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4.皇宮へ
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4.皇宮へ
「ここが、龍陽……」
目を閉じていた麗華の耳に一緒に乗っていた使用人の少女が感動したように出した声が聞こえて来た。
今回成人の儀に赴くのは瑞麗を除き、麗華含めた3人の少女であった。
型が古い馬車なので悪路の所を通る時はお尻が跳ね肩なども打ち付けた。
しかし、スピードは決して緩める事なく前を走る妹が乗る馬車を追いかけていた。
「きゃぁ!私龍陽は初めてなの!なんて荘厳なの…!」
「本当ね!雅国の都ももちろん栄えているけど龍陽とは比べ物にもならないくらい……!」
「こら、あんたたち!はしゃぐのもいいけど、私たちはもし選定に落ちたとしても瑞麗お嬢様の侍女として仕えるんだから気を引き締めなさいよ!」
「「はぁ~ぃ」」
この4人の中でリーダー格の冬梅が声をかけると2人の少女は大人しくなった。
他2人は素香と林杏だ。今朝麗華に声を掛けたのが林杏であった。
3人ともこの場にいる麗華の存在はまるっと無視しており、体調が悪そうな麗華を冬梅だけが時折鋭い瞳で見てきた。
「ちょっと。大げさに体調悪いフリなんかしちゃって。迷惑なんだけど」
「そうよ。風邪なんて移さないでよね。汚らわしいったら」
「あんたなんかもしかしたら門前払いかもね」
「あ、ありえる~!」
クスクスと笑う3人。
先程関所に着いて、通行する為に順番を待っていた。
「………」
「何とか言ったらどうなのよ。あんた、まさか選ばれるとでも思ってるわけ?はっ!あんたみたいな化け物龍の方々が選ぶわけ無いじゃない。その見た目でまず落選でしょうねぇ」
心底蔑んだ視線を冬梅が寄越しながら吐き捨てた。
「そんなこと、思っていません…」
弱々しく答える麗華にまたクスクスと笑う。
「よくわかってるじゃない。選定式ではあんた、私たちよりみすぼらしいんだから絶対に顔も上げないでよね」
「…はい」
「次!通行証を見せよ!」
順番が来たようだ。
瑞麗の乗る馬車の御者が宰相府の通行証を見せ、一瞬こちらの馬車を指差しながら門の兵士に対し話している。
恐らくこちらの馬車も宰相府のものだと説明しているのだろう。
「よし、通れ!」
兵士から許可が降りたのでゆっくり馬車が動き始めた。
「見て見て!龍陽を守る兵士の方。龍族の方だわ!凄く格好いい……」
「え!?うそ!本当だわ。なんて麗しいの」
初めて間近で見た龍族に娘達はきゃあきゃぁとはしゃぐ。
麗華もちらりと窓の外へ視線を投げかけて見ると、鎧を身に纏った偉丈夫がこちらを見た。
「!!?」
その兵士は私の容姿を見て驚嘆したようだ。
やはり、龍族からみてもこの容姿は奇異に映るのか。
「ちょっと!?あんた何顔上げてんのよ!下向いておきなさいよ!」
グッ!!
「痛っ!!やめ…!」
こちらを凝視している兵士の視線に気付いた冬梅が力任せに麗華の頭を掴んで馬車の床に押し付けた。
「ったく。迷惑だけはかけないでって言ってるじゃない。あんたがいるだけでこっちは不利なんだからね!?わかってんの!?」
「申し訳ありませ…!」
「御者のおじさん。今の内に通り過ぎちゃって」
「へいっ」
麗華の頭を掴みながら御者に声をかけた冬梅はホッとした後に私を睨みつけた。
「余計な事は絶対しないでね」
「ここが、龍陽……」
目を閉じていた麗華の耳に一緒に乗っていた使用人の少女が感動したように出した声が聞こえて来た。
今回成人の儀に赴くのは瑞麗を除き、麗華含めた3人の少女であった。
型が古い馬車なので悪路の所を通る時はお尻が跳ね肩なども打ち付けた。
しかし、スピードは決して緩める事なく前を走る妹が乗る馬車を追いかけていた。
「きゃぁ!私龍陽は初めてなの!なんて荘厳なの…!」
「本当ね!雅国の都ももちろん栄えているけど龍陽とは比べ物にもならないくらい……!」
「こら、あんたたち!はしゃぐのもいいけど、私たちはもし選定に落ちたとしても瑞麗お嬢様の侍女として仕えるんだから気を引き締めなさいよ!」
「「はぁ~ぃ」」
この4人の中でリーダー格の冬梅が声をかけると2人の少女は大人しくなった。
他2人は素香と林杏だ。今朝麗華に声を掛けたのが林杏であった。
3人ともこの場にいる麗華の存在はまるっと無視しており、体調が悪そうな麗華を冬梅だけが時折鋭い瞳で見てきた。
「ちょっと。大げさに体調悪いフリなんかしちゃって。迷惑なんだけど」
「そうよ。風邪なんて移さないでよね。汚らわしいったら」
「あんたなんかもしかしたら門前払いかもね」
「あ、ありえる~!」
クスクスと笑う3人。
先程関所に着いて、通行する為に順番を待っていた。
「………」
「何とか言ったらどうなのよ。あんた、まさか選ばれるとでも思ってるわけ?はっ!あんたみたいな化け物龍の方々が選ぶわけ無いじゃない。その見た目でまず落選でしょうねぇ」
心底蔑んだ視線を冬梅が寄越しながら吐き捨てた。
「そんなこと、思っていません…」
弱々しく答える麗華にまたクスクスと笑う。
「よくわかってるじゃない。選定式ではあんた、私たちよりみすぼらしいんだから絶対に顔も上げないでよね」
「…はい」
「次!通行証を見せよ!」
順番が来たようだ。
瑞麗の乗る馬車の御者が宰相府の通行証を見せ、一瞬こちらの馬車を指差しながら門の兵士に対し話している。
恐らくこちらの馬車も宰相府のものだと説明しているのだろう。
「よし、通れ!」
兵士から許可が降りたのでゆっくり馬車が動き始めた。
「見て見て!龍陽を守る兵士の方。龍族の方だわ!凄く格好いい……」
「え!?うそ!本当だわ。なんて麗しいの」
初めて間近で見た龍族に娘達はきゃあきゃぁとはしゃぐ。
麗華もちらりと窓の外へ視線を投げかけて見ると、鎧を身に纏った偉丈夫がこちらを見た。
「!!?」
その兵士は私の容姿を見て驚嘆したようだ。
やはり、龍族からみてもこの容姿は奇異に映るのか。
「ちょっと!?あんた何顔上げてんのよ!下向いておきなさいよ!」
グッ!!
「痛っ!!やめ…!」
こちらを凝視している兵士の視線に気付いた冬梅が力任せに麗華の頭を掴んで馬車の床に押し付けた。
「ったく。迷惑だけはかけないでって言ってるじゃない。あんたがいるだけでこっちは不利なんだからね!?わかってんの!?」
「申し訳ありませ…!」
「御者のおじさん。今の内に通り過ぎちゃって」
「へいっ」
麗華の頭を掴みながら御者に声をかけた冬梅はホッとした後に私を睨みつけた。
「余計な事は絶対しないでね」
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