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しおりを挟むそして七日後。迎えに来た馬車に乗りイグサン公爵家へと向かう。
ちなみに今回はきちんとイシス様に伝えてある。相手がイグサン公爵令嬢なら心配は要らないだろうとのことだ。せっかくだから楽しんでおいでと送り出してもらったのだった。
そうしてイグサン公爵家に着くと使用人に温室へと案内された。温室には色とりどりの花が咲き誇っている。今の時期は花があまり咲かないはずなのにさすが公爵家である。
温室の中にはテーブルとイスが用意されておりすでにそこには一人の女性が座っていた。あの日はローブを被っており姿はよく見えなかったが髪の色が同じだ。ピンクブロンドの髪を緩く編み込んでいる。瞳の色は澄んだ青色でとても美しい。それに座っている姿勢からでも彼女が優れた令嬢であることが窺えた。
「あっ!来てくれたのね!」
そんな令嬢達の頂点に立つイグサン公爵令嬢が笑顔で迎えてくれた。以前会った時の雰囲気と今の笑顔はあまりにもギャップがありすぎる。この笑顔を向けられた男性はもれなく彼女の虜になってしまうことだろう。女である私がそう思うくらいである。
「さぁ、こちらにいらしてくださいな」
彼女は自身の向かいの席に座るように手で指し示している。私はそれに従いその席へと向かった。
「本日はお招きいただきありがとうございます」
「ふふ、堅苦しいのは無しにしましょう。改めまして、ベルフィーナ・イグサンと申します。今日は来てくださって嬉しいわ」
「ルナです。お元気になられたようで安心しました。あ、これ私が作ってきたお菓子なのですが…」
「まぁ!ルナさんが作ったお菓子ってことはこのお菓子にも魔物の食材が入っているのかしら?」
「はい。たまたま手に入れたのですがジャイアントビーの蜂蜜を使ったパウンドケーキです」
「ジャイアントビーの蜂蜜!とても貴重な代物ではないですか!その蜂蜜を使ったパウンドケーキ…」
どうやらイグサン公爵令嬢ですら口にしたことがないような超貴重な蜂蜜のようだ。
「本当はもっと凝ったものがいいかと思ったのですが蜂蜜の味をしっかり楽しめるようにシンプルなお菓子にしてみました。イグサン公爵令嬢様のお口に合うといいのですが…」
「ルナさん。私のことは是非ともベルフィーナと呼んでくださいな」
「…ではベルフィーナ様と。ベルフィーナ様も私のことはルナとお呼びください」
「もっと気軽に呼んでくれても構わないのに…。まぁそれは追々ね。私もルナと呼ばせてもらうわ」
「はい」
テーブルの上にはすでにたくさんの美味しそうなお菓子が並んでいたが、せっかくなのでパウンドケーキを食べてもらいたい。ベルフィーナ様も興味がありそうだ。
ベルフィーナ様が使用人にパウンドケーキを取り分けるように頼んでいる。パウンドケーキと共に淹れたてのお茶が出てきた。とてもいい香りだ。
まず始めに主催者がお茶を口にすることでお茶会が始まる。ベルフィーナ様も先ほどのお茶を一口口にした。
「さぁ、どうぞ」
「ありがとうございます」
そうして二人だけのお茶会が始まった。
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