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 魔法薬の取引も無事に始まり忙しい日々を過ごしていると、気づけばあと数ヵ月でシェインとの結婚式の日だというそんなある日、シェインから思いもよらぬ頼みごとをされた。


「セレーナ、すまない。このパーティーに一緒に参加してもらえないか?」


 そう言って渡された招待状を見て驚いた。パーティーとはドルマン国の建国記念パーティーのことだったのだ。


「突然パーティーだなんてどうかしたの?いつもなら他の国のパーティーには王太子ご夫妻が参加していたじゃない」

「それが…。まだここだけの話にしてほしいんだが、義姉上が三人目を妊娠したんだ」

「まぁ!それはおめでたいわ!」

「ああ。それで俺に話が来たんだ」

「そうなのね。確かにそんな大事な時に長距離の移動もパーティーへの参加も負担でしかないわね。だからといって王太子様が一人で参加されるのも要らぬ詮索をされそうだもの」

「セレーナの言う通りだ。だからまだ王族である俺に参加するようにと父から言われてね。それに王族として参加する最後のパーティーになるだろうからって言われては断れなくてな」


 このパーティーは今から二ヶ月後に開催されるのだが、私たちが結婚するのは三ヶ月後。

 国王陛下の言う通り、おそらくシェインが王族として参加する最後のパーティーになるだろう。そして私と結婚したと同時にシェインは臣籍降下して一代限りの公爵位を賜る予定なのだ。


「それでパートナーとして私を?」

「そうだ。セレーナ以外の女性をパートナーにする気なんてさらさらないからな。だけど場所が場所だろう?だから父には少しだけ待ってほしいとお願いしているんだが…」

「私は構わないわよ」

「えっ!?あの国の建国記念パーティーだぞ?おそらく会いたくないやつに会う可能性もある。それでも平気なのか?」


 シェインはまさか私がすんなり受け入れるとは思っていなかったのだろう。心配してくれているのだろうが国を出てからもうすぐ三年だ。

 三年と言えばあの家に嫁いでから出ていくまでと同じ時間だ。たしかに今も一人だったら三年経とうが十年経とうが辛いと思うだろう。

 だけど今の私は一人ではない。

 愛する人や優しい家族、大切な生徒達、そしてこの国で出会った人達。たくさんの大切な人に囲まれて過ごしてきた日々は私の心の傷を少しずつ、だけど確実に癒してくれた。

 今では白い結婚でいてくれた元旦那様に感謝の言葉が言えそうなほどなのだ。


「もう平気よ。今なら笑って感謝の言葉を述べられそうなくらいだわ」

「はははっ!さすがセレーナだ!」

「だから私は平気よ。それにシェインが側に居てくれるんでしょう?」

「もちろんだ。一時も離れるつもりはないからな」

「ふふふ。それなら安心だわ」

「ああ。それなら早速ドレスを作らないとだな」

「そうね。今からならまだ間に合うかしら?間に合うのなら深緑のドレスがいいのだけど…」

「っ!…俺の色を。ああ、急いで手配しよう!」


 そうして私は三年ぶりに母国であるドルマン国へ行く事が決まったのだった。
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