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第六章 吸血鬼、暗躍できない。

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「ってことでごめんね、来てもらって」

「いや、構わないが……」

「僕もだ」

 ジャミィルとハルトヴィヒが頷いてくれたけど、その目は明らかに私の行動に対して疑問を抱いている。
 うん、まあそうだろうねそうだろうね!

 ちなみに私の隣にはおじさんが座っている。
 別に男子と会うから心配してついてきた……ってわけじゃないよ、その部分も少しはあるみたいなんだけど。

 まあおじさんからしてみたら齢百才の小娘、どっかで拐かされるんじゃないかって心配らしい。
 ……吸血鬼が誘拐された話って聞いたことないけどね……?

「今日はね、ちょっと大事な話をしようと思って」

「大事な話……?」

「そう。色々考えたり大人に相談したりとまあ、私なりに考えをまとめてきたのよ。それでね」

 不審そうにするハルトヴィヒの前に、一本のポーションを置く。
 なんかそれっぽく見えるが、実はこれただの睡眠薬である。
 でもそのことは告げずに、ただ勿体ぶって置いただけ。これ重要ね。

「その薬は?」

「まあまあ、話をしてからこの薬については説明するね!」

「……今じゃダメなのか」

 二人ともとても不満そう……っていうより得体の知れないものって思ってるんだろうな。
 いやだなあ、マリカノンナちゃん特製の睡眠薬だよ!!

「二人には今からとても大事な話をしたいと思うの。補足をしてもらうためにおじさんにも同席してもらったわけ」

「……すまないね、うちの姪が」

 ちっともすまなそうに聞えない声音ですよおじさん!

 まあそれはそうだろう。
 ぶっちゃけ、人間族の厄介事に我々が巻き込まれて悪役にされているという現状自体は把握してるんだよね、ただやり返すにも労力は必要だし、面倒だって気持ちの方が大きいだけでさ。

 それでも、おじさんは自分の愛した人の子供たちを見捨てられない。
 自分の子孫って印象はないみたいね。
 子供に対してはあったみたいだけど……代を追うごとにただ愛した女性の血族ってだけで庇護していたような感じはする。

 それに私は私で、友達になった彼らが苦労するのは見たくない。
 避けられない苦労ってのはどうしてもあるだろうし、そこについては首を突っ込むつもりはないけどさ。

 助言ってことなら許されると思うんだよね。
 ただ『何故そこまで知っているのか』とか『どうして』って部分に触れるとなると、やっぱり正体を明かさないわけにはいかないのだ。

「今から話すことは、とても恐ろしい秘密。守ってくれる、あるいは私を信頼してくれるとここで誓ってもらいたいの。……決して私はあなたたちの敵じゃない」

「……マリカノンナ?」

「それは、どういう」

 彼らが困惑するのは、わかる。
 それでも私は問いかけてくる彼らの言葉にかぶせるように、更に言葉を発した。

「その誓いをしてくれたら話をするわ。そしてそれでも・・・・聞いた事実を受け入れられないときはこの薬を飲んで、全てを忘れてほしいの」

 私の言葉に、二人が息を呑んだのがわかった。
 だけどこれは一つの、駆け引きだ。

 彼らの、出会って間もない私に対する信頼度と。
 大切な話というのが、ただごとではないということに対する、従者としての勘。

 それと保身。

(さあ、どうする?)

 私はただ、彼らを静かに見つめて口を閉ざしたのだった。
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