31 / 76
第四章:決壊する絆
決壊する絆 2
しおりを挟む
2
「あけましておめでとうございます!」
三学期が始まり、最初の活字愛好倶楽部の集まりで、馬鹿みたいに元気な挨拶を口に出したのは、無駄に元気を持て余したようなテンションの妃夏だった。
「あけましておめでとうございます。どうぞ、今年もよろしくお願い致します」
そんな妃夏へ、泉が丁寧な挨拶を返し
「あけましておめでとうございます」
それに倣うように、守草も簡単な挨拶を口にする。
「ああ、今年でもうあたし三年生になるのかぁ……。嫌だなぁ、一年あっという間だなぁ」
年末に俺が襲われたのと同じ憂鬱感を吐き出し、妃夏は自分が使っている席へのそりとした動きで腰を下ろす。
今日は三学期の初日で、始業式とホームルームが終わり集まりたいメンバーだけ自由に集まるという、まぁいつも通りの流れの中、九条先輩以外の全員が部室に顔を揃えていた。
九条先輩は学校には来ていたと思われるが、姿は誰も確認しておらず部活に来ない理由もわからない状態ではあるが、勉強で忙しいのかもしれないということでみんなひとまず納得している様子だった。
「九条先輩じゃないけど、受験勉強したくないよぉ……。でも就職もしたくない。もっと学生でいたい。あと五年くらい高校生でも良くないかな?」
「留年すれば良いだろ」
「新年早々酷いこと言われるなぁ」
軽口をたたく俺にノリの良い返答をして、妃夏は頬杖をつきながらどこかやる気のない顔をみんなにさらしてくる。
「どうしました、星咲先輩?」
「休み明けでボケてるのか?」
泉と俺が心配する声をかけると、
「うん、まぁね。冬休みはずっと夜型人間になってたから、眠いのが辛い。寒いしさ、朝起きるのも嫌になってきて」
そう素直にやる気のなさを白状し、緩んだ笑みをみせてきた。
「自己管理くらいしっかりしろよ」
「仕方ないでしょ。お正月は親戚の家に出かけたりでばたばたしてたしさぁ、積んでた本の消化もしたかったし次の新作も書きたかったし。もうね、寝てる時間が惜しいくらいで」
欠伸を噛み殺して喋る妃夏は、そう言って頬杖をつくのを止めるとそのまま机に突っ伏してしまう。
「ちゃんと睡眠は取らないと駄目だよ。この間ネットで見かけたけど、睡眠不足は寿命縮めるらしいから、未来の作家さんなら気をつけないと」
「ん……ありがとう。守草くんは才樹と違って思いやりあるね。その心、大事にしてね」
突っ伏したまま守草へ視線を送り、妃夏はにんまりと笑う。
「寝不足が慢性化すると、何だっけ……心筋梗塞とか脳卒中? みたいな、かなりヤバい症状を発症するんだっけか? 小説家に限らず他のクリエイターも、ブログとかで結構警鐘鳴らしてるの見かけるよな。見た感じ元気そうだったのに、ある日突然倒れてそのままみたいなさ、急逝知らせるコメント発表してるの、毎年一、二件くらいリアルタイムで見てるぞ。妃夏……お前倒れるなよ?」
「やめてよ、縁起悪い。あたしはまだまだ元気だよ。若いしね」
「そういう油断が駄目だって、守草も言ってくれてるんだろうよ」
「あけましておめでとうございます!」
三学期が始まり、最初の活字愛好倶楽部の集まりで、馬鹿みたいに元気な挨拶を口に出したのは、無駄に元気を持て余したようなテンションの妃夏だった。
「あけましておめでとうございます。どうぞ、今年もよろしくお願い致します」
そんな妃夏へ、泉が丁寧な挨拶を返し
「あけましておめでとうございます」
それに倣うように、守草も簡単な挨拶を口にする。
「ああ、今年でもうあたし三年生になるのかぁ……。嫌だなぁ、一年あっという間だなぁ」
年末に俺が襲われたのと同じ憂鬱感を吐き出し、妃夏は自分が使っている席へのそりとした動きで腰を下ろす。
今日は三学期の初日で、始業式とホームルームが終わり集まりたいメンバーだけ自由に集まるという、まぁいつも通りの流れの中、九条先輩以外の全員が部室に顔を揃えていた。
九条先輩は学校には来ていたと思われるが、姿は誰も確認しておらず部活に来ない理由もわからない状態ではあるが、勉強で忙しいのかもしれないということでみんなひとまず納得している様子だった。
「九条先輩じゃないけど、受験勉強したくないよぉ……。でも就職もしたくない。もっと学生でいたい。あと五年くらい高校生でも良くないかな?」
「留年すれば良いだろ」
「新年早々酷いこと言われるなぁ」
軽口をたたく俺にノリの良い返答をして、妃夏は頬杖をつきながらどこかやる気のない顔をみんなにさらしてくる。
「どうしました、星咲先輩?」
「休み明けでボケてるのか?」
泉と俺が心配する声をかけると、
「うん、まぁね。冬休みはずっと夜型人間になってたから、眠いのが辛い。寒いしさ、朝起きるのも嫌になってきて」
そう素直にやる気のなさを白状し、緩んだ笑みをみせてきた。
「自己管理くらいしっかりしろよ」
「仕方ないでしょ。お正月は親戚の家に出かけたりでばたばたしてたしさぁ、積んでた本の消化もしたかったし次の新作も書きたかったし。もうね、寝てる時間が惜しいくらいで」
欠伸を噛み殺して喋る妃夏は、そう言って頬杖をつくのを止めるとそのまま机に突っ伏してしまう。
「ちゃんと睡眠は取らないと駄目だよ。この間ネットで見かけたけど、睡眠不足は寿命縮めるらしいから、未来の作家さんなら気をつけないと」
「ん……ありがとう。守草くんは才樹と違って思いやりあるね。その心、大事にしてね」
突っ伏したまま守草へ視線を送り、妃夏はにんまりと笑う。
「寝不足が慢性化すると、何だっけ……心筋梗塞とか脳卒中? みたいな、かなりヤバい症状を発症するんだっけか? 小説家に限らず他のクリエイターも、ブログとかで結構警鐘鳴らしてるの見かけるよな。見た感じ元気そうだったのに、ある日突然倒れてそのままみたいなさ、急逝知らせるコメント発表してるの、毎年一、二件くらいリアルタイムで見てるぞ。妃夏……お前倒れるなよ?」
「やめてよ、縁起悪い。あたしはまだまだ元気だよ。若いしね」
「そういう油断が駄目だって、守草も言ってくれてるんだろうよ」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる