女の魅力

ざっく

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ファミレスで夕食

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そして、二人で二十四時間営業のファミレスに向かい合わせで座っている。

私の発言に目をむいた彼は、同じく自分の発言に驚愕した様子の私を見て、困ったように笑った。
「魅力的なお誘いだけど、とりあえず、食事でも一緒にしようか?」
優しい言葉に、私は走って帰ってしまいたい衝動にかられた。
だけど、ここで逃げたら、微笑む彼との接点は二度とないだろう。それは嫌だと顔を真っ赤にして、目に涙まで溜まりながらも踏みとどまった。
駅の近くにあるファミレスに入った。
今の時間から居酒屋に入っても、私は夕食が終わっているだろうから、何でもあるところがいいだろうと彼が選んだのだ。
私としても、ムードを盛り上げたいわけではないし、正直、助かった。
「じゃあ、俺は大塚 明。名前を聞いてもいい?」
席に座ってから、まず名前を聞かれて、名乗ってもいなかったことに悲鳴をあげそうな勢いで慌てて答えた。
「藤川 真由美と申します!」
私のそんな態度に笑いながら、「俺は普通に食べるけど、どうする?」とメニューを差し出した。

「本当に、ご迷惑をおかけしました」
メニューを注文し終わって、私は改めて頭を下げた。
ちなみに、駅でトイレに行ってブラジャー装着済みだ。さらに上着まで羽織っている。
「そこまで謝られることではないよ」
重々しく頭を下げる私の頭を軽くたたきながら、彼はくすくすと笑い声を漏らした。
痴漢行為を受けておきながら、何ていい人だと思う。
唇をかみしめて見上げれば、苦笑が返ってきた。
「それが、今日の本当の服?」
「あ、はい。……しっかりと下着はつけております」
なんとなく胸に視線があるような気がして、胸元に手をやりたいけれど、それは失礼だと思ったので、我慢する。
でも、やっぱり恥ずかしくて、もじもじと体を揺らしてしまった。
「どうしてこんなことを?」
いきなり核心を突かれて言葉に詰まる。
理由がくだらなすぎる。酔っ払いの勢いというのはひどい。
だけど、被害者たる彼に説明しないことはできないだろうと、彼氏の浮気から「色気無い」発言、自信を取り戻したかったと話した。
「今日フラれたばっかり?やけになってる?」
心配そうに大きな体をかがめて、大塚さんが私を覗き込んでくる。
「やけになる」?なんでだ?ときょとんとしてから思い当たる。
そうだ。私は付き合っていた人からフラれたばかり。涙しててもいい状況だった。
「あっ…いや……その、打算で付き合っていたようなもので、そんなショックとかは無くてですね」
「打算?」
大きな体が首を傾げるのは、どうしてこうも可愛いのだろう。
頭を撫でさせてもらってもいいだろうかと、別の方向に思考を飛ばしてしまった。
「は、まあ…付き合った方がいいことがいろいろと……?」
いろいろって言ったって、初☆彼氏!が欲しかったとか、脱・バージンだとかいう理由だ。
結局、実感もできないまま終わったし、バージンに至っては初キスだってしていないプラトニックさだ。
「いいこと?」
言いたくない。
それを前面に押し出してみたけれど、相手にも引く気はないだようだ。
頬杖をついて、にっこり笑われた。
「あ……うぅ……」
冷たい汗が流れていったような気がした。
とうとう、私が両手で顔を覆って小さな声で呟いた。

「お付き合いというものをしてみたかったのです」

大塚さんの返事は無かった。
そもそも返事が必要なような言葉ではなかったけれど、「へえ」とか「ほお」とか反応が欲しかった。
「お待たせしましたー」
その時、二人の沈黙を破るように料理が運ばれた。
大塚さんの前には和御前で、私にはサラダうどんだ。さっき食べただろうと言う意見は聞かない。沙耶と行った居酒屋では、ほぼ飲んだだけだったのだ。
「食べようか」
これ以上の恥はないくらいに恥をかいた。声が震えそうで、こくっと首を動かすだけで答えた。
お付き合いしてみたかった。だなんて、したことがなかったと、公言したようなものだ。
ため息を吐きそうになって、目の前の食事に集中することにした。
出会いが出会いで恥ずかしさばかりの相手だったが、思いのほか食事は楽しかった。
大塚さんは、サラダがうどんに乗っているのは本当にうまいのかと言って、私がサラスパなどの麺とマヨネーズの相性について語り、体が大きいせいでいつもがっつり行くように見られるが、実は胃腸が弱くて、夜遅くなった時のメニューの選び方を大塚さんが語った。
和やかに食事が終わり、しっかり別会計でファミレスを出た。
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