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第二章:断罪決行
断罪決行 4
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「はい。なにせ全てが一方的な依頼でしたもので……」
こうして側で話を聞いていると、この集まりが本当に普通ではないものなんだと再認識させられる。
主催者が不明なまま、バラバラの理由で招待された客たち。
そして、ほとんど強引なやり方で世話役を任された川辺さん。
意味深な謎のカードと、絵馬さんの突然死。
これらは、果たして一つに繋がって何かの答えになるのだろうか。
「なるほどな。となると、いよいよ怪しくなってくるな。これだけの人間を無作為に集めておきながら、姿を現さない首謀者は誰なのか……」
「ミステリードラマとかなら、あたしたちの中に紛れ込んでたりするんでしょうけどね」
暗くなりかけている雰囲気を察してか、花面さんが冗談を言うように目を細めて笑ってみせる。
「いや、実際その可能性も――ん?」
だけど、お兄ちゃんは無表情に近いその人相を崩すことなく花面さんへ答えかけ、ほんの僅かに眉をよせながら金魚鉢へと視線を逸らした。
つられて、あたしもそちらへ首を向ける。
「……あ!」
中で気ままに泳いでいたはずの金魚たちに、いつの間にか変化が生じていた。
苦しそうに水中でもがく三匹の金魚は、暫く不規則な動きを繰り返した後、ユラユラと水面に浮上して動かなくなる。
「え? ちょっとこれ……」
大きく目を見開き、固い声で呻く木ノ江さん。
「白沼さん……、何をしたんですか? 金魚がみんな……」
お兄ちゃんが持つコップと命を無くした金魚を見比べる花面さんの顔からは、一瞬にして浮かべたばかりの笑みが消えていた。
「……どうやら、これで証明にはなったみたいだな。このコップには毒が仕込まれ、それを絵馬が飲んだ。つまり、殺人の可能性が一気に高まったわけだ」
「そ、そんな……。こんな無人島で殺人なんて、一体だれがそのようなことを」
そう言う川辺さんの額に滲み出る汗は、決して暑さのせいではないだろう。
「え? 殺人って何です? どういうことですか?」
不穏な単語が飛び出したことを、花面さんが聞き逃すことはなく。
「詳しい話は、全員を集めてすべきだろう。色々と確認しておくべきこともあるしな」
「確認って?」
問いながら、あたしはお兄ちゃんを見上げる。
「全員に配られているかもしれないカード。それに、談話室に集まったときの状況も確かめたい。もしこの事件が絵馬をピンポイントに狙っての犯行であるなら、あのとき誰かが絵馬のコップに毒を盛ったことになる」
そう言って掲げて見せてくるコップを眺めながら、あたしは思い返す。
談話室に集まって全員にコーヒーが配られたとき、絵馬さんはずっとあたしとお兄ちゃんの側にいた。
あのとき、絵馬さんに近づいてコップに細工をしたような人はいなかったように思うけれど……。
そのことをお兄ちゃんに伝えてみると、思いの外あっさりと同意の頷きを返されてしまった。
「ああ、それはオレもわかっている。だが、それでも確認をしておかないといけない。でなければ、何一つ解決はできないからな」
「解決って、まさかお兄ちゃん犯人を見つけようとか本気で思ってるの?」
「……詩織は、オレの数少ない友人だった。そして、今回の仕事の依頼主でもある。その彼女を殺した人間がいるのであれば、オレはこのまま見過ごしてやるつもりはない。きっちりと、制裁は受けてもらう」
「制裁って……」
まさか、仇討でもするつもり?
そんなあたしの不安を読み取ったように、お兄ちゃんは言葉を付け加える。
「勘違いしているようだから言っておくが、あくまでも日本の法律に則った正式な裁きを受けさせるという意味だからな」
こうして側で話を聞いていると、この集まりが本当に普通ではないものなんだと再認識させられる。
主催者が不明なまま、バラバラの理由で招待された客たち。
そして、ほとんど強引なやり方で世話役を任された川辺さん。
意味深な謎のカードと、絵馬さんの突然死。
これらは、果たして一つに繋がって何かの答えになるのだろうか。
「なるほどな。となると、いよいよ怪しくなってくるな。これだけの人間を無作為に集めておきながら、姿を現さない首謀者は誰なのか……」
「ミステリードラマとかなら、あたしたちの中に紛れ込んでたりするんでしょうけどね」
暗くなりかけている雰囲気を察してか、花面さんが冗談を言うように目を細めて笑ってみせる。
「いや、実際その可能性も――ん?」
だけど、お兄ちゃんは無表情に近いその人相を崩すことなく花面さんへ答えかけ、ほんの僅かに眉をよせながら金魚鉢へと視線を逸らした。
つられて、あたしもそちらへ首を向ける。
「……あ!」
中で気ままに泳いでいたはずの金魚たちに、いつの間にか変化が生じていた。
苦しそうに水中でもがく三匹の金魚は、暫く不規則な動きを繰り返した後、ユラユラと水面に浮上して動かなくなる。
「え? ちょっとこれ……」
大きく目を見開き、固い声で呻く木ノ江さん。
「白沼さん……、何をしたんですか? 金魚がみんな……」
お兄ちゃんが持つコップと命を無くした金魚を見比べる花面さんの顔からは、一瞬にして浮かべたばかりの笑みが消えていた。
「……どうやら、これで証明にはなったみたいだな。このコップには毒が仕込まれ、それを絵馬が飲んだ。つまり、殺人の可能性が一気に高まったわけだ」
「そ、そんな……。こんな無人島で殺人なんて、一体だれがそのようなことを」
そう言う川辺さんの額に滲み出る汗は、決して暑さのせいではないだろう。
「え? 殺人って何です? どういうことですか?」
不穏な単語が飛び出したことを、花面さんが聞き逃すことはなく。
「詳しい話は、全員を集めてすべきだろう。色々と確認しておくべきこともあるしな」
「確認って?」
問いながら、あたしはお兄ちゃんを見上げる。
「全員に配られているかもしれないカード。それに、談話室に集まったときの状況も確かめたい。もしこの事件が絵馬をピンポイントに狙っての犯行であるなら、あのとき誰かが絵馬のコップに毒を盛ったことになる」
そう言って掲げて見せてくるコップを眺めながら、あたしは思い返す。
談話室に集まって全員にコーヒーが配られたとき、絵馬さんはずっとあたしとお兄ちゃんの側にいた。
あのとき、絵馬さんに近づいてコップに細工をしたような人はいなかったように思うけれど……。
そのことをお兄ちゃんに伝えてみると、思いの外あっさりと同意の頷きを返されてしまった。
「ああ、それはオレもわかっている。だが、それでも確認をしておかないといけない。でなければ、何一つ解決はできないからな」
「解決って、まさかお兄ちゃん犯人を見つけようとか本気で思ってるの?」
「……詩織は、オレの数少ない友人だった。そして、今回の仕事の依頼主でもある。その彼女を殺した人間がいるのであれば、オレはこのまま見過ごしてやるつもりはない。きっちりと、制裁は受けてもらう」
「制裁って……」
まさか、仇討でもするつもり?
そんなあたしの不安を読み取ったように、お兄ちゃんは言葉を付け加える。
「勘違いしているようだから言っておくが、あくまでも日本の法律に則った正式な裁きを受けさせるという意味だからな」
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