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第一章:幸福の記憶
幸福の記憶 10
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校門前へと辿り着くと、流空は名残惜しそうに見上げてくるマロンちゃんへ優しく告げ、頭を撫でるように手を動かした。
「うん、ちゃんとできる!」
撫でられたことににっこり笑いながら頷くと、マロンちゃんはそれで満足したのかふわりと浮き上がり、元気よくバイバイをしながら旧校舎の方へと戻っていってしまった。
「……ほんと、元気な子だね。幽霊だけど。素直で聞き分けもいいし」
幽霊となると恐さがなくなるものなのか、マロンちゃんはほとんど真っ暗になった空間を駆けるようにして去っていく。
その姿を見送りながらあたしが呟くと、流空は
「そうね。あんなに可愛い幽霊なら、毎日現れたって歓迎するわ」
と、微笑ましいものを見るかのような柔和な表情を浮かべて告げてきた。
「私ね、ずっと妹がいたらなって思っていて。小さい女の子を見る度に、あんな子が私の側にもいたら、毎日一緒に遊んだり色々なことを教えてあげたりできるのになって、そんなことを考えたりしていたわ」
突然に語りだした流空は、見えなくなったマロンちゃんからあたしへと視線を移動させ、どこか恥ずかしそうに目を細めた。
「へぇ……。だから、マロンちゃんのことあそこまで普通に受け入れてたんだね。妹かぁ……確かに、あれくらい年の離れた妹がいたら、あたしも溺愛しちゃうかも。可愛いもんね」
もし本当に流空に妹がいたのなら、きっとすごく面倒見の良いお姉さんになっていたことだろう。
漠然とそんなことを考えながら理解を示すと、流空は
「ええ、本当に。何だか守ってあげたくなるわよね」
と静かな口調で呟きをこぼし、また薄っすらと微笑みを浮かべた。
「うん、ちゃんとできる!」
撫でられたことににっこり笑いながら頷くと、マロンちゃんはそれで満足したのかふわりと浮き上がり、元気よくバイバイをしながら旧校舎の方へと戻っていってしまった。
「……ほんと、元気な子だね。幽霊だけど。素直で聞き分けもいいし」
幽霊となると恐さがなくなるものなのか、マロンちゃんはほとんど真っ暗になった空間を駆けるようにして去っていく。
その姿を見送りながらあたしが呟くと、流空は
「そうね。あんなに可愛い幽霊なら、毎日現れたって歓迎するわ」
と、微笑ましいものを見るかのような柔和な表情を浮かべて告げてきた。
「私ね、ずっと妹がいたらなって思っていて。小さい女の子を見る度に、あんな子が私の側にもいたら、毎日一緒に遊んだり色々なことを教えてあげたりできるのになって、そんなことを考えたりしていたわ」
突然に語りだした流空は、見えなくなったマロンちゃんからあたしへと視線を移動させ、どこか恥ずかしそうに目を細めた。
「へぇ……。だから、マロンちゃんのことあそこまで普通に受け入れてたんだね。妹かぁ……確かに、あれくらい年の離れた妹がいたら、あたしも溺愛しちゃうかも。可愛いもんね」
もし本当に流空に妹がいたのなら、きっとすごく面倒見の良いお姉さんになっていたことだろう。
漠然とそんなことを考えながら理解を示すと、流空は
「ええ、本当に。何だか守ってあげたくなるわよね」
と静かな口調で呟きをこぼし、また薄っすらと微笑みを浮かべた。
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