11 / 23
彼女
朝
しおりを挟む
咲綾は、体の痛みで目を覚ました。
身体中が痛い。特に、人に見てもらうのは、少々憚られるあそこが。
カーテンの隙間から明るい日差しが差し込んできていて、時間は分からないがもう朝なのだと分かる。
少し視線をずらすと、咲綾を抱きしめて眠る陽介。
二人とも裸で手足をからめるようにして眠っていたようだ。彼の腕は少し重いが、素肌が気持ちいい。
彼の逞しい胸に頬を寄せて堪能する。
汗でしっとりした肌は、咲綾よりも体温が高くて、柔らかいのに固くて、大きくて広くて、とにかく素敵だ。
だけど、ずっとこうしているわけにはいかない。
喉が渇いた。
ものすごく声を出したと思う。
体の痛みはともかく、この喉の渇きではもう一度寝るのは無理だ。
残念だが、一度彼の腕の中から出ないといけない。
咲綾は痛む体を起こして、少しずつ彼の腕の中から抜け出そうと――
「どこに行く」
もう一度引き戻されてしまった。
それはもちろん構わない。むしろ、ごちそうさまでしたという感じだ。腕の中に力づくで戻されるなんて、ご褒美をもらったようなものだ。
「あ、みずを……」
声を出して、すぐに言葉を飲み込む。
今の、ものすごくしゃがれた声は好きな人に聞かれて良い声じゃない気がする。どんだけ喉を酷使したんだ。
「ああ……取ってくる。まだ転がってろ」
頷く咲綾をちらりと見て、陽介が素っ裸のまま部屋を出て行った。
ナチュラルな命令口調が素敵だ。ときめきすぎて胸がヤバい。
上半身だけ起こして部屋を見回す。
昨夜は薄暗くてよく見ていなかったが、機能性あふれる部屋だ。
つまり、飾りっ気が全くない。
パソコンと大きな座椅子、小さなテーブルがあってベッド。
深い青に統一されているように見えるけれど、それぞれ色合いが違って、メーカーは違うことが分かる。目についたものを買ったら、何か揃った。そんな感じだ。
咲綾はもう一度転がって、もう一人分横に移動する。
そこは、さっきまで陽介が寝ていた場所だ。
ほんのり温かくて、良い匂いがする。シーツをぎゅっと抱きしめたところで、陽介が戻ってきた。
咲綾を見て、ため息を吐く。
「……だから、匂いを嗅ぐな」
シーツを抱きしめていただけなのに。いや、嗅いでいたけど。
陽介は、ハーフパンツとTシャツを着ていた。明るくなった部屋の中で、自分だけ裸なのはさすがに少し恥ずかしい。
無言で水のペットボトルを渡されて、布団から腕だけ出して受け取る。
「…………」
「…………」
どうしよう。起き上がると、必然的に胸より上が出てしまう。シーツを胸で押さえていても、背中は丸見えだ。
起き上がる時には、こう、いろいろと見えそうにもなるだろうし。
咲綾の躊躇を感じ取ったのか、陽介はくくっと意地悪そうに笑う。
「今更照れてんのか」
今更感が満載なのは認めよう。誘ったのは咲綾だし。
しかし、この羞恥心と言うのはそういう理論など全く役に立たない奴なのだ。
彼は立ち上がってクローゼットを開ける。
中にはタンスなどによって綺麗に仕分けされている服が見える。
「ほら。これでも着てろ。昨日の服はまとめて洗濯機に入れるぞ」
彼が今着ているような服の上下を渡される。部屋着のスペアだろうか。
「下着はないが、数時間だ。我慢しろ」
咲綾の返事を期待せず、彼はそれ明け渡したら部屋から出て行く。
咲綾が恥ずかしがるのをからかいながらも、優先して一人にしてくれたことが嬉しい。どれだけ男前なんだろう。
起き上がって、貰った水を飲んでから服を持ちあげた。
「大きい……」
彼が来ていた分には普通サイズに見えたが、目の前で広げて見ると、ものすごく大きい。
Tシャツだけでワンピースのようになる。ハーフパンツも広げてみたが、これを履いたら、ウエストをずっと握っていないと落ちる。それは間抜けだ。
立ち上がって、Tシャツの丈を確認する。太腿の半分くらいまではある。下手なミニスカートよりも長い程度にはある。
折角出してもらったが、上だけで充分だ。
ハーフパンツを簡単にたたんで、咲綾も部屋から出た。
部屋から出た途端、コーヒーのいい香りがする。
くう、と小さな音が咲綾のお腹からなる。
夕飯を食べてないことに今更気が付いた。食べてない割に小さな音だったことに、自分で自分を褒めてあげる。
「シャワー使っていいぞ」
陽介がキッチンに立って作業をしながら言う。
咲綾がぱぱっと何か作って胃袋掴むという方法もあるのだろうが、掴めるほどの技量がない。今度がんばってみよう。
身体中が痛い。特に、人に見てもらうのは、少々憚られるあそこが。
カーテンの隙間から明るい日差しが差し込んできていて、時間は分からないがもう朝なのだと分かる。
少し視線をずらすと、咲綾を抱きしめて眠る陽介。
二人とも裸で手足をからめるようにして眠っていたようだ。彼の腕は少し重いが、素肌が気持ちいい。
彼の逞しい胸に頬を寄せて堪能する。
汗でしっとりした肌は、咲綾よりも体温が高くて、柔らかいのに固くて、大きくて広くて、とにかく素敵だ。
だけど、ずっとこうしているわけにはいかない。
喉が渇いた。
ものすごく声を出したと思う。
体の痛みはともかく、この喉の渇きではもう一度寝るのは無理だ。
残念だが、一度彼の腕の中から出ないといけない。
咲綾は痛む体を起こして、少しずつ彼の腕の中から抜け出そうと――
「どこに行く」
もう一度引き戻されてしまった。
それはもちろん構わない。むしろ、ごちそうさまでしたという感じだ。腕の中に力づくで戻されるなんて、ご褒美をもらったようなものだ。
「あ、みずを……」
声を出して、すぐに言葉を飲み込む。
今の、ものすごくしゃがれた声は好きな人に聞かれて良い声じゃない気がする。どんだけ喉を酷使したんだ。
「ああ……取ってくる。まだ転がってろ」
頷く咲綾をちらりと見て、陽介が素っ裸のまま部屋を出て行った。
ナチュラルな命令口調が素敵だ。ときめきすぎて胸がヤバい。
上半身だけ起こして部屋を見回す。
昨夜は薄暗くてよく見ていなかったが、機能性あふれる部屋だ。
つまり、飾りっ気が全くない。
パソコンと大きな座椅子、小さなテーブルがあってベッド。
深い青に統一されているように見えるけれど、それぞれ色合いが違って、メーカーは違うことが分かる。目についたものを買ったら、何か揃った。そんな感じだ。
咲綾はもう一度転がって、もう一人分横に移動する。
そこは、さっきまで陽介が寝ていた場所だ。
ほんのり温かくて、良い匂いがする。シーツをぎゅっと抱きしめたところで、陽介が戻ってきた。
咲綾を見て、ため息を吐く。
「……だから、匂いを嗅ぐな」
シーツを抱きしめていただけなのに。いや、嗅いでいたけど。
陽介は、ハーフパンツとTシャツを着ていた。明るくなった部屋の中で、自分だけ裸なのはさすがに少し恥ずかしい。
無言で水のペットボトルを渡されて、布団から腕だけ出して受け取る。
「…………」
「…………」
どうしよう。起き上がると、必然的に胸より上が出てしまう。シーツを胸で押さえていても、背中は丸見えだ。
起き上がる時には、こう、いろいろと見えそうにもなるだろうし。
咲綾の躊躇を感じ取ったのか、陽介はくくっと意地悪そうに笑う。
「今更照れてんのか」
今更感が満載なのは認めよう。誘ったのは咲綾だし。
しかし、この羞恥心と言うのはそういう理論など全く役に立たない奴なのだ。
彼は立ち上がってクローゼットを開ける。
中にはタンスなどによって綺麗に仕分けされている服が見える。
「ほら。これでも着てろ。昨日の服はまとめて洗濯機に入れるぞ」
彼が今着ているような服の上下を渡される。部屋着のスペアだろうか。
「下着はないが、数時間だ。我慢しろ」
咲綾の返事を期待せず、彼はそれ明け渡したら部屋から出て行く。
咲綾が恥ずかしがるのをからかいながらも、優先して一人にしてくれたことが嬉しい。どれだけ男前なんだろう。
起き上がって、貰った水を飲んでから服を持ちあげた。
「大きい……」
彼が来ていた分には普通サイズに見えたが、目の前で広げて見ると、ものすごく大きい。
Tシャツだけでワンピースのようになる。ハーフパンツも広げてみたが、これを履いたら、ウエストをずっと握っていないと落ちる。それは間抜けだ。
立ち上がって、Tシャツの丈を確認する。太腿の半分くらいまではある。下手なミニスカートよりも長い程度にはある。
折角出してもらったが、上だけで充分だ。
ハーフパンツを簡単にたたんで、咲綾も部屋から出た。
部屋から出た途端、コーヒーのいい香りがする。
くう、と小さな音が咲綾のお腹からなる。
夕飯を食べてないことに今更気が付いた。食べてない割に小さな音だったことに、自分で自分を褒めてあげる。
「シャワー使っていいぞ」
陽介がキッチンに立って作業をしながら言う。
咲綾がぱぱっと何か作って胃袋掴むという方法もあるのだろうが、掴めるほどの技量がない。今度がんばってみよう。
0
お気に入りに追加
763
あなたにおすすめの小説
王太子殿下の想い人が騎士団長だと知った私は、張り切って王太子殿下と婚約することにしました!
奏音 美都
恋愛
ソリティア男爵令嬢である私、イリアは舞踏会場を離れてバルコニーで涼んでいると、そこに王太子殿下の逢引き現場を目撃してしまいました。
そのお相手は……ロワール騎士団長様でした。
あぁ、なんてことでしょう……
こんな、こんなのって……尊すぎますわ!!
【完結】優しくて大好きな夫が私に隠していたこと
暁
恋愛
陽も沈み始めた森の中。
獲物を追っていた寡黙な猟師ローランドは、奥地で偶然見つけた泉で“とんでもない者”と遭遇してしまう。
それは、裸で水浴びをする綺麗な女性だった。
何とかしてその女性を“お嫁さんにしたい”と思い立った彼は、ある行動に出るのだが――。
※
・当方気を付けておりますが、誤字脱字を発見されましたらご遠慮なくご指摘願います。
・★が付く話には性的表現がございます。ご了承下さい。
【R18】悪役令嬢を犯して罪を償わせ性奴隷にしたが、それは冤罪でヒロインが黒幕なので犯して改心させることにした。
白濁壺
恋愛
悪役令嬢であるベラロルカの数々の悪行の罪を償わせようとロミリオは単身公爵家にむかう。警備の目を潜り抜け、寝室に入ったロミリオはベラロルカを犯すが……。
王太子の子を孕まされてました
杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。
※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
じゃない方の私が何故かヤンデレ騎士団長に囚われたのですが
カレイ
恋愛
天使な妹。それに纏わりつく金魚のフンがこの私。
両親も妹にしか関心がなく兄からも無視される毎日だけれど、私は別に自分を慕ってくれる妹がいればそれで良かった。
でもある時、私に嫉妬する兄や婚約者に嵌められて、婚約破棄された上、実家を追い出されてしまう。しかしそのことを聞きつけた騎士団長が何故か私の前に現れた。
「ずっと好きでした、もう我慢しません!あぁ、貴方の匂いだけで私は……」
そうして、何故か最強騎士団長に囚われました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる