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第二章:断罪決行
断罪決行 8
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その情報をまとめると、
絵馬 詩織・<知識>
木ノ江 明日香・<移植>
花面 京華・<静謐>
月見坂 葵・<援助>
貴道 勇気・<晩餐>
美九佐 行典・<音色>
笠島 健次・<沈黙>
伊藤 和義・<製造>
川辺 久・カード無し
という結果となった。
その全てを聞き終えたお兄ちゃんが、短く息をつく。
「やはり、思った通りだ。それぞれに配られたキーワードと職業が上手い具合にリンクしている」
「職業?」
呟くお兄ちゃんの声に僅かに首を傾げ、葵さんが疑問符を浮かべる。
「ボランティアと援助、医師と移植、音楽指揮と音色。……心理カウンセリングと静謐も、精神の安定をイメージさせるものとしてはあながち的外れではない」
「こじつけだろう。俺はどうなる? 映画評論家をしているのに、沈黙か? 口を開くのが仕事のようなものなのに、矛盾しているじゃないか」
肩を竦めるような仕草と共に、笠島さんが割り込む。
「そうか? 喋るという行為において、沈黙は関連性のある言葉だ。無関係とは言えないだろう」
笠島さんの普段の仕事を見たことがないからどんなことをしてるのかはわからないけど、お兄ちゃんの言い分は間違いではないとあたしも思う。
「フンッ、都合の良い解釈だな」
鼻息交じりに口元を歪めてそう吐き捨てると、笠島さんは面白くなさそうに黙り込む。
特に言い合うつもりもなかったようで、内心どうでも良い話だとでも思いながら聞いているのかもしれない。
「あたしのカウンセリングと静謐は、リラックスや目を閉じることを含んでいるのかもしれませんし、白沼さんの言うことも一理ある気がしますね」
お兄ちゃんを気遣うようにそう言ったのは花面さん。
こちらは笠島さんとは対照的に、真面目な様子で話に耳を傾けてくれていたようだ。
「さて、次は世話人。お前に一つ訊いておきたいことがある」
「は、はい。何でしょうか?」
不意に呼ばれて、川辺さんの表情が硬くなる。
「お前には細かい指示が書かれた紙が届いていたとさっき聞いたが、それを見せてもらうことは可能か? その指示は、下手をすると犯人が殺人を実行する上で有利に進めるための、都合の良い計画であるかもしれない。こちらでも、知っておく必要があるだろう」
「手紙、ですか。申し訳ないのですが、既に処分してしまいましたので、手元には残っておりませんが……」
「処分だと?」
「はい。それも指示の一つでして。内容を全て覚え、この手紙は廃棄することと最後に書かれておりました。ですが、内容でしたら覚えております。食事の時間や、部屋割りの配置、戸締りなどをきちんとすること等、細かくはありますが難しい内容ではありませんでした」
「到着した招待客を談話室に集めてアイスコーヒーを出したのも、その中にあった指示の一つか?」
「ええ、そうですね」
その返事を聞いて、お兄ちゃんの眉が僅かにしかめられる。
「座る配置はどうだった? 席順も指示があったのか?」
「あ、いえ、席順に関しましては特に何もありません。そこは皆さまでご自由に選んでいただいて結構のようでしたが」
「……アイスコーヒーを出すまでが指示で、席順は無関係か」
「何かわかったの?」
ぼそりと呟くお兄ちゃんの声を拾い、あたしは訊ねる。
だけど、これにお兄ちゃんは小さく首を振り否定の意志を示してみせた。
それから、頭を巡らせるようにして全員を眺め回す。
「今度は全員に訪ねたい。この部屋に始めて案内されたとき、それぞれがどの位置に座っていたか覚えているか?」
「座ってた場所? そりゃついさっきのことだし覚えてるけどよ、それをいちいち訊くくらいなら、そんときの席に座り直して再現すれば早いんじゃないのか」
ぐるりと周囲を確認して、伊藤さんがそんな提案をしてきた。
絵馬 詩織・<知識>
木ノ江 明日香・<移植>
花面 京華・<静謐>
月見坂 葵・<援助>
貴道 勇気・<晩餐>
美九佐 行典・<音色>
笠島 健次・<沈黙>
伊藤 和義・<製造>
川辺 久・カード無し
という結果となった。
その全てを聞き終えたお兄ちゃんが、短く息をつく。
「やはり、思った通りだ。それぞれに配られたキーワードと職業が上手い具合にリンクしている」
「職業?」
呟くお兄ちゃんの声に僅かに首を傾げ、葵さんが疑問符を浮かべる。
「ボランティアと援助、医師と移植、音楽指揮と音色。……心理カウンセリングと静謐も、精神の安定をイメージさせるものとしてはあながち的外れではない」
「こじつけだろう。俺はどうなる? 映画評論家をしているのに、沈黙か? 口を開くのが仕事のようなものなのに、矛盾しているじゃないか」
肩を竦めるような仕草と共に、笠島さんが割り込む。
「そうか? 喋るという行為において、沈黙は関連性のある言葉だ。無関係とは言えないだろう」
笠島さんの普段の仕事を見たことがないからどんなことをしてるのかはわからないけど、お兄ちゃんの言い分は間違いではないとあたしも思う。
「フンッ、都合の良い解釈だな」
鼻息交じりに口元を歪めてそう吐き捨てると、笠島さんは面白くなさそうに黙り込む。
特に言い合うつもりもなかったようで、内心どうでも良い話だとでも思いながら聞いているのかもしれない。
「あたしのカウンセリングと静謐は、リラックスや目を閉じることを含んでいるのかもしれませんし、白沼さんの言うことも一理ある気がしますね」
お兄ちゃんを気遣うようにそう言ったのは花面さん。
こちらは笠島さんとは対照的に、真面目な様子で話に耳を傾けてくれていたようだ。
「さて、次は世話人。お前に一つ訊いておきたいことがある」
「は、はい。何でしょうか?」
不意に呼ばれて、川辺さんの表情が硬くなる。
「お前には細かい指示が書かれた紙が届いていたとさっき聞いたが、それを見せてもらうことは可能か? その指示は、下手をすると犯人が殺人を実行する上で有利に進めるための、都合の良い計画であるかもしれない。こちらでも、知っておく必要があるだろう」
「手紙、ですか。申し訳ないのですが、既に処分してしまいましたので、手元には残っておりませんが……」
「処分だと?」
「はい。それも指示の一つでして。内容を全て覚え、この手紙は廃棄することと最後に書かれておりました。ですが、内容でしたら覚えております。食事の時間や、部屋割りの配置、戸締りなどをきちんとすること等、細かくはありますが難しい内容ではありませんでした」
「到着した招待客を談話室に集めてアイスコーヒーを出したのも、その中にあった指示の一つか?」
「ええ、そうですね」
その返事を聞いて、お兄ちゃんの眉が僅かにしかめられる。
「座る配置はどうだった? 席順も指示があったのか?」
「あ、いえ、席順に関しましては特に何もありません。そこは皆さまでご自由に選んでいただいて結構のようでしたが」
「……アイスコーヒーを出すまでが指示で、席順は無関係か」
「何かわかったの?」
ぼそりと呟くお兄ちゃんの声を拾い、あたしは訊ねる。
だけど、これにお兄ちゃんは小さく首を振り否定の意志を示してみせた。
それから、頭を巡らせるようにして全員を眺め回す。
「今度は全員に訪ねたい。この部屋に始めて案内されたとき、それぞれがどの位置に座っていたか覚えているか?」
「座ってた場所? そりゃついさっきのことだし覚えてるけどよ、それをいちいち訊くくらいなら、そんときの席に座り直して再現すれば早いんじゃないのか」
ぐるりと周囲を確認して、伊藤さんがそんな提案をしてきた。
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