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異世界編
02-024 王都攻撃
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中部ヴァロワ全体が同一の歩調で発展しているわけではない。
土地を手に入れることができた解放奴隷たちが多い東部国境付近と、一領具足の旧領地では体制が異なる。
カイ・クラミは悩みに悩んで、東部国境付近を統治する“総督”としてベングト・バーリを指名した。
識字率が極端に低い解放奴隷たちを保護するには、これしか方法がなかった。
西部は小規模自作農が多く、土地が細分化されているので大規模農業は適さなかった。
農耕馬は東部よりもはるかに多く、西部は西部らしく発展していく道を選ぶ。
ただ、機械化農業への関心は高く、農地の集約など改革にも興味はあるようだ。時間はかかるが、社会の変化に期待はある。
ただ、街にも、農村にも、一家言ある中産階級がある程度育っているので、民主化のテンポは早かった。
そして、また今年も収穫期を迎えた。
収穫が終われば、戦争の季節だ。今年は、ダルリアダ国王が攻めてくる。
ダルリアダの王都キララギアを発った国王は、すでにヴァロワの王都レイディに到着している。
コラリーは緊張している。
麗林梓から聞いた作戦が、あまりにも驚くものだったからだ。
「王都を爆撃する」
麗林梓の一言は、コラリーを驚かせた。
「アズサ、レイディを破壊するの?
だめだよ!」
「レイディじゃない。
キララギアだよ。キララギアの王城を爆撃する。コラリーのチームがやるんだ」
オリバ準男爵の次男バティスは、驚きのあまり言葉を発せなかった。父親から「鳥瞰魔法の魔女を守れ」と命じられて以降、前線には出ずひたすらコラリーたちを守ってきた。
彼の兄ラロは嫡男だが、小柄だ。力も弱い。対してバティスは大柄で、絵に描いたような戦士だ。
コラリーは戦場で武勲を上げていないバティスを選んだ。彼は、それに感謝している。収穫が終わったら婚姻の儀が行われる予定だし、嫡男ではない彼は一領具足になるつもりだった。
コラリーたち鳥瞰魔法使いと彼女たちドローンパイロットを守る護衛隊は、同じテントの中で異世界の軍用ドローンを見ていた。
「これは、グローバルホークという軍用のドローン。無人の爆撃機ね」
ミサイルが発射される。
「翼の下から撃たれた炎を出す矢がミサイルという爆弾。
これが、ミサイルが命中する瞬間。
ミサイルなんてないから、機体ごと目標に突入する。弾頭は800キロ。穀物袋26個分の重さ。
私たちは、自爆ドローンでダルリアダの王城を破壊する」
バディスは震えた。いかに勇敢な騎士でも、敵の城の内部を破壊するなんてできない。鳥瞰魔法は単なる“覗き見”だと考えていた。
その効果は認めるし、重要性もわかる。しかし、前線で戦うことはできない、と考えていた。
コラリーは梓と出会ったとき、泣きながらこう言った。
「母上も、姉上も、父上も、兄上も殺されちゃった。
私は生き残ったけど、私は何もできない。
チビだし、やせっぽちだし……。
お腹いっぱい食べたって、大きな剣を振り下ろす騎士には勝てない。
勇気はないし、臆病だし、痛いのイヤだし……。
でも、家族の仇を討ちたいの!」
そして、彼女は最初のドローンパイロットになった。
「コラリーは、ダルリアダ国王のタマを蹴飛ばす最初のヴァロワ人になる。
だけど、怖くはないし、痛くもないから安心して」
梓が約束した通り、コラリーと彼女のチームは大陸西部最強の軍事国家ダルリアダ王国国王の居城を攻める最初のヴァロワ人になる。
バティスが気付く。
「アズサ、質問がある」
「何だろう?
バティスが質問なんて、珍しいね」
「もし、もしだ。
この作戦をダルリアダが気付いたら?」
「コラリーたちは、狙われる。
どんなことをしてでも殺そうとするだろうね。戦争なんだから」
「俺たちがチームを守る。
生命に替えてでも、必ず守る。
それと、この作戦は秘匿する必要がある。翼のあるドローンはダルリアダ国内を偵察するためだと説明して、爆弾のことは誰にも言わない。
親兄弟であっても、絶対に話してはダメだ。そのために今後、この基地から、誰も出てはいけない。
出ていいのはアズサだけ」
これが、基地警備の責任者バティスの命令だった。
ダルリアダ国王は、洗練されたヴァロワ王家の祭事・儀式を堪能していて、なかなか腰を上げようとしなかった。
国王は、この間が、中部ヴァロワを恐怖させると確信していた。
一方、中部ヴァロワの臨時政府は、この時間を有効に使っていた。
砲身の長さは、実質は材料の量で決まるのではなく、砲身の削り出し時間に制限された。
フラン曹長派の造兵技師が望んだ35口径の砲身は、諦めなくてはならなかった。砲身の製造に時間がかかりすぎるのだ。鋼鉄柱をくり抜いて砲身を造るのだが、砲身が長くなると必然的に時間がかかる。
現実的な砲身の長さは32口径が限界だった。
この32口径75ミリ砲は、フラン曹長派の砲兵部隊とオリバ準男爵派の河川船隊に配備された。
22口径型も製造が続けられ、歩兵砲として歩兵部隊に引き渡された。
オリバ準男爵は、この砲を積むために20メートル級砲艇を開発した。
この砲艇の初号艇は、強硬に「川を下りたくば、税を払え」と主張する関所役人に対して、黄金の砲弾をカルフール城に向けて発射した。
艇長は「ならくれてやる。だが、藩王自から受け取れ。これから届けてやる」と言い、自ら砲を操作し、黄金製の砲弾を発射する。
炸薬のない無垢の弾だが、城壁を突き抜け、塔の壁に突き刺さった。
以後、中部ヴァロワの船は、公船も、民間船も一切の誰何を受けずに往来できるようになった。
この黄金砲弾事件は、アリエ川流域に知れ渡り、中部ヴァロワの国家としての威信を示した。
これにカイ・クラミは頭を抱え、ダルリアダ国王は驚き慌てた。
機関銃の製造も限定的だった。ボルトアクション5連発銃の製造を優先しているが、機関銃が必要なことは明らかだ。
ピックアップのシャーシと動力系を利用して製造した前輪がタイヤで後輪が履帯(クローラー)の自走山砲は8輌あった。
これは、ロレーヌ準男爵派が装備している。同じ車体は他に8輌あり、これには機関銃が搭載され、ガンキャリアとされた。
この16輌は、異世界初の装甲部隊となった。
キャブオーバー型の後輪駆動1トントラックの中古は、比較的入手しやすかった。後輪を履帯に改造することで、牽引力の強化と不整地での機動性をある程度確保できた。
これらの車輌は、歩兵砲や山砲の牽引に使われた。馬牽きは廃止され、完全に機械化された。
それでも、ダルリアダ国王の大軍を迎えるには不十分だ。
それと、中部ヴァロワ西側の街人には、東側に「占領された」とのわだかまりがあった。そのため、対ダルリアダには全面的な協力は得られにくかった。
アリエ川に残る橋に使者がやって来た。
ダルリアダ国王の使者は、北岸に豪奢なテントを張り、中部ヴァバロワの接遇者の来訪を待つ。
使者はダルリアダ国教の最高位司祭で、国家の権力順位では国王に次ぐ。
となると、中部ヴァロワ側もそれなりの人物が会うべきだ。
だが、司祭はダルリアダ王朝の要人ではない。ここも難しい。権威は国内第2位だが、王朝の要人ではない。王族や王側近とは違う。
そこで、臨時政府代表カイ・クラミは思い付く。中部ヴァロワで絶対的な権威を持ちながら、政権からは距離を置く人物がいる。
一領具足総当主ショウ・レイリンだ。
翔太はわけのわからない宗教家と会うことは、気が進まないが、周囲から責め立てられて、渋々同意した。
会見のために彼が用意した服装は、ありきたりの森林迷彩のミリタリージャケットだった。
会見には最低限の護衛が同行し、隊長はピエンベニダが務め、副長としてアネルマが同行する。書記には諸国の事情に精通しているエイミス伯爵が志願してくれた。
一領具足でないのは、エイミス伯爵と彼の三女だけだった。
翔太はフルオープンの三菱ジープJ55の助手席に乗っている。運転はエイラ・アルミラ、後部荷台にはアネルマ・レイリンが機関銃を構える。
接遇者の車列は3輌。先頭はジープJ55、ダットラ、書記を乗せたデリカワゴンが続く。総勢12人で編制していた。
貴族として貴人と面会するための正装をしているのは、エイミス伯爵だけだった。彼の三女は、一領具足のパートタイム女性兵と同じ服装をしている。
伯爵は彼女の姿を見て、長女と次女とは違うたくましさに感心していた。
豪奢な天幕に近付くと、護衛兵から誰何される。護衛兵は、明らかに僧兵だ。
「何者か!」
翔太はジープの助手席から降りる。
「中部ヴァロワ、一領具足総当主ショウ・レイリンだ」
僧兵たちがざわめく。
翔太が続ける。
「使者殿に目通り願いたい」
「司祭様は、祈りの時間である。
しばし待たれよ」
一領具足はあまり宗教的ではないし、中部ヴァロワには宗教的色彩が薄い。原始宗教的な自然崇拝は残るが、洗練された宗教文化はない。
しかし、ヴァロワ北部や南部は違うらしい。絶対的な唯一神への強烈な信仰がある。
ダルリアダも同じだ。
この唯一絶対神信仰は4派あり、神自体を信仰する正教、預言者を重視する3派がある。預言者は複数おり、どの預言者を最上位とするかで3派に分かれる。
ダルリアダ国教は、預言者シャルマを最上位とする。
司祭は手を差し出す。手の甲にキスせよと。
翔太は軽く断る。
司祭が「神を信じぬ不信心者め」と彼にとっての侮辱をする。
翔太は「司祭殿は神と会ったことがあるのか?」と問う。
司祭が目を剥く。翔太が笑う。
「神がいるなら連れてこい。
俺が説教してやる」
僧兵たちが驚く。
司祭が脅す。
「不信心者は、地獄に行く。神の元には行けぬ」
翔太は動じない。
「天国も、地獄も、存在しない。人が死ねば肉体は微生物によって分解され、最終的には本来の元素に戻る。
そして、新たな生命の糧となる。
死ねば魂も消える。
人は死ねば消滅する。だから、生きて何をするかだ。それが、存在した証になる」
司祭は何も言い返せなかった。
「不信心者!」と罵っただけだった。
翔太は話題を変える。草原の草を揺らす秋風が心地いい。
「で、ダルリアダの国王の口上を聞こう」
司祭は、本題に入らなかった。
「中部ヴァロワには、魔女がいるそうだな。
悪魔に魂を売った魔女を捕らえたら、火炙りにする」
翔太はもう少し、司祭との問答に付き合うことにする。
「魔女か?
鳥瞰魔法使いのことだな。
彼女たちは魔女ではない。科学技術を馳駆しする戦士だ」
そう言うと、頭上を指差す。
通常よりもだいぶ低く、ドローンが飛んでいる。
「昼夜の別なく、司祭殿たちの動向は見張っていた。
何回小便したかもわかっている」
僧兵が慌てて弓に矢をつがえると、ドローンは音もなく急上昇していく。
「あれは機械だ。樹脂と金属でできている。人が作ったもので、魔法ではない」
司祭がにらみつける。
「この世界は神がお作りになった……」
翔太が否定する。
「それは違う。50億年前にビッグバンが起きて、宇宙が作られた。我々が住む大地と海ができたのは45億年前。生物は海の中で生まれた。
神が作ったのではない。自然現象だ」
司祭は言い返せない。
「神は自分に似せて人をお作りになった」
翔太がまた否定する。
「それも違う。
人は200万年前にグレートリフトバレーで生まれた。我々の直接の祖先は、7万年前に故郷を旅立ち、大陸全域に広まった。この何世代にもわたる壮大で生命がけの旅は、グレートジャーニーと呼ばれる」
司祭は焦る。僧兵たちが動揺しているのだ。明らかに翔太からもっと話を聞きたいと思い始めている。
司祭は生臭い話をしなければならなかった。問答に追い詰められたからだ。
「国王陛下は、慈悲のあるお方。
降伏すれば、生命だけは助けよう。
その後は税を納め、よき民となれ」
翔太は直接的には答えなかった。
「封建制を否定する。
王などいらない。王に存在価値はない。王制は必要悪にもならない」
司祭が動揺する。
「それでは、誰が国を治めるのだ!」
翔太は、知識人である司祭が知らない話をする。
「民主制、共和制を知っているか?
古代からある政治体制だ。
民が国を治める制度で、国家は国民によって統治される。絶対普遍の政治体制だ。
まさか、知らないのか?」
司祭に残されたのは暴力だけだ。
「国王陛下は、10万の兵を指揮しておられる。
そなたたちは、せいぜい1万がいいところだろう。
抗っても無駄だ」
翔太も脅す。
「ダルリアダ兵は1兵たりともアリエ川を渡らせない。
だが、本来の戦場はここじゃない。
王城だ。
俺たちは、キララギアのダルリアダ国王の居城を攻める」
司祭が驚く。
「バカな!
できるわけがない」
翔太が徴発する。
「じゃぁ、攻めてこい。
泣くのは誰か、試してみよう。
ところで、司祭殿は戦争の本質を知っているか?
戦争は戦場で戦うことではない。戦場の背後を攻め、非戦闘員をどれだけたくさん殺せるか、それで勝敗が決まる。
戦場に名誉などはない。ただの殺し合いだ。
より卑怯で残虐なものが勝つ。
俺は、ダルリアダ国王よりも卑怯で残虐だという自信がある。戦いが始まれば、一切容赦しない」
司祭と僧兵は、自分自身を卑怯で残虐だと名乗る男と始めて出会った。
人は、勇敢であることを誇り、他者から勇者と称えられたいと願う。
だが、ショウ・レイリンは違う。
自ら卑怯で残虐だと宣言し、あらゆる卑怯な戦いをすると言い切る男とどう戦えばいいのか、司祭にはわからなかった。
それに、この男は神を信じていない。いかなる神の存在をもまったく感じないのだ。
そんな男とどう戦えばいいのか?
だが、それ以上に、いまこの男を殺さなければ、ダルリアダ王国が危険になると感じた。
ショウ・レイリンの護衛は若い女性ばかり。数は僧兵のほうが多い。
腕が立ちそうなのは、中年の女性と書記の貴族だけ。
司祭は護衛隊長を呼び、耳打ちする。僧兵はやや驚いた顔をする。
アネルマは運転席に座るヤーナ・プリユラに背後から囁く。
「やるよ」
ヤーナはクラッチを踏み、ギアをリバースに入れる。
ピエンベニダが剣の柄に手を置き、エイミス伯爵が刀を抜きかける。
「訓練された兵が相手では、ショウ殿は守れない」
それは、ピエンベニダも同意だ。
それに翔太が刀を抜いても、たいした戦力にならないことも承知している。
アネルマは、いつでも発射する意思を固めている。翔太は背中で、アネルマが中部ヴァロワ製ブルーノZB26のコッキングボルトを引く音を聞く。
敵対する使者同士の会談において一方が一方を暗殺するなど、過去に例がない。そのようなことをしたら、永遠に話し合いができなくなる。
だから、僧兵の護衛隊長は躊躇った。
一方が一方を殲滅するしかなくなる。あるいは、永遠に戦争を続けるしかない。
隊長は騎士であると同時に修道僧でもある。眼前に汚らわしい不信心者がいる。武を奉じる修道僧として、殺さねばならない。
だが、会談を求めたのは司祭側だ。呼び出しておいて、気に入らないからと殺すなんて騎士の道に反する。
彼の中で2つの価値観がぶつかり、一瞬だが行動が遅れた。
翔太が隊長に声をかける。
「隊長殿、やめておけ。
司祭が怪我することになる」
隊長が剣を抜き始めると、彼の部下もそれに続く。
司祭が後退りする。
コルトM1911ガバメントの重い銃声が2発。
司祭は仰向けに倒れた。草の上で呻いている。両足が血で濡れている。
「早く止血しないと、そこにいるニセの神の僕は死ぬぞ。
それと、動かないほうが身のためだ。
俺の背後にいるお姉さんは、あれを撃ちたがっている。あれが発射を始めたら、きみたちは全滅だぞ。
そうすれば、司祭殿は助からない。
失血で死ぬか、血の臭いに誘われたオオカミに生きたまま食われるか。
動くな、動かなければ、生きて帰れる。
俺が保障する」
ピエンベニダとエイミス伯爵は、剣から手を離し、自動拳銃を構える翔太とともにクルマに向かう。
逃走は、迅速だった。
これで、戦いは避けようがなくなった。
もともと、避ける方法はないのだが……。
中部ヴァロワの作戦は、水際決戦だ。アリエ川を渡れなければ、ダルリアダ軍は何もできない。
小部隊の渡河はできるかもしれないが、大部隊は絶対阻止する。
一本だけ残る橋は、補修用架橋を南側に引き上げる。これで、橋は渡れなくなる。小船や筏で渡るとしても、オリバ準男爵の河川艇隊が阻止する。
南岸には、フラン曹長の野戦砲部隊が展開する。橋の南詰めには強固な陣地を築く。
そのやや後方には、ロレーヌ準男爵の歩兵と自走歩兵砲や機関銃車が展開する。
ある程度の縦深防御にも気を配っている。
軍議において、麗林梓が言った。
「2日間、アリエ川防衛線を守り切れば、私たちの勝ち。
なぜなら、キララギアの王城が燃えるから。自分の家が燃えているのに、他人の家に盗みに入る泥棒はいない。
私たちは、木工職人や家具職人の力を借りて、自力飛行できる爆弾を開発した。今回使うのは中型。
弾頭は250キロ。炸裂弾と焼夷弾の混合クラスター爆弾になっている。
主翼は合板で作った骨組みに樹脂膜を張り。胴体は直径30センチのアルミパイプ。機体後部にバイク用250cc空冷ガソリンエンジンを積んでいて、高度3000メートルを時速130キロで、1500キロ飛べる。
機体構造は単純で、操縦系は方向舵と昇降舵しかない。フラップも補助翼もないから、基本は真っ直ぐ飛ぶだけ。
目標の上空に達したら、降下して機体ごと衝突する。
全長6メートル、全幅8メートルの巨大な機体だけど、量産性が高いからすでに4機が完成している。
操縦できるチームは2つだけだから、1日1発が限界だけど、ダルリアダのクソ王様の度肝を抜いてやる」
翔太はアワアワしていた。彼の計画とはかなり違うからだ。
「梓、爆撃するんじゃないのか?
モーターグライダーで爆撃するんじゃないのか?」
「翔太さん、それはやめた。
強風が吹く季節じゃないなら、飛行爆弾で攻撃できる。
モーターグライダーは、偵察機として使う。飛行爆弾のほうが、大きな弾頭になるからね。
爆撃するより、威力はあるし、運用コストも安い」
「事実上の巡航ミサイルだな?」
「自立では飛べないから、ミサイルじゃないよ。中型の自爆ドローンかな」
いつも怒声が飛び交う軍議は、静まりかえっている。
カイ・クラミは泣き出しそうな顔をしていて、フラン曹長は鬼の形相でプロジェクタの映像を見ている。
自爆ドローンは、機体先端が弾頭で、尾部にプロペラがある。エンジンはバイク用エンジンの流用で、機体の大半は燃料タンク。そのタンクだが軟質の樹脂製で、風船にガソリンを詰めているようなもの。
残っているガソリン自体が焼夷弾の役目をする。
機首の弾頭は、前部が炸薬、後部が植物油とガソリンの混合液。前部炸薬が爆発し、発生した爆風で火炎が放射状に広がる設計だ。
機体に降着装置はなく、カタパルトで発射され、帰還することはできない。しかし、訓練では、スキッドで着陸できる。
オリバ準男爵が、ニヤニヤしている。
「我が次男は、鳥瞰魔法の魔女との婚儀が決まっている」
エイミス伯爵が「関係なかろう!」と激怒するが、彼自身、三女と四女を鳥瞰魔法使いに志願させていた。
ベングト・バーリが「城は無意味になったな」と。
賢明な中部ヴァロワの政治家と軍人は、根本的に戦術・戦略が変わることに気付いていた。
ロレーヌ準男爵が立ち上がる。
「各々方、鳥瞰魔法使いを何としても守らねば。我が次男にも警護を命じようと思うが、いかがか」
反対はなかった。
ロレーヌ準男爵の次男は、冷静で無意味に勇敢でない優れた指揮官だと評価されているからだ。
それと、一領具足の娘との婚儀が決まっており、オリバ準男爵のような鳥瞰魔法使いに近付く作為がないことは明らかだった。
ダルリアダ国王の動きは速かった。司祭が撃たれると、諸侯に檄を飛ばし「不信心者を成敗する」として、直卒10万の他に、与力5万を追加でかき集め、総計15万という圧倒的な戦力でアリエ川を目指して南下を始める。
梓は所定の指示を出すと、元世界に戻った。彼女には、大学があるし、ショップもある。
「封建野郎に付き合ってる暇はないんだ」
彼女はそう言い残した。
コラリーは、気球の浮揚を命じる。この気球は通信アンテナの役目をする。
自爆ドローンは4機が完成していて、4機が製造中。翼は木製の骨組みに樹脂膜を張った単純な形状の矩形翼で、基本的には模型飛行機と同じ構造だ。
胴体はアルミパイプで、単純な円筒形をしている。機体後部にはエンジン架があり、V型2気筒の空冷レシプロエンジンが載る。エンジン架の周囲は覆われていない。
プロペラは樹脂製の固定ピッチで、模型用。エンジンの減速機はバイクのトランスミッションを流用している。減速比は4分の1で、1分間に6000回転を常用とし、プロペラは1分間に1500回転とした。バイクのパーツを流用しているので、動力系は意外と軽い。
カタパルトに乗った自爆ドローンは、火薬で撃ち出されてふわりと浮き上がる。
飛行距離は800キロ、ヴァロワとダルリアダの間には2000メートル級の峻険な山々が連なる。この山脈を越えるため、3000メートルまで上昇する。
コラリーのチームは、すでに何度もキララギアまで飛んでいる。飛行ルートや気象の状況についても、ある程度調べてあった。
山脈を越える際、東に流されるから、流される距離を勘案して、山脈の西寄りを飛行する。
8時間もの飛行なので、パイロットは2時間ずつ交代する。離陸と山脈越え、そして突入はコラリーが担当する。
王に率いられたダルリアダ軍は、アリエ川北岸に展開する。
歩兵は見事な戦列を作り、騎兵は煌びやかな胸甲を輝かせている。
15万の大軍は、大陸でも屈指の戦力だ。渡河するための筏を作るため、森の木を切り、川岸まで運んでいる。
上流ではあるが大陸随一の大河であるアリエ川の川幅は、1500メートルもある。
本来なら悠々と北岸で筏を組み上げ、渡河に移るのだが、そうはならなかった。
木材を川岸まで運ぶと、フラン曹長の砲兵隊が直射照準で狙撃する。筏を作れないから、完全に足止めされていた。
この状況を打開するため、丸太にしがみついた斬り込み隊を送ったが、オリバ準男爵の河川船隊の“狩り”にあうだけだった。
夜襲を仕掛け、少数が川を渡ったが、ロレーヌ準男爵の歩兵部隊によって捕捉された。多くは勇敢に立ち向かったが、それだけだった。彼らの勇敢さに意味はなかった。
中部ヴァロワ側にも誤算があった。ダルリアダ国王は、ここまで出張ってきながら、戦場からはるか後方に陣取ったのだ。
北岸から10キロ以上北に本陣を張り、王はそれ以上南下しない。明らかに警戒している。
そして、小型のドローンでは、その距離までの偵察は無理だった。本陣を捕捉し、遠距離射撃で粉砕する計画は、肩すかしを食った。
32口径砲でも射程が足りないのだ。
ロレーヌ準男爵は、オリバ準男爵の舟艇で対岸に渡り、フラン曹長の攻勢準備射撃を受けて、ダルリアダ国王本陣に突撃する作戦を立案する。
だが、本陣の正確な位置がわからない。鳥瞰魔法使いと少数の護衛が対岸に渡る計画もあったが、これは反対が多かった。
もし、捕虜になれば、魔女として火炙りにされる。そんな危険は冒せないと、軍議では反対が相次いだ。
それと、対岸に装甲車輌を渡すには、15メートル級舟艇が必要なのだが、数が足りないので何度も往復しなければならない。
それでは、大軍の相手はできないし、奇襲にもならない。
中部ヴァロワ側も手を出しあぐねていた。
山脈越えでは、東にひどく流された。ドローンは緩慢な動きで左に旋回し、キララギアを目指す。
チームは、予定よりも1時間以上飛行時間が延びると想定している。
6時に離陸したが、王都上空に達するのは15時頃になる。
コラリーたちは、どこに突入するか迷った。王城上空は風が強く、予定していた塔へのピンポイント突入が難しいのだ。
「あの大きな建物にしよう。
空の倉庫かもしれないけど、もし食料庫なら食べ物を焼き払える。
少しは打撃を与えられるかもしれない」
コラリーの判断を良とし、彼女がジョイスチックを握り、降下を開始する。
このドローンの欠点は、出力の小さいエンジンで、重量物を遠くに運ぶために、グライダーのような細長い主翼を採用していること。
自然と機体が浮き上がってしまうのだ。
だから、急降下はできず、緩降下で目標に衝突する。
目標とした建物には命中しなかったが、やや北の尖塔が2本ある大きな建物に衝突する。
「よし、明日、2号機を発射する。2号機で1号機の戦果確認をして、その後突入する」
飛行爆弾1号機突入の一報は、中部ヴァロワ全域に知らされた。
ビルギット・ベーンは、飛行爆弾の概略と鳥瞰魔法使いの活躍を記事にし、配信する。
中部ヴァロワがダルリアダ王国の王都、それも王城を直接攻撃したとの噂は、瞬く間に周辺諸国に広がる。
ダルリアダ国王は、自分の住まいが攻撃されたことを2日後に知る。
2号機の戦果確認では、尖塔が2本ある建物が完全に消滅し、周囲が広範に燃えていた。
2号機は内郭の城門に突入し、完全に破壊した。
コラリーは知らなかったが、1号機が突入したのはダルリアダ王家のための国教教会だった。
これにより、ダルリアダ国王の威信は地に落ちた。
2号機は内郭城門に突入したのだが、この攻撃で王太子が戦死する。
ビルギット・ベーンは、嶺林翔太と司祭との会見を取材していた。その場にいたのではなく、鳥瞰魔法で見ていた。
その際、翔太が司祭に「直接攻撃」を匂わせていたことを忘れていなかった。
彼女は「ダルリアダ国王は、王城が攻撃されることを知り、ヴァロワに逃げた」とする、かなり無理のある解説記事を配信する。
だが、飛行爆弾という魔法としか思えない奇策を打った中部ヴァロワなのだから、ダルリアダ国王の“敵前逃亡”はあり得ると、各国の知識人・支配層に感じさせた。
嶺林翔太は「戦場はダルリアダ王国領内、それも王城をめぐる戦いになる」と司祭に言ったとする記事を書いたが、これも国王逃亡説の根拠になった。
ダルリアダ国王は、与力の部隊を解散し、兵5万を率いて本領への帰還の途につく。
5万はアリエ川北岸に陣取ったまま。
ダルリアダと中部ヴァロワとの戦いは、完全に膠着する。
翔太にとっては、願ってもない状況だ。
これで、心置きなく農業を営むことができるのだから……。
--------------異世界編 完---------------
土地を手に入れることができた解放奴隷たちが多い東部国境付近と、一領具足の旧領地では体制が異なる。
カイ・クラミは悩みに悩んで、東部国境付近を統治する“総督”としてベングト・バーリを指名した。
識字率が極端に低い解放奴隷たちを保護するには、これしか方法がなかった。
西部は小規模自作農が多く、土地が細分化されているので大規模農業は適さなかった。
農耕馬は東部よりもはるかに多く、西部は西部らしく発展していく道を選ぶ。
ただ、機械化農業への関心は高く、農地の集約など改革にも興味はあるようだ。時間はかかるが、社会の変化に期待はある。
ただ、街にも、農村にも、一家言ある中産階級がある程度育っているので、民主化のテンポは早かった。
そして、また今年も収穫期を迎えた。
収穫が終われば、戦争の季節だ。今年は、ダルリアダ国王が攻めてくる。
ダルリアダの王都キララギアを発った国王は、すでにヴァロワの王都レイディに到着している。
コラリーは緊張している。
麗林梓から聞いた作戦が、あまりにも驚くものだったからだ。
「王都を爆撃する」
麗林梓の一言は、コラリーを驚かせた。
「アズサ、レイディを破壊するの?
だめだよ!」
「レイディじゃない。
キララギアだよ。キララギアの王城を爆撃する。コラリーのチームがやるんだ」
オリバ準男爵の次男バティスは、驚きのあまり言葉を発せなかった。父親から「鳥瞰魔法の魔女を守れ」と命じられて以降、前線には出ずひたすらコラリーたちを守ってきた。
彼の兄ラロは嫡男だが、小柄だ。力も弱い。対してバティスは大柄で、絵に描いたような戦士だ。
コラリーは戦場で武勲を上げていないバティスを選んだ。彼は、それに感謝している。収穫が終わったら婚姻の儀が行われる予定だし、嫡男ではない彼は一領具足になるつもりだった。
コラリーたち鳥瞰魔法使いと彼女たちドローンパイロットを守る護衛隊は、同じテントの中で異世界の軍用ドローンを見ていた。
「これは、グローバルホークという軍用のドローン。無人の爆撃機ね」
ミサイルが発射される。
「翼の下から撃たれた炎を出す矢がミサイルという爆弾。
これが、ミサイルが命中する瞬間。
ミサイルなんてないから、機体ごと目標に突入する。弾頭は800キロ。穀物袋26個分の重さ。
私たちは、自爆ドローンでダルリアダの王城を破壊する」
バディスは震えた。いかに勇敢な騎士でも、敵の城の内部を破壊するなんてできない。鳥瞰魔法は単なる“覗き見”だと考えていた。
その効果は認めるし、重要性もわかる。しかし、前線で戦うことはできない、と考えていた。
コラリーは梓と出会ったとき、泣きながらこう言った。
「母上も、姉上も、父上も、兄上も殺されちゃった。
私は生き残ったけど、私は何もできない。
チビだし、やせっぽちだし……。
お腹いっぱい食べたって、大きな剣を振り下ろす騎士には勝てない。
勇気はないし、臆病だし、痛いのイヤだし……。
でも、家族の仇を討ちたいの!」
そして、彼女は最初のドローンパイロットになった。
「コラリーは、ダルリアダ国王のタマを蹴飛ばす最初のヴァロワ人になる。
だけど、怖くはないし、痛くもないから安心して」
梓が約束した通り、コラリーと彼女のチームは大陸西部最強の軍事国家ダルリアダ王国国王の居城を攻める最初のヴァロワ人になる。
バティスが気付く。
「アズサ、質問がある」
「何だろう?
バティスが質問なんて、珍しいね」
「もし、もしだ。
この作戦をダルリアダが気付いたら?」
「コラリーたちは、狙われる。
どんなことをしてでも殺そうとするだろうね。戦争なんだから」
「俺たちがチームを守る。
生命に替えてでも、必ず守る。
それと、この作戦は秘匿する必要がある。翼のあるドローンはダルリアダ国内を偵察するためだと説明して、爆弾のことは誰にも言わない。
親兄弟であっても、絶対に話してはダメだ。そのために今後、この基地から、誰も出てはいけない。
出ていいのはアズサだけ」
これが、基地警備の責任者バティスの命令だった。
ダルリアダ国王は、洗練されたヴァロワ王家の祭事・儀式を堪能していて、なかなか腰を上げようとしなかった。
国王は、この間が、中部ヴァロワを恐怖させると確信していた。
一方、中部ヴァロワの臨時政府は、この時間を有効に使っていた。
砲身の長さは、実質は材料の量で決まるのではなく、砲身の削り出し時間に制限された。
フラン曹長派の造兵技師が望んだ35口径の砲身は、諦めなくてはならなかった。砲身の製造に時間がかかりすぎるのだ。鋼鉄柱をくり抜いて砲身を造るのだが、砲身が長くなると必然的に時間がかかる。
現実的な砲身の長さは32口径が限界だった。
この32口径75ミリ砲は、フラン曹長派の砲兵部隊とオリバ準男爵派の河川船隊に配備された。
22口径型も製造が続けられ、歩兵砲として歩兵部隊に引き渡された。
オリバ準男爵は、この砲を積むために20メートル級砲艇を開発した。
この砲艇の初号艇は、強硬に「川を下りたくば、税を払え」と主張する関所役人に対して、黄金の砲弾をカルフール城に向けて発射した。
艇長は「ならくれてやる。だが、藩王自から受け取れ。これから届けてやる」と言い、自ら砲を操作し、黄金製の砲弾を発射する。
炸薬のない無垢の弾だが、城壁を突き抜け、塔の壁に突き刺さった。
以後、中部ヴァロワの船は、公船も、民間船も一切の誰何を受けずに往来できるようになった。
この黄金砲弾事件は、アリエ川流域に知れ渡り、中部ヴァロワの国家としての威信を示した。
これにカイ・クラミは頭を抱え、ダルリアダ国王は驚き慌てた。
機関銃の製造も限定的だった。ボルトアクション5連発銃の製造を優先しているが、機関銃が必要なことは明らかだ。
ピックアップのシャーシと動力系を利用して製造した前輪がタイヤで後輪が履帯(クローラー)の自走山砲は8輌あった。
これは、ロレーヌ準男爵派が装備している。同じ車体は他に8輌あり、これには機関銃が搭載され、ガンキャリアとされた。
この16輌は、異世界初の装甲部隊となった。
キャブオーバー型の後輪駆動1トントラックの中古は、比較的入手しやすかった。後輪を履帯に改造することで、牽引力の強化と不整地での機動性をある程度確保できた。
これらの車輌は、歩兵砲や山砲の牽引に使われた。馬牽きは廃止され、完全に機械化された。
それでも、ダルリアダ国王の大軍を迎えるには不十分だ。
それと、中部ヴァロワ西側の街人には、東側に「占領された」とのわだかまりがあった。そのため、対ダルリアダには全面的な協力は得られにくかった。
アリエ川に残る橋に使者がやって来た。
ダルリアダ国王の使者は、北岸に豪奢なテントを張り、中部ヴァバロワの接遇者の来訪を待つ。
使者はダルリアダ国教の最高位司祭で、国家の権力順位では国王に次ぐ。
となると、中部ヴァロワ側もそれなりの人物が会うべきだ。
だが、司祭はダルリアダ王朝の要人ではない。ここも難しい。権威は国内第2位だが、王朝の要人ではない。王族や王側近とは違う。
そこで、臨時政府代表カイ・クラミは思い付く。中部ヴァロワで絶対的な権威を持ちながら、政権からは距離を置く人物がいる。
一領具足総当主ショウ・レイリンだ。
翔太はわけのわからない宗教家と会うことは、気が進まないが、周囲から責め立てられて、渋々同意した。
会見のために彼が用意した服装は、ありきたりの森林迷彩のミリタリージャケットだった。
会見には最低限の護衛が同行し、隊長はピエンベニダが務め、副長としてアネルマが同行する。書記には諸国の事情に精通しているエイミス伯爵が志願してくれた。
一領具足でないのは、エイミス伯爵と彼の三女だけだった。
翔太はフルオープンの三菱ジープJ55の助手席に乗っている。運転はエイラ・アルミラ、後部荷台にはアネルマ・レイリンが機関銃を構える。
接遇者の車列は3輌。先頭はジープJ55、ダットラ、書記を乗せたデリカワゴンが続く。総勢12人で編制していた。
貴族として貴人と面会するための正装をしているのは、エイミス伯爵だけだった。彼の三女は、一領具足のパートタイム女性兵と同じ服装をしている。
伯爵は彼女の姿を見て、長女と次女とは違うたくましさに感心していた。
豪奢な天幕に近付くと、護衛兵から誰何される。護衛兵は、明らかに僧兵だ。
「何者か!」
翔太はジープの助手席から降りる。
「中部ヴァロワ、一領具足総当主ショウ・レイリンだ」
僧兵たちがざわめく。
翔太が続ける。
「使者殿に目通り願いたい」
「司祭様は、祈りの時間である。
しばし待たれよ」
一領具足はあまり宗教的ではないし、中部ヴァロワには宗教的色彩が薄い。原始宗教的な自然崇拝は残るが、洗練された宗教文化はない。
しかし、ヴァロワ北部や南部は違うらしい。絶対的な唯一神への強烈な信仰がある。
ダルリアダも同じだ。
この唯一絶対神信仰は4派あり、神自体を信仰する正教、預言者を重視する3派がある。預言者は複数おり、どの預言者を最上位とするかで3派に分かれる。
ダルリアダ国教は、預言者シャルマを最上位とする。
司祭は手を差し出す。手の甲にキスせよと。
翔太は軽く断る。
司祭が「神を信じぬ不信心者め」と彼にとっての侮辱をする。
翔太は「司祭殿は神と会ったことがあるのか?」と問う。
司祭が目を剥く。翔太が笑う。
「神がいるなら連れてこい。
俺が説教してやる」
僧兵たちが驚く。
司祭が脅す。
「不信心者は、地獄に行く。神の元には行けぬ」
翔太は動じない。
「天国も、地獄も、存在しない。人が死ねば肉体は微生物によって分解され、最終的には本来の元素に戻る。
そして、新たな生命の糧となる。
死ねば魂も消える。
人は死ねば消滅する。だから、生きて何をするかだ。それが、存在した証になる」
司祭は何も言い返せなかった。
「不信心者!」と罵っただけだった。
翔太は話題を変える。草原の草を揺らす秋風が心地いい。
「で、ダルリアダの国王の口上を聞こう」
司祭は、本題に入らなかった。
「中部ヴァロワには、魔女がいるそうだな。
悪魔に魂を売った魔女を捕らえたら、火炙りにする」
翔太はもう少し、司祭との問答に付き合うことにする。
「魔女か?
鳥瞰魔法使いのことだな。
彼女たちは魔女ではない。科学技術を馳駆しする戦士だ」
そう言うと、頭上を指差す。
通常よりもだいぶ低く、ドローンが飛んでいる。
「昼夜の別なく、司祭殿たちの動向は見張っていた。
何回小便したかもわかっている」
僧兵が慌てて弓に矢をつがえると、ドローンは音もなく急上昇していく。
「あれは機械だ。樹脂と金属でできている。人が作ったもので、魔法ではない」
司祭がにらみつける。
「この世界は神がお作りになった……」
翔太が否定する。
「それは違う。50億年前にビッグバンが起きて、宇宙が作られた。我々が住む大地と海ができたのは45億年前。生物は海の中で生まれた。
神が作ったのではない。自然現象だ」
司祭は言い返せない。
「神は自分に似せて人をお作りになった」
翔太がまた否定する。
「それも違う。
人は200万年前にグレートリフトバレーで生まれた。我々の直接の祖先は、7万年前に故郷を旅立ち、大陸全域に広まった。この何世代にもわたる壮大で生命がけの旅は、グレートジャーニーと呼ばれる」
司祭は焦る。僧兵たちが動揺しているのだ。明らかに翔太からもっと話を聞きたいと思い始めている。
司祭は生臭い話をしなければならなかった。問答に追い詰められたからだ。
「国王陛下は、慈悲のあるお方。
降伏すれば、生命だけは助けよう。
その後は税を納め、よき民となれ」
翔太は直接的には答えなかった。
「封建制を否定する。
王などいらない。王に存在価値はない。王制は必要悪にもならない」
司祭が動揺する。
「それでは、誰が国を治めるのだ!」
翔太は、知識人である司祭が知らない話をする。
「民主制、共和制を知っているか?
古代からある政治体制だ。
民が国を治める制度で、国家は国民によって統治される。絶対普遍の政治体制だ。
まさか、知らないのか?」
司祭に残されたのは暴力だけだ。
「国王陛下は、10万の兵を指揮しておられる。
そなたたちは、せいぜい1万がいいところだろう。
抗っても無駄だ」
翔太も脅す。
「ダルリアダ兵は1兵たりともアリエ川を渡らせない。
だが、本来の戦場はここじゃない。
王城だ。
俺たちは、キララギアのダルリアダ国王の居城を攻める」
司祭が驚く。
「バカな!
できるわけがない」
翔太が徴発する。
「じゃぁ、攻めてこい。
泣くのは誰か、試してみよう。
ところで、司祭殿は戦争の本質を知っているか?
戦争は戦場で戦うことではない。戦場の背後を攻め、非戦闘員をどれだけたくさん殺せるか、それで勝敗が決まる。
戦場に名誉などはない。ただの殺し合いだ。
より卑怯で残虐なものが勝つ。
俺は、ダルリアダ国王よりも卑怯で残虐だという自信がある。戦いが始まれば、一切容赦しない」
司祭と僧兵は、自分自身を卑怯で残虐だと名乗る男と始めて出会った。
人は、勇敢であることを誇り、他者から勇者と称えられたいと願う。
だが、ショウ・レイリンは違う。
自ら卑怯で残虐だと宣言し、あらゆる卑怯な戦いをすると言い切る男とどう戦えばいいのか、司祭にはわからなかった。
それに、この男は神を信じていない。いかなる神の存在をもまったく感じないのだ。
そんな男とどう戦えばいいのか?
だが、それ以上に、いまこの男を殺さなければ、ダルリアダ王国が危険になると感じた。
ショウ・レイリンの護衛は若い女性ばかり。数は僧兵のほうが多い。
腕が立ちそうなのは、中年の女性と書記の貴族だけ。
司祭は護衛隊長を呼び、耳打ちする。僧兵はやや驚いた顔をする。
アネルマは運転席に座るヤーナ・プリユラに背後から囁く。
「やるよ」
ヤーナはクラッチを踏み、ギアをリバースに入れる。
ピエンベニダが剣の柄に手を置き、エイミス伯爵が刀を抜きかける。
「訓練された兵が相手では、ショウ殿は守れない」
それは、ピエンベニダも同意だ。
それに翔太が刀を抜いても、たいした戦力にならないことも承知している。
アネルマは、いつでも発射する意思を固めている。翔太は背中で、アネルマが中部ヴァロワ製ブルーノZB26のコッキングボルトを引く音を聞く。
敵対する使者同士の会談において一方が一方を暗殺するなど、過去に例がない。そのようなことをしたら、永遠に話し合いができなくなる。
だから、僧兵の護衛隊長は躊躇った。
一方が一方を殲滅するしかなくなる。あるいは、永遠に戦争を続けるしかない。
隊長は騎士であると同時に修道僧でもある。眼前に汚らわしい不信心者がいる。武を奉じる修道僧として、殺さねばならない。
だが、会談を求めたのは司祭側だ。呼び出しておいて、気に入らないからと殺すなんて騎士の道に反する。
彼の中で2つの価値観がぶつかり、一瞬だが行動が遅れた。
翔太が隊長に声をかける。
「隊長殿、やめておけ。
司祭が怪我することになる」
隊長が剣を抜き始めると、彼の部下もそれに続く。
司祭が後退りする。
コルトM1911ガバメントの重い銃声が2発。
司祭は仰向けに倒れた。草の上で呻いている。両足が血で濡れている。
「早く止血しないと、そこにいるニセの神の僕は死ぬぞ。
それと、動かないほうが身のためだ。
俺の背後にいるお姉さんは、あれを撃ちたがっている。あれが発射を始めたら、きみたちは全滅だぞ。
そうすれば、司祭殿は助からない。
失血で死ぬか、血の臭いに誘われたオオカミに生きたまま食われるか。
動くな、動かなければ、生きて帰れる。
俺が保障する」
ピエンベニダとエイミス伯爵は、剣から手を離し、自動拳銃を構える翔太とともにクルマに向かう。
逃走は、迅速だった。
これで、戦いは避けようがなくなった。
もともと、避ける方法はないのだが……。
中部ヴァロワの作戦は、水際決戦だ。アリエ川を渡れなければ、ダルリアダ軍は何もできない。
小部隊の渡河はできるかもしれないが、大部隊は絶対阻止する。
一本だけ残る橋は、補修用架橋を南側に引き上げる。これで、橋は渡れなくなる。小船や筏で渡るとしても、オリバ準男爵の河川艇隊が阻止する。
南岸には、フラン曹長の野戦砲部隊が展開する。橋の南詰めには強固な陣地を築く。
そのやや後方には、ロレーヌ準男爵の歩兵と自走歩兵砲や機関銃車が展開する。
ある程度の縦深防御にも気を配っている。
軍議において、麗林梓が言った。
「2日間、アリエ川防衛線を守り切れば、私たちの勝ち。
なぜなら、キララギアの王城が燃えるから。自分の家が燃えているのに、他人の家に盗みに入る泥棒はいない。
私たちは、木工職人や家具職人の力を借りて、自力飛行できる爆弾を開発した。今回使うのは中型。
弾頭は250キロ。炸裂弾と焼夷弾の混合クラスター爆弾になっている。
主翼は合板で作った骨組みに樹脂膜を張り。胴体は直径30センチのアルミパイプ。機体後部にバイク用250cc空冷ガソリンエンジンを積んでいて、高度3000メートルを時速130キロで、1500キロ飛べる。
機体構造は単純で、操縦系は方向舵と昇降舵しかない。フラップも補助翼もないから、基本は真っ直ぐ飛ぶだけ。
目標の上空に達したら、降下して機体ごと衝突する。
全長6メートル、全幅8メートルの巨大な機体だけど、量産性が高いからすでに4機が完成している。
操縦できるチームは2つだけだから、1日1発が限界だけど、ダルリアダのクソ王様の度肝を抜いてやる」
翔太はアワアワしていた。彼の計画とはかなり違うからだ。
「梓、爆撃するんじゃないのか?
モーターグライダーで爆撃するんじゃないのか?」
「翔太さん、それはやめた。
強風が吹く季節じゃないなら、飛行爆弾で攻撃できる。
モーターグライダーは、偵察機として使う。飛行爆弾のほうが、大きな弾頭になるからね。
爆撃するより、威力はあるし、運用コストも安い」
「事実上の巡航ミサイルだな?」
「自立では飛べないから、ミサイルじゃないよ。中型の自爆ドローンかな」
いつも怒声が飛び交う軍議は、静まりかえっている。
カイ・クラミは泣き出しそうな顔をしていて、フラン曹長は鬼の形相でプロジェクタの映像を見ている。
自爆ドローンは、機体先端が弾頭で、尾部にプロペラがある。エンジンはバイク用エンジンの流用で、機体の大半は燃料タンク。そのタンクだが軟質の樹脂製で、風船にガソリンを詰めているようなもの。
残っているガソリン自体が焼夷弾の役目をする。
機首の弾頭は、前部が炸薬、後部が植物油とガソリンの混合液。前部炸薬が爆発し、発生した爆風で火炎が放射状に広がる設計だ。
機体に降着装置はなく、カタパルトで発射され、帰還することはできない。しかし、訓練では、スキッドで着陸できる。
オリバ準男爵が、ニヤニヤしている。
「我が次男は、鳥瞰魔法の魔女との婚儀が決まっている」
エイミス伯爵が「関係なかろう!」と激怒するが、彼自身、三女と四女を鳥瞰魔法使いに志願させていた。
ベングト・バーリが「城は無意味になったな」と。
賢明な中部ヴァロワの政治家と軍人は、根本的に戦術・戦略が変わることに気付いていた。
ロレーヌ準男爵が立ち上がる。
「各々方、鳥瞰魔法使いを何としても守らねば。我が次男にも警護を命じようと思うが、いかがか」
反対はなかった。
ロレーヌ準男爵の次男は、冷静で無意味に勇敢でない優れた指揮官だと評価されているからだ。
それと、一領具足の娘との婚儀が決まっており、オリバ準男爵のような鳥瞰魔法使いに近付く作為がないことは明らかだった。
ダルリアダ国王の動きは速かった。司祭が撃たれると、諸侯に檄を飛ばし「不信心者を成敗する」として、直卒10万の他に、与力5万を追加でかき集め、総計15万という圧倒的な戦力でアリエ川を目指して南下を始める。
梓は所定の指示を出すと、元世界に戻った。彼女には、大学があるし、ショップもある。
「封建野郎に付き合ってる暇はないんだ」
彼女はそう言い残した。
コラリーは、気球の浮揚を命じる。この気球は通信アンテナの役目をする。
自爆ドローンは4機が完成していて、4機が製造中。翼は木製の骨組みに樹脂膜を張った単純な形状の矩形翼で、基本的には模型飛行機と同じ構造だ。
胴体はアルミパイプで、単純な円筒形をしている。機体後部にはエンジン架があり、V型2気筒の空冷レシプロエンジンが載る。エンジン架の周囲は覆われていない。
プロペラは樹脂製の固定ピッチで、模型用。エンジンの減速機はバイクのトランスミッションを流用している。減速比は4分の1で、1分間に6000回転を常用とし、プロペラは1分間に1500回転とした。バイクのパーツを流用しているので、動力系は意外と軽い。
カタパルトに乗った自爆ドローンは、火薬で撃ち出されてふわりと浮き上がる。
飛行距離は800キロ、ヴァロワとダルリアダの間には2000メートル級の峻険な山々が連なる。この山脈を越えるため、3000メートルまで上昇する。
コラリーのチームは、すでに何度もキララギアまで飛んでいる。飛行ルートや気象の状況についても、ある程度調べてあった。
山脈を越える際、東に流されるから、流される距離を勘案して、山脈の西寄りを飛行する。
8時間もの飛行なので、パイロットは2時間ずつ交代する。離陸と山脈越え、そして突入はコラリーが担当する。
王に率いられたダルリアダ軍は、アリエ川北岸に展開する。
歩兵は見事な戦列を作り、騎兵は煌びやかな胸甲を輝かせている。
15万の大軍は、大陸でも屈指の戦力だ。渡河するための筏を作るため、森の木を切り、川岸まで運んでいる。
上流ではあるが大陸随一の大河であるアリエ川の川幅は、1500メートルもある。
本来なら悠々と北岸で筏を組み上げ、渡河に移るのだが、そうはならなかった。
木材を川岸まで運ぶと、フラン曹長の砲兵隊が直射照準で狙撃する。筏を作れないから、完全に足止めされていた。
この状況を打開するため、丸太にしがみついた斬り込み隊を送ったが、オリバ準男爵の河川船隊の“狩り”にあうだけだった。
夜襲を仕掛け、少数が川を渡ったが、ロレーヌ準男爵の歩兵部隊によって捕捉された。多くは勇敢に立ち向かったが、それだけだった。彼らの勇敢さに意味はなかった。
中部ヴァロワ側にも誤算があった。ダルリアダ国王は、ここまで出張ってきながら、戦場からはるか後方に陣取ったのだ。
北岸から10キロ以上北に本陣を張り、王はそれ以上南下しない。明らかに警戒している。
そして、小型のドローンでは、その距離までの偵察は無理だった。本陣を捕捉し、遠距離射撃で粉砕する計画は、肩すかしを食った。
32口径砲でも射程が足りないのだ。
ロレーヌ準男爵は、オリバ準男爵の舟艇で対岸に渡り、フラン曹長の攻勢準備射撃を受けて、ダルリアダ国王本陣に突撃する作戦を立案する。
だが、本陣の正確な位置がわからない。鳥瞰魔法使いと少数の護衛が対岸に渡る計画もあったが、これは反対が多かった。
もし、捕虜になれば、魔女として火炙りにされる。そんな危険は冒せないと、軍議では反対が相次いだ。
それと、対岸に装甲車輌を渡すには、15メートル級舟艇が必要なのだが、数が足りないので何度も往復しなければならない。
それでは、大軍の相手はできないし、奇襲にもならない。
中部ヴァロワ側も手を出しあぐねていた。
山脈越えでは、東にひどく流された。ドローンは緩慢な動きで左に旋回し、キララギアを目指す。
チームは、予定よりも1時間以上飛行時間が延びると想定している。
6時に離陸したが、王都上空に達するのは15時頃になる。
コラリーたちは、どこに突入するか迷った。王城上空は風が強く、予定していた塔へのピンポイント突入が難しいのだ。
「あの大きな建物にしよう。
空の倉庫かもしれないけど、もし食料庫なら食べ物を焼き払える。
少しは打撃を与えられるかもしれない」
コラリーの判断を良とし、彼女がジョイスチックを握り、降下を開始する。
このドローンの欠点は、出力の小さいエンジンで、重量物を遠くに運ぶために、グライダーのような細長い主翼を採用していること。
自然と機体が浮き上がってしまうのだ。
だから、急降下はできず、緩降下で目標に衝突する。
目標とした建物には命中しなかったが、やや北の尖塔が2本ある大きな建物に衝突する。
「よし、明日、2号機を発射する。2号機で1号機の戦果確認をして、その後突入する」
飛行爆弾1号機突入の一報は、中部ヴァロワ全域に知らされた。
ビルギット・ベーンは、飛行爆弾の概略と鳥瞰魔法使いの活躍を記事にし、配信する。
中部ヴァロワがダルリアダ王国の王都、それも王城を直接攻撃したとの噂は、瞬く間に周辺諸国に広がる。
ダルリアダ国王は、自分の住まいが攻撃されたことを2日後に知る。
2号機の戦果確認では、尖塔が2本ある建物が完全に消滅し、周囲が広範に燃えていた。
2号機は内郭の城門に突入し、完全に破壊した。
コラリーは知らなかったが、1号機が突入したのはダルリアダ王家のための国教教会だった。
これにより、ダルリアダ国王の威信は地に落ちた。
2号機は内郭城門に突入したのだが、この攻撃で王太子が戦死する。
ビルギット・ベーンは、嶺林翔太と司祭との会見を取材していた。その場にいたのではなく、鳥瞰魔法で見ていた。
その際、翔太が司祭に「直接攻撃」を匂わせていたことを忘れていなかった。
彼女は「ダルリアダ国王は、王城が攻撃されることを知り、ヴァロワに逃げた」とする、かなり無理のある解説記事を配信する。
だが、飛行爆弾という魔法としか思えない奇策を打った中部ヴァロワなのだから、ダルリアダ国王の“敵前逃亡”はあり得ると、各国の知識人・支配層に感じさせた。
嶺林翔太は「戦場はダルリアダ王国領内、それも王城をめぐる戦いになる」と司祭に言ったとする記事を書いたが、これも国王逃亡説の根拠になった。
ダルリアダ国王は、与力の部隊を解散し、兵5万を率いて本領への帰還の途につく。
5万はアリエ川北岸に陣取ったまま。
ダルリアダと中部ヴァロワとの戦いは、完全に膠着する。
翔太にとっては、願ってもない状況だ。
これで、心置きなく農業を営むことができるのだから……。
--------------異世界編 完---------------
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主人公は、お約束の変態さん。
そして今度のヒロインは、なんと中学生!
実に、けしからんお話しです。
そして、2人をマークする謎の組織。
サクサク読んで頂けると思います。
是非、お付き合い下さい。
【完結】最弱テイマーの最強テイム~スライム1匹でどうしろと!?~
成実ミナルるみな
SF
四鹿(よつしか)跡永賀(あとえか)には、古家(ふるや)実夏(みか)という初恋の人がいた。出会いは幼稚園時代である。家が近所なのもあり、会ってから仲良くなるのにそう時間はかからなかった。実夏の家庭環境は劣悪を極めており、それでも彼女は文句の一つもなく理不尽な両親を尊敬していたが、ある日、実夏の両親は娘には何も言わずに蒸発してしまう。取り残され、茫然自失となっている実夏をどうにかしようと、跡永賀は自分の家へ連れて行くのだった。
それからというもの、跡永賀は実夏と共同生活を送ることになり、彼女は大切な家族の一員となった。
時は流れ、跡永賀と実夏は高校生になっていた。高校生活が始まってすぐの頃、跡永賀には赤山(あかやま)あかりという彼女ができる。
あかりを実夏に紹介した跡永賀は愕然とした。実夏の対応は冷淡で、あろうことかあかりに『跡永賀と別れて』とまで言う始末。祝福はしないまでも、受け入れてくれるとばかり考えていた跡永賀は驚くしか術がなかった。
後に理由を尋ねると、実夏は幼稚園児の頃にした結婚の約束がまだ有効だと思っていたという。当時の彼女の夢である〝すてきなおよめさん〟。それが同級生に両親に捨てられたことを理由に無理だといわれ、それに泣いた彼女を慰めるべく、何の非もない彼女を救うべく、跡永賀は自分が実夏を〝すてきなおよめさん〟にすると約束したのだ。しかし家族になったのを機に、初恋の情は家族愛に染まり、取って代わった。そしていつからか、家族となった少女に恋慕することさえよからぬことと考えていた。
跡永賀がそういった事情を話しても、実夏は諦めなかった。また、あかりも実夏からなんと言われようと、跡永賀と別れようとはしなかった。
そんなとき、跡永賀のもとにあるゲームの情報が入ってきて……!?
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