病み憑き

第三章:風岡夏純――①

風岡夏純――①

一年生の女の子だったよ。教室の前に立ってて、たまたま声かけられたの。安達先生が呼んでるから、すぐ行くように伝えてって。それがどうかしたの？」

　クラス中が、しんとしている。

　全員がわたしたち二人を意識しているのが気配だけで伝わってくる。

　黒川もそれは同じのようで、ばつが悪そうに表情を硬くしていた。

「その女子って、髪長くなかった？　背中まで伸ばしてて、黒髪の」

　だけど、わたしは周囲の反応なんて気にしない。

　話を聞かれたところで意味などわからないだろうし、保田に少し叱られる程度のデメリットがあるだけだ。

　むしろ、この会話は愛たち三人も同時に聞いている。情報共有という意味では効率が良いくらいだ。

「あ、うんそう。ちょっと猫目がちで、風岡さんより十センチくらいは身長低かったんじゃないかな」

　わたしより十センチ。真美の妹と背比べをしたことはないしきっちりと判断するのも難しいけど、カフェで会った印象ではそれくらいの差はあるかもしれない。