24 / 25
24:それではバイバイ、さようなら
しおりを挟む
「く、口説く……口説く!? おい、ルイーズ! 貴様、浮気をしていたのか……!?」
「ご冗談はおよしくださいませ、バイカルト子爵令息。私は、貴方有責で、婚約破棄をするまで、一切男性とお付き合いなどしておりません!」
あえて一言一言力強く、特に有責って部分を強く発言してやればエッカルト様は「ぐぬ」だか「うぬ」だか呻いて私を睨み付けた。
睨む元気があるならば、とっとと就職先でも見つければいいのに!
幸いな事に二つの公爵家からお咎めを受けたものの、バイカルト子爵家はお取り潰しにはならなかった。
私への慰謝料や、寄親である公爵の顔に泥を塗ったことなどからお財布事情はかなり厳しそうではあるけれど……まあそこはこれから頑張っていけばなんとかなる話。
エッカルト様は結局、バイカルト子爵家を追い出されることもなかった。
というか、シャレンズ公爵夫人からお手紙をいただいたことによれば、慰謝料の支払いをさせるにあたって勿論親である子爵夫妻にも責任はあるけれど、一番問題なのは当人であるエッカルト様なのだから彼から徴収すべきである。
……ということで、下手に平民にして放り出しては今後逃げてしまうかもしれないし、慰謝料の支払いが終わる前にそれこそ野垂れ死んでしまうかもしれない。
それなら『バイカルト子爵家の次男』のままで、シャレンズ公爵家が紹介した仕事に従事して貰った方が管理しやすい上に子爵家に対しも罰になるだろうとのことだった。
(怖いわあ)
子爵夫妻は息子を売りに出したようなものだし、エッカルト様は重労働がきっと待っているに違いない。
でも貴族であり続けたいなら断れない。
だって平民になって生きていく術がエッカルト様にはないものね!
いくら学園で騎士になるべく勉強していますって言ったところで成績は大して良くなかったし、兵士になりたい……といっても憧れの騎士から『才能がない』って言われてしまったらもう心も折れたことでしょう。
そこで一念発起して頑張ろう! ってタイプじゃないもの、エッカルト様は。
「くっ……、それもこれも貴様のせいだ、カサブランカァ!」
「ええ~、あーしのせい~?」
バッと顔を上げたエッカルト様が今度向けた矛先はラン姉様。
まあ彼からしてみれば理想の女性が現れて『彼女は美しすぎるから根っからの貴族である義妹に虐められている!』ってよくわかんない正義感を発揮してしまったんでしょうね。
自分の婚約者がそんなことをする人間かどうかも彼の中にはないくらい、私たちは〝婚約している〟こと以外接点がなかったんだと思うと、反省しなければと思う次第。
でもラン姉様のせいにするのもどうかって話よね。
姉様はずーっと私と仲良しであることを告げていたし実際虐げてなんかいないので、エッカルト様の妄想なんだから。
「マジキモ~」
「姉様、直接的過ぎますわ。さすがに傷つくのでは?」
「よくない? 別に」
スンッと真顔でそんな道端のゴミを見るような目ではっきり言う所、好きです。
エッカルト様が傷つこうと正直なところ、もう情が欠片もないので別にいいんですけど……そこで傷ついたからって泣き崩れられてもめんどうじゃないですか。
「……というか、カリル様。私、口説かれるんですの?」
「うん。婿入り先を探していたところに出会った可愛い子がちょうどフリーになったんだ。口説かないのも失礼だろう?」
「まあ!」
私のことを抱きしめながら軽い口調でそんなことを仰るカリル様に若干呆れつつ、可愛いって言われるのは悪くない気分です。
とはいえ、私も折角悪縁が切れたのですから慎重に見極めたいところ。
いつまでもこうやって未婚の男女が触れあっているのはこの状況でも良くないと覆いますので、私はカリル様の腕から抜け出しました。
あっさりと手を離したカリル様は、にっこりと余裕の笑顔です。
(これは、手強いかもしれないわね?)
ランお姉様の淑女教育とどちらが手強いのかしら。
そんなことを思いながら、私はエッカルト様へと向き直る。
彼はどこか期待するような目で私を見たけれど、私は違うの。
「それではご機嫌よう、エッカルト様。貴方の未来が望むようになればいいですね」
「ご冗談はおよしくださいませ、バイカルト子爵令息。私は、貴方有責で、婚約破棄をするまで、一切男性とお付き合いなどしておりません!」
あえて一言一言力強く、特に有責って部分を強く発言してやればエッカルト様は「ぐぬ」だか「うぬ」だか呻いて私を睨み付けた。
睨む元気があるならば、とっとと就職先でも見つければいいのに!
幸いな事に二つの公爵家からお咎めを受けたものの、バイカルト子爵家はお取り潰しにはならなかった。
私への慰謝料や、寄親である公爵の顔に泥を塗ったことなどからお財布事情はかなり厳しそうではあるけれど……まあそこはこれから頑張っていけばなんとかなる話。
エッカルト様は結局、バイカルト子爵家を追い出されることもなかった。
というか、シャレンズ公爵夫人からお手紙をいただいたことによれば、慰謝料の支払いをさせるにあたって勿論親である子爵夫妻にも責任はあるけれど、一番問題なのは当人であるエッカルト様なのだから彼から徴収すべきである。
……ということで、下手に平民にして放り出しては今後逃げてしまうかもしれないし、慰謝料の支払いが終わる前にそれこそ野垂れ死んでしまうかもしれない。
それなら『バイカルト子爵家の次男』のままで、シャレンズ公爵家が紹介した仕事に従事して貰った方が管理しやすい上に子爵家に対しも罰になるだろうとのことだった。
(怖いわあ)
子爵夫妻は息子を売りに出したようなものだし、エッカルト様は重労働がきっと待っているに違いない。
でも貴族であり続けたいなら断れない。
だって平民になって生きていく術がエッカルト様にはないものね!
いくら学園で騎士になるべく勉強していますって言ったところで成績は大して良くなかったし、兵士になりたい……といっても憧れの騎士から『才能がない』って言われてしまったらもう心も折れたことでしょう。
そこで一念発起して頑張ろう! ってタイプじゃないもの、エッカルト様は。
「くっ……、それもこれも貴様のせいだ、カサブランカァ!」
「ええ~、あーしのせい~?」
バッと顔を上げたエッカルト様が今度向けた矛先はラン姉様。
まあ彼からしてみれば理想の女性が現れて『彼女は美しすぎるから根っからの貴族である義妹に虐められている!』ってよくわかんない正義感を発揮してしまったんでしょうね。
自分の婚約者がそんなことをする人間かどうかも彼の中にはないくらい、私たちは〝婚約している〟こと以外接点がなかったんだと思うと、反省しなければと思う次第。
でもラン姉様のせいにするのもどうかって話よね。
姉様はずーっと私と仲良しであることを告げていたし実際虐げてなんかいないので、エッカルト様の妄想なんだから。
「マジキモ~」
「姉様、直接的過ぎますわ。さすがに傷つくのでは?」
「よくない? 別に」
スンッと真顔でそんな道端のゴミを見るような目ではっきり言う所、好きです。
エッカルト様が傷つこうと正直なところ、もう情が欠片もないので別にいいんですけど……そこで傷ついたからって泣き崩れられてもめんどうじゃないですか。
「……というか、カリル様。私、口説かれるんですの?」
「うん。婿入り先を探していたところに出会った可愛い子がちょうどフリーになったんだ。口説かないのも失礼だろう?」
「まあ!」
私のことを抱きしめながら軽い口調でそんなことを仰るカリル様に若干呆れつつ、可愛いって言われるのは悪くない気分です。
とはいえ、私も折角悪縁が切れたのですから慎重に見極めたいところ。
いつまでもこうやって未婚の男女が触れあっているのはこの状況でも良くないと覆いますので、私はカリル様の腕から抜け出しました。
あっさりと手を離したカリル様は、にっこりと余裕の笑顔です。
(これは、手強いかもしれないわね?)
ランお姉様の淑女教育とどちらが手強いのかしら。
そんなことを思いながら、私はエッカルト様へと向き直る。
彼はどこか期待するような目で私を見たけれど、私は違うの。
「それではご機嫌よう、エッカルト様。貴方の未来が望むようになればいいですね」
22
お気に入りに追加
255
あなたにおすすめの小説
女避けの為の婚約なので卒業したら穏やかに婚約破棄される予定です
くじら
恋愛
「俺の…婚約者のフリをしてくれないか」
身分や肩書きだけで何人もの男性に声を掛ける留学生から逃れる為、彼は私に恋人のふりをしてほしいと言う。
期間は卒業まで。
彼のことが気になっていたので快諾したものの、別れの時は近づいて…。
性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~
黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※
すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!
【短編】誰も幸せになんかなれない~悪役令嬢の終末~
真辺わ人
恋愛
私は前世の記憶を持つ悪役令嬢。
自分が愛する人に裏切られて殺される未来を知っている。
回避したいけれど回避できなかったらどうしたらいいの?
*後編投稿済み。これにて完結です。
*ハピエンではないので注意。
【完結】おしどり夫婦と呼ばれる二人
通木遼平
恋愛
アルディモア王国国王の孫娘、隣国の王女でもあるアルティナはアルディモアの騎士で公爵子息であるギディオンと結婚した。政略結婚の多いアルディモアで、二人は仲睦まじく、おしどり夫婦と呼ばれている。
が、二人の心の内はそうでもなく……。
※他サイトでも掲載しています
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
【完結済】冷血公爵様の家で働くことになりまして~婚約破棄された侯爵令嬢ですが公爵様の侍女として働いています。なぜか溺愛され離してくれません~
北城らんまる
恋愛
**HOTランキング11位入り! ありがとうございます!**
「薄気味悪い魔女め。おまえの悪行をここにて読み上げ、断罪する」
侯爵令嬢であるレティシア・ランドハルスは、ある日、婚約者の男から魔女と断罪され、婚約破棄を言い渡される。父に勘当されたレティシアだったが、それは娘の幸せを考えて、あえてしたことだった。父の手紙に書かれていた住所に向かうと、そこはなんと冷血と知られるルヴォンヒルテ次期公爵のジルクスが一人で住んでいる別荘だった。
「あなたの侍女になります」
「本気か?」
匿ってもらうだけの女になりたくない。
レティシアはルヴォンヒルテ次期公爵の見習い侍女として、第二の人生を歩み始めた。
一方その頃、レティシアを魔女と断罪した元婚約者には、不穏な影が忍び寄っていた。
レティシアが作っていたお守りが、実は元婚約者の身を魔物から守っていたのだ。そんなことも知らない元婚約者には、どんどん不幸なことが起こり始め……。
※ざまぁ要素あり(主人公が何かをするわけではありません)
※設定はゆるふわ。
※3万文字で終わります
※全話投稿済です
あなたのおかげで吹っ切れました〜私のお金目当てならお望み通りに。ただし利子付きです
じじ
恋愛
「あんな女、金だけのためさ」
アリアナ=ゾーイはその日、初めて婚約者のハンゼ公爵の本音を知った。
金銭だけが目的の結婚。それを知った私が泣いて暮らすとでも?おあいにくさま。あなたに恋した少女は、あなたの本音を聞いた瞬間消え去ったわ。
私が金づるにしか見えないのなら、お望み通りあなたのためにお金を用意しますわ…ただし、利子付きで。
虐げられた私、ずっと一緒にいた精霊たちの王に愛される〜私が愛し子だなんて知りませんでした〜
ボタニカルseven
恋愛
「今までお世話になりました」
あぁ、これでやっとこの人たちから解放されるんだ。
「セレス様、行きましょう」
「ありがとう、リリ」
私はセレス・バートレイ。四歳の頃に母親がなくなり父がしばらく家を留守にしたかと思えば愛人とその子供を連れてきた。私はそれから今までその愛人と子供に虐げられてきた。心が折れそうになった時だってあったが、いつも隣で見守ってきてくれた精霊たちが支えてくれた。
ある日精霊たちはいった。
「あの方が迎えに来る」
カクヨム/なろう様でも連載させていただいております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる