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第2章
第四七話 ブルグント人
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キラードは見かけは四〇歳を少し過ぎた年齢だが、長子は二〇歳を超えている。
長子は男で、名はブレクト。
ブルグント人の男という意味だそうだ。
このブレクトが我々に対して敵対的な視線を向けている。
キラードの他の子は女性で、表向きは友好的な態度だ。キラードの妻は言葉は通じないが、我々と積極的に関わろうと努力している。
キラードは四人の解放奴隷を伴っていて、かなり以前からの使用人らしい。この四人も家族を伴っている。
解放奴隷の一人は、キラード家の筆頭家老か大番頭といった感じだ。商いの実務は彼が仕切っている。
キラードが連れてきた一族郎党は、総勢三〇人を超える。
彼以外にも、数人のフルギア商人亡命希望者がいる。
評議会は、突然のフルギア人亡命者の扱いに困惑している。ノイリンと白魔族との戦闘、および白魔族の捕獲が原因ということは明確だが、これとフルギア商人の亡命とが結びつかない。
俺は、キラードの商館を尋ねる。そして、自分の疑問を問うた。長子ブレクトが同席している。
通訳はキラードが雇う解放奴隷が務めた。
「キラードさん。
ここ数日で、貴方を含めて複数のフルギア商人が亡命、つまりノイリンに保護を求めてきました。
なぜ、ですか?」
「私の直接の理由は、皇帝令に背くことになるからです。
家族を助けたかった!」
「理由は、それ以外にはないのですか?」
「私は、ブルグント人です。
皇帝はフルギア人。
ブルグント人は、絶対神ジーへの帰依を条件に生命を保証されています。
ですが、精霊信仰を捨てていません。
私の守護精霊は、豊穣を司る大地の精霊です。
精霊信仰を心の内に秘め、表面上、絶対神ジーを祀っています」
長子ブレクトが激しく何かを言うが、それを通訳が厳しく叱責する。
「ブルグント人は、信仰を捨てても生き残りたかったのです。
軽蔑していただいても結構です。
妻子に刃を突きつけられては、抗う術などなかったのです」
「貴方は、絶対神ジーを信仰していない……」
「信仰していません。
ですが、使徒様は違います。
使徒様は存在し、戦の精霊をも必要としない強力な武器で、その力を示されました。
そして、私たちが持っていない不思議な機械を与えてくださった。
絶対神ジーは信仰していませんが、使徒様が精霊の使徒であることに疑いを持ったことはありませんでした」
「最近になってから、使徒に対して疑いを持った?」
「そうです。
ノイリンの皆さんは、使徒様をまったく恐れていない……。
むしろ、フルギア人を恐れている。
戦いたくない、と。
なぜなのか理解できませんでした。
使徒様の庇護を得たフルギア人を恐れているのではなく、ヒト同士が殺し合うことを恐れているようで……。
ですが、使徒様をまったく恐れてはいない。
その理由は無知が原因と考えていました。
でも、違いました。
ノイリンには戦の精霊を体内に宿す、名将と偉大な司令官がいらっしゃる……。
使徒様など、敵ではなかったのです。
驚き、恐怖に震えました。
ノイリンならば、ブルグント人の信仰を取り戻し、フルギア人に臆せず生きていける、そう思ったのです」
「そういう考えのヒトが他にもいる?」
「わかりません。
しかし、貿易商人の多くは、王都に人質を残しています。
人質を脱出させられれば、他国の庇護を求めることはあるでしょう。
しかし、いままでは使徒様の庇護を得たフルギアに、敵う人々などいるはずはないと確信していたのです」
「いまは違う?」
「はい。
ノイリンは特別なのだと……」
「私に聞きたいことはありますか?」
「ハンダ様の精霊は?」
「私は不信心で。神も精霊も信仰していないのです」
「……。
信仰がない……」
「えぇ。不信心なんで、神の使徒なんていう存在を信じません。
信じないがそこに存在する。
存在する以上、神以外の理由を追及するわけです。そして、真実を見つける。
実態がわかれば対処の方法があり、それを実行すればいい……」
「神を信じないから、神に勝てると?」
「いいえ、簡単に神を信じないから、似非神を見破れるんですよ」
「使徒様は、偽物?」
「私のメンバーは、貴方たちが使徒と呼ぶ食人動物をオークと呼んでいます」
「オーク……?」
「何万年も前から食人しているとか。
我々の遠い遠い祖先は、彼らと勇敢に戦い勝利を得たこともあるそうです」
「……」
「偉大な種族、は知っていますか?」
「……」
「精霊族や鬼神族に、オークとの戦い方を教えたそうです。
私たちとは縁浅からぬ人々のようです」
「私は、間違っている……」
「それは、貴方が判断することです」
ブレクトは黙り込んでいる。
彼が信じていることとは、まったく異次元の会話が交わされている。
使徒は単なる食人動物で、この動物と戦うための手段を精霊族と鬼神族に授けた〝偉大な種族〟がいる……。
ならば、神の加護は精霊族と鬼神族に授けられたのか?
神の使徒と信じていた存在は、悪魔だったのか?
自分は悪魔を崇拝(するふりを)し、悪魔の教えを信じ(るふりをし)、悪魔の手先となっていたのか?
ブレクトが唐突に口を開く。
「ハンダ様に尋ねます。
使徒様は、本当は悪魔であると?」
「いいえ、悪魔ではありません。
ただの動物です。
ウシやウマと同じです。
身体的特徴は、ヒトと大差ありません。
ただの動物です」
「使徒様は、ウシやウマと同じ……」
「不思議な動物ですね。
捕獲した個体を調べていますが、情報は相互に伝達できますが、感情は互いに察知できない。
イヌほども通じ合うものがない」
「捕獲……」
「ええ、この間の戦闘で、二頭捕獲しました。生きたままね。
与えた餌はよく食べますよ」
「戦闘……」
「ええ、ノイリンに侵攻してきたのです。
迎え撃ち、全滅させました。
生き残りは二頭のみ。二頭とも捕獲しています。
一〇〇〇キロに達する距離を陸路侵攻してきた理由は不明ですが、よほどの理由があったのでしょう。
その理由は調査中です。捕獲した個体はおとなしくしていますが、会話は成立するんですが、要領を得なくてね」
俺は少し笑った。
ブレクトは、大きなショックを受けているようだ。通訳は平然としている。
俺は通訳に尋ねた。
「通訳殿は、使徒と呼ばれる動物をどう思っているのですか?」
「私は、絶対神ジーを信仰したことは一度もありません。
私は天を支える山の精霊の加護を受けています」
「それで、フルギアの国で過ごせるのですか?」
「絶対神ジーは支配層の神で、奴隷や下々は精霊信仰を続けています。
それに、使徒様は子供を奪う。
好きではない」
俺は笑ってしまった。
誰でも食人動物は嫌いなのだ。
俺と通訳との会話は、キラードとブレクトには通じていない。彼は真実を話した。
評議会に金吾とディーノが召喚された。
「スザキ参考人!」
議長が須崎金吾を呼ぶ。
金吾が参考人席まで歩く。数歩の距離だ。
「参考人に尋ねます。
無線機の開発は可能ですか?」
金吾は堂々としている。
「受信機の開発は、それほど難しくはありません。検波には鉱石を使います。
黄鉄鉱や黄銅鉱が定番ですが、アンプを併用して実験中です。
原理的には無電源でも動作しますが、アンプを併用して性能の向上と安定化を目指しているので、電源が必要です。
シリコンダイオードが作れれば、送信機の開発も可能でしょう。
真空管は考えていません。ゲルマニウムダイオードは、考慮する必要があると感じています」
「参考人、説明はもう少し簡単に……」
「……。
簡単に言えば、受信機はもうすぐできますが、送信機はもう少し時間がかかります」
「その理由は、なぜですか?
無線送受信機が必要なことは理解されていますね?」
「十分に理解しています。
ですが、最低でも検波用の二極真空管に相当する部品が必要なんです。
そんなものをこの世界では作れません。
ですから、半導体での開発を目指しているのです。
黄鉄鉱や黄銅鉱は自然界に存在するし、鉱石ラジオ自体は既存の技術ですから、作れることは確かなんです。
ですが、それを実験室レベル、自由工作レベルではなく、実用にまで高めるためにはどうしたらいいかは、かなりの難問なんです」
「無線は必要なんです。
先の戦いで証明されていますね!」
「理解しています。
ですが、もう少し時間をください」
意外だが、ノイリンではスマホが使える。WiFiが使えるのだ。
この設備は他のグループが施設し、我々はかなり高額な料金を払って利用している。
ノイリンには、インターネット・サービス・プロバイダーが存在するのだ!
スマホやタブレット、そしてパソコン自体はかなりの数があり、ノイリン域内では音声通話、データ通信ともに10Gbit/秒で可能。
だから、ノイリンの住民は、蛮族を含めて無線の威力をよく知っている。
そこで、戦闘車輌に無線がないことが、問題視されているのだ。
ノイリン域外にWiFi網を広げるなんて、絶対に不可能なのだから……。
最近のノイリンでは、建材は木材とレンガが主流になっている。
どちらも精霊族から仕入れるのだが、まだまだバラックに近い建物も多い。
この街のみすぼらしさと、WiFiの存在が、精霊族や鬼神族、そして安定した生活基盤を確立している蛮族にはショックらしい。
ノイリンを蔑む目で見た後、自分たちの街では考えられない光景を目撃して、狼狽するようだ。
マーニが金吾からスマホをもらい、それを使っている。もちろん、ちーちゃんも使っている。
その姿を黄金の装飾品で身を飾るフルギア商人が羨望の眼差しで見ているのだ。
小河川に複数の水車と発電機を据えて、電力事業を行っているグループもいる。
俺たちは、太陽光発電とディーゼル発電を併用しているが、燃料プラントや〝密造酒〟蔵では、このグループから電気を買っている。
スパルタカスのグループからMi‐8汎用ヘリコプターを購入したが、理由は「飛べなくても、エンジンが動けばガスタービン発電ができる」との意見から決定された。
だが、機体の状態がよく、エンジンも稼働することから、ヘリコプターとしての使用が検討されている。
ベルタがヘリコプターの操縦ができ、他のグループにも操縦経験者がいる。
テールブームの一部とテールローターが欠損していて、現状では飛行できない。
だが、この機体の交換部品がある。その在処を俺たちは知っていた。
ただ、そこには簡単には行けない。
我々のこういった活動が、キラードたちフルギア人に支配された人々に刺激を与えているらしい。
キラードは、河川用帆船一〇隻を保有する大商人だ。全長四〇メートル、最大幅八メートルに達する大型木造船だ。
キラードは、自分の船に絶対的な自信を持っていた。
彼の自信は過去形だ。
クラウスが建造している三〇メートル級河川舟艇は、艇体前部に大型のランプドアを有し、車輌ごと搭載でき、動力で航行する。
動力は一二〇馬力ガソリンエンジン四基。二軸推進で、最大一八ノットを発揮する。満載でも一五ノット出せる。
艇体は鋼製。
クラウスは、この船を四隻建造予定だ。
さらに、護衛用の砲艇も建造するという。
キラードは、毎日この河川舟艇を建造する船台にやって来る。
クラウスは商品の買い付けはしない。輸送業に徹している。
原則、キラードとは対立しない。
だが、キラードはクラウスが現有する木造舟艇でも脅威に感じているのに、鋼鉄の大型船が現れたら、と不安らしい。
一〇隻すべてを売り払い、その代金でクラウスの新造艇一隻が買えないかと、思案するほど衝撃を受けている。
クラウスのメンバーの一人、エーリッヒは造船技師だった。
木造のレジャー用ヨットが専門だったが、今回は鋼製艇を手がけている。鋼材は鬼神族から、エンジンは黒魔族や白魔族の戦車から、減速ギアはシェプニノに依頼した。
一号艇〝ベルリン号〟は早春に進水する。それを、クラウスよりもキラードが心待ちにしている。
現有の一五メートル級木造艇は、売却の予定だったが、売り出す前にキラードとは別の亡命フルギア商人が買い取りを希望した。
この人物もブルグント人で、ロワール川下流での貿易を生業〈なりわい〉にしていた。
娘の供出を拒んだことから、家族を連れて王都の防衛を突破し、ノイリンに逃げ込んできた。
過去、キラードとは接点がないらしいが、同じ亡命者ということで懇意にしているようだ。
キラードは出し抜かれた思いがあるらしく、エーリッヒに二号艇〝ミュンヘン号〟の売却を激しく迫っている。
キラードの大番頭は、チェスラクの鍛冶場に通い詰めている。
チェスラクが開発したボルトアクション小銃は、従来のレバーアクション式やポンプ式ライフルよりも弾丸威力があり、構造が簡単で、故障が少ない。
この銃の鬼神族への総代理店権がほしいらしい。
厳冬期に入る直前には、六〇口径二〇ミリ機関砲の開発に目処が付き、これの試射を見た大番頭は大喜びだった。
この機関砲のベースは、天才銃器設計家アイモ・ラハティのVKT機関砲だ。
チェスラクは、ラハティ砲と呼んでいる。二〇発箱形弾倉を使う。
対空用に連装砲架と単装砲架がある。
これでようやく黒魔族の飛翔型ドラゴンと対峙することができるようになった。
それと、一二・七×九九ミリNATO弾のベルトリンクが作れるようになった。
こちらは、金沢が頑張ってくれた。
亡命フルギア商人は一〇組を超えるほどに増えたが、彼らは裕福であった。
当然、ノイリンでは大型の商談が増える。建物の建設でも、フルギア商人以外は「取りあえず寒さをしのげれば」なのだが、彼らは大邸宅を希望する。
精霊族や鬼神族の建築業者がやって来るし、片倉も奮闘している。
ノイリンは、ドラキュロの大群に襲われず、黒魔族の飛翔型ドラゴンの空襲を退けられれば、短期間で発展する。
俺は、三人の亡命フルギア商人と面談している。場所は、フルギア商館だ。
いまでは、ここが亡命フルギア商人の拠点になっている。三人はフルギアの中堅クラスの貿易商人だ。
通訳を介して、主にブルグント人のアズレトが話す。
「ハンダ様、フルギアの皇帝陛下はノイリンをこのままにはしておきません。
必ず罰を与えようと……。
どのように戦うおつもりなのです」
「ノイリンは、フルギア皇帝には特別な興味はありません」
「ですが、すでに西の川の上流に関所を設けるという噂があります。
関所ができれば、西の川を遡ることはできません」
この頃、クラウスは護衛用高速砲艇の建造を始めていた。木造船だが、全長三〇メートル弱、全幅五メートル弱、満載排水量は六〇トン近い。
武装は、艇首に四八口径四七ミリ砲と六〇口径の連装二〇ミリ砲を背負い式に装備。艇尾に連装一二・七ミリ機関銃を搭載する。
四基のガソリンエンジンで、三三ノットを発揮。これを新造の輸送用舟艇とペアで使う。
この高速艇ならば、フルギアの関所を攻撃できる。そもそも、フルギアが川に関所を設ける権利なんて存在しない。
純粋に海賊行為だ。
それと、海賊・山賊を装うフルギア正規軍によるノイリン隊商の襲撃は、日々脅威を増している。
現状、物的損害は軽微で、人的損害はないが、いずれ大きな問題になる。
クラウスはそれを見越して、サラディン改を護衛に追加したが、船が四隻に増えれば、足りなくなる。
それと同任務のムンゴは、基本的には輸送車だ。本格的な戦闘には向かない。
だが、この問題は、大佐グループからの提案で解決している。
働き手の成人男性をほとんど失った大佐グループは、四〇歳代の女性を新たなリーダーにした。
彼女は激減したメンバー数と、保有する機材を勘案して、農地耕作による生計の確立を諦め、クラウスの輸送隊護衛という傭兵稼業での生き残りを考えた。
これは、クラウスにとって渡りに船だった。現在はAVGPクーガー一輌だが、新造船が就航すれば随時追加されていく。
俺は、何をどう説明すればいいのか逡巡している。
「フルギアの関所は、ほとんど無意味だと思いますよ。
我々ならば無力化できるので……」
「どのようにして?」
「方法はいくつかありますね。
例えば、空から巨大な爆弾を落とすとか」
「……」
三人は通訳の言葉に絶句している。
「ヒトの肉片さえ残らないでしょう」
「……」
絶句が続く。
「フルギア皇帝の妨害策は、ことごとく破られますから、皇帝の威信は低下していくでしょう。
皇帝は自分の身を守る気持ちがあるなら、ノイリンとは争わないほうがいいのです。
彼がどうあがいても、ノイリンには勝てないのですから……」
「しかし、フルギア帝国軍は精強です。絶対神ジーを祀り、死をも恐れぬ軍隊です」
「死を恐れないなら、死んでもらいましょう。
死人は恐ろしいものではありませんからね。
恐ろしいのは、生きている人間です。
それ以上に恐ろしいのは、人食いです」
「ハンダ様は、フルギア帝国は取るに足りないと?」
「そうではありません。
大帝国ですからね。
ですが、フルギアに数万の人食いが侵入したらどうなります?
帝国は崩壊しますね。
我々はそういう存在なんです。
同族で争ってはいけないのです。白と黒の魔族、そして人食いと戦って生き延びなくてはならないのに、そんなことも理解できず、存在しない神を信じて右往左往する人々など、邪魔でしかないのです。
フルギア人が滅亡してほしいとは思いません。
ですが、フルギア帝国は必要ないでしょう。この世界に……」
「フルギア帝国は滅亡せよと……」
「それは違います。
フルギア帝国が他国を攻めず、人々を誘拐したり、奴隷狩りをしたり、幼い子供を白魔族に引き渡したりしなければいいのです。
畑を耕し、作物を育て、他国と交易し、他種族と共存することを望めば、彼らの生存も保障される……。
しかし、絶対神ジー、つまり白魔族を神の使徒として信奉する限り、幼いヒトの子を白魔族に渡さなくてはならないわけです。
自分たちの子を渡したくないなら、他の人々から奪うしかない……。
大人が奴隷に、子供は白魔族の餌に!
これが、まともな国ですか?」
「フルギアはいま、貢ぎ物が足りず、被支配民に差し出すよう要求しています。
いままでは、こういうことはありませんでした。
戦わずフルギアに降り、絶対神ジーに帰依すれば自由が与えられました。
もちろん、多額の税は払いますが……。税以外にも皇后への貢ぎ物や総督への賄賂も必要ですが、それでも生きてこれました。
ですが……。
被支配民は、追い詰められているのです」
「自由は勝ち取るもの。
与えられるものではないでしょう。
勝ち取って歳月を経ると、その価値を見失うのがヒトですが……」
「ノイリンは……、ご助勢の意思は……?」
「ありません。
ノイリンは中立です。
ただ、友好な関係の方たちとは共同で問題に対処します。
フルギアはヒトの問題です。
精霊族や鬼神族はもちろん、白と黒の魔族とも無関係です。
もしフルギアがノイリンの不利益になる行動、あるいは敵対的行動を起こせば、全力で対処します」
「王都には、空飛ぶドラゴンをも倒す武器があります。
使徒様から授けられたもので、これがあるのでドラゴンは空から攻めません。
ノイリンの機械鳥も、この武器の餌食になってしまうと思います」
「どんな武器です?」
「私は見たことがありません。
しかし、見たものの言によれば、巨大な矢だと。
炎を噴きながら飛んでいくそうです。
使徒様が自らお使いになるそうです」
対空ミサイルか?
あったとしても数は多くないし、永遠に使えるものじゃない。砲よりも寿命は短い。
「それをどこで手に入れるのでしょうね?」
別の男が話し出す。
「ヘリコプターですか?
あれに似たものを使徒様はお持ちです。
とても重いものでも、吊り上げられるそうです。奇妙な形をしています。
私は実際に見ています」
「どんな形ですか?」
「皆さんのヘリコプターとは違い、胴体の部分がありません」
クレーンヘリだ!
ディーノたちのグループが持ち込んだ、クレーンヘリではないのか!
「それを白魔族が操るのですか?」
「はい。
使徒様が操縦されます。
その天馬を使って、天空から機械や武器を運んでこられます」
白魔族も鍋の内側から物資を運んでいる。
その可能性が生まれた。とするならば、強力な武器を持っている蓋然性が生じ、彼らとの戦いはかなりの危険を覚悟する必要がある。
「ヘリコプターを見たのはいつ頃ですか?」
「五年ほど前だと思います」
「それ以前は?」
「使徒様が天空から機械を運んでくる、とは聖典にも書かれていますが、実際に見た、という話は五年かその少し前からだと……」
「それ以前は?」
「何百年も前なら、実際に見た記録はあります」
「何百年前にもあり、数年前から目撃されるようになった?」
「はい。最初の目撃は数百年前で、そのときは使徒様が天空から機械に乗って降臨されたと……」
「それからしばらく途絶えた……?」
「はい。目撃談は途絶えますが、天空からの機械は途絶えずに使徒様がお与えくださいます」
「ヘリコプターは、ヒトが作った機械です。白魔族とは無関係です。
白魔族はヒトからヘリコプターを奪って、使っているのでしょう」
「……」
「私たちのヘリコプターは、Mi‐8という名です」
「ですが、飛びませんね。
使徒様は飛ばれます」
確かにMi‐8汎用ヘリコプターは飛べない。そして、スパルタカスは滅多に現れない。ブルグント人は人がヘリコプターを飛ばす姿を見たことがないのだ。
「ヒトは飛ばせないと?」
「はい。
翼のある機械鳥には驚きましたが、鳥にも翼はあります。ドラゴンにも翼があります。
翼があれば飛べるのでしょう。
しかし、使徒様は翼がなくてもお飛びになる……。
これは、ヒトには真似ができぬことかと」
俺は、なるほどと頷いていた。
翼があれば飛べるが、翼がなくても飛べる白魔族は凄い、と。
論理的には一理ある。
俺は深夜、亡命フルギア商人との会話を食堂で数人に話している。
由加、ベルタ、相馬、金沢、ルサリィ、デュランダル、ウルリカがいる。
「……、というわけで、ブルグント人は白魔族の庇護があるフルギア人を恐れている。
翼のないヘリが飛ぶということは、それほどまでの驚きなんだろうねぇ」
相馬が金沢に言った。
「キンちゃん。あのヘリは飛べないの?」
「テールブームが壊れてるんです。外板がどうのとかじゃなくて、一部が欠けているんです」
「溶接とか、接着剤とか……」
「それができればね」
ルサリィが金沢に尋ねる。
「作り直しちゃうとか?」
「鋼管と合板で作ることはできるけど、重量バランスがね。
ヘリの知識はないし、外見は似せて作り直せても、それが正しいかどうかまではわかんないんで……。
普通に直したって命がけの試験飛行なのに、危険が高すぎるよ」
「じゃぁ、交換しちゃえば?」
「交換?」
「うん。
中央平原北の高地にあったヤツと同じ形だよ」
それは、俺と由加も気付いていた。中央平原北の最初の峠を登った高地に遺棄されていたヘリもMi‐8かその系列だった。
テントを積んでいたヘリだ。
だが、あの土地はドラキュロの密度が高い。回収作業など不可能だ。
「あそこでの回収は無理でしょ。
テールブームを外している間に、食われちゃうよ」
「全部もってきちゃえば。
分解なんてしないで……」
「そりゃ無理だよ。運ぶには、ローターを畳んで、テールブームを外し、トラックに積まないと」
「だからさぁ。」
スパルタのおっちゃんに頼んで、吊り上げてもらえばぁ」
確かに直線距離なら二〇〇キロほどだ。懸吊さえできれば、運んでこれるかもしれない。
実際、スパルタカスはスーパースタリオンに吊り下げて、二〇〇キロ以上飛んできた。
懸吊フックが付けられれば、だが。ローターを取り外したり、折りたたむ時間はない。
総作業時間は一〇分。最大でも二〇分。
どう考えても不可能だ。
「ローターが付いたままじゃ無理でしょ」
「短距離ならぁ。
例えば、氷河湖の島とか。
あそこなら、噛みつきはいないよ」
五〇キロほどの距離で、風のない晴天なら可能か?
自転車程度の低速なら運べるかも。
ベルタが言う。
「これからだけど、ヘリがあるかないかは大きいよ」
由加が思案顔で答える。
「そうなんだけどねぇ」
ルサリィが金沢に「よし。取りに行こう!」と言うと、金沢が「やだよぉ」と答える。
誰もが、二人の気持ちを同時に抱えている。ヘリを回収したいが、同時に恐ろしいのだ。
全員がだいぶ酔っていると、サビーナとセルゲイが夜食の物色で食堂に入ってきた。
ピッツ・スペシャルの整備に時間がかかったらしい。
酔っ払いの戯言、スーパースタリオンで車輪が土に埋まっているMi‐8を吊り上げるという、バカバカしい作戦を彼らは真剣に聞いていた。
彼らが真剣であることを、俺たちは知らなかった。
翌日、アネリアは後席にルサリィを乗せて、最大燃料で離陸する。
ピッツ・スペシャルでは、行動距離ギリギリなのだ。
その日の夕食時、子供たちがスープとパンの食事をしながら、今日の出来事を大人たちに話してくれている。
今夜はどういうわけか、大人が多い。いつも夜遅くまで働く斉木もいる。
クラウスも帰っていた。チェスラクやヴァリオもいる。もっと珍しいことは、今夜はチェスラクの酔いが遅い。
ルサリィが突然。
「ヘリコプターを見に行ってきましたぁ。
まだ、ありましたぁ」
全員、唖然。
だが、俺を含めて数人は意味がわかる。
金沢が「あったって回収なんて無理だよ!」とやや怒った口調。
ところが、ベルタが「やってみる価値はある」と断言。
金吾が「由加さんから聞いたんだけど、うちのヘリと中央平原北にあったヘリとは同型なんだって?
で、無線でスパルタカスに可能性を聞いてみたんだ。
スーパースタリオンでは無理だろう、って。
でも、ハンニバルのMi‐26ならば可能だろう、って言ってました。ペイロードが二〇トンもあるそうなので……」
誰かが「ハンニバルって誰?」と。
俺も知らない。
金吾が説明。
「ハンニバルは、スパルタカスのライバルで、回収屋らしいですよ。
スパルタカスがハンニバルに話をしてみようかと言ってくれてますが……」
この世界には、奇妙な連中がたくさん生き残っている。
俺はヘリの回収に賛成し始めていた。
長子は男で、名はブレクト。
ブルグント人の男という意味だそうだ。
このブレクトが我々に対して敵対的な視線を向けている。
キラードの他の子は女性で、表向きは友好的な態度だ。キラードの妻は言葉は通じないが、我々と積極的に関わろうと努力している。
キラードは四人の解放奴隷を伴っていて、かなり以前からの使用人らしい。この四人も家族を伴っている。
解放奴隷の一人は、キラード家の筆頭家老か大番頭といった感じだ。商いの実務は彼が仕切っている。
キラードが連れてきた一族郎党は、総勢三〇人を超える。
彼以外にも、数人のフルギア商人亡命希望者がいる。
評議会は、突然のフルギア人亡命者の扱いに困惑している。ノイリンと白魔族との戦闘、および白魔族の捕獲が原因ということは明確だが、これとフルギア商人の亡命とが結びつかない。
俺は、キラードの商館を尋ねる。そして、自分の疑問を問うた。長子ブレクトが同席している。
通訳はキラードが雇う解放奴隷が務めた。
「キラードさん。
ここ数日で、貴方を含めて複数のフルギア商人が亡命、つまりノイリンに保護を求めてきました。
なぜ、ですか?」
「私の直接の理由は、皇帝令に背くことになるからです。
家族を助けたかった!」
「理由は、それ以外にはないのですか?」
「私は、ブルグント人です。
皇帝はフルギア人。
ブルグント人は、絶対神ジーへの帰依を条件に生命を保証されています。
ですが、精霊信仰を捨てていません。
私の守護精霊は、豊穣を司る大地の精霊です。
精霊信仰を心の内に秘め、表面上、絶対神ジーを祀っています」
長子ブレクトが激しく何かを言うが、それを通訳が厳しく叱責する。
「ブルグント人は、信仰を捨てても生き残りたかったのです。
軽蔑していただいても結構です。
妻子に刃を突きつけられては、抗う術などなかったのです」
「貴方は、絶対神ジーを信仰していない……」
「信仰していません。
ですが、使徒様は違います。
使徒様は存在し、戦の精霊をも必要としない強力な武器で、その力を示されました。
そして、私たちが持っていない不思議な機械を与えてくださった。
絶対神ジーは信仰していませんが、使徒様が精霊の使徒であることに疑いを持ったことはありませんでした」
「最近になってから、使徒に対して疑いを持った?」
「そうです。
ノイリンの皆さんは、使徒様をまったく恐れていない……。
むしろ、フルギア人を恐れている。
戦いたくない、と。
なぜなのか理解できませんでした。
使徒様の庇護を得たフルギア人を恐れているのではなく、ヒト同士が殺し合うことを恐れているようで……。
ですが、使徒様をまったく恐れてはいない。
その理由は無知が原因と考えていました。
でも、違いました。
ノイリンには戦の精霊を体内に宿す、名将と偉大な司令官がいらっしゃる……。
使徒様など、敵ではなかったのです。
驚き、恐怖に震えました。
ノイリンならば、ブルグント人の信仰を取り戻し、フルギア人に臆せず生きていける、そう思ったのです」
「そういう考えのヒトが他にもいる?」
「わかりません。
しかし、貿易商人の多くは、王都に人質を残しています。
人質を脱出させられれば、他国の庇護を求めることはあるでしょう。
しかし、いままでは使徒様の庇護を得たフルギアに、敵う人々などいるはずはないと確信していたのです」
「いまは違う?」
「はい。
ノイリンは特別なのだと……」
「私に聞きたいことはありますか?」
「ハンダ様の精霊は?」
「私は不信心で。神も精霊も信仰していないのです」
「……。
信仰がない……」
「えぇ。不信心なんで、神の使徒なんていう存在を信じません。
信じないがそこに存在する。
存在する以上、神以外の理由を追及するわけです。そして、真実を見つける。
実態がわかれば対処の方法があり、それを実行すればいい……」
「神を信じないから、神に勝てると?」
「いいえ、簡単に神を信じないから、似非神を見破れるんですよ」
「使徒様は、偽物?」
「私のメンバーは、貴方たちが使徒と呼ぶ食人動物をオークと呼んでいます」
「オーク……?」
「何万年も前から食人しているとか。
我々の遠い遠い祖先は、彼らと勇敢に戦い勝利を得たこともあるそうです」
「……」
「偉大な種族、は知っていますか?」
「……」
「精霊族や鬼神族に、オークとの戦い方を教えたそうです。
私たちとは縁浅からぬ人々のようです」
「私は、間違っている……」
「それは、貴方が判断することです」
ブレクトは黙り込んでいる。
彼が信じていることとは、まったく異次元の会話が交わされている。
使徒は単なる食人動物で、この動物と戦うための手段を精霊族と鬼神族に授けた〝偉大な種族〟がいる……。
ならば、神の加護は精霊族と鬼神族に授けられたのか?
神の使徒と信じていた存在は、悪魔だったのか?
自分は悪魔を崇拝(するふりを)し、悪魔の教えを信じ(るふりをし)、悪魔の手先となっていたのか?
ブレクトが唐突に口を開く。
「ハンダ様に尋ねます。
使徒様は、本当は悪魔であると?」
「いいえ、悪魔ではありません。
ただの動物です。
ウシやウマと同じです。
身体的特徴は、ヒトと大差ありません。
ただの動物です」
「使徒様は、ウシやウマと同じ……」
「不思議な動物ですね。
捕獲した個体を調べていますが、情報は相互に伝達できますが、感情は互いに察知できない。
イヌほども通じ合うものがない」
「捕獲……」
「ええ、この間の戦闘で、二頭捕獲しました。生きたままね。
与えた餌はよく食べますよ」
「戦闘……」
「ええ、ノイリンに侵攻してきたのです。
迎え撃ち、全滅させました。
生き残りは二頭のみ。二頭とも捕獲しています。
一〇〇〇キロに達する距離を陸路侵攻してきた理由は不明ですが、よほどの理由があったのでしょう。
その理由は調査中です。捕獲した個体はおとなしくしていますが、会話は成立するんですが、要領を得なくてね」
俺は少し笑った。
ブレクトは、大きなショックを受けているようだ。通訳は平然としている。
俺は通訳に尋ねた。
「通訳殿は、使徒と呼ばれる動物をどう思っているのですか?」
「私は、絶対神ジーを信仰したことは一度もありません。
私は天を支える山の精霊の加護を受けています」
「それで、フルギアの国で過ごせるのですか?」
「絶対神ジーは支配層の神で、奴隷や下々は精霊信仰を続けています。
それに、使徒様は子供を奪う。
好きではない」
俺は笑ってしまった。
誰でも食人動物は嫌いなのだ。
俺と通訳との会話は、キラードとブレクトには通じていない。彼は真実を話した。
評議会に金吾とディーノが召喚された。
「スザキ参考人!」
議長が須崎金吾を呼ぶ。
金吾が参考人席まで歩く。数歩の距離だ。
「参考人に尋ねます。
無線機の開発は可能ですか?」
金吾は堂々としている。
「受信機の開発は、それほど難しくはありません。検波には鉱石を使います。
黄鉄鉱や黄銅鉱が定番ですが、アンプを併用して実験中です。
原理的には無電源でも動作しますが、アンプを併用して性能の向上と安定化を目指しているので、電源が必要です。
シリコンダイオードが作れれば、送信機の開発も可能でしょう。
真空管は考えていません。ゲルマニウムダイオードは、考慮する必要があると感じています」
「参考人、説明はもう少し簡単に……」
「……。
簡単に言えば、受信機はもうすぐできますが、送信機はもう少し時間がかかります」
「その理由は、なぜですか?
無線送受信機が必要なことは理解されていますね?」
「十分に理解しています。
ですが、最低でも検波用の二極真空管に相当する部品が必要なんです。
そんなものをこの世界では作れません。
ですから、半導体での開発を目指しているのです。
黄鉄鉱や黄銅鉱は自然界に存在するし、鉱石ラジオ自体は既存の技術ですから、作れることは確かなんです。
ですが、それを実験室レベル、自由工作レベルではなく、実用にまで高めるためにはどうしたらいいかは、かなりの難問なんです」
「無線は必要なんです。
先の戦いで証明されていますね!」
「理解しています。
ですが、もう少し時間をください」
意外だが、ノイリンではスマホが使える。WiFiが使えるのだ。
この設備は他のグループが施設し、我々はかなり高額な料金を払って利用している。
ノイリンには、インターネット・サービス・プロバイダーが存在するのだ!
スマホやタブレット、そしてパソコン自体はかなりの数があり、ノイリン域内では音声通話、データ通信ともに10Gbit/秒で可能。
だから、ノイリンの住民は、蛮族を含めて無線の威力をよく知っている。
そこで、戦闘車輌に無線がないことが、問題視されているのだ。
ノイリン域外にWiFi網を広げるなんて、絶対に不可能なのだから……。
最近のノイリンでは、建材は木材とレンガが主流になっている。
どちらも精霊族から仕入れるのだが、まだまだバラックに近い建物も多い。
この街のみすぼらしさと、WiFiの存在が、精霊族や鬼神族、そして安定した生活基盤を確立している蛮族にはショックらしい。
ノイリンを蔑む目で見た後、自分たちの街では考えられない光景を目撃して、狼狽するようだ。
マーニが金吾からスマホをもらい、それを使っている。もちろん、ちーちゃんも使っている。
その姿を黄金の装飾品で身を飾るフルギア商人が羨望の眼差しで見ているのだ。
小河川に複数の水車と発電機を据えて、電力事業を行っているグループもいる。
俺たちは、太陽光発電とディーゼル発電を併用しているが、燃料プラントや〝密造酒〟蔵では、このグループから電気を買っている。
スパルタカスのグループからMi‐8汎用ヘリコプターを購入したが、理由は「飛べなくても、エンジンが動けばガスタービン発電ができる」との意見から決定された。
だが、機体の状態がよく、エンジンも稼働することから、ヘリコプターとしての使用が検討されている。
ベルタがヘリコプターの操縦ができ、他のグループにも操縦経験者がいる。
テールブームの一部とテールローターが欠損していて、現状では飛行できない。
だが、この機体の交換部品がある。その在処を俺たちは知っていた。
ただ、そこには簡単には行けない。
我々のこういった活動が、キラードたちフルギア人に支配された人々に刺激を与えているらしい。
キラードは、河川用帆船一〇隻を保有する大商人だ。全長四〇メートル、最大幅八メートルに達する大型木造船だ。
キラードは、自分の船に絶対的な自信を持っていた。
彼の自信は過去形だ。
クラウスが建造している三〇メートル級河川舟艇は、艇体前部に大型のランプドアを有し、車輌ごと搭載でき、動力で航行する。
動力は一二〇馬力ガソリンエンジン四基。二軸推進で、最大一八ノットを発揮する。満載でも一五ノット出せる。
艇体は鋼製。
クラウスは、この船を四隻建造予定だ。
さらに、護衛用の砲艇も建造するという。
キラードは、毎日この河川舟艇を建造する船台にやって来る。
クラウスは商品の買い付けはしない。輸送業に徹している。
原則、キラードとは対立しない。
だが、キラードはクラウスが現有する木造舟艇でも脅威に感じているのに、鋼鉄の大型船が現れたら、と不安らしい。
一〇隻すべてを売り払い、その代金でクラウスの新造艇一隻が買えないかと、思案するほど衝撃を受けている。
クラウスのメンバーの一人、エーリッヒは造船技師だった。
木造のレジャー用ヨットが専門だったが、今回は鋼製艇を手がけている。鋼材は鬼神族から、エンジンは黒魔族や白魔族の戦車から、減速ギアはシェプニノに依頼した。
一号艇〝ベルリン号〟は早春に進水する。それを、クラウスよりもキラードが心待ちにしている。
現有の一五メートル級木造艇は、売却の予定だったが、売り出す前にキラードとは別の亡命フルギア商人が買い取りを希望した。
この人物もブルグント人で、ロワール川下流での貿易を生業〈なりわい〉にしていた。
娘の供出を拒んだことから、家族を連れて王都の防衛を突破し、ノイリンに逃げ込んできた。
過去、キラードとは接点がないらしいが、同じ亡命者ということで懇意にしているようだ。
キラードは出し抜かれた思いがあるらしく、エーリッヒに二号艇〝ミュンヘン号〟の売却を激しく迫っている。
キラードの大番頭は、チェスラクの鍛冶場に通い詰めている。
チェスラクが開発したボルトアクション小銃は、従来のレバーアクション式やポンプ式ライフルよりも弾丸威力があり、構造が簡単で、故障が少ない。
この銃の鬼神族への総代理店権がほしいらしい。
厳冬期に入る直前には、六〇口径二〇ミリ機関砲の開発に目処が付き、これの試射を見た大番頭は大喜びだった。
この機関砲のベースは、天才銃器設計家アイモ・ラハティのVKT機関砲だ。
チェスラクは、ラハティ砲と呼んでいる。二〇発箱形弾倉を使う。
対空用に連装砲架と単装砲架がある。
これでようやく黒魔族の飛翔型ドラゴンと対峙することができるようになった。
それと、一二・七×九九ミリNATO弾のベルトリンクが作れるようになった。
こちらは、金沢が頑張ってくれた。
亡命フルギア商人は一〇組を超えるほどに増えたが、彼らは裕福であった。
当然、ノイリンでは大型の商談が増える。建物の建設でも、フルギア商人以外は「取りあえず寒さをしのげれば」なのだが、彼らは大邸宅を希望する。
精霊族や鬼神族の建築業者がやって来るし、片倉も奮闘している。
ノイリンは、ドラキュロの大群に襲われず、黒魔族の飛翔型ドラゴンの空襲を退けられれば、短期間で発展する。
俺は、三人の亡命フルギア商人と面談している。場所は、フルギア商館だ。
いまでは、ここが亡命フルギア商人の拠点になっている。三人はフルギアの中堅クラスの貿易商人だ。
通訳を介して、主にブルグント人のアズレトが話す。
「ハンダ様、フルギアの皇帝陛下はノイリンをこのままにはしておきません。
必ず罰を与えようと……。
どのように戦うおつもりなのです」
「ノイリンは、フルギア皇帝には特別な興味はありません」
「ですが、すでに西の川の上流に関所を設けるという噂があります。
関所ができれば、西の川を遡ることはできません」
この頃、クラウスは護衛用高速砲艇の建造を始めていた。木造船だが、全長三〇メートル弱、全幅五メートル弱、満載排水量は六〇トン近い。
武装は、艇首に四八口径四七ミリ砲と六〇口径の連装二〇ミリ砲を背負い式に装備。艇尾に連装一二・七ミリ機関銃を搭載する。
四基のガソリンエンジンで、三三ノットを発揮。これを新造の輸送用舟艇とペアで使う。
この高速艇ならば、フルギアの関所を攻撃できる。そもそも、フルギアが川に関所を設ける権利なんて存在しない。
純粋に海賊行為だ。
それと、海賊・山賊を装うフルギア正規軍によるノイリン隊商の襲撃は、日々脅威を増している。
現状、物的損害は軽微で、人的損害はないが、いずれ大きな問題になる。
クラウスはそれを見越して、サラディン改を護衛に追加したが、船が四隻に増えれば、足りなくなる。
それと同任務のムンゴは、基本的には輸送車だ。本格的な戦闘には向かない。
だが、この問題は、大佐グループからの提案で解決している。
働き手の成人男性をほとんど失った大佐グループは、四〇歳代の女性を新たなリーダーにした。
彼女は激減したメンバー数と、保有する機材を勘案して、農地耕作による生計の確立を諦め、クラウスの輸送隊護衛という傭兵稼業での生き残りを考えた。
これは、クラウスにとって渡りに船だった。現在はAVGPクーガー一輌だが、新造船が就航すれば随時追加されていく。
俺は、何をどう説明すればいいのか逡巡している。
「フルギアの関所は、ほとんど無意味だと思いますよ。
我々ならば無力化できるので……」
「どのようにして?」
「方法はいくつかありますね。
例えば、空から巨大な爆弾を落とすとか」
「……」
三人は通訳の言葉に絶句している。
「ヒトの肉片さえ残らないでしょう」
「……」
絶句が続く。
「フルギア皇帝の妨害策は、ことごとく破られますから、皇帝の威信は低下していくでしょう。
皇帝は自分の身を守る気持ちがあるなら、ノイリンとは争わないほうがいいのです。
彼がどうあがいても、ノイリンには勝てないのですから……」
「しかし、フルギア帝国軍は精強です。絶対神ジーを祀り、死をも恐れぬ軍隊です」
「死を恐れないなら、死んでもらいましょう。
死人は恐ろしいものではありませんからね。
恐ろしいのは、生きている人間です。
それ以上に恐ろしいのは、人食いです」
「ハンダ様は、フルギア帝国は取るに足りないと?」
「そうではありません。
大帝国ですからね。
ですが、フルギアに数万の人食いが侵入したらどうなります?
帝国は崩壊しますね。
我々はそういう存在なんです。
同族で争ってはいけないのです。白と黒の魔族、そして人食いと戦って生き延びなくてはならないのに、そんなことも理解できず、存在しない神を信じて右往左往する人々など、邪魔でしかないのです。
フルギア人が滅亡してほしいとは思いません。
ですが、フルギア帝国は必要ないでしょう。この世界に……」
「フルギア帝国は滅亡せよと……」
「それは違います。
フルギア帝国が他国を攻めず、人々を誘拐したり、奴隷狩りをしたり、幼い子供を白魔族に引き渡したりしなければいいのです。
畑を耕し、作物を育て、他国と交易し、他種族と共存することを望めば、彼らの生存も保障される……。
しかし、絶対神ジー、つまり白魔族を神の使徒として信奉する限り、幼いヒトの子を白魔族に渡さなくてはならないわけです。
自分たちの子を渡したくないなら、他の人々から奪うしかない……。
大人が奴隷に、子供は白魔族の餌に!
これが、まともな国ですか?」
「フルギアはいま、貢ぎ物が足りず、被支配民に差し出すよう要求しています。
いままでは、こういうことはありませんでした。
戦わずフルギアに降り、絶対神ジーに帰依すれば自由が与えられました。
もちろん、多額の税は払いますが……。税以外にも皇后への貢ぎ物や総督への賄賂も必要ですが、それでも生きてこれました。
ですが……。
被支配民は、追い詰められているのです」
「自由は勝ち取るもの。
与えられるものではないでしょう。
勝ち取って歳月を経ると、その価値を見失うのがヒトですが……」
「ノイリンは……、ご助勢の意思は……?」
「ありません。
ノイリンは中立です。
ただ、友好な関係の方たちとは共同で問題に対処します。
フルギアはヒトの問題です。
精霊族や鬼神族はもちろん、白と黒の魔族とも無関係です。
もしフルギアがノイリンの不利益になる行動、あるいは敵対的行動を起こせば、全力で対処します」
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使徒様が自らお使いになるそうです」
対空ミサイルか?
あったとしても数は多くないし、永遠に使えるものじゃない。砲よりも寿命は短い。
「それをどこで手に入れるのでしょうね?」
別の男が話し出す。
「ヘリコプターですか?
あれに似たものを使徒様はお持ちです。
とても重いものでも、吊り上げられるそうです。奇妙な形をしています。
私は実際に見ています」
「どんな形ですか?」
「皆さんのヘリコプターとは違い、胴体の部分がありません」
クレーンヘリだ!
ディーノたちのグループが持ち込んだ、クレーンヘリではないのか!
「それを白魔族が操るのですか?」
「はい。
使徒様が操縦されます。
その天馬を使って、天空から機械や武器を運んでこられます」
白魔族も鍋の内側から物資を運んでいる。
その可能性が生まれた。とするならば、強力な武器を持っている蓋然性が生じ、彼らとの戦いはかなりの危険を覚悟する必要がある。
「ヘリコプターを見たのはいつ頃ですか?」
「五年ほど前だと思います」
「それ以前は?」
「使徒様が天空から機械を運んでくる、とは聖典にも書かれていますが、実際に見た、という話は五年かその少し前からだと……」
「それ以前は?」
「何百年も前なら、実際に見た記録はあります」
「何百年前にもあり、数年前から目撃されるようになった?」
「はい。最初の目撃は数百年前で、そのときは使徒様が天空から機械に乗って降臨されたと……」
「それからしばらく途絶えた……?」
「はい。目撃談は途絶えますが、天空からの機械は途絶えずに使徒様がお与えくださいます」
「ヘリコプターは、ヒトが作った機械です。白魔族とは無関係です。
白魔族はヒトからヘリコプターを奪って、使っているのでしょう」
「……」
「私たちのヘリコプターは、Mi‐8という名です」
「ですが、飛びませんね。
使徒様は飛ばれます」
確かにMi‐8汎用ヘリコプターは飛べない。そして、スパルタカスは滅多に現れない。ブルグント人は人がヘリコプターを飛ばす姿を見たことがないのだ。
「ヒトは飛ばせないと?」
「はい。
翼のある機械鳥には驚きましたが、鳥にも翼はあります。ドラゴンにも翼があります。
翼があれば飛べるのでしょう。
しかし、使徒様は翼がなくてもお飛びになる……。
これは、ヒトには真似ができぬことかと」
俺は、なるほどと頷いていた。
翼があれば飛べるが、翼がなくても飛べる白魔族は凄い、と。
論理的には一理ある。
俺は深夜、亡命フルギア商人との会話を食堂で数人に話している。
由加、ベルタ、相馬、金沢、ルサリィ、デュランダル、ウルリカがいる。
「……、というわけで、ブルグント人は白魔族の庇護があるフルギア人を恐れている。
翼のないヘリが飛ぶということは、それほどまでの驚きなんだろうねぇ」
相馬が金沢に言った。
「キンちゃん。あのヘリは飛べないの?」
「テールブームが壊れてるんです。外板がどうのとかじゃなくて、一部が欠けているんです」
「溶接とか、接着剤とか……」
「それができればね」
ルサリィが金沢に尋ねる。
「作り直しちゃうとか?」
「鋼管と合板で作ることはできるけど、重量バランスがね。
ヘリの知識はないし、外見は似せて作り直せても、それが正しいかどうかまではわかんないんで……。
普通に直したって命がけの試験飛行なのに、危険が高すぎるよ」
「じゃぁ、交換しちゃえば?」
「交換?」
「うん。
中央平原北の高地にあったヤツと同じ形だよ」
それは、俺と由加も気付いていた。中央平原北の最初の峠を登った高地に遺棄されていたヘリもMi‐8かその系列だった。
テントを積んでいたヘリだ。
だが、あの土地はドラキュロの密度が高い。回収作業など不可能だ。
「あそこでの回収は無理でしょ。
テールブームを外している間に、食われちゃうよ」
「全部もってきちゃえば。
分解なんてしないで……」
「そりゃ無理だよ。運ぶには、ローターを畳んで、テールブームを外し、トラックに積まないと」
「だからさぁ。」
スパルタのおっちゃんに頼んで、吊り上げてもらえばぁ」
確かに直線距離なら二〇〇キロほどだ。懸吊さえできれば、運んでこれるかもしれない。
実際、スパルタカスはスーパースタリオンに吊り下げて、二〇〇キロ以上飛んできた。
懸吊フックが付けられれば、だが。ローターを取り外したり、折りたたむ時間はない。
総作業時間は一〇分。最大でも二〇分。
どう考えても不可能だ。
「ローターが付いたままじゃ無理でしょ」
「短距離ならぁ。
例えば、氷河湖の島とか。
あそこなら、噛みつきはいないよ」
五〇キロほどの距離で、風のない晴天なら可能か?
自転車程度の低速なら運べるかも。
ベルタが言う。
「これからだけど、ヘリがあるかないかは大きいよ」
由加が思案顔で答える。
「そうなんだけどねぇ」
ルサリィが金沢に「よし。取りに行こう!」と言うと、金沢が「やだよぉ」と答える。
誰もが、二人の気持ちを同時に抱えている。ヘリを回収したいが、同時に恐ろしいのだ。
全員がだいぶ酔っていると、サビーナとセルゲイが夜食の物色で食堂に入ってきた。
ピッツ・スペシャルの整備に時間がかかったらしい。
酔っ払いの戯言、スーパースタリオンで車輪が土に埋まっているMi‐8を吊り上げるという、バカバカしい作戦を彼らは真剣に聞いていた。
彼らが真剣であることを、俺たちは知らなかった。
翌日、アネリアは後席にルサリィを乗せて、最大燃料で離陸する。
ピッツ・スペシャルでは、行動距離ギリギリなのだ。
その日の夕食時、子供たちがスープとパンの食事をしながら、今日の出来事を大人たちに話してくれている。
今夜はどういうわけか、大人が多い。いつも夜遅くまで働く斉木もいる。
クラウスも帰っていた。チェスラクやヴァリオもいる。もっと珍しいことは、今夜はチェスラクの酔いが遅い。
ルサリィが突然。
「ヘリコプターを見に行ってきましたぁ。
まだ、ありましたぁ」
全員、唖然。
だが、俺を含めて数人は意味がわかる。
金沢が「あったって回収なんて無理だよ!」とやや怒った口調。
ところが、ベルタが「やってみる価値はある」と断言。
金吾が「由加さんから聞いたんだけど、うちのヘリと中央平原北にあったヘリとは同型なんだって?
で、無線でスパルタカスに可能性を聞いてみたんだ。
スーパースタリオンでは無理だろう、って。
でも、ハンニバルのMi‐26ならば可能だろう、って言ってました。ペイロードが二〇トンもあるそうなので……」
誰かが「ハンニバルって誰?」と。
俺も知らない。
金吾が説明。
「ハンニバルは、スパルタカスのライバルで、回収屋らしいですよ。
スパルタカスがハンニバルに話をしてみようかと言ってくれてますが……」
この世界には、奇妙な連中がたくさん生き残っている。
俺はヘリの回収に賛成し始めていた。
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