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第5話 ロレッタは自分の失敗を糧としてもらいたい
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「むしろ私は何もしなかったことが悪いのだと今は反省しているのよ?」
「はあ!?」
そう、私は反省しているの。
こうして多くの人を巻き込んでしまうことになってしまったのだもの。
殿下の浮気や勉強ができないこと、それらについて放置したことについては特に思うところはないけれど……ただ、もっとやりようはあったのではないかと思うのです。
「父であるワーデンシュタイン公爵からも言われておりましたのよ。殿下のお心を繋ぎ止めようとしないだけならばともかく、醜聞に繋がる者は排除すべきである……と」
「何を……」
私の言葉に、エルマン様が意味がわからないと言わんばかりに困惑した様子を見せました。
あらあら、どうしてわからないのかしら?
それともわかりたくないのかしら。
いずれにせよ、それでは高位貴族の人間として失格です。
特に、これより駆け引きだらけの大人の世界の中でも特にそのやりとりの一つ一つ、重要度が大きくなる王家に仕えたいと願うならば。
「本当に私がアトキンス嬢を排除したかったならば、本人を直接攻撃させるよりもずっと効果的な方法を選びますわ。それが貴族のやり方ですもの」
「……ずっと、効果的な、方法……?」
私の言葉にアトキンス嬢が顔色を悪くしてオウム返しをしました。
そんなに怯えなくてもよろしいのに。
彼女のことを思って、私は何もしなかったのですから。
「そうです。アトキンス家に圧をかけて貴女を学園に通わせなくする、もしくはアトキンス家を取り潰す……当主をすげ替える。その辺りが確実でしょうか」
「なっ、んで……なんで!? うちの両親は関係ない……っ」
「いいえ、関係ありますわ。学園に通い、婚約者のいる男性と心を交わし、そしてその関係を壊してしまったのですもの。何の権利も持たない令嬢に責任を取らせるならば、それは当然ながらその保護者になりますわ」
そうです。貴族の結婚は大抵、契約なのですから。
恋愛結婚というケースも少なからず存在しますが、少なくとも王家とワーデンシュタイン公爵家の婚約ともなれば恋愛からだったとしても、政治的なものが絡まずにはいられないことは誰の目にも明らかです。
それはそうでしょう、王家と国内でも一、二を争う権力を持つ公爵家が結びつくのです。
パワーバランスやその他のことを考慮しないはずがないのです。
それを解決した上で結ばれた契約である婚約を一方的な浮気で破棄させるその原因となった娘に責任をどう取らせるか?
それはもう、親に話が行くのは当然のことでしょう。
「そんなことになる前に、身を引かせるのが一番です。だからこそ私は殿下と貴女の両方に諫言をいたしました。それでもそれを私の醜い嫉妬だと、そうお二人は笑いましたね」
ええ、ええ、愛情など毛頭ございませんでしたから、私としては形式的なものとして一応忠告はいたしました。
別に二人がそれを理解せず、愚かな選択をしようとも私にとっては些細な問題でしたから!
「ですが……」
私は、後ろを振り返りました。
殿下たちも、私が視線をそちらに向けたことで同じように目線を私から写しました。
彼らの方へ。
ハッと息を呑んだのは、果たして生徒会のメンバーの誰だったのかしら。
でももう、それはどうでもいい話。
「私が力及ばず、皆様にはご迷惑をお掛けいたしました」
緩やかに、頭を下げる。
それは卒業生として、これから社会に出る貴族の令嬢子息たちに向けてのもの。
本来ならば頭を下げるのは良くない行為でしょうが、それでも私はそうせざるを得なかったのです。
「確かに――」
私の行動に小さなさざめきが置き、そして沈黙が訪れてすぐに一人の生徒が前に出ました。
「貴女には落胆させられました、ロレッタ様。しかしながら、今日という日に貴女にはお祝い申し上げますわ」
「ありがとうございます、コリーナ様」
そう仰ってくださったのは私と同じ公爵令嬢であるコリーナ様でした。
私は公爵家の跡取りとして判断を間違えたのです。
それはこれからの貴族社会を担うこの場にいる方々から見て、ワーデンシュタイン公爵家の信頼を損ねるものであったと、反省しております。
だからこそ、この愚かな私の姿を見て、生徒会のメンバーには学んで貰いたいのです。
貴族とは、どう振る舞うべきなのかを。
「はあ!?」
そう、私は反省しているの。
こうして多くの人を巻き込んでしまうことになってしまったのだもの。
殿下の浮気や勉強ができないこと、それらについて放置したことについては特に思うところはないけれど……ただ、もっとやりようはあったのではないかと思うのです。
「父であるワーデンシュタイン公爵からも言われておりましたのよ。殿下のお心を繋ぎ止めようとしないだけならばともかく、醜聞に繋がる者は排除すべきである……と」
「何を……」
私の言葉に、エルマン様が意味がわからないと言わんばかりに困惑した様子を見せました。
あらあら、どうしてわからないのかしら?
それともわかりたくないのかしら。
いずれにせよ、それでは高位貴族の人間として失格です。
特に、これより駆け引きだらけの大人の世界の中でも特にそのやりとりの一つ一つ、重要度が大きくなる王家に仕えたいと願うならば。
「本当に私がアトキンス嬢を排除したかったならば、本人を直接攻撃させるよりもずっと効果的な方法を選びますわ。それが貴族のやり方ですもの」
「……ずっと、効果的な、方法……?」
私の言葉にアトキンス嬢が顔色を悪くしてオウム返しをしました。
そんなに怯えなくてもよろしいのに。
彼女のことを思って、私は何もしなかったのですから。
「そうです。アトキンス家に圧をかけて貴女を学園に通わせなくする、もしくはアトキンス家を取り潰す……当主をすげ替える。その辺りが確実でしょうか」
「なっ、んで……なんで!? うちの両親は関係ない……っ」
「いいえ、関係ありますわ。学園に通い、婚約者のいる男性と心を交わし、そしてその関係を壊してしまったのですもの。何の権利も持たない令嬢に責任を取らせるならば、それは当然ながらその保護者になりますわ」
そうです。貴族の結婚は大抵、契約なのですから。
恋愛結婚というケースも少なからず存在しますが、少なくとも王家とワーデンシュタイン公爵家の婚約ともなれば恋愛からだったとしても、政治的なものが絡まずにはいられないことは誰の目にも明らかです。
それはそうでしょう、王家と国内でも一、二を争う権力を持つ公爵家が結びつくのです。
パワーバランスやその他のことを考慮しないはずがないのです。
それを解決した上で結ばれた契約である婚約を一方的な浮気で破棄させるその原因となった娘に責任をどう取らせるか?
それはもう、親に話が行くのは当然のことでしょう。
「そんなことになる前に、身を引かせるのが一番です。だからこそ私は殿下と貴女の両方に諫言をいたしました。それでもそれを私の醜い嫉妬だと、そうお二人は笑いましたね」
ええ、ええ、愛情など毛頭ございませんでしたから、私としては形式的なものとして一応忠告はいたしました。
別に二人がそれを理解せず、愚かな選択をしようとも私にとっては些細な問題でしたから!
「ですが……」
私は、後ろを振り返りました。
殿下たちも、私が視線をそちらに向けたことで同じように目線を私から写しました。
彼らの方へ。
ハッと息を呑んだのは、果たして生徒会のメンバーの誰だったのかしら。
でももう、それはどうでもいい話。
「私が力及ばず、皆様にはご迷惑をお掛けいたしました」
緩やかに、頭を下げる。
それは卒業生として、これから社会に出る貴族の令嬢子息たちに向けてのもの。
本来ならば頭を下げるのは良くない行為でしょうが、それでも私はそうせざるを得なかったのです。
「確かに――」
私の行動に小さなさざめきが置き、そして沈黙が訪れてすぐに一人の生徒が前に出ました。
「貴女には落胆させられました、ロレッタ様。しかしながら、今日という日に貴女にはお祝い申し上げますわ」
「ありがとうございます、コリーナ様」
そう仰ってくださったのは私と同じ公爵令嬢であるコリーナ様でした。
私は公爵家の跡取りとして判断を間違えたのです。
それはこれからの貴族社会を担うこの場にいる方々から見て、ワーデンシュタイン公爵家の信頼を損ねるものであったと、反省しております。
だからこそ、この愚かな私の姿を見て、生徒会のメンバーには学んで貰いたいのです。
貴族とは、どう振る舞うべきなのかを。
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