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第3章 奪還

第20話 通商再開

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  昨夜半、復旧を急いでいた製粉業者に頼み込み、ミクリンが手に入れた米を二〇キロほど精米してもらった。目視ではジャポニカ種のようだったので、炊いてみるつもりだ。
 想像していた以上に糠がきれいに剥がれていて、この製粉業者からは扱いたいので玄米を融通して欲しいと頼まれた。

 翌朝、ミクリンは、賓館の広間に置かれたあり合わせの小さなテーブルのそばに立っていた。
 近くにフリートがいて、ミクリンを心配そうに見ている。
 ミクリンは叱責を覚悟していたし、どんな処分にも甘んじるつもりでいた。
 私が広間に入ると、ミクリンは下げた両手の拳を握りしめる。
「立っていないで、座りなさい」と促しても椅子に腰掛けようとはしない。
 私はいったんキッチンに入り、できたてのチャーハンを手に広間に戻る。
 それをテーブルに置き、「食べてみなさい」と促す。
 ミクリンは呆然とチャーハンを眺めていた。いままでに見たことのない料理で、いい匂いがする。
 ミクリンは椅子に座り、粗末な木製のスプーンを手にして、端が少し欠けている陶器の皿に盛られたチャーハンを一口食べた。
 美味しかった。もう一口食べてみたが、やはり美味しい。空腹だったこともあり、手と口の動きが止まらなくなってしまった。
 キッチンからおばさんたちの声が聞こえる。
「美味しい」
「美味しいね」
 フリートは、そんなに美味しいものなら食べてみたいと思ったが、誰も自分のことなど意識にない。
 ミクリンはチャーハンを半分ほど食べたところで、叱責される予定であることを思い出した。
「すみません」と小さな声で言った。
「その料理は、君が手に入れてきた米で作った」
 ミクリンは、状況が理解できない。
「私の国では、米と大豆はもっとも重要な作物だった。
 料理の仕方ならいくらでも知っている」
 街の広場に面した商店を借りて、そこで米料理の店を開こうと思う。
 繁盛すると思うか?」
「はい」といって、ミクリンは泣き出した。
「第二回の食料調達にも君に行ってもらう。もちろん、買い付け係として」
 ミクリンは号泣した。やっと、自分を認めてくれる人に出会った。
 彼女の母は、彼女をいつも従姉妹のマーリンと比べていた。父は彼女に無関心だった。
 ミクリンは「最善を尽くします」と誓った。

 私が口から出任せで言った広場の料理屋の話は、キッチンの女性陣に聞かれた。賓館は家具が略奪されていて、だだっ広い空間のため声が反響してしまうのだ。
 ミクリンが賓館を出てからの一時間、キッチンの女性陣に広場で料理屋を開業するための資金を出せと責め立てられ、結局、首を縦に振らされた。
 街と村の現在時点で持ち主のいない建物は、すべて行政府が一括管理している。空き家を使いたい場合は、庁舎に赴いて許可を得なければならない。
 彼女たちは、まずそこから始めるようだ。

 少しずつ、産業が興っている。メハナト穀物商会以外では、アークティカ最大都市チュレンに拠点を置いていたタルフォン交易商会も営業再開を企図している。
 また、キッカの父シビルスは、潤沢な資金を元手にアレナスの官営造船所を買収しようとしている。
 アークティカは復興の兆しを見せようとしている。

 第二回食料調達作戦は、その日に発動された。
 今回の目的地は、赤い海南岸の都市国家ルカーンで、東方騎馬民が跋扈するマハカム川以南を進まなければならない。しかも、国境までの一五〇キロ間は、燃料や水を補給できない。
 そのため、航続距離の短い蒸気車では、不可能な行程である。
 ホワイトM3装甲車、フォードV3000Sマウルティア、日野デュトロの三輌で、六・五トンの荷を往復三日で輸送する計画だ。
 装甲車はリシュリン、マウルティアはイリア、デュトロはメグが運転し、装甲車に八名の護衛が乗車する。装甲車には二トン積の貨車が牽引される。ただし、実際に積載するのは一トンだ。
 それに先立ち、マハカム川南岸の東方騎馬民を掃討するために装甲車による反攻作戦を展開することになった。

 今回の作戦は、メハナト社による単独の行動で、アークティカ行政府は関与しないことになっている。
 その理由は二つあり、前回の作戦では結果を良としない反対勢力の発言が勢いを付けたこと、もう一つは行政府の財政が破綻寸前ということ、であった。

 作戦会議には、スコルが行政府側オブザーバーとして参加した。マハカム川以南で大々的な軍事行動をとるのだから、行政府が一切関知しないわけにはいかないのだ。
 イリアから弾薬の欠乏を訴える意見が出たが、それに対してヴェルンドからフォッカー戦闘機から回収したM36機関銃の七・九二×五七ミリモーゼル弾が使用できるという報告があった。
 マーリンからは、七・六二×六三ミリスプリングフィールド弾の残弾が少なくなりつつあるが、今回の作戦には支障がないことが報告される。
 また、M1カービン用の七・六二×三三ミリカービン弾の残弾は十分にあるが、拳銃用四五APC弾は欠乏していることが報告された。
 ヴェルンドからメグに「弾薬補給はどうしているのか」という質問があり、メグの回答に全員が驚かされる。
 メグは「M1860ヘンリー銃の弾は、四四口径ヘンリーというリムファイア弾だ。リムファイアは、モーゼル弾やスプリングフィールド弾とは異なり雷管が要らない。
 起爆薬は薬莢の底部に塗っていて、薬莢の底辺縁部を撃鉄が叩くことで発射できるからだ。ただし、薬莢の再利用、リロードはできない。
 火薬は黒色火薬を使用しているので、どこでも手に入るし、薬莢の製造装置も持っている。
 拳銃はレミントンM1858ニューアーミーで、薬莢を使用しないパーカッション式だから、弾薬の補給には困らない。
 そして起爆薬の作り方も知っている」と。
 ヴェルンドは大変驚き「薬莢の製造装置を見せて欲しい。それと、起爆薬の作り方も」と懇願した。
 ヴェルンドからは、無煙火薬の基剤となるニトロセルロースの生産に成功していないこと、銃用雷管の製造に手間取っていること、小銃用銃身の鋼材の調達の手段がないこと、薬莢の製造方法に苦慮していることなどが報告された。
 ただ、エミールが持っていたM24柄付手榴弾を参考に、黒色火薬を使用した摩擦発火式の柄付手榴弾を大量に製造できる目処が付いていることが唯一のよい知らせであった。
 手榴弾は第一次世界大戦の頃から、雷管を劇針が叩く激発発火式が主流になっていたが、雷管が作れない現時点においては、雷管を使用しないM24柄付手榴弾のコピーは最善の選択である。

 議事における最大の問題は、穀物と燃料の買い付けを担当するミクリンたちをルカーンに送り込む方法だった。
 平易に考えれば、馬でルカーンに向かう方法が一般的だが、南の国境線付近は東方騎馬民が完全に占領している。
 少人数で突破できる状況ではない。
 この件に関して、スコルから提案があった。スコルは一週間ほど前、見慣れない形の船に乗った一行がアレナスにたどり着いたということを話し出した。
「食料の調達隊が帰還した翌日の朝だが、西方から逃れてきたという一行が船でアレナスにたどり着いたんだ。
 その船には、男が四人、女が四人乗っていた。女のうち一人は妊婦で、一人は病気の老人だ。男の一人はまだ幼児だ。
 乗っていた男のうち一人がアレナスの浜辺に船から飛び込んで泳いで上がり、襲いかかってきた海棲トカゲの首を一刀で斬り落としたと言う。
 いささか信じがたい武勇伝だが、その様を数人の守備兵が見ていて、すべてを偽りとは断じがたいところがあるんだ。
 その一行が乗ってきた船なんだが、帆はなく、煙も吐かないのに走るんだ。まったく音もしない。
 一行に小柄な男がおり、その男が船を操るらしい。その男が言うには、太陽の光さえあればどこまでも走って行けるとか。
 その魔法の船ならば、ルカーンまで行けるのではないか?」
 エミールがその一行の状況を尋ねた。
「司令官殿、妊婦と病人はどうしている?」
 スコルが答える。「アレナスにいる。病人は弱っているし、妊婦は臨月みたいだ。
 先生、一度診てやってくれないか」
 キッカの父である造船技師シビルスが、疑問を呈した。
「帆走でも、蒸気機関でもなく、太陽の光で走るとは、いささか考えられぬが?
 太陽の光で走る船ほど革命的ではないけど、いいものを見つけたよ。
 有名な赤い稲妻号だ。赤い海で最速の称号を持つ、大型ヨットだよ。皆さんもご存じでしょ?
 その船が、アレナスの造船所に入渠していたんだ。船底に斧や槍が突き立てられてはいるけれど、大した損傷じゃない。マストと帆は無事だ。
 赤い稲妻号でルカーンに向かったらどうだろう?」
 私が「太陽光で走るクルマのことは知っている。その船が同じ原理かどうかはわからないが、赤い稲妻号の件もあるし、アレナスにいってみる必要がありそうだ」と言う。
 とにかく、海路が一番安全なことは意見として集約した。
 ミクリンと四名のスタッフは、海路でルカーンを目指すことに決まった。

 ルカナとアレナス間の交通を開くことは、急務である。
 だが、船はなく、蒸気車は絶対数が少なく、一帯には恐鳥やヴェロと呼ばれている羽毛恐竜らしき体高七〇センチ・体長二メートルほどの肉食動物が生息している。
 肉食性の哺乳動物が人を襲うことはないが、恐鳥や恐竜類は人を獲物として認識している。人の住む領域から立ち退かせないと、安全な土地とはいえない。

 翌日、メグが運転するデュトロで、私、エミール、シビルス、護衛四人がアレナスに向かうことになった。
 ルカナの街でエミールを待っていると、続々と便乗希望者がやって来て、荷台には三〇人もが乗ることになってしまった。
 結局、四人の護衛は乗ることができなかった。
 改めて、ルカナとアレナス間の交通の重要性を認識させられた出来事だった。

 アレナスに到着すると、エミールは患者の元に、我々は船着き場に急いだ。
 その船は、河口から一キロほど遡った船着き場に係留されていた。
 全長一三メートル、幅四メートルの双胴船で、形状から大型客船が搭載するテンダーボート(渡し船)ではないか、と思えた。
 特徴的なのは、ルーフ一面に太陽光パネルが貼り付けられていることだ。
 船には小柄な男が乗っており、彼は西方人だと言った。
 どちらにしても、この世界の代物ではない。この男のものだとしても、異界物であることは確実だ。
 シビルスは、船の材質や船型、そして動力に興味津々で、その言動と行動は顰蹙を買うに十分なほど子供じみている。夢中で、あれこれと尋ねている。
 船体は炭素繊維系と思われ、船体自体が一体成形されているようだ。窓は二段になっているが二階はなく、操縦席が一段高い位置にある。
 船内は広く、四人掛けのベンチシートが二列配置されていて、一〇〇人は乗れるだろう。
 船の持ち主はエルプスと名乗り、ルドゥ川で乗合船を営業したいが、誰に許可を得ればいいのかを尋ねた。
 私が「行政府代表のリケルに尋ねてみるよ」と言うと、エルプスは驚き「貴方はアークティカ行政府の高官ですか」と返された。
 私は「違う」とだけ答え、リケルから手っ取り早く許可を得るために、ルカナまで同行するように勧めた。
 エルプスは大変喜び「いやぁ、兄たちが景気よく金貨を使うので、もう食べ物にも事欠く始末で、私が働こうと思っていたところなんですよ」と言った。
 私が「貴殿の兄上は働かないのか?」と尋ねると、エルプスは「兄は剣を振るう以外は何もできぬ男で、義兄は領主以外できぬ木偶の坊なんです」と笑った。
 その口調には兄と義兄に対する敬愛があり、現状を打破するため、自分が何とかしなければという気負いが感じられた。
 動力について尋ねると「動力は電動モーターで、太陽光発電とディーゼル発電機を搭載しています。
 私の説明わかります?」
 シビルスが首を横に振り、私が縦に振ると、エルプスは驚いた。
「太陽光発電とか、本当にわかるんですか?」
「あぁ、原理くらいは。太陽の光子エネルギーを直接電力に変換するんだろう。電流は直流だろう?
 この船には大量のバッテリーが搭載されているはずだ。リチウムイオン電池かな」
「ええ、全固体型リチウム電池です。電解質が揮発しないので、半永久的に使えます」
 私は、エルプスが異界人なのではないかと感じ始めていた。あまりにも知識がありすぎる。
「すべて、父の受け売りですが……。父はアルゼンチンという国の出身だそうです」
 やはり異界人と関わりがあった。
「積んでいるディーゼルは?」
「一〇〇〇馬力のターボ過給水冷一〇気筒です。ディーゼルで発電し、その電力でモーターを回します。モーターも一〇〇〇馬力の出力があり、最大船速は二八ノットまで出ます。
 通常は太陽光発電で、一二ノットで航行するんですが……」
 私がシビルスに、この船の最大速度は最速蒸気船の二倍以上だというと、彼は大変驚き船の購入を申し出た。
 シビルスは良くも悪くも資本家で、魅力のあるものはとりあえず買ってしまおうという姿勢だ。
 ただ、このときは、子供がおもちゃを欲するような、そんな感じだった。

 私とシビルスはエルプスと意気投合し、また会うことを約して分かれた。

 シビルスが造船所内で見せてくれた大型ヨットは、深紅に塗装された全長一〇〇メートルに達する大型艇だった。
 いわゆるメガヨットだ。
 修理はかなり進んでいるようで、船底のあちこちに補修の痕跡が残されているが、塗装を施せば完了といった状態だ。
 シビルスがこの船の経歴を説明をしてくれた。
「この船がなぜ官営工廠にあるのかはわからないが、れっきとした民間艇なんだよ。
 オーナーは何回も変わっているが、豪商や有力政治家、裕福な貴人が所有していた。
 赤い海で最速の船なんだ。だから、財を得たものは欲しがった。
 いかなる帆船よりも速く、最速の蒸気船でも絶対に追いつけないと言われた快速艇だよ。
 この船ならば、帝国の軍船に追われても逃げ切れる」
 シビルスは私を見た。
 そして「私が保障する」と言い切った。

 エミールとの待ち合わせは、我々のほうが遅れてしまった。
 患者は分庁舎に収容されていて、老人は虚弱の上に旅の疲れが溜まっているだけのようだが、妊婦は専門外でわからないと言う。
 容体が悪いようには見えないが、助産師がいるルカナに連れて行った方がいいと彼は判断していた。
 私が分庁舎の指揮官にエミールの見立てを伝えると、武装兵二名を同行させることを条件に、ルカナへの移送を了解してくれた。
 エミールと患者、そしてシビルスがエルプスの船でルカナに戻ることになり、デュトロの荷台には三五名もの便乗者が乗ることになった。

 デュトロの荷台の便乗者は全員が立っている状態で、決して快適とはいえず、荷台の側壁を一メートルほど高めてはいたが危険であった。それでも時速三〇~四〇キロで走れるので、一時間半でルカナに着く。
 途中、川と道が近接して並行する地点があるのだが、そこで偶然にエルプスのテンダーボートと併走することになった。
 荷台では船に負けるなと大騒ぎで、便乗者たちは一時の退屈を紛らわせていた。

 ルカナの庁舎前で便乗者たちを降ろし、役人にルドゥ川の船着き場に病人が着くことを伝えた。
 役人はすぐに希少な蒸気乗用車を手配し、船着き場に送った。
 私とメグは、コルカ村に戻ることにした。すでに太陽は半分没していた。この日の夕暮れ時は秋の気配が濃く、冬の訪れを予感させるやや肌寒い冷気に満ちていた。

 翌早朝、私は徒歩でルカナの庁舎近くにあるリケルの私邸に向かう。私邸といっても二間だけのアパートだが。
 こういう時は、必ずカラカンダが付いてくる。アリアンに何かをいわれているようで、私の護衛らしい。
 リケル邸には、スコル司令官、出納長、シビルス、タルフォン交易商会のネストルという四〇歳代後半の男、ヴェルンドがいた。
 カラカンダは外で待つと言ったが、リケルがそれでは目立ちすぎると反対して、会合に加える。
 リケルが会合の目的を説明する。
「集まっていただいた理由は、いつ帝国が攻めてくるかです。つまり、我々に残されている時間です」
 スコルが応じる。
「いまは収穫の時。
 一人でも人手が欲しい季節です。それが終わるまでは、何も起こらないでしょう。北の国が凍てつく直前までは大丈夫かと……」
 ネストルが「三カ月はないな」と独り言のように言った。
 リケルが「帝国はどう出ますかね」と誰ともなしに尋ねると、スコルが「自分たちの手は使わないでしょう。
 たぶん。
 バルティカにやらせると思います」と予測を述べた。
 シビルスが発言する。
「ラシュットの時もそうだが、連中はこちらが震え上がるほどの大軍を差し向けてくる。
 どうやって戦えばいいのかわからないほどの大軍を……」
 スコルがバルティカの戦力を説明する。
「バルティカは五カ国の連合国家ですが、最大で三万の兵力でしょう」
 リケルが「三万対二千か」と言うと、スコルが「三万の正規軍対二千の市井の人々ですよ」と訂正する。
 その現実に全員がため息をついた。
 リケルがヴェルンドに顔を向けた。
「そうなると、頼みはヴェルンド殿ということになる」
 ヴェルンドは困惑を隠さなかった。
「アリサカ小銃のコピーを試みていますが、銃身、薬莢、小銃薬、雷管の製造に手間取っています。
 しかし、メグ様のご夫君が書き残された手稿と機材を参考に、再考しているところです。薬莢と雷管は何とかなりそうです。
 ただ、銃身の鋼材が……」
 アリサカ小銃とは、三八式騎銃のアークティカでの呼び名だ。「さんぱちしき」はアークティカ人が発音しにくいので、英語圏で三八式歩兵銃や九九式小銃を呼称する際に使われる「アリサカ」の名を借りた。
 アリサカとは、三八式歩兵銃の原型となった三〇年式歩兵銃の開発者である有坂成章陸軍砲兵大佐の名が由来だ。三八の数字は、明治三八年のことだ。
 私がヴェルンドに言った。
「素人考えで申し訳ないのだが、イタリア軍のカルカノ小銃は六・五ミリ弾だったと思う。日本軍のアリサカ小銃も六・五ミリだから、銃身のみ流用とかできないの?
 確か、小銃の不足を補うため、日本はイタリアに三八式実包を発射するカルカノ小銃を注文したことがあったと記憶している。
 その銃をイ式小銃といって、海軍陸戦隊が装備していたはずだけど……」
 ヴェルンドは少し驚いた様子だ。
「試してみます。カルカノ小銃の銃身長は七八〇ミリ、アリサカ小銃は四一九ミリですから、長さは十分です。
 運がよければ、切断するだけで使えます」
 アークティカは、一般市民が銃を手に戦いに向かわなくてはならない。
 しかも、帝国の奴隷狩りと東方騎馬民の暴虐によって、人口が著しく減少してしまっている。
 加えて、生き残った国民の多くは、二〇~四〇歳代が極端に少なく、若年者、女性、青年・壮年期を過ぎた人々が圧倒的に多い。
 体格と体力に劣る人々に適する高性能銃が絶対に必要だ。
 だから、ヴェルンドは、強力なスプリングフィールド七・六二×六三ミリ弾やモーゼル七・九二×五七ミリ弾ではなく、反動が小さい六・五×五一ミリ三八式実包を主力弾薬に選択したのだ。
 その選択は間違っていないし、その弾を発射する全長九五五ミリ、重量三・五キロ弱という銃の短さと軽さもアークティカの国情に合致していた。
 ヴェルンドが中座しようとしたので、私が忠告した。
「うちのじいさんたちは、お前に恨みがあるようだ。
 それと、銃工のじいさん二人が、良品の部品を集めて修理するといっていた。
 頼むから、機嫌を損ねないようにしてくれないか」
 ヴェルンドが笑った。
「そうします。頭を垂れてお願いするようにします」
 そう言って、挨拶もそこそこに退室していく。
 ヴェルンドの退室後、室内の空気は再び重くなった。
 スコルが「武器はどうにかなったとしても、どうやって戦うか、です。
 多勢に無勢、常識で考えれば勝ち目はありません」
 リケルはそれには答えない。
「戦う前に財政が破綻しそうだ。シビルス殿にアレナスの造船所を買っていただければ、一息つけるが、こういう時は不正云々を持ち出す連中もいる。
 税を徴収するにも私を含めて民は無一文だし……」
 ネストルが提案した。
「議会を招集されたらいかがか。
 コルスクの街を四区に分け、コルカ村とアレナスの街を加えて六区六人の議員を選出して、議会を収集した上で議事を採決すればいい。
 そうすれば、すべてが公に決まったことになる」
 リケルが若い出納長に顔を向けた。
「やりましょう。本当は議員選挙が必要でしょうが、とりあえず各地域の推挙でどうでしょう」と出納長が提案する。
 スコルが「で、どうやって戦う?」と、再度同じ問いを持ち出す。
 また、無言になった。
 スコルがカラカンダに問うた。
「貴方ならどうします?」
 カラカンダは動揺した。彼は、単にここにいるだけの人間のはずだった。アリアンに命じられたとおり、対象を護衛・監視しているだけなのだ。
 だが、何も意見を述べないという選択ができる雰囲気ではない。
「私なら、敵の進撃を食い止めます。勝たなくていいのです。
 敵の進路で待ち伏せ攻撃を仕掛けて、進撃を遅らせます。
 私はただの武人で、軍人ではありませんから、具体的な作戦はわかりませんが、正攻法で戦う必要はないでしょう」
 スコルは考え込んでいた。
「確かにそうなんだ。だが、どうしたらそれができるか、だ。
 だが、用心棒殿のおかげで、何かが見えたように思う」
 街が騒がしくなり始めた。会合の出席者は、朝霧に紛れるように立ち去った。

 私はスコル邸をあとにすると、その足で地下空間に向かった。今日こそ、異界物を徹底的に調べるつもりだ。

 フェイトは地下空間に住んでいるといっていいほど、泊まり込みでWACO複葉機の修理に没頭している。蒸気機関の整備士、機械工、蒸気車の設計者などの手を借りて、着々と進めている。
 フェイトは、破天荒な行動や言動とは似つかわしくない、緻密な工程表を作り、それを壁に貼って、その通りに作業を進めている。
 そのギャップが地下空間に集う老人たちを困惑させ、そして彼らの困惑という心の隙を突いて統率していた。

 地下空間の最深部にいる銃工の二人に近づくと、地面にシートを敷き、その上にすべての銃を並べて、点検していた。
「ヴェルンドのクソガキが来たよ」と一人が銃を見詰めたまま言った。
「で、どうしました?」
「どうしても銃が欲しいと言うから、一番酷いヤツを五挺選んで渡したよ」
 思わず笑ってしまった。
「銃はどんな状況です?」
「総数は一六六挺。ほとんどはカルカノ小銃だが、違う銃が七挺あった」
 もう一人の銃工がそういって、カルカノ小銃以外を集めたシートに移動した。
「見てくれ。この七挺だ」
 Gew98が二挺、WZ1928が二挺、三八式歩兵銃が三挺。
 Gew98は一九三五年までドイツ軍制式の小銃で、Kar98kの長銃身型といえるタイプ。弾薬は七・九二ミリモーゼル弾を使用する。
 三八式歩兵銃は日本製で、おそらく第一次世界大戦後にフィンランドに輸出されたものだろう。当時の日本は武器輸出国で、メキシコやタイにも小銃を輸出している。
 WZ1928はポーランド製のブローニングM1918BARで、ベルギーのFN社が改良を加えてピストルグリップが追加されているタイプだ。弾薬は七・九二ミリモーゼル弾を使用する。
 また、カルカノM1891の短銃身騎銃型が一二挺あった。
「できれば、この七挺は修理してください。特にWZ1928は強力な戦力になります」
 銃工の一人が心配そうに尋ねた。
「奴隷商人たち、いまは帝国と言うのかなぁ。連中は、いつ攻めてくるのかね」
「おそらく、北の国が凍てつく直前でしょうね」
 もう一人の銃工が「やっぱり来るかね」と言うと、我々の会話を聞いていた他の男たちが集まってきて、一人が「攻めてきたら、やっつければいい」とぽつりと自信なさげに言った。
 誰もが不安だった。
 誰もが、帝国が我々を見逃すはずはないことを確信していた。
 誰もが帝国に勝つ自信などなかった。

 マハカム川の南岸からルカーンとの国境を流れるイシコシュ川までの地域は広大で、アークティカがその失地を回復するには、まだまだ時間が必要である。
 だが、ルカーンに至る陸路を確保しなければ、食糧事情が逼迫することは明らかであった。
 アークティカは、ルカーンへの交通路を是か非でも確保する必要に迫られている。
 コルカ村の住民、正確にはメハナト穀物商会は、アークティカ臨時行政府の許可を得て、ルカーンに至る街道の治安維持活動を始めていた。
 作戦の目的は、領土内に侵入した武装勢力を排除すること。
 作戦自体は単純で、東方騎馬民を見つけたら、装甲車で追い回し、徹底的に痛めつける。
 装甲車にルイス軽機とブローニングBARを積み込んで、七人が乗り込み、マハカム川以南の街道をパトロールする。
 作戦のごく初期は、東方騎馬民を探さなくても、先方から攻撃を仕掛けてくれた。だが、二挺の軽機関銃と四挺のM1ガーランド半自動小銃の威力は絶大で、一〇騎や二〇騎での攻撃では、間違いなく返り討ちにしていた。
 東方騎馬民側は、彼らの偵察隊が帰還しない理由がわからず、捜索隊を出して、偵察隊の行方を追った。
 だが、その捜索隊も行方知れずとなり、一時はかなり動揺した。
 だが、それがアークティカ側の攻撃と知ると、怒りが爆発。この地に侵入していた東方騎馬民との全面対決になっていく。
 アークティカ側、つまりメハナト穀物商会は、徐々に投入戦力を増やしていく。
 不整地走行に適した農業用蒸気牽引車四輌を行政府から借りて武装兵を乗せ、装甲車に追従させた。
 装甲車が戦車、農業用蒸気牽引車が兵員輸送車の役目をして、東方騎馬民を追い詰めていく。
 東方騎馬民の最大の武器は、機動力である。だが、彼らの敵が彼らの機動力を凌駕した場合、一気に守勢に回ってしまう。
 東方騎馬民は軽騎兵だから、武装は剣とマスケット騎銃しかない。つまり無装甲、軽武装だ。
 敵が重装甲かつ重武装で、高い機動力を持っていれば、東方騎馬民に勝ち目はない。
 この頃から、摩擦発火式の柄付手榴弾とマスケット銃を改造した小銃擲弾発射機を多用するようになったアークティカ軍、正確にはメナハト穀物商会の武装集団は、東方騎馬民の押さえ込みに成功し始める。

 ルカーンに至る街道は、マハカム川に架かる鉄の橋を渡ると、徐々に赤い海の沿岸に近づき、全行程の三分の二は海岸に沿って南に延びている。
 アークティカは、作戦開始からわずか四日間で街道の西側全域と東側の一部をほぼ確保することに成功した。

 作戦開始から五日目、ミクリンを含む五人の買い付け係が赤い稲妻号に乗ってルカーンを目指した。
 赤い稲妻号の最大船速は20ノットで、時速では三七キロになる。ルカーンまでの距離は、一四〇キロほどなので、風がよければ四時間ほどで到着できる。
 そして、この季節の風は、北から南に向かって吹くことが多かった。
 早朝にアレナスを発したミクリンたちは、激しい船酔いに悩まされたが、一二時前にルカーン領の港街カルスに到着した。
 赤い稲妻号の乗員一〇人は、他国の海軍傭兵、漁師、商船船員など出自は様々だったが、強い団結力でミクリンたちを無事に運んだ。
 艇長は、スコルの部下の一人が努めた。そして、彼はM1ガーランド小銃を持ち込んでいた。
 ミクリンたちは、カルスに着いたときはフラフラで、抱きかかえられるようにして上陸した。
 そして、何とか陸路の旅を続けられるようになるまでの二時間、ただただ横になって嘔吐を堪えるのだった。

 ルカーンの街では、蜂の巣をつついたような騒ぎになった。
 アークティカ人が赤い海最速の赤い稲妻号に乗って、食料の買い付けに来たのだ。
 ルカーンの行政府がこれを許せば、神聖マムルーク帝国に敵対する立場を示すことになり、アークティカの願いを拒めば隣国の苦境を見捨てることになる。

 帝国の外交使節団は、ルカーン行政府に対して、赤い稲妻号の拿捕とアークティカ人の乗員・乗客一五人の引き渡しを要求した。
 ルカーンの行政府は帝国の外交使節団に対して、「ルカーンはアークティカと敵対していないので、アークティカ船とその乗員・乗客を拘束する理由はない。
 しかし、帝国とアークティカとが戦闘状態であることは理解している。
 であるから、帝国側がルカーン領にてアークティカ船とその乗員・乗客を拘束することを妨害しない」と回答した。
 つまり、ルカーン行政府は、帝国による主権侵害を黙認すると回答したのだ。
 これは帝国に対する大きな譲歩で、帝国の外交使節団=実体は奴隷商人軍事組織の偵察部隊は、その総力三〇人で、アークティカ人一五人の捕縛に向かった。

 赤い稲妻号の乗員一〇人は、沖には出ず波止場にいた。
 そこに何の前触れもなく、帝国の外交使節団二〇人が現れる。
 指揮官らしい物騒な顔相の中年の男が、彼らに「この船を拿捕し、薄汚いお前たちを捕らえる」と言った。
 一〇人の乗員は笑った。
 波止場で働く人々と港の役人は、ただならぬ気配を感じて、一斉にその場を離れ身を隠す。
 あと少しの時間が経てば、この一帯には硝煙の臭いが立ちこめるはずだ。
 先に撃ったのはアークティカ人だった。彼らは無言で銃を構え、息をするように引き金を引いた。
 そして、M1ガーランド半自動小銃が撃ちまくられた。
 帝国側は、まさか無勢のアークティカ側が先に発砲するはずはないと予測していた。なぜなら、アークティカ人は一〇人に一〇挺の銃に一〇発の弾。帝国側はその倍。撃ちあえば、勝敗は決まっている。
 ひとかたまりでいたアークティカ人は、隊列さえ組まずにすぐに撃ってきた。最初の発射で帝国側の一〇人が倒されたが、その後すぐに七人が射殺された。M1ガーランド半自動小銃の威力だ。
 生き残った帝国側の三人は、遮蔽物のない広大な波止場を逃げ惑った。
 M1ガーランド半自動小銃の斉射中に、九人がマスケット銃を再装填し、逃げ惑う三人を狙撃する。次々とアークティカ側のマスケット銃が再装填と発砲を繰り返し、帝国側の三人は進退窮まった。
 三人はアークティカ人に捕らえられた。アークティカ人は、三人をルカーンの役人に引き渡そうとした。
 だが、ルカーンの役人は「面倒なので、そちらで処分してください。
 本件に関しては行政府より、一切関わりなし、との通達があるので……」
 帝国の外交使節団三人は、後ろ手に縛られて跪き、一人ずつ後頭部を撃たれて死んだ。

 ミクリンたちが乗った乗合蒸気車は、ルカーンの街の直前で、ルカーンの官憲に止められた。
 五〇〇メートル先にはルカーンの街並みが望めるが、それを除けば周囲は荒野だ。
 乗合蒸気車の二〇〇メートル前方には一〇人の屈強な男が銃を構えて立っている。帝国の、というより奴隷商人の胸甲を付けている。
 ルカーンの官憲が乗合蒸気車に乗り込んできて、ミクリンたちに降りるように命じた。
 その際、指揮官らしい女性がミクリンに「帝国が貴方たちを捕まえに来た。ご武運を」と小声で伝えた。
 ミクリンが他の四人を見ると、すでにカルカを動かして、マスケット銃に弾を込めている。
 ミクリンはゆっくりとマントの中に隠してある、コルトM1911ガバメント自動拳銃のグリップを握る。まっすぐ前を見て、安全装置を外す。ガバメントには七発が装填されている。彼女のために、マーリンが用意してくれたのだ。射撃の練習も不十分だが行った。
 拳銃に七発、マスケット騎銃が四挺。計一一発。敵は一〇人。予備弾倉は二個。
 ミクリンは四人に「至近まで近寄ってから撃つ」と伝える。
 ルカーンの官憲の先導で、帝国の外交使節団一〇人にやや早足で近付く。
 帝国側の一〇人は勝ち誇った顔をしている。四人から銃を取り上げ、剣を奪い、手に縄をかければ終わる。簡単な仕事だ。
 ルカーンの女性指揮官は、アークティカ人が降伏しないことを悟っていた。全員死ぬ気だと思った。
 それに巻き込まれるわけにはいかない。だから、彼らは一〇〇メートルまで付いて行き、それ以上は進まなかった。
 彼我の距離が七〇メートルまで接近すると、五人のアークティカ人はいきなり散開して走り出す。
 帝国側は慌てて銃を構えたが、一瞬アークティカ人のほうが早く撃った。
 だが、それで終わりではなかった。アークティカ人の赤い髪の女は、拳銃から何発もの弾を撃ち出し、突進してくる。四人の若い男のアークティカ人は、銃を逆手に持ち殴りかかろうとしている。
 帝国側は完全に後手に回っていた。彼らは最初の銃撃で六人が倒され、その直後に一人が撃たれ、数秒後には三人の頭が銃床で割られていた。
 そして、五人のアークティカ人は敵の剣を奪い、留めを刺した。
  ミクリンは、乗合蒸気車まで後退していたルカーンの女性指揮官に、「お手間をおかけして、申し訳ございません。貴国の領地を血で汚しましたこと、お詫びいたします」と頭を垂れた。
 女性指揮官は「失礼だが、貴殿は予言の娘か?」
 ミクリンは「予言の娘は、我が従姉妹です」
 女性指揮官は「見事な戦いぶりだ。アークティカに自由が戻ることを我が神に祈ろう。
 街まで貴殿たちを我々が送ろう」
 ミクリンは黙って頭を垂れて、謝意を表した。
 このときの様子は、乗合蒸気車に偶然乗り合わせていた吟遊詩人によって戯曲となり、大陸中に伝わることになる。

 ルカーンの行政府は、本当にまったくミクリンたちに干渉しなかった。単に監視が付き、幾ばくかは不自由をしたがそれだけだった。
 翌日には、以前から懇意であった穀物商から買い付けを済ませ、輸送隊の到着を待った。

 輸送隊は、ミクリンたちが発った翌日、M3装甲車、マウルティア、デュトロの三輌で出発した。装甲車は特注の貨車を牽引している。
 装甲車には、マーリンとリシュリンの他に八人の護衛、マウルティアはイリアとアリアン、デュトロにはメグとシビルスの妻ティナが乗っていた。
 街道は清掃が済まされており、三輌は時速四〇キロの速度を四時間以上も維持して、一気にルカーン領に入る。
 この機動力に東方騎馬民はまったく追従できず、監視の追跡以外は何一つできなかった。

 ルカーンに到着した三輌は、人目を引いた。車輪の替わりに奇妙な鉄の帯を巻いた車輌、車体が厚そうな鉄板で覆われた鎧車、そして珍妙な一本腕を持つ貨車だ。
 彼らは、その一本腕を使って、通常の数分の一の時間で標準貨車三輌分以上の荷を積み込み、翌朝早朝には出発し、その日の昼前にはルカナに着くという。

 ルカーンはこの頃から、アークティカに対して強い軍事的な興味を持ち始める。

 ミクリンたちからひどい船酔いのことを聞いたマーリンは、彼らに陸路で戻ることを勧めた。
 だが、ミクリンは「赤い稲妻号の乗員に申し訳ない」と言って、カルスの港に向かった。

 この作戦以降、不定期なルカーンへの食料買い付けが行われるようになる。
 街道の安定的な維持はできないが、少なくとも隊商が襲われることは防ぐことができた。
 これで、少なくとも飢餓の恐怖は、少し遠のいた。
 また、街道二カ所に臨時だが補給基地の設置にも成功した。
 このため、ルカーンから通商を求めてやってくる隊商も現れ始める。
 自国の隊商を守るため、ルカーン行政府もルカーン領に誤って侵入する東方騎馬民に対して厳しく反撃するようになり、東方騎馬民にとっては南側の退路を断たれることになっていく。

 アークティカは、復興の途上にある。私は、自分に何ができるのかを考えるのだが、その答えは得られていない。
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