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18:四面楚歌とはまさにこのこと
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つまり、エッカルト様がやらかしたことってのは私に……エルドハバード侯爵家に対しても不義理であるし、シャレンズ公爵家(の関係)との縁談を横取りした形になってしまったバイカルト子爵家のために寄親であるカイバン公爵家が収めてくださったことにも泥を塗った、四つの家のどれにとっても失礼なことをしたわけですね。
もし私が本当にエッカルト様の仰る通りの悪女だったとして、破談にするにしてはやりようがあまりにも杜撰、お粗末、考えなしですとも。
(本当にザマアミロだわ)
普段から婚約者に誠実だったわけでもなく、むしろ無関心でありながらそれでいて『義姉を虐げていた』だなんてどこから出たお話しなのかしらね?
ラン姉様が私のことを可愛がっている、大事な妹だと直接言ったにも関わらず!
「私にも落ち度はあったかと思いますわ」
「……あらどうして?」
「エッカルト様が婿入りなさるにあたり、ご当人は騎士の仕事をしたかったと仰っておられたので我が領の兵団を率いていただく心算でした。勿論当主としての職務は私が執り行うものであると自覚しておりますが、何分、女の身でございますので出産のことを考慮に入れると学ぶべきものの方が多く……その分、婚約者と心を通い合わすのが不十分だったのかもしれません」
「そ、そうだ、お前が……」
「きっと!」
私が述べる反省の言葉にエッカルト様が救われたような顔をして乗っかろうとしましたが、そんな安い女じゃなくってよ。
むしろなんで私がお前を助けると思ったんだよ!
「エッカルト様はそんな私を理解していたからこそ、一度も、そう一度も! ご自身からは私と時間を持とうとお声をかけてくださらなかったのでしょう? いつも私からの招待でしたものね」
「……そ、それ、それは!」
子爵夫妻もエッカルト様も、私の言葉に良い言い訳が思いつかないのでしょう。
目を白黒させながらなんとか言いつくろうとしているところを見ると、諦めが悪い方々なのでしょうか?
「あのう」
そんな中、お姉様がおっとりとした動作で手を挙げました。
どうしたのだろうと私も視線を向けましたが、その目はしっかりとエッカルト様を睨んでいますね。
「わたしィ、貴族になったばかりで勉強している最中なのですけどォ」
甘ったるい話し方は普段のお姉様からは想像もできないくらいですが、あれ、これって『レディシリーズ』でのカサブランカの喋り方そのものですね?
胸の谷間を強調するようにして若干上目使いで、甘ったるい喋り方で語尾をほんの少し伸ばすような……男性陣は少しだけ顔が赤い気がします。
お義兄様だけ、ちょっぴり呆れた表情なところがお姉様の役者っぷりを理解しているってことでしょうか、通じているカップルですかそうですか羨ましいな!!
「婚約者になったらぁ、基本的に男性側から贈り物やデートに誘ってもらうのが一般的でえ、女性から誘うのってはしたないんじゃなかったでしたっけえー? ねえ、どうだったかしらダーリン」
「……夜会やその他に関しては贈り物をするのは当然として、その他もマナーの一環としてはその通りだ。今回のドレスやアクセサリーもそうだが、私も君へよく手紙の他に贈り物をしているだろう?」
「んふふ、そうですわよねえ。でも、わたしィ、可愛い可愛いルイーズにそういうのが届いているのを見たことなくてえ……」
ちらり。
いちゃつくところを見せつつも、お姉様はエッカルト様を睨みました。
「エッカルト様ったらあ、初めてお会いした時も『ルイーズは世間知らずだから新しい家族を傷つけるかも』って仰ってえ……私はそんなことないって言ったんですよ? でもぉ……今日も一方的にわたしのことを隠しているとか、望まない婚約をさせたとか……まだルイーズたんとは家族になって短い期間だっちゅーのにアタシの方がずーっとずーっと理解できてんだけど」
「お姉様」
「あらやだ。ちょっとムカ着火しちゃった」
「お姉様」
「やだールイーズ、ごめえん!」
お姉様、隠しきれていませんからね!
お義兄様、笑うのを我慢してくださるならもっと頑張ってくださいませ!!
もし私が本当にエッカルト様の仰る通りの悪女だったとして、破談にするにしてはやりようがあまりにも杜撰、お粗末、考えなしですとも。
(本当にザマアミロだわ)
普段から婚約者に誠実だったわけでもなく、むしろ無関心でありながらそれでいて『義姉を虐げていた』だなんてどこから出たお話しなのかしらね?
ラン姉様が私のことを可愛がっている、大事な妹だと直接言ったにも関わらず!
「私にも落ち度はあったかと思いますわ」
「……あらどうして?」
「エッカルト様が婿入りなさるにあたり、ご当人は騎士の仕事をしたかったと仰っておられたので我が領の兵団を率いていただく心算でした。勿論当主としての職務は私が執り行うものであると自覚しておりますが、何分、女の身でございますので出産のことを考慮に入れると学ぶべきものの方が多く……その分、婚約者と心を通い合わすのが不十分だったのかもしれません」
「そ、そうだ、お前が……」
「きっと!」
私が述べる反省の言葉にエッカルト様が救われたような顔をして乗っかろうとしましたが、そんな安い女じゃなくってよ。
むしろなんで私がお前を助けると思ったんだよ!
「エッカルト様はそんな私を理解していたからこそ、一度も、そう一度も! ご自身からは私と時間を持とうとお声をかけてくださらなかったのでしょう? いつも私からの招待でしたものね」
「……そ、それ、それは!」
子爵夫妻もエッカルト様も、私の言葉に良い言い訳が思いつかないのでしょう。
目を白黒させながらなんとか言いつくろうとしているところを見ると、諦めが悪い方々なのでしょうか?
「あのう」
そんな中、お姉様がおっとりとした動作で手を挙げました。
どうしたのだろうと私も視線を向けましたが、その目はしっかりとエッカルト様を睨んでいますね。
「わたしィ、貴族になったばかりで勉強している最中なのですけどォ」
甘ったるい話し方は普段のお姉様からは想像もできないくらいですが、あれ、これって『レディシリーズ』でのカサブランカの喋り方そのものですね?
胸の谷間を強調するようにして若干上目使いで、甘ったるい喋り方で語尾をほんの少し伸ばすような……男性陣は少しだけ顔が赤い気がします。
お義兄様だけ、ちょっぴり呆れた表情なところがお姉様の役者っぷりを理解しているってことでしょうか、通じているカップルですかそうですか羨ましいな!!
「婚約者になったらぁ、基本的に男性側から贈り物やデートに誘ってもらうのが一般的でえ、女性から誘うのってはしたないんじゃなかったでしたっけえー? ねえ、どうだったかしらダーリン」
「……夜会やその他に関しては贈り物をするのは当然として、その他もマナーの一環としてはその通りだ。今回のドレスやアクセサリーもそうだが、私も君へよく手紙の他に贈り物をしているだろう?」
「んふふ、そうですわよねえ。でも、わたしィ、可愛い可愛いルイーズにそういうのが届いているのを見たことなくてえ……」
ちらり。
いちゃつくところを見せつつも、お姉様はエッカルト様を睨みました。
「エッカルト様ったらあ、初めてお会いした時も『ルイーズは世間知らずだから新しい家族を傷つけるかも』って仰ってえ……私はそんなことないって言ったんですよ? でもぉ……今日も一方的にわたしのことを隠しているとか、望まない婚約をさせたとか……まだルイーズたんとは家族になって短い期間だっちゅーのにアタシの方がずーっとずーっと理解できてんだけど」
「お姉様」
「あらやだ。ちょっとムカ着火しちゃった」
「お姉様」
「やだールイーズ、ごめえん!」
お姉様、隠しきれていませんからね!
お義兄様、笑うのを我慢してくださるならもっと頑張ってくださいませ!!
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