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しおりを挟むそして今度は私がパウンドケーキを口にする番である。そうすることで毒が入っていないことを証明するのだ。
――パクッ
(うん、美味しい!味を確認するために何度か食べたけど全然飽きないわね)
是非ともベルフィーナ様にも味わってもらいたい。そして笑顔になってもらえたらとても嬉しい。
「ベルフィーナ様もどうぞ」
「ふふ、一体どんな味なのかしら?すごく楽しみだわ」
そう言ってベルフィーナ様はパウンドケーキを口にした。するとみるみる目を見開き固まったかと思うと、次の瞬間には笑顔を綻ばせた。
「美味しい…!蜂蜜の味がすごく濃厚なのに全然くどくないからいくらでも食べられそうだわ」
「ありがとうございます。普通の蜂蜜ではくどくて飽きてしまうところですが、ジャイアントビーの蜂蜜は後味がスッキリしているんです」
「本当に魔物の食材は魅力的ね」
「そうなんです!私も初めて魔物料理を口にした時は衝撃を受けましたから」
「そういえばルナは元はセントミル国の貴族令嬢なんですってね」
「ご存じでしたか」
「ごめんなさいね。父からルナをお茶会に呼びたいならきちんと身元を調べてからじゃないとダメだと言われてしまって…」
「いえ、当然のことですから気にしないでください」
ベルフィーナのお父様の言う通りだ。いくら大切な娘からのお願いでも簡単に平民を招くわけにはいかない。私が善人なふりをした悪人の可能性だってあるのだから身元を調べるのは当然のことだ。それに私は特に自身のことを隠しているわけではないので問題はない。何ら恥ずべきことなどないのだから。
「元は貴族令嬢でさらにはS級冒険者、それにそれに…」
「?」
「まさかあのロイガート騎士団長様の噂の婚約者がルナだったなんて!とても驚いたわ!」
「う、噂の?」
「あら知らないの?あの難攻不落の騎士団長様を落とした強者は誰なのかってね」
確かにイシス様はたくさんの貴族令嬢から好意を寄せられていたことは知っていたが、難攻不落とまで言われていたとは。そしてそのイシス様と婚約した私は強者であると。
「でもロイガート公爵家が情報を押さえているからなのかほとんどの人はルナが婚約者だとは知らないから安心して」
ほとんどの人は知らないと言いながらもベルフィーナ様は知っている。さすが公爵家としか言いようがない。
「まさかそんな噂になっているなんて知りませんでした」
「騎士団長様を狙う令嬢は多いしロイガート公爵家と縁付きになりたい家もたくさんあるもの。みんな気になって仕方ないのよ」
「実際はただの平民が相手なんですけどね」
「あら、ルナはただの平民には当てはまらないと思うけど」
「いえ、そういうことにしておいてください」
「うふふ、ルナって頑固なところがあるのね」
「そ、それよりベルフィーナ様ご婚約おめでとうございます」
「ありがとう。これも全てルナのおかげよ」
私はただ話を聞いて思ったことを口にしただけだ。
「私は何もしてません。ベルフィーナ様が自ら動かれた結果ですよ」
「ふふ、そういう謙虚なところも好ましいわ。でも今の私があるのは間違いなくルナの助言のおかげよ。今日はそのお礼を言いたかったの。本当にありがとう」
「…いえ、私のお節介がお役に立ったのであればよかったです」
今のベルフィーナ様は以前会った時と違って自信に満ち溢れていているし幸せそうだ。きっと王太子殿下との仲は良好に違いない。
次期国王夫婦の仲が良好なのは国にとっていいことだ。ライージュ国はこれからも安定した治世が続くだろう。
「…それとね、ルナにお願いがあるのだけど」
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