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しおりを挟む「―――私はあなたとの婚約を破棄します!」
声高らかに婚約破棄を宣言したのは、一人の美しい令嬢であった。
◇◇◇
「はぁ……」
ため息をつく令嬢が一人。ルーシェント公爵家の娘、リリアナ・ルーシェントである。
高貴な令嬢がため息をつくなどはしたないと思われてしまうだろうが、この部屋には彼女以外誰もいない。
窓から見える空は雲一つなく太陽が眩しい。しかしそんな空とは正反対に、彼女の心は分厚い雲に覆われていた。
「はぁ……。またなの?」
今日はもう何回ため息をついたかわからない。いや、今日だけではなくここ最近は毎日ため息をつく日々が続いている。
私のため息の原因はただ一つ。
私が今いる部屋の窓から見える四阿。季節の花が咲き誇るその場所で、お茶をする一組の男女の姿があった。
男の名前はシェザート・ウィストリア。この国、ウィストリア王国の王太子だ。そして王太子と楽しそうに会話をしている女はユラン・アンバー。アンバー男爵家の令嬢である。二人の距離はとても近く、まるで仲睦まじい恋人のようだ。
これが自分と無関係な人たちであればどんなによかったことか。しかし残念なことにあの人たちは私と無関係ではない。むしろ関係がありすぎるからこそ、ため息が止まらないのだ。
「はぁ。どうしたらいいんだろう……」
私のため息の原因、それはシェザート・ウィストリアが私の婚約者だということだ。
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