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3.成人の儀
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しおりを挟む少女たちは万が一にも番に選ばれるとは思っていない。それだけ確率が低いから。
でも龍妃候補になれれば、もしかしたら龍妃(擬似的な番)になれるかもしれない。
龍妃とは番の見つかっていない龍の擬似的な番として傍に侍る者の事を指す。
成人の儀ではその龍妃を選定する試験でもあるので龍妃に選ばれれば、もし本当の番が現われたら番としてはお役御免になるがその後の生活はずっと保証されたり特典がたくさんある。
もちろん龍妃を務め上げた後人間と結婚する事も可能だ。
元の生活に戻るような元龍妃はいなかった。
しかし、元龍妃達にも苦悩はある。
少なからず番となった龍を本気で愛してしまう女性がいるからだ。
直前まで自分に愛を囁き、注がれていたものが突然無くなる上、興味すら傾けてもらえなくなる。
それは仕方の無い事ではあったが、その変化に心を壊す女性もいた。
だから生半可な覚悟でなれるものではないし、またなってよいものでも無かった。
その昔、嫉妬に狂った元龍妃が龍の番を害そうとして龍に殺されるという事件も起きていた。
龍自身にも暗示されていた時の記憶はしっかりある。自分の龍妃だった事も認識しているが本物の番が現れれば何もかもが無意味なのだ。
勝手だと思うかもしれないが人間も龍も納得の上で契約を結ぶ。
だからこそ龍妃には色んな配慮と尊敬を集める事が出来、龍妃を輩出した家には褒美さえ出るのだ。
◇◇◇
「とにかく、着替えなきゃ」
自室に戻った麗華は衣服の仕舞われた箪笥を開けた。
ぼーっとする頭の中でノロノロと衣服を探す。
「どうしよう…成人の儀に相応しい衣などないのに…」
麗華は衣服の申請をさせてもらえなかった。
どうせ選ばれないとたかを括られ瑞麗の妨害があり出来なかったのだ。
自分が持っている衣服など使用人の衣か所用で出かける際の衣くらいしか所持していない。
何度も洗濯し着回している為、色褪せているしほつれた所は繕っていた為明らかに使い古した物であった。
「でも、仕方ないよね。来ていく物がこれしかないもの…」
麗華は自虐的な笑みを浮かべると外出用の衣を手に取った。
化粧道具も装飾品さえない。
しかし、麗華自身は気が付いていなかったが麗華自身が美しい容姿を持っていた。
色素が無い事さえ除けば顔の造作は整っていたし、唇は紅も引いていないのに色付いていた。
真っ白で黒子の一つもない肌は手入れが行き届いていない為若干カサついており手指もあかぎれだらけではあったが、色も相まって神秘的な雰囲気を作り上げていた。
家人にとってみれば美しい異形の如き容姿がより忌避感を起こしていたが。
「早く着替えて行かなければ。朝餉を食べたらすぐに出発だったはず…」
麗華は高熱で朦朧とし、ハァハァと荒い呼吸を繰り返しながら濡れた衣を脱いでいった。
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