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第三章:風岡夏純――①
風岡夏純――①
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人型をしたそれは、上から水をかけられ流れ落ちる泡のような滑らかさでズルリと動くと、そのまま窓枠の外へと消えていなくなった。
静謐が満たす空間に、物音はない。
(何だったの今の……?)
真っ黒い人間が窓に張りついていた。
事実だけをシンプルにまとめれば、それだけの話。
だけど、実際に目の当たりにしてしまった場合のその異常性は尋常ではない。
人の形にくり抜いた黒い画用紙でも窓に貼りつけて誰かが悪戯をしてきたのであればそういうことかと思えるけれど、他人の敷地でそんなことをする人などいるものか。
「…………」
怖い気持ちと、状況をはっきりさせたい気持ちを混ぜ合わせながら、茜はそっと窓へ近づき鍵を外すと恐る恐る外の様子を確かめた。
(……誰もいない)
影が滑り落ちた窓の真下も、見慣れた家の敷地内にも、人はおろか猫一匹見当たらず。
物音も気配も感じない周囲に暫く気を張っていた茜だったが、不意に頬を撫でた生温い風で我に返ると、慌てたように窓を閉め早足で脱衣所を後にした。
静謐が満たす空間に、物音はない。
(何だったの今の……?)
真っ黒い人間が窓に張りついていた。
事実だけをシンプルにまとめれば、それだけの話。
だけど、実際に目の当たりにしてしまった場合のその異常性は尋常ではない。
人の形にくり抜いた黒い画用紙でも窓に貼りつけて誰かが悪戯をしてきたのであればそういうことかと思えるけれど、他人の敷地でそんなことをする人などいるものか。
「…………」
怖い気持ちと、状況をはっきりさせたい気持ちを混ぜ合わせながら、茜はそっと窓へ近づき鍵を外すと恐る恐る外の様子を確かめた。
(……誰もいない)
影が滑り落ちた窓の真下も、見慣れた家の敷地内にも、人はおろか猫一匹見当たらず。
物音も気配も感じない周囲に暫く気を張っていた茜だったが、不意に頬を撫でた生温い風で我に返ると、慌てたように窓を閉め早足で脱衣所を後にした。
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