病み憑き

雪鳴月彦

文字の大きさ
上 下
277 / 341
第四章:風岡夏純――②

風岡夏純――②

しおりを挟む
 ピチャン……ピチャン……、とどこかから水滴の落ちる音が響き、幼い頃に一度だけ連れていってもらった鍾乳洞を思い出しながら晴樹を追っていると、突然お互いの距離が縮まり彼の背へおもいきり鼻をぶつけてしまった。

「いったぁ……。どうしたの、いきなり立ち止まったりして」

 鼻を押さえながら、わたしは晴樹の後頭部を睨む。

 だけど、晴樹は振り向くことなく前を見据えたまま、小さな呟きだけを漏らしてきた。

「あそこ……何かいるよね? 人……かな?」

「え?」

 言われている内容がよくわからず、わたしは顔をしかめて晴樹が見ているであろう位置に視線をずらす。

「…………?」

 自分たちが立ち止まっている細い道の先。

 距離的には三十メートルくらい前方か。そこには、ライトの光など意味を成さないくらいに深い闇が控えていた。

 奥行きのある広い空間になっているのだろうか。

 ひょっとしたら、穴の最奥まで到着したのかもしれない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

妊娠条令

あらら
ホラー
少子高齢化社会の中で政治家達は妊娠条令執行を強行する。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

すべて実話

さつきのいろどり
ホラー
タイトル通り全て実話のホラー体験です。 友人から聞いたものや著者本人の実体験を書かせていただきます。 長編として登録していますが、短編をいつくか載せていこうと思っていますので、追加配信しましたら覗きに来て下さいね^^*

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

風の音

月(ユエ)/久瀬まりか
ホラー
赤ん坊の頃に母と死に別れたレイラ。トマスとシモーヌ夫婦に引き取られたが、使用人としてこき使われている。 唯一の心の支えは母の形見のペンダントだ。ところがそのペンダントが行方不明の王女の証だとわかり、トマスとシモーヌはレイラと同い年の娘ミラを王女にするため、レイラのペンダントを取り上げてしまう。 血などの描写があります。苦手な方はご注意下さい。

処理中です...