里穂の不倫

半道海豚

文字の大きさ
上 下
16 / 21

Episode-15 シルバーウィーク

しおりを挟む
 9月は3連休が2回あります。3連休以外でも山荘に行く予定です。

 西湖はエンジン付きのボートは禁止です。帆走か櫂走に限られます。
 夏休みにカナディアンカヤックを体験したところ、娘が大喜び。山荘に行くと、必ず利用するようになりました。
 湖はきれいで、カヤックは健康的な運動です。お弁当を持って、カヤックでピクニックに行くことが、最近の家族のブームです。
 それ以外では、娘のお気に入りは四輪バギーで、飽きもせず山荘の周りをグルグル回ります。
  私と夫は公道が走れるので、娘は「不公平、不平等、差別だ!」と騒ぎます。

 土曜日の朝、夫よりも早く目覚めた私は、東の窓に立ち、朝日が差し込むのを待っていました。
 林越しに太陽が見え始めた頃、夫が起きました。少し眠そうですが、私の背後に立ちます。夫の両手が動いたので、その手は私の腰にくるものだと感じていました。
 でも、違いました。
 夫の指は私の紐パンの紐の先端をつまみ、ゆっくりと引いたのです。
 紐が解けて、私が少し足を広げると、ショーツが床に落ちます。
 同時に、私はプログラミングされていたように、お尻を突き出します。
 夫が入ってきました。
 私は窓に両手を付き、朝日を浴び、窓に強く息を吹きかけながら、夫の鼓動に合わせて動きました。

 朝の儀式が終わって、夫に「何だか、すごくよかった」と伝えると、夫は「それじゃ、新年の朝もこれだな」と。
「除夜の鐘もね」
「里穂は俺に、今日は何回させるの?」
「まだ3回は大丈夫でしょ」
「まぁ、頑張るよ」

 私がショーツの紐を結んでいると、夫が手伝ってくれました。
「ねぇ、真白さんだけど……」
「姐御がどうした?」
「真白さんとは2人で会わないでほしい」
「何それ!」
 夫が笑います。
「何か、気になるぅ~」
「姐御とは、何もない。あるわけない」
「わかんないじゃん。
 もし、真白さんとするなら3人でしよ」
「イヤだ。
 絶対にイヤだ。
 あり得ない!」
 夫は完全否定しましたが、ちょっと心配。

 娘が四輪バギーで走り回っていた土曜日の夕方、夫が前後の脈絡なく告白。
 2人は南側のウッドデッキで、娘のライディングを見ています。
「舞がいなければ、結婚はしなかった。
 俺に家庭があるとは、あり得ないことだ。
 ありがとうね、里穂」
 私は、意味がわかりません。
「妊娠しなかったら、結婚はしなかったの?」
「いや、妊娠しても、結婚はしなかったと思う。里穂以外ならね。
 俺には里穂が必要だった。でも、必要だからって理由では結婚はできない。
 俺みたいな人間は、闇の中に生きるべきだ。
 明るいところを歩いてはいけない」
 私は困惑します。
「何を言っているのか、よくわかんないよ」
「いまでこそ、監視は緩んだが、当時はもっときつかった。
 仕事はなく、金もない。人との接触は、その道のプロと行きずりの女だけ。
 誰にも迷惑をかけずに生きるなら、それ以外の方法はなかった。
 言葉を忘れるほどの長い沈黙。
 耐えきれないほどの寂しさと、誰かと接したら敵ではないかと思う猜疑の心」
「……」
「里穂は、独りぼっちだと言った。1人で生きていると。そして、承認欲求の強さを感じた。
 追い詰められていた俺と同じだった。
 誰とも深くは関わらないと決めていたルールを破った。その代償が舞だ。里穂と舞がいなければ、俺はどこかの時点で里穂の前から姿を消していた。それが、里穂のためだから。
 鬼畜から人間に戻るには、大きな動機が必要だった。
 俺を救ってくれた里穂を、俺は見捨てたりしない。里穂を苦しめた以上、ヤツには代償を払ってもらう」
 ヤツとは、社長のことでしょう。夫は怒っているのです。穏やかなのに怒っています。
「ヤツは承認欲求が強い里穂の心を利用し、もてあそび、自分のコントロール下に置こうとした。
 許さない。絶対に」
 何もかも動きはありません。ですが、水面下で何かが起きているように感じていました。私の単なるカンは、夫の背中を見ていて確信に変わりました。

 私の会社には、男性社員が3人しかいません。その理由ですが、応募者は女性のほうが明らかに優秀だとか。
 飛び抜けて優秀なエンジニアの1課長、それほど優秀ではないけど頑張り屋の那澤さん、出勤しても空気のような佐藤さん。
 この佐藤さんは2課長によると、センサーに関しては優秀なエンジニアだとか。さらに、奥様がそこそこ有名な大人動画の女優さんだったとか。
 前職では、会社の飲み会で上司がこのことを話題にして、からかったそうです。その上司を一撃でノックアウトしたとか。
 暴力行為で事実上の解雇になり、私たちの会社に転職したんだそうです。
 那澤さんと佐藤さんが会社の帰りに飲みに行って、那澤さんが「妻が不倫相手に抱かれている姿が頭に浮かぶんですよ。見ていないのに、何かリアルで……」と悩みを打ち明けると、佐藤さんは「俺はかみさんが出演した全作品を見ているぞ。俺は彼女のファンだからな。まさか結婚してもらえるとは思わなかった」と答えたそうです。
 さらに、佐藤さんは「俺がショックだったのは、かみさんが10歳もサバ読んでいたこと。最初の作品が22歳でデビューとなっていたんだが、実際は32歳だった。熟女ものに興味のない俺としては、騙されたとリアルに感じた。パッケージ見て、涙が出たよ」と。
 それ以降、那澤さんはフラッシュバックに悩まされることがなくなったとか。
 本当かどうかは知りませんが……。

 最初の3連休。金曜日の夜に出発、月曜日までお休みです。
 今回は、日曜日以外はまったりする予定です。
 土曜日はお昼頃まで寝ているつもり。朝寝坊って、最高の癒やしですよね。

 夫は私よりも先に目覚めていました。枕を挟んで、私の首の下に夫の腕があったので、夫は私を起こさないように、まったく動きませんでした。
 私は、不完全な覚醒と同時に夫に抱きつきます。夫も腕を背中に回してくれて、その腕に力を入れてくれます。
「元気になってない。
 それって、私に魅力がないから?
 寝起きブスだから?」
「里穂を見るたびに勃っていたら、死んじゃうよ」
「死んじゃえぇ」
 私がキスをせがむと、夫は応じてくれます。
「元気じゃないけど、朝フェラする?」
「奥様のお好きなように」
 夫の顔を悪戯っぽく眺めたあと、私は布団に潜り込み、下着を下げ、口に含みます。
 夫は、すぐに元気になりました。
 夫を口に入れたまま「気持ちいい?」と尋ね、夫が「すごく気持ちいい」と答えてくれます。
「このまま出す?」
「入れよっか?」
 私は名残惜しそうに舐めてから、仰向けになります。夫が紐パンのサイドを解き、完全には脱がさず、足を広げさせ、前だけ落とします。
 夫が入ってきました。
 朝の覚醒しきれていない気怠さのある身体の中で、夫がゆっくりと動きます。キスして声を出し、声を出してキスする、を繰り返します。
 夫の動きは、私の気怠さと同期するように全身に快感の波動を伝えます。
 夫は、私を気持ちよくするセックスしかしません。私の状態を的確に分析し、最良の行為を選択してくれます。
 この朝もそうでした。
 特別なことは何もされていないのに、何度も背中を反らせ、何度も記憶が飛びます。
 口を大きく開け、声が出ず、息を大きく吸ってから止め、一気に吐き出します。これを何度も繰り返し、失神しかけます。
 夫が早くなります。
 私の身体が完全に覚醒したからです。
 俯せにされ、背後から入れます。
「味わって」
 夫にそう言われて、私は「ずっと入れていて」と伝えます。
「それは無理」
「なら、舞が起きてくるまで。
 出しちゃダメよ。終わっちゃうから」
「それじゃ辛いな」
「隙みて、出してあげるから大丈夫」
 夫は上、私は下で少し上体を持ち上げ、互いに笑い合いました。
 ゆるーく感じながら、夫を楽しんでいると、
ドアがドンドン。
「あー、いいとこなのに起きてきた。
 本当にお邪魔虫だよねぇ~」

 部屋着に着替えて、ダイニングに行くと、娘が冷蔵庫を覗いていました。
「起きないと思った」
 娘は自分で朝食を作ろうとしていたようです。
「ちょっと待ってて。
 朝ご飯作るから」
 今日も何気ない日常が始まります。

 花壇を作りながら、夫がポツリと。
「休みの日に何なんだけど……」
「何?」
「前の会社の在職期間中に自殺した人はいる?」
「社員が5000人以上いるから、何人かいると思う」
「印象に残った事件とか?」
「……、ないと思う」
「当人かもしれない」
「……、当人?」
「謎の3人目は、あの会社の内情をよく知っている。
 仁科安寿さんのような存在は、アルカディア設立以前からあったようだ。
 通常は、身元保証人に困るような身寄りのない新卒の女性が選ばれていた。亭主持ち、彼氏持ちは避けていた。
 孤独な人が対象にされていた。入社後、新卒社員の中から選ばれるのではなく、応募者の中から該当者を探していた。
 つまり、会社は組織的に動いていた。
 専門の部署があり、仁科さんが所属していた部署がそうなんだが、会社の組織変更に合わせて、その担当部署名は頻繁に変わったらしい。
 現在、この部署は関連会社に移った。
 謎の3人目は、それを見失ったようだ」
「どういうこと?」
 夫の移植ゴテが動きを止めました。
「もしかすると、3人目は仁科さん以前の被害者本人かもしれない」
「……」
「アルカディアが作られた時期ははっきりしないが、5年以上前だろう。
 仁科さんのような存在は、会社設立から数年後にはいたらしい。
 3人目は狭間社長ではなく、その部署の元締めを狙っている」
「その人から聞いたの?」
「いいや、非接触的方法しかやりとりできない。こちらの正体を知られることを避けつつ、向こうの正体を知る方法はない。
 そして、正体を知る必要はない」
「どうして?」
「相当な手練れで、過去がない。つまり、犯罪か犯罪的行為がまったくないんだ。
 この点が、俺や善波とは違う。
 3人目を追跡することは不可能だ。
 そして、俺たちの敵じゃない。敵の敵は味方だ」
 私は不安でした。
「私たち、危険なの?」
 夫が立ち上がり、腰を伸ばします。
 私も立ち上がります。
「危険なのは、狭間だよ。
 3人目にイケメン野郎のお友達をことごとく潰され、善波に無一文にされ、俺が米軍のドローンでも乗っ取って自宅にミサイルをぶち込めば、政権にどれだけ食い込んでいようと見捨てられるよ。
 3連発フルコンボって感じかな」
 私から社長への恐怖心が完全に消えた瞬間でした。

 娘が「パパ、ガソリンがないみたい!」と叫んで、四輪バギーを止めました。

 太陽が沈んでから、奈々さんから電話がありました。
「狭間の代理人だけど、辞任したって……」
「えっ!
 その弁護士から、狭間と子供の面会を要求されていたんでしょ」
「そうなんだけど……。
 子供はイヤがっているし、私も怖いし、でも面会権があるのは事実だし……。
 彼に相談したら、任せろって……。
 でも、電話だけでもしておこうと思って電話したら、当職は辞任しました、で終わり」
「でもよかったじゃない」
「うん」

 電話を切り、夫にそのことを話しました。
「おい、また弁護士が辞任したのかよ、いい加減にしろよ」
 本気で怒ったてから、ニタッて笑ったんです。
「善波のヤツ、クレジットやキャッシュカードのピンでも変えたんじゃないの。
 その弁護士の。
 で、ビビって手を引いた、そんなところだろうね」
「ピンって」
「暗証番号のこと」
「……、そんなことできるの?」
「善波ならね」
「奈々さんには、強力なボディガードがいるってこと?」
「ある意味、世界最強だろうね。
 前のかみさんとは死別だから、女性との交際は諦めていたみたいなんだ。恋愛に積極的なタイプじゃないし、警察に目を付けられているからね。
 部屋には前妻の位牌があるわけで、墓もある。死別は離別よりも条件が悪いから、子供と2人で平穏に暮らしていければいい、って言ってたよ。
 だけど、年上で、清楚で、訳ありの3条件が揃った奈々さんが現れたから、気が変わったんだろう」

 そのとき、ニュースサイトに号外が流れます。
「太平洋上を南下していたロシアの軍艦から、対艦ミサイルが発射されて、葉山の住宅に命中、だって」
「それはたいへんだ。
 戦争にならなければいいけど。
 その家の持ち主は、ロシアに修理代を請求するのかな?
 爆発はしなかったはずだから、屋根に穴が空いた程度だろう。
 でも、訓練用模擬弾でも、ミサイルが命中したら、それなりにビビるだろうね。
 イケメンで、爽やかで、金を持っていてもね」
「……」
「真琴の件は、まだ誰が命じたのか、わかっていないからね。釘は刺しておかないと。バカでかい釘をね」
「……」
「2コンボは偶然だ」
 私は数秒間息が止まりました。
 私も世界最強のボディガードに守られているみたいです。

 私は夫に「もし、あの家に誰かいて、怪我とかしたら……」と問うてみました。
「いまの俺は鬼畜だ。
 そんなことは考慮しない。一応、無人だとは確認したが、リアルタイムで監視していたわけじゃない。
 誰かいたかもしれないね。
 だけど、俺はそんなことは気にしない」
 私は絶句しました。
「この件は、長引かせたくない。
 俺を鬼畜から人間に戻せるのは、里穂だけだ。俺には里穂が必要だ」

 社長の代理人弁護士がまた変わりました。
 夫は、また最初からやり直しです。
 その最初の打ち合わせが、真白さんの事務所で行われ、私も同席しました。
「依頼人と奥様の不貞行為に関してですが、依頼人は十分な慰謝料、真摯な謝罪をさせていただきたいとのことです」
 夫が溜息。
「またですか。
 慰謝料と謝罪は不要です。
 事実確認をしたいだけなので……」
 今度の弁護士も比較的若い男性です。抑え込んでやろうという、挑戦的な雰囲気があります。
「その事実確認とは、何分何秒に何をやったとか、そんなことですか?」
「その通りです」
「意味ないでしょう。
 慰謝料と謝罪を受けて、示談されたらどうですか?」
 真白さんが夫の意向をフォローします。
「狭間さんもたいへんでしょう。
 葉山の別荘にロシアの軍艦からミサイルを撃ち込まれたり、離婚担当の代理人が突然辞任したり、災難続きですね。
 早く終わらせたいなら、事実確認に同意するしかありませんよ。
 私の依頼人が意味があると判断しているんですから、狭間さんにはどうすることもできないんですよ」
「依頼人は解決を望んでいます」
 夫は落ち着いています。
「私も1日も早く解決したいんです」
「ならば、示談に応じていただけませんか?」
「ですから、事実確認をしたいと言っている」
「損害賠償と謝罪では不足なんですか?」
「ですから、何度もお伝えしているわけですよ。
 謝罪は不要だし、慰謝料もいらないとね」
「なぜ、事実確認が必要なんですか?
 不貞については認めているのに」
「妻と離婚するかしないかを判断するためです」
「再構築を決めたんじゃないんですか?」
「いいえ」
「……、毎週のようにご家族で旅行されていますよね」
「さすがに常時監視しているだけあって、詳しいですね」
「……」
「私の娘が襲われましてね」
「……」
「実行犯に指示をした主犯がまだ捕まっていないんですよ」
「……」
「私が思い当たるのは、代理人さんの依頼人だけなんですけどね」
「……」
「私は、そう考えています」
「私の依頼人はビジネスマンであって、暴力行為、まして誘拐などあり得ません」
 真白さんが微笑みます。
「どなたもお怪我がなくて何よりでしたね。
 ミサイルが爆発しなかったので、たいした被害はないようだし。あれは艦対艦ミサイルだから、爆発すればあの程度の建物は完全に吹き飛んでいましたね。
 あっ、私は元自衛官なんで、そういうことには詳しいんですよ」
「……。
 奥様から新藤さんを説得していただけませんか?」
 私は俯いたまま囁きました。
「申し訳ありません。
 私は夫と行動を共にします。社長にはそう伝えてください。それと、私たち家族に危害を加えるなら、戦うと」
「危害?
 奥様もですか?
 何か勘違いしていませんか?」
 真白さんが溜息をつき、夫が笑います。
「代理人さん、まったく理解していないようですね」
「……」
 夫が代理人をにらみます。
「伝書鳩に用はない。
 これ以上の時間の無駄は、忍耐の限度を超えますね。
 今日はここまでにしましょう。
 次は、事実確認に応じるという連絡を期待します」

 その後の夫と真白さんの話です。
「ロシアのミサイルは、新藤の仕業?」
「そんな物騒なことはしない。
 実際、ロシアはヒューマンエラーによる誤射だと発表している」
「そう説明するしかないよね。
 誰かに操作されて、発射されました、とは口が裂けても言えないし……。
 ロシア政府は特使を派遣して、日本に謝罪するそうだし……。
 で、ユニセフへの寄付は?
 ユニセフは狭間社長に対して、感謝の意を発表したけど、社長も会社も沈黙したまま。
 金の出所は疑われているし、あの会社もさんざんな目に遭っている。
 離婚担当弁護士のほうは、クレジットとキャッシュカードが突然使えなくなったと驚いていた。
 まぁ、口座の残高がなくなったわけじゃないけど、かなり怖がっていたね。
 それと、レイプ部長と課長を追い詰めたのも……」
「俺じゃない」
「本当?」
「部長と課長によるレイプ動画の被害者はたぶん、仁科安寿さんではない。
 違うと思う。
 課長が管理していた動画や画像を詳細に調べたんだが、被害者は5人だと思う。
 フォルダは被害者別で分けられておらず、たぶん年代別に分類していたんじゃないかと思う。
 最長期間の被害者は4年、最短は半年。この4年間の被害者が、動画の女性だと思う。
 あの公開された動画の女性は顔が完全に消されていたけど、体格から仁科安寿さんではない。
 最長期間の被害者である可能性が高い。
 それと、クラウドのデータは消したが、その前に漁られたのかもしれない。
 つまり、俺が預かっているデータ以外にもコピーがあるんだ」
「被害者の名前はわかる?」
「いや、クラウドには一切の文字情報がなかった。ファイル名はデジカメやデジカムが自動的に付与したものだ。
 被害者の名前を類推させるものは何もない」
「被害者に共通する特徴とかはあるの?」
「一時期、同時に2人が被害に遭っていた。2人が同時に映っている動画と画像があった。
 1人は20歳代前半から30歳代前半、もう1人は30歳代後半から40歳代後半。
 推測だが、1人は20歳代前半、もう1人は40歳代だ」
 私は沈黙が苦痛でした。
「顔を見たら、誰だかわかるかも」
 夫が賛成します。
「確かに、里穂ならわかる可能性があるね」
 真白さんが少し困った顔をしています。
「調べてどうするの?」
「部長と課長を追い詰めた動画の中の被害者は、たぶんアップロードをした本人じゃないかと思う。
 自分以外の被害者の動画は最初から使うつもりはなかった。自分が映っている動画がほしかったんじゃないかな。
 調べて見つけ出しておかないと、こちらに火の粉が降りかかる可能性がある。
 もらい火事は困る。
 何とかしないと」
 真白さんが身を乗り出す。
「私は表側をどうにかしていく。
 新藤がすることには関わらない。
 新藤がすることは止めない」
 夫が頷きます。
「わかった」

 私が夫に付いていった理由ですが、もちろん浮気防止のためです。

 後半の3連休は、金曜日、土曜日、日曜日です。マンションに帰る日曜日以外は、アクティブに遊ぶ予定です。

 土曜日の夜、娘が就寝の時間になり、私たちも2人の部屋に入りました。
 私はゆったりとした部屋着を着ていました。
 夫が部屋に入ると同時にロックし、それはいつものことなので、気にしませんでした。
 私は一応メールを確認しようと自分のノートパソコンに向かいます。
 ノートパソコンのスリーブを解除しようと、エンターキーを押した瞬間、夫がショーツごと部屋着のボトムスを引きずり落としたんです。
「キャ!」
「気にせずメールチェックして」
 一瞬ビックリしたものの、平常心は残っており、画面に目を向けると、夫が入ってきたのです。
「何~、どうしちゃったぁ~」
 私はメールチェックしながら、夫にされています。返信文をタイプしながら、声を出します。
「あ!
 ダメ。ちょっと待って」
 夫は待ってくれません。
 胸も蹂躙されています。
 結局、絨毯の上に押し倒され、私は無抵抗で攻め続けられました。正常位でされ、バックでもされ、騎乗位は許されず、フェラは求められず、身体の隅々まで舐められました。
 私に許されたことは、キスに応じることだけ。それ以外は完全な受け身。
 愛されているのではなく、支配を受け入れているような感覚に陥ります。
 でも、確実に愛されていることは伝わるんです。夫の指先、舌先、私の体内にある夫に愛があるんです。
 夫が射精する瞬間、夫が私から出ました。
 それが、何となく寂しかったんです。

 2人で絨毯に仰向けになり、並んで寝ています。
「私、ピル、使ってみようかな」
「え!」
「最後の最後に外に出されるの悲しいし、いつでもしたいし……」
「う~ん」
「反対?」
「薬を飲むのは、なるべく避けたほうがいい」
「結構保守的だよね」
「里穂のこと考えているんだよ」
「わかっているけど、もっと感じたいじゃない」
「試してもいいけど、身体に合わなかったらやめるんだよ」
「わかった」

 私がパジャマ代わりのTシャツを着るために、部屋着を脱ぐと、夫が乳首に吸い付いてきました。
「もう1回するの?」
「うん」
「ホント、私の胸好きだよね」
「大好き」

 私はまだ、夫が謎の3人目と接触に成功したことを知りませんでした。 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

寝室のクローゼットから女の声がする!夫の浮気相手が下着姿で隠れていてパニックになる私が下した天罰に絶句

白崎アイド
大衆娯楽
寝室のクローゼットのドアがゴトゴトと小刻みに震えて、中から女の声が聞こえてきた。 異様な現象を目の当たりにした私。 誰か人がいるのかパニック状態に。 そんな私に、さらなる恐ろしい出来事が目の前で起きて…

聞いてんの!子供を連れて実家に帰るため新幹線に乗った私の席の近くに夫の浮気相手が座り、煙を吹きつけてくる

白崎アイド
大衆娯楽
子供が産まれので、夫は実家に帰って親に会わせてきなと新幹線の指定席を予約してくれた。 子供を抱えて指定席に乗った私の隣に座る派手な女性に違和感を持ち・・・

男子中学生から女子校生になった僕

大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。 普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。 強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!

どうして隣の家で僕の妻が喘いでいるんですか?

ヘロディア
恋愛
壁が薄いマンションに住んでいる主人公と妻。彼らは新婚で、ヤりたいこともできない状態にあった。 しかし、隣の家から喘ぎ声が聞こえてきて、自分たちが我慢せずともよいのではと思い始め、実行に移そうとする。 しかし、何故か隣の家からは妻の喘ぎ声が聞こえてきて…

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

処理中です...