23 / 37
16
しおりを挟む魔法薬の取引も無事に始まり忙しい日々を過ごしていると、気づけばあと数ヵ月でシェインとの結婚式の日だというそんなある日、シェインから思いもよらぬ頼みごとをされた。
「セレーナ、すまない。このパーティーに一緒に参加してもらえないか?」
そう言って渡された招待状を見て驚いた。パーティーとはドルマン国の建国記念パーティーのことだったのだ。
「突然パーティーだなんてどうかしたの?いつもなら他の国のパーティーには王太子ご夫妻が参加していたじゃない」
「それが…。まだここだけの話にしてほしいんだが、義姉上が三人目を妊娠したんだ」
「まぁ!それはおめでたいわ!」
「ああ。それで俺に話が来たんだ」
「そうなのね。確かにそんな大事な時に長距離の移動もパーティーへの参加も負担でしかないわね。だからといって王太子様が一人で参加されるのも要らぬ詮索をされそうだもの」
「セレーナの言う通りだ。だからまだ王族である俺に参加するようにと父から言われてね。それに王族として参加する最後のパーティーになるだろうからって言われては断れなくてな」
このパーティーは今から二ヶ月後に開催されるのだが、私たちが結婚するのは三ヶ月後。
国王陛下の言う通り、おそらくシェインが王族として参加する最後のパーティーになるだろう。そして私と結婚したと同時にシェインは臣籍降下して一代限りの公爵位を賜る予定なのだ。
「それでパートナーとして私を?」
「そうだ。セレーナ以外の女性をパートナーにする気なんてさらさらないからな。だけど場所が場所だろう?だから父には少しだけ待ってほしいとお願いしているんだが…」
「私は構わないわよ」
「えっ!?あの国の建国記念パーティーだぞ?おそらく会いたくないやつに会う可能性もある。それでも平気なのか?」
シェインはまさか私がすんなり受け入れるとは思っていなかったのだろう。心配してくれているのだろうが国を出てからもうすぐ三年だ。
三年と言えばあの家に嫁いでから出ていくまでと同じ時間だ。たしかに今も一人だったら三年経とうが十年経とうが辛いと思うだろう。
だけど今の私は一人ではない。
愛する人や優しい家族、大切な生徒達、そしてこの国で出会った人達。たくさんの大切な人に囲まれて過ごしてきた日々は私の心の傷を少しずつ、だけど確実に癒してくれた。
今では白い結婚でいてくれた元旦那様に感謝の言葉が言えそうなほどなのだ。
「もう平気よ。今なら笑って感謝の言葉を述べられそうなくらいだわ」
「はははっ!さすがセレーナだ!」
「だから私は平気よ。それにシェインが側に居てくれるんでしょう?」
「もちろんだ。一時も離れるつもりはないからな」
「ふふふ。それなら安心だわ」
「ああ。それなら早速ドレスを作らないとだな」
「そうね。今からならまだ間に合うかしら?間に合うのなら深緑のドレスがいいのだけど…」
「っ!…俺の色を。ああ、急いで手配しよう!」
そうして私は三年ぶりに母国であるドルマン国へ行く事が決まったのだった。
250
お気に入りに追加
4,290
あなたにおすすめの小説
婚約者の姉から誰も守ってくれないなら、自分の身は自分で守るまでですが……
もるだ
恋愛
婚約者の姉から酷い暴言暴力を受けたのに「大目に見てやってよ」と笑って流されたので、自分の身は自分で守ることにします。公爵家の名に傷がついても知りません。
あなたのことなんて、もうどうでもいいです
もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。
元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。
婚約者を追いかけるのはやめました
カレイ
恋愛
公爵令嬢クレアは婚約者に振り向いて欲しかった。だから頑張って可愛くなれるように努力した。
しかし、きつい縦巻きロール、ゴリゴリに巻いた髪、匂いの強い香水、婚約者に愛されたいがためにやったことは、全て侍女たちが嘘をついてクロアにやらせていることだった。
でも前世の記憶を取り戻した今は違う。髪もメイクもそのままで十分。今さら手のひら返しをしてきた婚約者にももう興味ありません。
旦那様は離縁をお望みでしょうか
村上かおり
恋愛
ルーベンス子爵家の三女、バーバラはアルトワイス伯爵家の次男であるリカルドと22歳の時に結婚した。
けれど最初の顔合わせの時から、リカルドは不機嫌丸出しで、王都に来てもバーバラを家に一人残して帰ってくる事もなかった。
バーバラは行き遅れと言われていた自分との政略結婚が気に入らないだろうと思いつつも、いずれはリカルドともいい関係を築けるのではないかと待ち続けていたが。
(完結)お姉様を選んだことを今更後悔しても遅いです!
青空一夏
恋愛
私はブロッサム・ビアス。ビアス候爵家の次女で、私の婚約者はフロイド・ターナー伯爵令息だった。結婚式を一ヶ月後に控え、私は仕上がってきたドレスをお父様達に見せていた。
すると、お母様達は思いがけない言葉を口にする。
「まぁ、素敵! そのドレスはお腹周りをカバーできて良いわね。コーデリアにぴったりよ」
「まだ、コーデリアのお腹は目立たないが、それなら大丈夫だろう」
なぜ、お姉様の名前がでてくるの?
なんと、お姉様は私の婚約者の子供を妊娠していると言い出して、フロイドは私に婚約破棄をつきつけたのだった。
※タグの追加や変更あるかもしれません。
※因果応報的ざまぁのはず。
※作者独自の世界のゆるふわ設定。
※過去作のリメイク版です。過去作品は非公開にしました。
※表紙は作者作成AIイラスト。ブロッサムのイメージイラストです。
わたしの婚約者の好きな人
風見ゆうみ
恋愛
わたし、アザレア・ミノン伯爵令嬢には、2つ年上のビトイ・ノーマン伯爵令息という婚約者がいる。
彼は、昔からわたしのお姉様が好きだった。
お姉様が既婚者になった今でも…。
そんなある日、仕事の出張先で義兄が事故にあい、その地で入院する為、邸にしばらく帰れなくなってしまった。
その間、実家に帰ってきたお姉様を目当てに、ビトイはやって来た。
拒んでいるふりをしながらも、まんざらでもない、お姉様。
そして、わたしは見たくもないものを見てしまう――
※史実とは関係なく、設定もゆるく、ご都合主義です。ご了承ください。
女性として見れない私は、もう不要な様です〜俺の事は忘れて幸せになって欲しい。と言われたのでそうする事にした結果〜
流雲青人
恋愛
子爵令嬢のプレセアは目の前に広がる光景に静かに涙を零した。
偶然にも居合わせてしまったのだ。
学園の裏庭で、婚約者がプレセアの友人へと告白している場面に。
そして後日、婚約者に呼び出され告げられた。
「君を女性として見ることが出来ない」
幼馴染であり、共に過ごして来た時間はとても長い。
その中でどうやら彼はプレセアを友人以上として見れなくなってしまったらしい。
「俺の事は忘れて幸せになって欲しい。君は幸せになるべき人だから」
大切な二人だからこそ、清く身を引いて、大好きな人と友人の恋を応援したい。
そう思っている筈なのに、恋心がその気持ちを邪魔してきて...。
※
ゆるふわ設定です。
完結しました。
別れてくれない夫は、私を愛していない
abang
恋愛
「私と別れて下さい」
「嫌だ、君と別れる気はない」
誕生パーティー、結婚記念日、大切な約束の日まで……
彼の大切な幼馴染の「セレン」はいつも彼を連れ去ってしまう。
「ごめん、セレンが怪我をしたらしい」
「セレンが熱が出たと……」
そんなに大切ならば、彼女を妻にすれば良かったのでは?
ふと過ぎったその考えに私の妻としての限界に気付いた。
その日から始まる、私を愛さない夫と愛してるからこそ限界な妻の離婚攻防戦。
「あなた、お願いだから別れて頂戴」
「絶対に、別れない」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる