10 / 12
第一章 語られぬ英雄
第四話 やった事を忘れてもなくなった事にはならない 下
しおりを挟む
太刀を受け取り現世へと戻る玲次に付き添う月輪を見送った後、日輪は自身の武器である剣を取り闇に向かって尋ねる。
「この国は私の、この世界は私達の世界、何しに来た? 世界の破壊者」
闇は黒髪に燃えるような瞳をした美女となり見女は困った笑みを浮かべて言う
「世界の破壊者は酷いわね」
「貴方達が現れる世界は統べて破壊されている。もう一人も隠れてないで出て来なさい」
光が集まり光は金色に輝く髪に蒼穹の如く澄んだ瞳の美女となり言う。
「さすがこの世界、最強の女神、私達の存在に勘付くとはね」
「私は何しに来たと尋ねている。また私の氏子に何かするつもりか」
金色の輝きが日輪を被いそれを見た二人は冷や汗をかく。
「完全にコントロールされた神気・・・」
「本気じゃないのにこれ程とは・・・、まずは貴方の氏子に手を出したのは謝罪するわ。自己紹介しましょう。まずは私から光と創造の女神、アルバ・コスモス」
アルバは隣の美女に次はお前だと目で言う。
「闇と破壊の女神、カオス・ルシス」
「秩序と混沌。創造と破壊。そう。貴女達元は一柱ね。一柱だった者が分離し二柱になった。何故分離したかは知らないけど」
「そこまで見ぬ抜くとはさすがね。正式に名乗るか。命の女神アルバ・ルシスが力を抑えるため分離し光と創造の力を継いだアルバ・コスモス」
「同じく闇と破壊を継いだカオス・ルシス」
「この世界、日ノ本が国の最高神天照である。創造神は世界の始まりに破壊神は世界の終わりに現れる神、この世界はまだ終わりの兆候はなく人間達もまた愚かな選択はしていない。懸念事項はあるが、それは私の氏子が対処し私達も協力し乗り越える」
日輪の言う事にアルバは首を振り悲しげに告げる。
「それは大きな間違いだよ。人間は愚かで愛おしい、だから間違える。間違えるから正す。正すから発展する。発展するから間違える。何度も間違え正すから愛おしいんだ。そしてこの世界の人間は愚かな選択をした。本当は五百年もしくは千年待つつもりだった。しかし、それが早まった。私は、私達は世界を護るため世界を破壊し作り直す。何度も何度も発展しすぎないように・・・だけど、千年前それを止めた。可能性を見たから、だから選択した。この可能性に懸けると、紅月玲司は神にする。神殺しの神に世界の守護神に」
「勝手な事を」
「玲司を神にする。これは決定事項。彼は人の身でありながら神を殺した。彼の魂の器はもう人ではない。気付いてるでしょ。彼は神核を持っている。貴女の妹が授けた神核は呪いに犯され取り戻す事が不可能となり長い時を経て彼の神核へと成った。だから何度も人間に生まれ変わり力を蓄える事が出来た。本来なら様々な生き物に転生し記憶が無くなり消滅するはずの魂が」
「そうね。確かに彼は人の身でありながら神の魂を持つ。現人神。それには彼自身気付いていない。それ故転生を繰り返し人にとどまり切っ掛けさえあれば神に至る。ずっと不思議だった。異津神がこちらに来た時彼の神の力量が解り私は手を出すのを止め人に玲次に委ねる事にした。玲次なら追い返す事が出来ると信じたから、しかし結果は追い返すどころか殺めてしまった。当時の玲次に神を殺す力がなかったにも関わらず。何故殺せたと、そして月読命は私と同格の神、その月読命の神格が汚されるなんて本来有り得ない。ましてや解呪不可能なんて・・・」
「憶測で語るのは止めて欲しいな。それで、私達と戦う気?」
負けはしないが勝てもしない、足止めは出来るが現世にも影響が出る。月輪がいてもそれは同じか、姉弟が揃ってたら勝てたけど、愚弟がいない時点で詰んでるわ。
「・・・止めとくわ」
「うん。安心した。貴女と戦ったら、せっかく見付けた可能性を潰す所だった」
「最後に、貴女達は何を警戒している?」
「あの武器、神々との戦いを想定して彼専用の武器を創ったんだね。それは半分正解だよ。ただ、ちょっと小さすぎるな」
「小さい?」
「変身、形態変化、呼び方はいろいろあるけど最上位種は大型化する者が多い、しかし現人神だけは違う、現人神は神力により姿は変わるが体型は変わらない。そうでしょ。かつて現人神だった。天照。貴女達姉弟は地上を導くため現人神として生まれに日ノ本の礎を築いた。その後、他の神々から国を護るため、現界では使えない結界を張るために神界に行き地上を人に任せ隠居した。日中は貴女が護り夜間は月読命が護る」
「そうね。別に秘密じゃないわ。貴女が警戒してるのは大型の神?」
弟の事も聞きたかったけどタブーみたいね。
「ええ。今から始まる戦いは切っ掛けになる。貴女は彼の氏神、知る権利があるし巻き込む側として協力を得るため手の内を晒しましょう」
情報が漏れても構わない。むしろ情報を与える事で協力せざるをえなくするか。詰んでるわね。
「秀衡の時代貴女達は異世界からの侵攻を読めなくて異世界側に結界は張っていなかった」
「まあ当然ね。世界間の結界は本来創造神の管轄。創造神が完全に隠居していたこの国じゃ後手に回るのも仕方ないわ」
ルシスの指摘に怒ることなく日輪は聞き流した。
「反論があると思ったけど・・・」
「貴女方が父に命じたのは知ってるし、父も働いてたから苛つくけど水に流すわ」
「話しを戻すわ。秀衡の死後異世界側にも結界を張り日ノ本に神が侵攻する事は不可能と成った。しかし何度かその結界が緩んだ事がある。自覚あるよね」
日輪は嘆息して告げる。
「源平合戦、元寇、戦国時代、幕末、日清戦争、日露戦争、太平洋戦争で一度崩壊したわね」
「そう。結界は戦により緩み、他国との戦に負けると破壊される。今は結界によりテスタロッサが来る事が出来ない」
「だから戦を起こす? 日米は同盟を組んでるのに?」
「第三次世界大戦はテロとの戦いだった。そしてこれから始まるのは統合戦争、米国が繋げてしまった異世界の門が米国を滅ぼすまたは衰退させ門を中心に新たな国が興る、テスタロッサの国が、そしてテスタロッサがいた世界とこの世界他にもいくつかの世界がぶつかり統合される。世界中で大混乱が起き友好国が敵国に敵国が友好国になるかもしれない」
「これは国だけじゃなく人にも当てはまる。パラレルワールドの統合もあるって事よ」
「この世界を滅ぼす気」
「異世界の門を繋げた時点で滅びは決まっていた。そしてこれに私達は関与していない」
「この世界が統合の果て崩壊するのは決定してるがこの世界をベースに新たな世界を創造しましょう」
「だから協力なさい」
ホント、詰んでるわね。
「この国は私の、この世界は私達の世界、何しに来た? 世界の破壊者」
闇は黒髪に燃えるような瞳をした美女となり見女は困った笑みを浮かべて言う
「世界の破壊者は酷いわね」
「貴方達が現れる世界は統べて破壊されている。もう一人も隠れてないで出て来なさい」
光が集まり光は金色に輝く髪に蒼穹の如く澄んだ瞳の美女となり言う。
「さすがこの世界、最強の女神、私達の存在に勘付くとはね」
「私は何しに来たと尋ねている。また私の氏子に何かするつもりか」
金色の輝きが日輪を被いそれを見た二人は冷や汗をかく。
「完全にコントロールされた神気・・・」
「本気じゃないのにこれ程とは・・・、まずは貴方の氏子に手を出したのは謝罪するわ。自己紹介しましょう。まずは私から光と創造の女神、アルバ・コスモス」
アルバは隣の美女に次はお前だと目で言う。
「闇と破壊の女神、カオス・ルシス」
「秩序と混沌。創造と破壊。そう。貴女達元は一柱ね。一柱だった者が分離し二柱になった。何故分離したかは知らないけど」
「そこまで見ぬ抜くとはさすがね。正式に名乗るか。命の女神アルバ・ルシスが力を抑えるため分離し光と創造の力を継いだアルバ・コスモス」
「同じく闇と破壊を継いだカオス・ルシス」
「この世界、日ノ本が国の最高神天照である。創造神は世界の始まりに破壊神は世界の終わりに現れる神、この世界はまだ終わりの兆候はなく人間達もまた愚かな選択はしていない。懸念事項はあるが、それは私の氏子が対処し私達も協力し乗り越える」
日輪の言う事にアルバは首を振り悲しげに告げる。
「それは大きな間違いだよ。人間は愚かで愛おしい、だから間違える。間違えるから正す。正すから発展する。発展するから間違える。何度も間違え正すから愛おしいんだ。そしてこの世界の人間は愚かな選択をした。本当は五百年もしくは千年待つつもりだった。しかし、それが早まった。私は、私達は世界を護るため世界を破壊し作り直す。何度も何度も発展しすぎないように・・・だけど、千年前それを止めた。可能性を見たから、だから選択した。この可能性に懸けると、紅月玲司は神にする。神殺しの神に世界の守護神に」
「勝手な事を」
「玲司を神にする。これは決定事項。彼は人の身でありながら神を殺した。彼の魂の器はもう人ではない。気付いてるでしょ。彼は神核を持っている。貴女の妹が授けた神核は呪いに犯され取り戻す事が不可能となり長い時を経て彼の神核へと成った。だから何度も人間に生まれ変わり力を蓄える事が出来た。本来なら様々な生き物に転生し記憶が無くなり消滅するはずの魂が」
「そうね。確かに彼は人の身でありながら神の魂を持つ。現人神。それには彼自身気付いていない。それ故転生を繰り返し人にとどまり切っ掛けさえあれば神に至る。ずっと不思議だった。異津神がこちらに来た時彼の神の力量が解り私は手を出すのを止め人に玲次に委ねる事にした。玲次なら追い返す事が出来ると信じたから、しかし結果は追い返すどころか殺めてしまった。当時の玲次に神を殺す力がなかったにも関わらず。何故殺せたと、そして月読命は私と同格の神、その月読命の神格が汚されるなんて本来有り得ない。ましてや解呪不可能なんて・・・」
「憶測で語るのは止めて欲しいな。それで、私達と戦う気?」
負けはしないが勝てもしない、足止めは出来るが現世にも影響が出る。月輪がいてもそれは同じか、姉弟が揃ってたら勝てたけど、愚弟がいない時点で詰んでるわ。
「・・・止めとくわ」
「うん。安心した。貴女と戦ったら、せっかく見付けた可能性を潰す所だった」
「最後に、貴女達は何を警戒している?」
「あの武器、神々との戦いを想定して彼専用の武器を創ったんだね。それは半分正解だよ。ただ、ちょっと小さすぎるな」
「小さい?」
「変身、形態変化、呼び方はいろいろあるけど最上位種は大型化する者が多い、しかし現人神だけは違う、現人神は神力により姿は変わるが体型は変わらない。そうでしょ。かつて現人神だった。天照。貴女達姉弟は地上を導くため現人神として生まれに日ノ本の礎を築いた。その後、他の神々から国を護るため、現界では使えない結界を張るために神界に行き地上を人に任せ隠居した。日中は貴女が護り夜間は月読命が護る」
「そうね。別に秘密じゃないわ。貴女が警戒してるのは大型の神?」
弟の事も聞きたかったけどタブーみたいね。
「ええ。今から始まる戦いは切っ掛けになる。貴女は彼の氏神、知る権利があるし巻き込む側として協力を得るため手の内を晒しましょう」
情報が漏れても構わない。むしろ情報を与える事で協力せざるをえなくするか。詰んでるわね。
「秀衡の時代貴女達は異世界からの侵攻を読めなくて異世界側に結界は張っていなかった」
「まあ当然ね。世界間の結界は本来創造神の管轄。創造神が完全に隠居していたこの国じゃ後手に回るのも仕方ないわ」
ルシスの指摘に怒ることなく日輪は聞き流した。
「反論があると思ったけど・・・」
「貴女方が父に命じたのは知ってるし、父も働いてたから苛つくけど水に流すわ」
「話しを戻すわ。秀衡の死後異世界側にも結界を張り日ノ本に神が侵攻する事は不可能と成った。しかし何度かその結界が緩んだ事がある。自覚あるよね」
日輪は嘆息して告げる。
「源平合戦、元寇、戦国時代、幕末、日清戦争、日露戦争、太平洋戦争で一度崩壊したわね」
「そう。結界は戦により緩み、他国との戦に負けると破壊される。今は結界によりテスタロッサが来る事が出来ない」
「だから戦を起こす? 日米は同盟を組んでるのに?」
「第三次世界大戦はテロとの戦いだった。そしてこれから始まるのは統合戦争、米国が繋げてしまった異世界の門が米国を滅ぼすまたは衰退させ門を中心に新たな国が興る、テスタロッサの国が、そしてテスタロッサがいた世界とこの世界他にもいくつかの世界がぶつかり統合される。世界中で大混乱が起き友好国が敵国に敵国が友好国になるかもしれない」
「これは国だけじゃなく人にも当てはまる。パラレルワールドの統合もあるって事よ」
「この世界を滅ぼす気」
「異世界の門を繋げた時点で滅びは決まっていた。そしてこれに私達は関与していない」
「この世界が統合の果て崩壊するのは決定してるがこの世界をベースに新たな世界を創造しましょう」
「だから協力なさい」
ホント、詰んでるわね。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
悲恋を気取った侯爵夫人の末路
三木谷夜宵
ファンタジー
侯爵夫人のプリシアは、貴族令嬢と騎士の悲恋を描いた有名なロマンス小説のモデルとして持て囃されていた。
順風満帆だった彼女の人生は、ある日突然に終わりを告げる。
悲恋のヒロインを気取っていた彼女が犯した過ちとは──?
カクヨムにも公開してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる