Lv.

雪鳴月彦

文字の大きさ
上 下
33 / 84
第二章:断罪決行

断罪決行 8

しおりを挟む
 その情報をまとめると、

 絵馬 詩織・<知識>

 木ノ江 明日香・<移植>

 花面 京華・<静謐>

 月見坂 葵・<援助>

 貴道 勇気・<晩餐>

 美九佐 行典・<音色>

 笠島 健次・<沈黙>

 伊藤 和義・<製造>

 川辺 久・カード無し

 という結果となった。

 その全てを聞き終えたお兄ちゃんが、短く息をつく。

「やはり、思った通りだ。それぞれに配られたキーワードと職業が上手い具合にリンクしている」

「職業?」

 呟くお兄ちゃんの声に僅かに首を傾げ、葵さんが疑問符を浮かべる。

「ボランティアと援助、医師と移植、音楽指揮と音色。……心理カウンセリングと静謐も、精神の安定をイメージさせるものとしてはあながち的外れではない」

「こじつけだろう。俺はどうなる? 映画評論家をしているのに、沈黙か? 口を開くのが仕事のようなものなのに、矛盾しているじゃないか」

 肩を竦めるような仕草と共に、笠島さんが割り込む。

「そうか? 喋るという行為において、沈黙は関連性のある言葉だ。無関係とは言えないだろう」

 笠島さんの普段の仕事を見たことがないからどんなことをしてるのかはわからないけど、お兄ちゃんの言い分は間違いではないとあたしも思う。

「フンッ、都合の良い解釈だな」

 鼻息交じりに口元を歪めてそう吐き捨てると、笠島さんは面白くなさそうに黙り込む。

 特に言い合うつもりもなかったようで、内心どうでも良い話だとでも思いながら聞いているのかもしれない。

「あたしのカウンセリングと静謐は、リラックスや目を閉じることを含んでいるのかもしれませんし、白沼さんの言うことも一理ある気がしますね」

 お兄ちゃんを気遣うようにそう言ったのは花面さん。

 こちらは笠島さんとは対照的に、真面目な様子で話に耳を傾けてくれていたようだ。

「さて、次は世話人。お前に一つ訊いておきたいことがある」

「は、はい。何でしょうか?」

 不意に呼ばれて、川辺さんの表情が硬くなる。

「お前には細かい指示が書かれた紙が届いていたとさっき聞いたが、それを見せてもらうことは可能か? その指示は、下手をすると犯人が殺人を実行する上で有利に進めるための、都合の良い計画であるかもしれない。こちらでも、知っておく必要があるだろう」

「手紙、ですか。申し訳ないのですが、既に処分してしまいましたので、手元には残っておりませんが……」

「処分だと?」

「はい。それも指示の一つでして。内容を全て覚え、この手紙は廃棄することと最後に書かれておりました。ですが、内容でしたら覚えております。食事の時間や、部屋割りの配置、戸締りなどをきちんとすること等、細かくはありますが難しい内容ではありませんでした」

「到着した招待客を談話室に集めてアイスコーヒーを出したのも、その中にあった指示の一つか?」

「ええ、そうですね」

 その返事を聞いて、お兄ちゃんの眉が僅かにしかめられる。

「座る配置はどうだった? 席順も指示があったのか?」

「あ、いえ、席順に関しましては特に何もありません。そこは皆さまでご自由に選んでいただいて結構のようでしたが」

「……アイスコーヒーを出すまでが指示で、席順は無関係か」

「何かわかったの?」

 ぼそりと呟くお兄ちゃんの声を拾い、あたしは訊ねる。

 だけど、これにお兄ちゃんは小さく首を振り否定の意志を示してみせた。

 それから、頭を巡らせるようにして全員を眺め回す。

「今度は全員に訪ねたい。この部屋に始めて案内されたとき、それぞれがどの位置に座っていたか覚えているか?」

「座ってた場所? そりゃついさっきのことだし覚えてるけどよ、それをいちいち訊くくらいなら、そんときの席に座り直して再現すれば早いんじゃないのか」

 ぐるりと周囲を確認して、伊藤さんがそんな提案をしてきた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈 
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

ロリっ子がおじさんに種付けされる話

オニオン太郎
大衆娯楽
なろうにも投稿した奴です

ちゃぼ茶のショートショート 「なんでも落とす薬」

ちゃぼ茶
ミステリー
なんでも落ちる薬があればあなたは欲しいですか? 何を落とすかって? 例えば返り血… 私、ちゃぼ茶には必要がないですがね

【完結】「父に毒殺され母の葬儀までタイムリープしたので、親戚の集まる前で父にやり返してやった」

まほりろ
恋愛
十八歳の私は異母妹に婚約者を奪われ、父と継母に毒殺された。 気がついたら十歳まで時間が巻き戻っていて、母の葬儀の最中だった。 私に毒を飲ませた父と継母が、虫の息の私の耳元で得意げに母を毒殺した経緯を話していたことを思い出した。 母の葬儀が終われば私は屋敷に幽閉され、外部との連絡手段を失ってしまう。 父を断罪できるチャンスは今しかない。 「お父様は悪くないの!  お父様は愛する人と一緒になりたかっただけなの!  だからお父様はお母様に毒をもったの!  お願いお父様を捕まえないで!」 私は声の限りに叫んでいた。 心の奥にほんの少し芽生えた父への殺意とともに。 ※他サイトにも投稿しています。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 ※「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※タイトル変更しました。 旧タイトル「父に殺されタイムリープしたので『お父様は悪くないの!お父様は愛する人と一緒になりたくてお母様の食事に毒をもっただけなの!』と叫んでみた」

月夜のさや

蓮恭
ミステリー
 いじめられっ子で喘息持ちの妹の療養の為、父の実家がある田舎へと引っ越した主人公「天野桐人(あまのきりと)」。  夏休み前に引っ越してきた桐人は、ある夜父親と喧嘩をして家出をする。向かう先は近くにある祖母の家。  近道をしようと林の中を通った際に転んでしまった桐人を助けてくれたのは、髪の長い綺麗な顔をした女の子だった。  夏休み中、何度もその女の子に会う為に夜になると林を見張る桐人は、一度だけ女の子と話す機会が持てたのだった。話してみればお互いが孤独な子どもなのだと分かり、親近感を持った桐人は女の子に名前を尋ねた。  彼女の名前は「さや」。  夏休み明けに早速転校生として村の学校で紹介された桐人。さやをクラスで見つけて話しかけるが、桐人に対してまるで初対面のように接する。     さやには『さや』と『紗陽』二つの人格があるのだと気づく桐人。日によって性格も、桐人に対する態度も全く変わるのだった。  その後に起こる事件と、村のおかしな神事……。  さやと紗陽、二人の秘密とは……? ※ こちらは【イヤミス】ジャンルの要素があります。どんでん返し好きな方へ。 「小説家になろう」にも掲載中。  

堕ちた父は最愛の息子を欲に任せ犯し抜く

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...