病み憑き

雪鳴月彦

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第四章:風岡夏純――②

風岡夏純――②

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「――きゃっ!」

 次々と脳内に浮上してくる後悔を噛みしめていると、何かに躓いたらしい夏純が前のめりに転ぶ瞬間を視界に捉えた。

「ちっ、さっさと立て! 追いつかれるぞ!」

「あ……ご、ごめん」

 膝でも打ち付けたのか、立ち上がるのにもたつく夏純の襟首と腕を強引に引っ張り起き上がらせると、すかさず背中を押して走らせる。

「急げ! 外まで走ったら――」

 仲間を鼓舞するように声をかけつつ、自分もまた走り出そうかとした瞬間。

 首筋に冷たい感触が落ちてきて、竜次は言葉を飲み込んだ。

(……?)

 水滴でも落ちてきたかと思いつつライトを上向かせる。

 でこぼことした茶色い土の天井が照らし出され、特に何もないことを確認してから再びライトの光を前方へ戻そうとして――

「――!」

 竜次は、動かしかけた足をピタリと止めた。

「竜次?」

 ついてこない足音を不審に感じた夏純が怪訝そうに振り向こうとしてくるが、

「もたついてねぇでさっさと走れ!」

 それを阻止し、先へ進むよう怒声を上げて一喝した。
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