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第四章:<CONVICT>
<CONVICT> 6
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「意外と身近な場所に隠してあった。……月見坂 葵、お前、今回の殺人を自分で用意したカードに見立てて行った理由は、この鍵の隠し場所をなるべく自然に作り出すためだろう? 正直、それ以外に見立てをしていた必要性が考えつかない」
川辺さんの問いへの返答を曖昧にしたまま、お兄ちゃんは葵さんへと視線を固定する。
「な、何のことを言って……」
「とぼけるな。お前がその鍵を隠していた場所……オレたちが一度は探した部屋の中ではあったが、あんな場所にまで手を入れて探す者は一人もいなかった。と言うよりも、探そうとなんかしないだろうな。……殺害した貴道 勇気の、解体されて内臓が剥き出しになった死体の内部なんて、手を突っ込む奴はなかなかいない」
そう。
そうなのだ。
お兄ちゃんがさっき鍵を取りに向かったのは、貴道さんの死体が残る二〇一号室。
ベッドの上に横たわる、元は貴道さんであったはずの肉塊。
その切り裂かれたお腹の中から、お兄ちゃんはビニルに入れた状態で隠されていた鍵を取出していた。
あたしは途中で胃液が逆流してきて、慌てて廊下に逃げてしまったのだけれど。
あんな場所、警察とかでなければ誰も調べようなんて考えないし、鍵が隠されてるとだって想像もしないだろう。
「貴道と一緒の晩に木ノ江医師も殺害したのは、死体を本格的に調べさせないためか? 彼女なら人間の臓器を見ることに少なからず慣れているからな。万が一、絵馬のときのように検死をされては、一発で鍵を取り出されていた可能性が極めて高い」
「そ……そこまで考えてあんなグロいことやってやがったのか……」
呻くように告げる伊藤さんの瞳は、悪魔でも見るかのように強張って見える。
気配りができ、人懐こい性格の可愛らしい女性。それがまさか、死体の内臓を掻き回すような異常者だったと知れば、こういう顔にもなるか。
「……酷いな。あたし、そこまで残酷な人間に見られてしまってるんですか? 何も悪いことなんてしてないのに、とんでもない濡れ衣を着せられて――」
「黙れ、見苦しい」
「黙りませんよ!」
ピシャリと告げるお兄ちゃんの牽制に、葵さんは声をあげて反発してきた。
「自分が殺人犯にされようとしてるのに、黙ってられるわけないじゃないですか! あたしだって、ずっと怖くて不安に耐えて憔悴しながらこうしているのに、それなのに人殺しって――」
「お前が憔悴しているのは、単に深夜の犯行で寝不足が続いているだけだ。他のメンバーと同じふりをするな」
「なっ……」
身も蓋もなさ過ぎる言い方に、葵さんの頬が引きつる。
「お前は、確かに用意周到にこの殺人の舞台を作り上げたとは思う。しかし、その計画が失敗した場合と計画を無事に終えた後のことに関しては、少しばかりずぼらだったみたいだな。言い逃れをしようと必死なようだが、状況を冷静に従えてみろ。もうお前が犯人であることは周知の事実で、全員がお前を疑っている。誰も油断などはしない。マスターキーも回収した今、人の部屋へ入り込むことも不可能。昨夜の世話人のように、残りの期間お前を隔離してしまえば警察が来るまで大人しくせざるを得ない。そうなれば当然、この研究所内に残されている証拠の数々、絵馬に飲ませたペットボトルの空き容器もごみ箱にあるだろうし、凶器の斧や手袋、それ以外にも多々あるな。それらがあっさりと明るみになり、お前が犯人だとすぐに証明されることになるだろう」
相手に声を割り込ませる暇も与えないくらい一気に話し、お兄ちゃんは葵さんをたたみ掛けようとしていく。
「既にお前は五人を殺害している。このペースを考えると残りも早めに殺し、最後の一日か二日を証拠を消す後処理の時間にでも使おうと企んでいたんじゃないのか? もしそうならば残念だったな、それ以前にここで計画は終わりだ」
そこまで喋り、ようやくお兄ちゃんは口を閉ざした。
何とも言えない沈黙が、談話室に充満していく。
みんなここからどう反応すれば良いのかわからないように呆然とし、葵さんを見つめる。
川辺さんの問いへの返答を曖昧にしたまま、お兄ちゃんは葵さんへと視線を固定する。
「な、何のことを言って……」
「とぼけるな。お前がその鍵を隠していた場所……オレたちが一度は探した部屋の中ではあったが、あんな場所にまで手を入れて探す者は一人もいなかった。と言うよりも、探そうとなんかしないだろうな。……殺害した貴道 勇気の、解体されて内臓が剥き出しになった死体の内部なんて、手を突っ込む奴はなかなかいない」
そう。
そうなのだ。
お兄ちゃんがさっき鍵を取りに向かったのは、貴道さんの死体が残る二〇一号室。
ベッドの上に横たわる、元は貴道さんであったはずの肉塊。
その切り裂かれたお腹の中から、お兄ちゃんはビニルに入れた状態で隠されていた鍵を取出していた。
あたしは途中で胃液が逆流してきて、慌てて廊下に逃げてしまったのだけれど。
あんな場所、警察とかでなければ誰も調べようなんて考えないし、鍵が隠されてるとだって想像もしないだろう。
「貴道と一緒の晩に木ノ江医師も殺害したのは、死体を本格的に調べさせないためか? 彼女なら人間の臓器を見ることに少なからず慣れているからな。万が一、絵馬のときのように検死をされては、一発で鍵を取り出されていた可能性が極めて高い」
「そ……そこまで考えてあんなグロいことやってやがったのか……」
呻くように告げる伊藤さんの瞳は、悪魔でも見るかのように強張って見える。
気配りができ、人懐こい性格の可愛らしい女性。それがまさか、死体の内臓を掻き回すような異常者だったと知れば、こういう顔にもなるか。
「……酷いな。あたし、そこまで残酷な人間に見られてしまってるんですか? 何も悪いことなんてしてないのに、とんでもない濡れ衣を着せられて――」
「黙れ、見苦しい」
「黙りませんよ!」
ピシャリと告げるお兄ちゃんの牽制に、葵さんは声をあげて反発してきた。
「自分が殺人犯にされようとしてるのに、黙ってられるわけないじゃないですか! あたしだって、ずっと怖くて不安に耐えて憔悴しながらこうしているのに、それなのに人殺しって――」
「お前が憔悴しているのは、単に深夜の犯行で寝不足が続いているだけだ。他のメンバーと同じふりをするな」
「なっ……」
身も蓋もなさ過ぎる言い方に、葵さんの頬が引きつる。
「お前は、確かに用意周到にこの殺人の舞台を作り上げたとは思う。しかし、その計画が失敗した場合と計画を無事に終えた後のことに関しては、少しばかりずぼらだったみたいだな。言い逃れをしようと必死なようだが、状況を冷静に従えてみろ。もうお前が犯人であることは周知の事実で、全員がお前を疑っている。誰も油断などはしない。マスターキーも回収した今、人の部屋へ入り込むことも不可能。昨夜の世話人のように、残りの期間お前を隔離してしまえば警察が来るまで大人しくせざるを得ない。そうなれば当然、この研究所内に残されている証拠の数々、絵馬に飲ませたペットボトルの空き容器もごみ箱にあるだろうし、凶器の斧や手袋、それ以外にも多々あるな。それらがあっさりと明るみになり、お前が犯人だとすぐに証明されることになるだろう」
相手に声を割り込ませる暇も与えないくらい一気に話し、お兄ちゃんは葵さんをたたみ掛けようとしていく。
「既にお前は五人を殺害している。このペースを考えると残りも早めに殺し、最後の一日か二日を証拠を消す後処理の時間にでも使おうと企んでいたんじゃないのか? もしそうならば残念だったな、それ以前にここで計画は終わりだ」
そこまで喋り、ようやくお兄ちゃんは口を閉ざした。
何とも言えない沈黙が、談話室に充満していく。
みんなここからどう反応すれば良いのかわからないように呆然とし、葵さんを見つめる。
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