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第四章:風岡夏純――②
風岡夏純――②
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疲労の蓄積したこの身体は一度行動を止めたらもう同じようには動けない。
「大丈夫……きっと、もうすぐ山の外に出られるから……!」
根拠の欠片もない気休めを口にしながらどうにか茜の腕を引き続けるも、それで彼女の士気に変化が起きた気配は皆無だった。
次第に走るスピードは落ち、茜を掴んで動くことも苦痛となってくる。
「――あっ!」
下草に足を取られたか、突然茜の上半身がつんのめりガクリとその場へ膝をついた。
「茜、大丈夫? 立てる?」
仕方なく立ち止まり、肩で息をしながら友人を立ち上がらせようと試みるも、ぐったりとしたように俯き弱々しく首を振られてしまう。
「ごめんなさい、もう、無理……少しで良いから、休ませて……」
ぜぇぜぇと吐きそうな呼吸をしながら告げる茜の肩を掴み、わたしは苛立ちを含ませながら揺すった。
「何言ってるのよ。茜、あんたも見たでしょう? わけのわからない化物がわたしたちを追いかけてきてるのよ。捕まったら、わたしらだって黒い身体にされて殺されるの! 休んでる余裕なんかどこにも――っ!」
「大丈夫……きっと、もうすぐ山の外に出られるから……!」
根拠の欠片もない気休めを口にしながらどうにか茜の腕を引き続けるも、それで彼女の士気に変化が起きた気配は皆無だった。
次第に走るスピードは落ち、茜を掴んで動くことも苦痛となってくる。
「――あっ!」
下草に足を取られたか、突然茜の上半身がつんのめりガクリとその場へ膝をついた。
「茜、大丈夫? 立てる?」
仕方なく立ち止まり、肩で息をしながら友人を立ち上がらせようと試みるも、ぐったりとしたように俯き弱々しく首を振られてしまう。
「ごめんなさい、もう、無理……少しで良いから、休ませて……」
ぜぇぜぇと吐きそうな呼吸をしながら告げる茜の肩を掴み、わたしは苛立ちを含ませながら揺すった。
「何言ってるのよ。茜、あんたも見たでしょう? わけのわからない化物がわたしたちを追いかけてきてるのよ。捕まったら、わたしらだって黒い身体にされて殺されるの! 休んでる余裕なんかどこにも――っ!」
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