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第15話 新しい婚約者の選定
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「此度の件も、我らとて思うところはあったのだ。だが、陛下がアベリアン殿下が御自ら気付きを得られることを望んでおられた。結果は残念なものであったが……殿下はそも、為政者には不向きな性格であったしな」
「……はい」
一回の失敗。
世間ではそう見えるかもしれませんが、今日に至るまで殿下はずっと大人たちによって評価され続けて参りました。
それは王族として、この国の代表となるに相応しいかどうかという意味で、です。
私たち高位貴族の子息、令嬢が衆目に晒されるよりもより厳しいものでありましょう。
けれど、それこそが『王族』としての責務でもあったのだと私は思います。
それに、こういっては何ですが……殿下に兄弟がいらっしゃる以上、いつでもすげ替えることは可能なのです。
長子だから優遇されるとはいえ、それは王家には当てはまらないこともあるのだと……歴史を学べばわかっていたでしょうに。
アベリアン殿下はご自身に甘いところがありましたし、なぜだか絶対的な自信をお持ちでしたからきっとそのようなことにはならないと考えたのでしょうね。
とても残念です。
お父様の言葉から察するに、殿下は王太子でなくなるのでしょう。
卒業まではまだあと一年ありますから、その間にどれだけ挽回できるかにもよるでしょうが……今この段階でその判断が下されたのであれば、難しいかもしれません。
精々が、臣下になる際に与えられる爵位と領地の大きさに影響が出る程度でしょうか。
普通ならば王族から臣籍に下る際に与えられる場合、一代限りの大公位を賜るか、現在ある公爵家と婚姻関係を結ぶかになるかと思いますが……。
アトキンス嬢のことをあれほど熱望なさっていたのですから、公爵家と縁を結ぶことは難しいでしょう。
「他の方々はどうなりますか?」
「ふむ……メルカド侯爵令息とモレノ伯爵令息についてはそれぞれの家での判断となるが……今回の件でそれぞれ跡厳しく見られるであろうな。放逐とまではいかないだろうが、今後は家の助けは借りられないかもしれん。その方が家名に負う傷が少ないと判断しているのだろう」
「そうですか……」
家名を担うに値しない、そう判断が大分前から下されていたのですね。
私たちを見守りながら、同時に評価を下す。
それが親としての立場であり、当主としての振る舞いなのでしょう。
学生のうちだから許されると思って甘えていた部分は私にもありますので彼らが咎められることで胸がすくなどといったことはありません。
むしろ、これからはその〝学生〟という身分も失った私は跡目を継ぐ者としてより一層身を引き締まる思いです。
「まあわたしとしては、可愛いお前が王家に嫁がずこの家を継いでくれることが嬉しいがな」
「お父様」
「陛下との話し合いが済み次第だが、お前の婿をまた選定しなければならん。なに、有能な者を選ぼう。己の立場を省みることもできない愚か者は選ばないよう、次こそ気をつけねばならん」
それはイザークのことでしょうか?
彼は彼なりに頑張っていたのでしょうが、本当にどこで間違えてしまったのか……。
お父様も目をかけていただけに、その落胆は計り知れません。
連れて行かれた先の王城で、私の言葉やこれまで学んできたことを思い出し、反省して前を向いてくれると良いのですが。
それにしてもこんなに早く次の婚約者の話題を出されると思わず、私は慌ててしまいました。
「あの、お父様……婚約者の件なのですが」
「うん?」
私の声にお父様がこちらを見ました。
まさか返事を待つと言っておきながら、レオンに私から求婚している、だなんてお父様に言えるわけもなく……なんと言えばいいのかと言葉を探していると、そのレオンが一歩前に出てお父様に向かって胸に手を当て頭を下げました。
「失礼ながら。その婚約者、私ではいけませんか旦那様」
思わぬ言葉に、私は目を瞬かせて思わず口をぽかりと開けてしまったではありませんか!
「……はい」
一回の失敗。
世間ではそう見えるかもしれませんが、今日に至るまで殿下はずっと大人たちによって評価され続けて参りました。
それは王族として、この国の代表となるに相応しいかどうかという意味で、です。
私たち高位貴族の子息、令嬢が衆目に晒されるよりもより厳しいものでありましょう。
けれど、それこそが『王族』としての責務でもあったのだと私は思います。
それに、こういっては何ですが……殿下に兄弟がいらっしゃる以上、いつでもすげ替えることは可能なのです。
長子だから優遇されるとはいえ、それは王家には当てはまらないこともあるのだと……歴史を学べばわかっていたでしょうに。
アベリアン殿下はご自身に甘いところがありましたし、なぜだか絶対的な自信をお持ちでしたからきっとそのようなことにはならないと考えたのでしょうね。
とても残念です。
お父様の言葉から察するに、殿下は王太子でなくなるのでしょう。
卒業まではまだあと一年ありますから、その間にどれだけ挽回できるかにもよるでしょうが……今この段階でその判断が下されたのであれば、難しいかもしれません。
精々が、臣下になる際に与えられる爵位と領地の大きさに影響が出る程度でしょうか。
普通ならば王族から臣籍に下る際に与えられる場合、一代限りの大公位を賜るか、現在ある公爵家と婚姻関係を結ぶかになるかと思いますが……。
アトキンス嬢のことをあれほど熱望なさっていたのですから、公爵家と縁を結ぶことは難しいでしょう。
「他の方々はどうなりますか?」
「ふむ……メルカド侯爵令息とモレノ伯爵令息についてはそれぞれの家での判断となるが……今回の件でそれぞれ跡厳しく見られるであろうな。放逐とまではいかないだろうが、今後は家の助けは借りられないかもしれん。その方が家名に負う傷が少ないと判断しているのだろう」
「そうですか……」
家名を担うに値しない、そう判断が大分前から下されていたのですね。
私たちを見守りながら、同時に評価を下す。
それが親としての立場であり、当主としての振る舞いなのでしょう。
学生のうちだから許されると思って甘えていた部分は私にもありますので彼らが咎められることで胸がすくなどといったことはありません。
むしろ、これからはその〝学生〟という身分も失った私は跡目を継ぐ者としてより一層身を引き締まる思いです。
「まあわたしとしては、可愛いお前が王家に嫁がずこの家を継いでくれることが嬉しいがな」
「お父様」
「陛下との話し合いが済み次第だが、お前の婿をまた選定しなければならん。なに、有能な者を選ぼう。己の立場を省みることもできない愚か者は選ばないよう、次こそ気をつけねばならん」
それはイザークのことでしょうか?
彼は彼なりに頑張っていたのでしょうが、本当にどこで間違えてしまったのか……。
お父様も目をかけていただけに、その落胆は計り知れません。
連れて行かれた先の王城で、私の言葉やこれまで学んできたことを思い出し、反省して前を向いてくれると良いのですが。
それにしてもこんなに早く次の婚約者の話題を出されると思わず、私は慌ててしまいました。
「あの、お父様……婚約者の件なのですが」
「うん?」
私の声にお父様がこちらを見ました。
まさか返事を待つと言っておきながら、レオンに私から求婚している、だなんてお父様に言えるわけもなく……なんと言えばいいのかと言葉を探していると、そのレオンが一歩前に出てお父様に向かって胸に手を当て頭を下げました。
「失礼ながら。その婚約者、私ではいけませんか旦那様」
思わぬ言葉に、私は目を瞬かせて思わず口をぽかりと開けてしまったではありませんか!
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