この争いの絶えない世界で ~魔王になって平和の為に戦いますR

ばたっちゅ

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【 それぞれの未来 】

あの日の出来事 前編

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 翌日――なんだか素敵な夢を見た気がする……が、詳細を思い出せない。
 だが頭がすっきりして体が軽い。これは魔王の魔力が抜けたせいか、それともサキュバスの技によるものか……。
 多少の悔しさはあったが良しとしよう。

 今日は朝食の缶詰を食べながら、互いの情報の共有作業を行った。
 流石に、もう夕べのような勘違いは無しにしたいからな。
 しかし昨日のセミヌードが目に焼き付いて、相変わらず視線に困る。
 それに横で食事をしながらメモを取っているエヴィアも気になるところだ。コイツのメモには何が書かれているのか……。

 そんな不純さと興味と警戒心の入り混じる中、ふいに話の中に炎と生き獣の領域の話が飛び出した。

「君もあの領域に居たのか!?」

「ええ、父と最後に会ったのがあそこです。そこで、今後人類に起こる事を色々と聞きました」

「どこまで正確だったんだ?」

「幾つかの可能性として提示された中には、今の状況も予言されていましたよ。魔王が海を人類から奪い、壁を破壊して大規模な戦争を起こすと。その先は、言うまでもありませんね」

「人類を滅ぼすってか? こちらとしては、そんな気は毛頭ないんだけどな。だけど今のままでは、その大規模な戦争が起きる公算が高いのは分かっている。それを何とか止めさせたくて、こうして人間領まで来たんだしな」

「もしその考えが変わらないのであれば、人類が滅びる原因は貴方が死ぬからと言う事になりますね」

 さらりと言われた言葉が重い。元々死にたくはなかったが、死ねないという付加価値が加わるとまた重さが変わってくる。

「昨日の件、きちんと考えてくださいね。貴方が死んだら終わりな以上、貴方の代わりに魔族を従わせる存在が必要なのです。それに、私も堂々と食っちゃ寝生活に入れますからね。貴方も死なず、人類も滅びず、良いことずくめじゃないですか」

 なんだかおもいっきり本音が混ざっていた気もするが、実際どうなのだろう?
 魔族は俺と魔王の子供との見分けがつかない。いや、だが微妙には付けているのだろう。ケーバッハの件からすると、魔王の子供は魔族に命令できないようだしな。
 だが、おそらく直子の命令なら聞くのではないだろうか? もしくは、魔王と魔王の子供との間にできた子供ならだ。
 先代魔王の計画が正しいのなら、そういう事になる。

 この件に関して、先代が間違っているとは思えない。となれば、一考の余地はあると思う。もっとも、自分の子供を戦場に送り出して、平然としていられる俺でもないがな。

「マリッカは、自分の子供が戦場で人間に殺されてとして、それでいいのか?」

「その時はその時ですね。戦えばそうなる事もあるでしょう。ですが、また作ればいいでしょう?」

 だめだ。常識が違い過ぎて、この件に関しては妥協点を見いだせそうにない。
 いや、もしかしたら自分の子供ってものを知らないからでは? お腹を痛めて産んだ子ともなれば、考えは違ってくるのかもしれない。
 でも確認しようもないしな……取り敢えず保留にしておこう。

「そういや先代魔王がどうして死んだのか、何か聞いているか?」

 なんだかんだで魔人からは聞きそびれている。父親の死に関して言いたくないかもしれないが、単純な興味と言うより必要な気がしないでもない。

「魔王の継承に関しての詳細は聞いていません。ですが貴方を召喚したことで、父の肉体は限界を迎えていたと聞いています」

 そうか……代替わりのシステムは詳しくは分からないが、今まで聞いた話から手順は予想が付く。魔王の魔力を魔人の体に移し、その後に召喚した人間に渡して完了なのだろう。おそらくその過程で……前の魔王は死ぬのだ。
 いや待てよ? だが俺は先代魔王と話しているよな? 死ぬまでにタイムラグがあるという事だろうか。

「俺を呼ばなければ、死ななかったって事なんだろうか……。俺は、君の父の仇になるのかな?」

「そんなことはありませんよ。最後に会った時、父は満足していました。そして貴方に後を託す事を、少し申し訳ないと言っていましたね」

「君は先代魔王……父を見取ったのか?」

「ええ、父は魔人イヤンカイクと共にこの世から消滅しました。同時に溶岩を流出させて、邪魔な人間を一掃したんですよ。本当ならその後で私があなたをエスコートし、一度人間の世界で選択して貰うつもりでした」

「選択?」

「そうです。人間世界を見て、感じ、その上で魔王としてどうするかを決めてもらう予定でした」

 魔王になる事は確定している様な話だが……案外そうなのかもしれない。
 人間として生きる道があると思っていたが、おそらく俺はそうしなかっただろう。
 それが何故なのかは分からない。だが世界を良くする為の力があると言われたら、たとえ困難な道であっても選択した気がする。
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