上 下
11 / 66
第一章 黒い悪魔の逃亡

第九話 これで貴方もドグ博士

しおりを挟む
 ガレックは帰る前に、面白そうな依頼があるか確認した。
『Eランク。報酬六千エスト。ルナハーブティーを作りたいので、ルナハーブを採ってきてください。フラワーの店長、ローラ』
 ガレックは見た瞬間依頼書を取り受付に向かった。
 ケビンが突然出て行ったせいで急遽受付に入ることになった眼鏡を掛けたお下げ髪の少女レイチェル・ビアーが困った顔をする。
「ガレックさん。いつも言ってますが、もう少しランクの高い依頼を受けてください」
「そう言うなレイチェル」
 説得しても無駄だから、レイチェルは渋々受理した。
 受付が終わったガレック達は、フェニックス城の前にあるフェニックス駅に向かう。
 歩きながらマリアが言う。
「帰るんじゃなかったのですか?」
「困ってる美女がいるんだ。助けなければ」
「美女って、何で分かるのよ?」
 アリスの質問を鼻で笑い答えた。
「いいか。依頼人の名前はローラだ。美女に決まってる」
 自信満々に答えるガレックに姉妹は呆れた。
「それで、ルナハーブって何処に生えてるの?」
「ステラの森だ。今から電車に乗ってステラ駅に向かい、そっから森に入る」
「私とお姉ちゃん丸腰なんだけど、モンスターとか出ないでしょうね」
「大丈夫だ。雑魚しかいねぇし」
「出るんじゃない!」
「安心しろ。ちゃんと考えてる」
 アリスは不安だったがガレックが桁外れに強い事を知ってるので、一応信じる事にした。
 二時間後、三人はステラの森に着いた。
 ガレックは二丁拳銃を抜き、ルクスをマリアにノクスをアリスに渡した。
「これを使え」
「重ッ!」
「ご主人様。私達銃なんて使った事無いです」
「私達魔法使いよ。杖とか無いの? そのカードに」
「俺は杖を使わんからな。それに、詠唱するより銃をぶっ放す方が早い。試しに撃てみろ」
 ガレックは適当に木を指差し、姉妹は困惑した。
「だから、撃ち方分からないんだって!」
「……かったる」
 ガレックはめんどくさそうに撃ち方を説明し、姉妹が撃てる様になってから森の奥へ歩き出した。
 暫く歩くと三十センチメートルくらいの昆虫モンスター、アブーが現れた。
 ガレックは笑みを浮かべて言う。
「いい感じの雑魚だ。奴隷姉妹、片付けろ」
「て、手伝わないんですかぁ!」
「たかがハエだ。俺様が出る幕じゃない。撃ち殺せ」
 姉妹がためらってるうちに、アブーがガレックを刺しに来た。
 ガレックは殺さない様、軽く殴り飛ばし、アブーは失神した。
「今だ。奴隷姉妹、撃て!」
 姉妹はアブーを狙い撃った。が、外れた。
「下手くそ」
「う、うるさい!」
「肩の力を抜いてよく狙え」
 姉妹はよく狙って撃ち、見事命中した。
「上出来だ」
 そう言って歩き出し、ルナハーブを探し始めた。
 暫くしてガレックがルナハーブを見付け姉妹に見せる。
「奴隷姉妹。これがルナハーブだ」
 そう言ってガレックはルナハーブをマリアに渡した。
「二手に分かれて行動する。俺はこっちを探すからお前等はあっちを探せ。二時間後に森の入り口に集合だ」
 三人は二手に分かれ探し始めた。

 モンスターの中には人間と話す事が出来る者達もいる。その代表が土偶モンスター、ドグだ。
 このモンスターはみんなほぼ同じ形だからドグ達以外は色で強さを判断する。
 茶色が一般的で数が多いドグといったら茶色のドグを指す、その戦闘力は一般人以下。緑色のドグは一般のドグ達を纏めるリーダーでありその戦闘力は一般人と同じグリーンドグと呼ばれる。青色のドグはドグ達を守る正義の味方戦闘に長けなんと一般人より遥かに強いBランク、ブルードグと呼ばれる。赤色のドグはブルードグを纏める部隊長その戦闘力は脅威のAランク、レッドドグと呼ばれる。黒色のドグは数が少ないが他を圧倒するSランク、ブラックドグまたはドグ将軍と呼ばれる。白色のドグはドグ達の王その戦闘力は計り知れない、キングドグと呼ばれる。
 ドグ達は魔法無効化の特殊能力があり魔導士の天敵である。

 ガレックは一人森の奥へ奥へと歩いて行き、ドグの集団を見付けた。
 ドグ達は都合良くルナハーブをカゴいっぱい集めていて今もなお採取している。集団で一番偉いグリーンドグがドグ達に言う。
「ふぅぅぅう。結構集めたな。そろそろ帰るか」
 ドグ達が元気よく「はいっ!」っと、返事をした。
 ガレックは走り出し、走り様に一番近くのドグを蹴り飛ばす。
「死ねぇ! 土偶ぅ!」
「ぎゃぁぁぁぁっ!?」
「なっ!?」
 蹴り飛ばされたドグが、他のドグにぶつかった。
 バリィィィン!
 二体のドグは割れて死んだ。
 グリーンドグが震えながら抗議する。
「い、いきなり何するんだ。僕達は人間達との共存を選んだ、平和を愛するドグだぞ!」
 剣だと刃こぼれや折れたり曲がったりする可能性が高いため、ガレックは重く硬い破壊力だけに特化された、金鬼(ごんき)という名の金棒を出した。
「うるさい。死にたくなかったらそのカゴを寄こせ」
「こ、これはみんなで集めた・・・」
「死ねぇぇぇっ!」
 バリィィィン! ドンッ!
 ガレックはグリーンドグを叩き割った。
「さて、次は誰が死にたい?」
 悲鳴を上げてドグ達は一目散に逃げ出した。
 ガレックはルナハーブを手に入れた。
 二時間後、森の入り口で三人は合流した。
 カゴいっぱいのルナハーブを見て姉妹は驚く。
「まっ、俺様が本気を出したらこんなもんだ」
「「す、凄い」」
 驚きながら姉妹はガレックに銃を返す。
「ありがとうございました」
「ありがとね」
 ガレックは銃を仕舞って言う。
「そんじゃ、依頼人の下に向かうか」
「はいっ!」「うん」
 三人は駅に向かって歩き出した。
「待て、お前等っ!」
 突然後ろから呼び止められ振り返るとドグ将軍を先頭にしたドグの集団がいた。
「そこの男! 盗んだ物を返すんだ!」
「盗んだ? 人聞きが悪い。落ちてた物を拾っただけだ」
 一体のドグが集団の後ろから抗議をする。
「う、嘘を吐くなっ! 僕達からルナハーブを盗んだじゃないか! その証拠に、そのカゴにはドグマークが付いてるじゃないか!」
 カゴには土偶のマーク、ドグマークがあった。
 ガレックは嘆息を吐き、一瞬でドグ将軍との間合いを詰め金鬼を出し叩きつけた。ドグ将軍はとっさに受け止めた。
「ぬおっ! 問答・・・・・・」
 無用かという前に、ガレックはドグ将軍を蹴り飛ばす。さらにガレックは、蹴り飛ばされたドグ将軍に向かって容赦なく金鬼を投げつけた。
 バリィィィン!
 ドグ将軍は割れて死んだ。
 レッドドグ、ドグ隊長達が叫ぶ。
「将軍様ぁぁっ!」
 ドグ隊長達は顔を見合わせて頷き、ガレックに土下座する。
 ドグ隊長を纏めるドグ総長が代表して許しを請う。
「すまなかった。許して欲しい。全てはあのドグが悪いんだ!」
 そう言ってドグ達を指し大勢のブルードグが指されたドグ達を取り押さえる。
「このカゴ、持って行っていいな?」
「もちろん!」
 ガレックは少し考えて頷いた。
「お前等のボスを倒したという事は今日から俺がお前等のボスか?」
「仰る通り!」
「俺の名はガレックだ。俺様が命令を下すまで、この森の治安を維持しろ」
 ドグ達は深く深く頭を下げた。
 ガレック達はドグに見送られ今度こそ駅に向かった。
 電車の中でアリスがガレックに苦言を言う。
「何でドグを手下にしたのよ。あいつ等すぐ裏切る卑怯者よ」
「そうです。それに嘘吐きで弱者を虐げる最悪のモンスターです」
「知ってるさ。そのうち使い潰すからいいだろ」
 ガレックの笑みを見て、絶対に巻き込まれると思い姉妹は不安になった。
 王都に戻ると依頼人の下へ向かうためダウンタウンに入り、だんだん怪しい場所に向かっていく。
 エッチな看板を見て姉妹は顔を赤くする。堪らずアリスが尋ねる。
「本当にこっちで合ってるの?」
「本当だ。ただ俺もここまで来るのは初めてだから少し迷いそうだ」
「嘘でしょ。変態のあんたが初めてなんて」
「失礼な奴だねぇ」
 しかし何だ、この悪寒は?
 ガレックは奥に進むにつれて寒気がしていた。
「もしかして、あの店じゃないですか」
 フラワーの看板があった。
「ここだな。入るか」
 ガレックは元気よく入店する。
「紅い翼のガレックです! ルナハーブ、お持ちしました!」
 巨体な漢女(おとめ)がガレックに答える。
「あっらぁ! 良い男! 初めまして私がローラです!」
「ちょっとママ、ずぅるぅいぃ! 私も挨拶する! 初めましてアマンダです!」
「ちょっとアマンダ、抜け駆け禁止よ! 初めまして、メアリーです!」
 その後も、ルイズ、サリー、アニーなど紹介を受けるが、ガレックの耳には入らなかった。気付いたらガレックは家に帰って寝ていた。
「あっ、起きた」
「うん? アリス・・・何で俺家にいるんだ?」
 アリスは顔を引きつかせ言う。
「えっ! えぇっと、疲れて寝ちゃったのよ。うん」
「寝たぁっ!? 俺が? ふむ。そうか」
 かなり無理がある言い訳だったがガレックは気付かなかった、いや、心が気付く事を拒絶した。嫌な事が起きると人は気付かない振りをする、それは強者も弱者も同じなのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

キャンピングカーで往く異世界徒然紀行

タジリユウ
ファンタジー
《第4回次世代ファンタジーカップ 面白スキル賞》 【書籍化!】 コツコツとお金を貯めて念願のキャンピングカーを手に入れた主人公。 早速キャンピングカーで初めてのキャンプをしたのだが、次の日目が覚めるとそこは異世界であった。 そしていつの間にかキャンピングカーにはナビゲーション機能、自動修復機能、燃料補給機能など様々な機能を拡張できるようになっていた。 道中で出会ったもふもふの魔物やちょっと残念なエルフを仲間に加えて、キャンピングカーで異世界をのんびりと旅したいのだが… ※旧題)チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜 ※カクヨム様でも投稿をしております

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

排泄時に幼児退行しちゃう系便秘彼氏

mm
ファンタジー
便秘の彼氏(瞬)をもつ私(紗歩)が彼氏の排泄を手伝う話。 排泄表現多数あり R15

処理中です...