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第二章 目指せリア充、青春したい乙女心

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 ひいおじいちゃんの手紙をもらった翌日。
 私としてはある程度満足していた。

 返事はジェフリーに持っていってもらったし、慌てることもないだろう。

 どうやら聖女の血筋が続けば続くほど、やはり能力というものが薄くなっていっている……そのことをサタルーナでは大分前から懸念していて、以前にも聖女召喚について調べようとした人がいたんだそうだ。

 それが理由でカレンデュラの里からエルフを一人、その情報に行き着かないように、あるいは行き着くとしても使用するに値する人間かどうかを見定めるために配置したんだってさ。
 つまり、センセイだね!

(そういうことならまあ、安心かなあ)

 私からしてみればその情報源である書をこんな人の多い都市に置いておかなければいいのにと思うけど、ウィクリフとしては『学びは平等であるべき』って考え方だからなあ。
 調べて辿り着く努力をした人にはそれ相応の結果がついてきていいんじゃないかって考え方だね。

 ただその結果に伴って無理矢理働かされる聖女がいたらそれはそれで聖女に申し訳ないから、調べている人間については責任を持つべきだっていうことらしい。
 今回調べる人がいたってことで、追加で人をやるべきか今から協議するって書いてあったから……うん、来年までに決まるとイイネ……。

「おっ、あれが噂の……?」

「やっべー超可愛いじゃん」

 私が学園に登校中、あちこちからそんな声が聞こえる。
 どうやら私について噂しているようだ。

 ふふん、そうよそうよ!
 私ったら美少女だからね、見るだけでも保養になるでしょ!

 いいんだよーそうやって噂が広まって恋いに繋がるかもしれない、これって大事なことだからね!
 高嶺の花とか考えずに是非声をかけてくださいな!!

「俺、声かけちゃおうかナー」

「やめとけやめとけ、ブランドンといい雰囲気らしいぞ?」

「え? 貴族のヌルメラが狙ってんだろ? 他の女生徒なんて目もくれずウィクリフに声かけてるって話だし」

 っておいいいいいいいいいいいいいいぃいいいいいいいいい!?

 なんでその二択なのよ!?
 まだ学園生活始まって一週間経ってないのにその二択なの!?

 確かにあの二人、顔がいいですけどそれは私に関して聖女召喚が絡んだ結果のアレコレが原因であって、モテとは違うんだよモテとは!!

 なんてこった……いや、まだこれからだ。
 諦めたらそこで試合は終了、まだ一年生の始まりじゃないのマリカノンナ!

(そうよ、しばらく大人しくしておけばサタルーナ側も落ち着くだろうし、そうしたらカタルージア側も警戒する必要がないってなるだろうし、その間に私もカレシの一人や二人までいかなくても良い雰囲気にとか……)

 うん、これでいこう。
 ただジャミィルもハルトヴィヒも顔がいいんだよなあ、顔が。
 他の男子生徒に比べるとレベルが違うんだよなやっぱり。

 だが私は! 顔だけで! 判断はしないぞ!!

(吸血鬼の美形揃いっぷりにこんなことで感謝すると思わなかったわあ)

 とはいえ、周囲がまずあの二人が私狙いと誤解しているうちは声をかけてくるのも遠慮するだろうなあ。
 そう思うと落ち込むわあ、もっとこう、平和な学園生活を想定していたから……。

「マリカノンナ」

「どうした? 落ち込んでるみたいだが」

「……ジャミィル、ハルトヴィヒ……」

 で、そこでなんで頭を悩ませる二人が私の傍にやってくるのかな?
 おかげで周囲の視線もこっちに集まりましたけど!?

「ちょっと二人とも私と距離置く気ないかしら? なんだか二人が私狙いみたいな噂が立ってるみたいで、それじゃあ素敵な出会いを逃しちゃいそうなのよね」

 思わずイラッとして言っちゃった。
 口にしてからヤッベと思ったので、笑顔を浮かべてフォローを入れる。

「それにほら、二人だってもっと他の人たちとも交流しなきゃ!」

 私の言葉に二人が顔を見合わせる。
 視線で会話してるように見えるんだけど、いつの間にそんなに仲良くなったのかな?

 そんな私に、ジャミィルがにやりと人の悪い笑みを浮かべて一歩踏み出した。

「ふうん? じゃあそういう・・・・目で見てたら近くにいてもいいってことか?」

「は?」

「……ジャミィル、その聞き方はずるいだろう! 紳士として、正々堂々といくべきだと僕は思うぞ! というわけで、僕も今と変わらないと宣言させて貰おう!!」

「え、意味わかんないんだけど!?」

 君ら私のこと好きとかそういうんじゃないだろう!
 こちらにかまけてないで青春しなさいよ、青春!!

「安心しろよ、俺は別に姫に言われたからとかそういうんじゃない。純粋に君が興味深いってだけだ」

「僕は……そうだな、ジャミィルほど言い切ることはできないが、君のことは好ましいと思った。それでいいだろう?」

 にっこり笑うイケメンズに私は顔を引きつらせる。
 穏やかに、たおやかに、高嶺の花になりすぎず優秀さを売りにして名前を挙げていく……そんなライフプランを思い描いていた私の、最初の躓きがこんなところに現れるだなんて。

(まさかリアル『おもしれぇ女……』枠になると思わなかったああ!!)

 これは私の失態である。
 ああ、これはどう挽回したらいいのかしら?
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