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勇者(?)が召喚されたらしい
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最終的に、セミは良い伴侶が見つかるまで神域に暮らすこととなってしまった。
というのもハナが調べてみたところ、このセミはただのセミではなかったのだ。
ヨシヤからすればそもそもモンスターな段階でただのセミではないのだが、まあそれはともかくというやつである。
このセミはエンシェントシケーダという原種の一種で、なんと一般のセミが地中に七年過ごすところを一般のモンスターだと十年、それらを遙かに超えてこの種族は三百年単位で地中を過ごし、そして伴侶を探すのである。
つまり目の前にいる泣き言まみれのセミは三百年越しにようやく地上に出てきたという、超燃費の悪いセミなのであった。
「ええと……古代ゼミって何かそれじゃあすごい力があるとか……?」
「ものすごく大きな声で鳴けるわ」
「……他には?」
「色んな声で鳴くわね」
「……ほかには……」
ヨシヤの問いにハナはにこりと無言で微笑んだ。
つまるところ、それが答えである。
さて、話を戻すとそのような生態のセミである故に、数は元々少ないらしい。
多産になってしまうと木々を食い尽くしてしまうからとのことだが、それが地上の変異に伴い森が減ったことで自然と淘汰されて種そのものが衰退しているようだ。
それに加え近年、セミタイプのモンスターはその戦闘力の弱さから生態系の最下層に追いやられるようになり、絶滅危惧種と呼んでも問題なさそうである。
このエンシェントシケーダだけでなく、他のセミ型モンスターたちももれなく音がでかい……つまり音波攻撃なのだそうだ。
だが防御力に乏しいし耳は塞がれたら終わりだし、機動力もそこまであるわけでもない。
気づかなければ音波攻撃も何もないし、魔力が高いわけでもないため普段鳴くのはただの求愛である、通常の鳴き声である。
よって、気がついたらパクリ。
それが連なって今になっているのだ!
加えてエンシェントシケーダは体が大きな分、隠れることも難しいとくれば生存難易度爆上がりである。
似たような種にジャイアントシケーダという種も存在しているが、まさしくデカいだけのセミなので隠れられずすでに絶滅してしまったようだ。世知辛い。
かくして孤独なエンシェントシケーダのために、ヨシヤは彼を眷属と迎えたのである。
名前はせっつん。ちゃんじゃないのはオスだからというヨシヤの意見であった。
眷属になったことでせっつんは進化を遂げ、エンシェント・ファーダシケーダへとなった。
なんとなく金色味がかった気がしないでもない。夕焼けに照る体躯は中々眩しいものがある。
「この『特殊スキル:擬態』と『セミ爆弾ファイナル』はわかるんだけど……」
「なんだか物騒ね」
「まあセミ爆弾は俺らが子供の頃からあったよねー」
「あったあった!」
セミ爆弾。
ひっくり返ったセミが死んでいると思ったら突如として暴れ回るアレである。
夏の風物詩でヨシヤはよくそれにビビって近所の壁にぶつかったものだ。今となっては懐かしい。
そこにファイナルが就いているのでおそらく相当なものなのだろうが、とりあえず眷属となったせっつんは寿命も延びているはずなので使う機会もないだろう。
というかこの聖域でそんなことしないでほしい。
「それで、どうしたの?」
「うん、いやこの『特殊スキル:共感』ってなんだろうなって」
「使わせてみたら?」
「うーん、試して貰ったんだけど本人も特に変化ないって」
「そう……」
ハナも首を傾げるが、コレばかりはまだ答えが見つからないようだ。
特殊スキルに関しては種族固有のものだけでなく、本当に個人に与えられるものであったりもするので不明なことも多いらしい。
とりあえずは今後、何かしらの形で実験していくしかないのだろう。
「でもせっつんが来てくれたらなんだか聖域にも夏が来た! って感じがするわねえ」
「そうだねえ」
せっつんの鳴き声はデカい。
求愛以外でも基本的に鳴くのは本能のためそれを制限することは難しく、それは可哀想だと満場一致で巻が得た結果がハナの力を使って体を小さくさせて声を抑える魔法をかけることだったのだ。
おかげで聖域にも夏が来た。
畑にはあっちゃんたちがいつの間にか育てていたものすごくデカいひまわりが燦々と咲き誇っている。
ちょっと中央に牙の生えた口がついているのがヨシヤには気になったが、とりあえず気にしたら負けだと彼は見なかったことにした。
「はい、ヨシヤさん。レモネード作ってみたの」
「わあ、ありがとうハナ!」
そうして夫婦は仲良くボートにバスケットとレモネードを積み込んで、デートとしゃれ込むのであった。
というのもハナが調べてみたところ、このセミはただのセミではなかったのだ。
ヨシヤからすればそもそもモンスターな段階でただのセミではないのだが、まあそれはともかくというやつである。
このセミはエンシェントシケーダという原種の一種で、なんと一般のセミが地中に七年過ごすところを一般のモンスターだと十年、それらを遙かに超えてこの種族は三百年単位で地中を過ごし、そして伴侶を探すのである。
つまり目の前にいる泣き言まみれのセミは三百年越しにようやく地上に出てきたという、超燃費の悪いセミなのであった。
「ええと……古代ゼミって何かそれじゃあすごい力があるとか……?」
「ものすごく大きな声で鳴けるわ」
「……他には?」
「色んな声で鳴くわね」
「……ほかには……」
ヨシヤの問いにハナはにこりと無言で微笑んだ。
つまるところ、それが答えである。
さて、話を戻すとそのような生態のセミである故に、数は元々少ないらしい。
多産になってしまうと木々を食い尽くしてしまうからとのことだが、それが地上の変異に伴い森が減ったことで自然と淘汰されて種そのものが衰退しているようだ。
それに加え近年、セミタイプのモンスターはその戦闘力の弱さから生態系の最下層に追いやられるようになり、絶滅危惧種と呼んでも問題なさそうである。
このエンシェントシケーダだけでなく、他のセミ型モンスターたちももれなく音がでかい……つまり音波攻撃なのだそうだ。
だが防御力に乏しいし耳は塞がれたら終わりだし、機動力もそこまであるわけでもない。
気づかなければ音波攻撃も何もないし、魔力が高いわけでもないため普段鳴くのはただの求愛である、通常の鳴き声である。
よって、気がついたらパクリ。
それが連なって今になっているのだ!
加えてエンシェントシケーダは体が大きな分、隠れることも難しいとくれば生存難易度爆上がりである。
似たような種にジャイアントシケーダという種も存在しているが、まさしくデカいだけのセミなので隠れられずすでに絶滅してしまったようだ。世知辛い。
かくして孤独なエンシェントシケーダのために、ヨシヤは彼を眷属と迎えたのである。
名前はせっつん。ちゃんじゃないのはオスだからというヨシヤの意見であった。
眷属になったことでせっつんは進化を遂げ、エンシェント・ファーダシケーダへとなった。
なんとなく金色味がかった気がしないでもない。夕焼けに照る体躯は中々眩しいものがある。
「この『特殊スキル:擬態』と『セミ爆弾ファイナル』はわかるんだけど……」
「なんだか物騒ね」
「まあセミ爆弾は俺らが子供の頃からあったよねー」
「あったあった!」
セミ爆弾。
ひっくり返ったセミが死んでいると思ったら突如として暴れ回るアレである。
夏の風物詩でヨシヤはよくそれにビビって近所の壁にぶつかったものだ。今となっては懐かしい。
そこにファイナルが就いているのでおそらく相当なものなのだろうが、とりあえず眷属となったせっつんは寿命も延びているはずなので使う機会もないだろう。
というかこの聖域でそんなことしないでほしい。
「それで、どうしたの?」
「うん、いやこの『特殊スキル:共感』ってなんだろうなって」
「使わせてみたら?」
「うーん、試して貰ったんだけど本人も特に変化ないって」
「そう……」
ハナも首を傾げるが、コレばかりはまだ答えが見つからないようだ。
特殊スキルに関しては種族固有のものだけでなく、本当に個人に与えられるものであったりもするので不明なことも多いらしい。
とりあえずは今後、何かしらの形で実験していくしかないのだろう。
「でもせっつんが来てくれたらなんだか聖域にも夏が来た! って感じがするわねえ」
「そうだねえ」
せっつんの鳴き声はデカい。
求愛以外でも基本的に鳴くのは本能のためそれを制限することは難しく、それは可哀想だと満場一致で巻が得た結果がハナの力を使って体を小さくさせて声を抑える魔法をかけることだったのだ。
おかげで聖域にも夏が来た。
畑にはあっちゃんたちがいつの間にか育てていたものすごくデカいひまわりが燦々と咲き誇っている。
ちょっと中央に牙の生えた口がついているのがヨシヤには気になったが、とりあえず気にしたら負けだと彼は見なかったことにした。
「はい、ヨシヤさん。レモネード作ってみたの」
「わあ、ありがとうハナ!」
そうして夫婦は仲良くボートにバスケットとレモネードを積み込んで、デートとしゃれ込むのであった。
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