は、紡には決してそれを望めそうにないから。
紬もまた、もし雫のことで叱ってもらうならば花梨を頼っただろう。事実、彼女ならば愚かな自分を責めて酷い男だと言ってくれて、そうだよなと自分を慰めることもできると思ったことがあるからだ。
紡も言ってくれるかもしれない、でもそれは兄弟という立場からすれば、紬を守る側になってしまうその優しさが、辛い。
きっと花梨にとっても同じだ。
紡のことが好きだからこそ、こんな苛烈な感情をぶつけることは躊躇われたのだろう。
好きな人には綺麗な自分を見てもらいたいと思うのは、恋する人間特有の自己満足であり、献身なのだから。
「……どこの、病院だよ」
「教えて、もらえなかった」
「え?」
「雫が、そうして欲しいって、言ったんだって。仲良くしてくれて、ありがとうねって。おばさん……まるで、もう、……」
花梨は思い出して辛くなるのか、言葉を詰まらせた。
ズズッと鼻を啜る音、泣くのを堪えようとするのに失敗して、まるで幼子が泣く前兆のような甲高い声が短く上がるのを紬はただ茫然と見ているしかできない。
泣いている彼女がいたら、その涙を拭ってあげたかった。
苦しんでいるのなら、支える役になりたかった。
だけれど現実はどうだろう?
(雫が、入院? 場所もわからない?)
頭の中が真っ白になったみたいだ。いいや、実際紬の頭の中は真っ白で何も考えることができなかった。
先程までは嵐の中にいるかのように、心が荒れていたというのに。怒りや失望、愕然とした思い。
それが何から来ているのかも理解できないままに、胸の中がぽっかりと空いたみたいだった。
「もう、会えない、みたいなこと言われて。あたし、頭、真っ白で……!!」
どうしよう、どうしたらいいかわかんないよ。
そう言って縋りついてきた花梨を、紬は抱きしめてやることはできなかった。
縋りつかれた衝撃で、一歩だけ足を後ろにやっただけで、茫然と自分の胸の中で泣く愛しい少女を見下ろすだけだ。
(雫が……、まさか、死ぬ、のか?)
誰にも言わずに消えた雫。
その行き先を教えない彼女の家族。
告げられた、これまでへの感謝。
そして、差し出された手紙。
(そんな、現実じゃ、ねえみたいだ)
けれど、それは決して明るい未来を示すものとは紬にも到底思えなくて、ただただ、泣いている花梨の声が現実じゃないどこか遠くの出来事のように、彼の耳に聞こえてくるのだった。
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