66 / 91
第四章:孤独な鏡
孤独な鏡 3
しおりを挟む
どこからどういった基準で人間の言葉を理解し増やしているのか、いまいちよーみの思考がわからず、とぼけた様子でこちらを見ている水色の瞳をわざと呆れたように見返しておいた。
「まぁ、何だろう。猫ってさ、人間の持ってきた玩具で遊んだりってするでしょ? 紐の先にネズミの人形がくっついてたりするようなやつ。ああいう類のを作りたいんだよ」
「……ああ、そう言ってもらえば理解できるわ。昔、わたしのご主人がたまらない草や柔らかくて小さなボールを使って、野良猫と遊んでいたのを覚えてる」
「たまらない草?」
何だそれはと疑問が浮かび、すぐに猫じゃらしのことかと答えが浮かぶ。
そうか、猫的にあの草はたまらないのか。
そんなことに妙に納得しながら、あたしは
「そんな感じなんだけど、協力してくれる?」
と、よーみを見つめたまま確認の問いを放った。
「そうね。あなたたちには恩もあるし、それくらいはしてあげても良いわ」
深く吟味するような素振りもなく、よーみはあっさりと小さな頭を縦に揺らしてみせてきた。
「本当に? ありがとう! 絶対に面倒だから嫌だとか言われて断られると思ってたから、相談するの躊躇ってたんだよ。こんなあっさりオーケーしてくれるなら、もっと早く言っとけば良かった」
思ったよりもトントン拍子に話が進み、あたしは気持ちが浮き足立つのを自覚する。
これなら、ようやく部活動らしいことを始められるかもしれない。
もちろん、作るものが決まればそのために必要な材料も考えて集めなくてはいけないけれど、何をすれば良いのかがわかっているだけで難易度は一気にイージーまで下がったようなものだ。
「良かったわね、鈴。二人の協力も得られることが正式に決まったし、いよいよ自由創作倶楽部も楽しくなってくるんじゃないかしら」
あたしの胸中を見透かしたように流空は微笑み、意味がわかっているのかいないのか、マロンちゃんも
「いっぱいがんばる!!」
と小さな両腕を目一杯に上げてはしゃぎ回る。
流空の言うとおり、長々と時間はかけてしまったけど、これでどうにか動きだすことができると肩が軽くなった思いであたしは安堵した。
……まるでこの油断したタイミングを狙ったかのように、旧校舎に潜む新たな怪異がまた一つ目覚めようとしていることにも気づけずに。
「まぁ、何だろう。猫ってさ、人間の持ってきた玩具で遊んだりってするでしょ? 紐の先にネズミの人形がくっついてたりするようなやつ。ああいう類のを作りたいんだよ」
「……ああ、そう言ってもらえば理解できるわ。昔、わたしのご主人がたまらない草や柔らかくて小さなボールを使って、野良猫と遊んでいたのを覚えてる」
「たまらない草?」
何だそれはと疑問が浮かび、すぐに猫じゃらしのことかと答えが浮かぶ。
そうか、猫的にあの草はたまらないのか。
そんなことに妙に納得しながら、あたしは
「そんな感じなんだけど、協力してくれる?」
と、よーみを見つめたまま確認の問いを放った。
「そうね。あなたたちには恩もあるし、それくらいはしてあげても良いわ」
深く吟味するような素振りもなく、よーみはあっさりと小さな頭を縦に揺らしてみせてきた。
「本当に? ありがとう! 絶対に面倒だから嫌だとか言われて断られると思ってたから、相談するの躊躇ってたんだよ。こんなあっさりオーケーしてくれるなら、もっと早く言っとけば良かった」
思ったよりもトントン拍子に話が進み、あたしは気持ちが浮き足立つのを自覚する。
これなら、ようやく部活動らしいことを始められるかもしれない。
もちろん、作るものが決まればそのために必要な材料も考えて集めなくてはいけないけれど、何をすれば良いのかがわかっているだけで難易度は一気にイージーまで下がったようなものだ。
「良かったわね、鈴。二人の協力も得られることが正式に決まったし、いよいよ自由創作倶楽部も楽しくなってくるんじゃないかしら」
あたしの胸中を見透かしたように流空は微笑み、意味がわかっているのかいないのか、マロンちゃんも
「いっぱいがんばる!!」
と小さな両腕を目一杯に上げてはしゃぎ回る。
流空の言うとおり、長々と時間はかけてしまったけど、これでどうにか動きだすことができると肩が軽くなった思いであたしは安堵した。
……まるでこの油断したタイミングを狙ったかのように、旧校舎に潜む新たな怪異がまた一つ目覚めようとしていることにも気づけずに。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
透明な僕たちが色づいていく
川奈あさ
青春
誰かの一番になれない僕は、今日も感情を下書き保存する
空気を読むのが得意で、周りの人の為に動いているはずなのに。どうして誰の一番にもなれないんだろう。
家族にも友達にも特別に必要とされていないと感じる雫。
そんな雫の一番大切な居場所は、”150文字”の感情を投稿するSNS「Letter」
苦手に感じていたクラスメイトの駆に「俺と一緒に物語を作って欲しい」と頼まれる。
ある秘密を抱える駆は「letter」で開催されるコンテストに作品を応募したいのだと言う。
二人は”150文字”の種になる季節や色を探しに出かけ始める。
誰かになりたくて、なれなかった。
透明な二人が150文字の物語を紡いでいく。
表紙イラスト aki様
AV研は今日もハレンチ
楠富 つかさ
キャラ文芸
あなたが好きなAVはAudioVisual? それともAdultVideo?
AV研はオーディオヴィジュアル研究会の略称で、音楽や動画などメディア媒体の歴史を研究する集まり……というのは建前で、実はとんでもないものを研究していて――
薄暗い過去をちょっとショッキングなピンクで塗りつぶしていくネジの足りない群像劇、ここに開演!!
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
雨上がりに僕らは駆けていく Part1
平木明日香
恋愛
「隕石衝突の日(ジャイアント・インパクト)」
そう呼ばれた日から、世界は雲に覆われた。
明日は来る
誰もが、そう思っていた。
ごくありふれた日常の真後ろで、穏やかな陽に照らされた世界の輪郭を見るように。
風は時の流れに身を任せていた。
時は風の音の中に流れていた。
空は青く、どこまでも広かった。
それはまるで、雨の降る予感さえ、消し去るようで
世界が滅ぶのは、運命だった。
それは、偶然の産物に等しいものだったが、逃れられない「時間」でもあった。
未来。
——数えきれないほどの膨大な「明日」が、世界にはあった。
けれども、その「時間」は来なかった。
秒速12kmという隕石の落下が、成層圏を越え、地上へと降ってきた。
明日へと流れる「空」を、越えて。
あの日から、決して止むことがない雨が降った。
隕石衝突で大気中に巻き上げられた塵や煤が、巨大な雲になったからだ。
その雲は空を覆い、世界を暗闇に包んだ。
明けることのない夜を、もたらしたのだ。
もう、空を飛ぶ鳥はいない。
翼を広げられる場所はない。
「未来」は、手の届かないところまで消え去った。
ずっと遠く、光さえも追いつけない、距離の果てに。
…けれども「今日」は、まだ残されていた。
それは「明日」に届き得るものではなかったが、“そうなれるかもしれない可能性“を秘めていた。
1995年、——1月。
世界の運命が揺らいだ、あの場所で。
冬の水葬
束原ミヤコ
青春
夕霧七瀬(ユウギリナナセ)は、一つ年上の幼なじみ、凪蓮水(ナギハスミ)が好き。
凪が高校生になってから疎遠になってしまっていたけれど、ずっと好きだった。
高校一年生になった夕霧は、凪と同じ高校に通えることを楽しみにしていた。
美術部の凪を追いかけて美術部に入り、気安い幼なじみの間柄に戻ることができたと思っていた――
けれど、そのときにはすでに、凪の心には消えない傷ができてしまっていた。
ある女性に捕らわれた凪と、それを追いかける夕霧の、繰り返す冬の話。
転校先は着ぐるみ美少女学級? 楽しい全寮制高校生活ダイアリー
ジャン・幸田
キャラ文芸
いじめられ引きこもりになっていた高校生・安野徹治。誰かよくわからない教育カウンセラーの勧めで全寮制の高校に転校した。しかし、そこの生徒はみんなコスプレをしていた?
徹治は卒業まで一般生徒でいられるのか? それにしてもなんで普通のかっこうしないのだろう、みんな!
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ゾンビ発生が台風並みの扱いで報道される中、ニートの俺は普通にゾンビ倒して普通に生活する
黄札
ホラー
朝、何気なくテレビを付けると流れる天気予報。お馴染みの花粉や紫外線情報も流してくれるのはありがたいことだが……ゾンビ発生注意報?……いやいや、それも普通よ。いつものこと。
だが、お気に入りのアニメを見ようとしたところ、母親から買い物に行ってくれという電話がかかってきた。
どうする俺? 今、ゾンビ発生してるんですけど? 注意報、発令されてるんですけど??
ニートである立場上、断れずしぶしぶ重い腰を上げ外へ出る事に──
家でアニメを見ていても、同人誌を売りに行っても、バイトへ出ても、ゾンビに襲われる主人公。
何で俺ばかりこんな目に……嘆きつつもだんだん耐性ができてくる。
しまいには、サバゲーフィールドにゾンビを放って遊んだり、ゾンビ災害ボランティアにまで参加する始末。
友人はゾンビをペットにし、効率よくゾンビを倒すためエアガンを改造する。
ゾンビのいることが日常となった世界で、当たり前のようにゾンビと戦う日常的ゾンビアクション。ノベルアッププラス、ツギクル、小説家になろうでも公開中。
表紙絵は姫嶋ヤシコさんからいただきました、
©2020黄札
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる