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お祝い

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 汚れが落ち、姿を現した美しい銀色の髪。

「き、、、綺麗な髪だ!」

「わぉん♡  お、お兄様に褒めてもらえました」

 2人の髪を洗い終わったので俺は先に浴槽に浸かり、身体を洗う所を見ないように後ろを向く。

 ゴシゴシと音が、聞こえてくる。
 しっかり洗っているようだ。

「いい匂いがするニャ!」

「ふわぁ~ 髪も肌もすべすべですォン」

 シャンプーとボディーソープではしゃぐなんて女の子らしいな!
 よっぽど珍しいのだろう、、、

  、、、うん?、、、なんか引っかかる?

 俺は何を疑問に思ったのだろうか、、、思案していると、、、

「終わったニャ!」

 身体を洗い終えたレリムが浴槽に飛び込んできた。
 ざぶんっと波が立ち、お湯が顔にかかる。

「こらっ 静かに入らないと駄目だろ、、、」

  振り返るとレリムの隣に幼い少女がいる。
  元気で可愛いレリムと違い、儚げで美しい少女。
  綺麗な銀色の髪、成長したら確実に絶世の美女になるであろう、未来を約束された顔立ち。

「う、美しいぃぃ!」
 
「わぉん、、、お兄様、嬉しいです♥」

 この喋り方は!?
 まさかアイリスなのか?

 ・・・ ・・・少年ではなく・・・・・・少女だった。

 泥で黒く汚れていた顔が、今は綺麗になり見違えている。

 そうか、だから一緒にお風呂に入るのが恥ずかしかったのか!
 女の子だったらシャンプーやボディーソープで喜ぶのも納得だ。
 謎が解けて俺は満足した。

「ニャ~久しぶりに頭撫でてニャ」

 甘えん坊のレリムが膝に座り、頭を俺の胸に預ける。

「レリムは甘えん坊だな!  ほら、、、よしよし!
 今日は冒険者から守ってくれてありがとう」

「どういたしましてニャ、、、にゃ~ん癒やされるニャ♥
 アイリスもこっちに来るニャ! 頭撫でてもらうニャ」

「なでなで、、、はだめですぅ、、、獣人の誇りが、、、」

 恥ずかしいのか嫌がるアイリス。
 手招きして、こっちに来るように呼ぶ。

「アイリスおいで、、、」

 躊躇しながらも俺の膝にやって来て、ちょこんと座り華奢な身体で俺に抱着く。

「ダメなのにぃ、、、くぅん我慢できないォン、、、お兄様ぁ~」

 物欲しそうに鳴き、顔を上げて濡れた瞳で俺を見る。
 早くしてくれって言ってるみたいだ。
 
「よしよし、、、仲間になってくれてありがとう」

「あっ、、、気持ちいいォン、、、わぉん♥」

 獣人は頭を撫でられるのが好きなのかな。
 前より撫でるのが上手くなった気がする。



◆◆◆



 お風呂から上がり、食事の準備をするため、通販スキルで食料品を購入する。
 新しい仲間を祝う会なので、『めでたい』という意味を込めてマダイを選んだ。
 マダイは大きい魚だが、獣人からすれば量が足り無いはずだ……せっかくのお祝いだから高級な大きい魚も買いたい。

 どうでもよかったが、何となく説明欄が気になり確認する。

 
《マダイ》1,000エント
 安価で美味しい魚。
 お祝いにもってこい
 漁師なりたての勝又が漁で初めて獲った魚。
 はたして勝又は厳しい漁師の仕事を続けていけるのか?


 説明欄に何を書いてんだよ! ?
 勝又だれ? その情報ホントにいる?

 知らん人間の情報が記載されていた事に困惑してしまう。
 気を取り治して、魚選びを再開する。


《クエ》10,000エント
 味は絶品! 高級魚!!! 
 漁師の勝又が1番好きな魚
 とりあえず食べてみろ、話はそれからだ、、、絶対美味い
 
 
 ・・・ ・・・ 

 
 説明じゃ無くなってるな!
 もはや商品を勧めてきている。

 勝又の好みは知らんけど、魚ばかり食べてる漁師が言うなら、本当に美味いんだろう。
 
 魚と一緒に調理する為の包丁やまな板、調味料、お高いバーベキューセットも購入する。

 魚は3匹ずつ購入する、、、
 全部で〆て80,900エント。
 皆に喜んでもらうためなら安いものだ!


 ニートになった時から母親に料理を作らされていたので、包丁の扱いには慣れている。
 魚を捌くのも難なくやってのける。
 
 
 マダイ3匹は切れ目を入れ、塩をふってバーベキューコンロで焼く。
 ジュぅう、、、食欲を誘う音がなる。
 焼いてるうちに、クエを包丁で捌き刺し身にしていく。

「ニャンニャン! 美味しそうニャ じゅるじゅる」

「魚なんて久しぶりですォン! はぁ~いい匂い」

 フォークを握りしめる2人。
 尻尾をはちきれん、ばかりに振り待ちきれない様子だ。
 口からは涎を垂らしてジーと見つめている。
 全身で食べたいという想いを表す2人に苦笑してしう。

「はは、、、刺し身が出来たから、先にこっちを食べようか」

 切り終えたクエの刺し身を載せた皿を、2人の前に持っていく。
 
「初めて生で食べるニャ!」
 
「私もですォン」

 さすがの獣人でも魚を生で食べた事は無いみたいだ。
 異世界の人にはハードルが高いかもしれない。
 刺し身にしたのは失敗だったか、、、

「パクっ!? ニャオ~~~ン」

「くぅんんん、、、わたしも食べたいですぅ」

「いいよ。 皆で食べよう」
 
「はい!、、、きゃんんん!?」
 
 心配していたが杞憂に終わった。
 2人とも美味すぎて絶叫している。

「うまうまニャ~!!!、、、ニャ、、、消えたニャ!?」

「はわぁ~、、、あれ!? 噛んでたら溶けて無くなりましたォン」

 おい!、、、それ、またやるのか!

「呑み込んでないのに消えてしまったぉん、、、くぅん」

 悲しげな表情で呻くアイリス。
 レリムと最初に魚を食べた時も同じ様な事があったな!

「いや、まだ刺し身はたくさんあるから、そんなにショック受けなくても、、、」

「そうだったニャ! 消えてしまう前に、急いで食べるニャ!!!」

 たぶん急いで食べるから、すぐ消えて無くなるんだと思うけどな!

 醤油を入れた皿を配る。
 2人は子供だから入れてないが、俺のだけはワサビを入れてある。 
 高級魚であるクエの刺し身、その味はどんなものか。
 ひと切れ刺し身を取り、醤油とワサビをつけて食べる。
 
「程よく脂が乗ってて美味い! 、、、ホントに溶けた!?」

 皆が言ったとおりだ!
 数回噛むと溶けて味と香りが広がり、感触が消えて無くなる。
 
 これが高級魚か! 恐れ入った!!!

 2人は恐るべきスピードでクエの刺し身を食べ終え、次の標的であるタイの塩焼きへと視線を移す。

 焼きめが付いていい具合だ、、、もう食べても大丈夫だろう。

「美味しかったニャ! 次は赤い魚ニャ」

「ああ、、、綺麗な色ですォン、、、くぅん」

 マダイを皿に取り2人に渡す。
 魚の焼けたいい匂いが香り、お腹を刺激する。
 
 漁師、勝又が漁で獲った初めての魚だ!
 感謝して頂くとしよう。
 
「身がホクホクで美味しいニャ♥ アイリスも食べるニャ!」

「はいっ! う~ん美味しいですぉん、、、皆さんの仲間になれて良かったです」

 うん! 素直に美味しい!
 お祝いムードもあって、さらに美味しく感じる。

「祝いニャ祝いニャ!!! 甘い物でアイリスをお祝いするニャ!」

 レリムのテンションが、やたら高い
 新しい仲間ができて嬉しいのだろう。
 アイリスの歓迎会をしきり、ボス猫感を出す。

 自分が食べたいだけだと思うが、、、なるほど、悪くない案だ!

 こういう時はケーキがいいだろうが、あえて違う物を食べてみたい!

 甘い物と言えば、、、ご当地お菓子。
 日本の47都道府県のソウルフードから選ぶ!


《長崎県  特製五三焼カステラ》
 カステラの風味をさらにコク深く、仕上げた特製五三焼カステラ。


 長崎県のソウルフードであるカステラ。
 その中でも特に美味しそうな物を選んだ!

「にゃ~ん♥ ふわふわで甘いニャ!!! とろけるニャ♥」

「わぉ~ん♥ 卵の香りがするォン! 濃厚でしっとりした生地が美味しいォン!!!」

  好評化だ! 
 2人とも魚を食べている時より幸せな顔をしている。
 魚は食べた事があっても、こういうお菓子は初めてで耐性が無いのかもしれない。
 レリムは1度チョコレートを食べてはいるが、カステラの卵の濃厚な魅力には抗えないようだ。

 そういう俺もカステラが美味し過ぎて、すぐに食べ終えてしまった。
 
「また今度でいいから甘い物だしてニャ!」

「どうしようかな? 俺だけ隠れて1人で食べようかな!」

 ちょっとレリムに意地悪してみる。
 
「だめニャ、それは卑怯者のやることニャ! 絶対だめニャ」

「ウチ達は家族にゃ、1人で食べるなんて寂しいニャ。
 そんな人になって欲しくないニャ。
 ちょっとでいいから、ほしいニャ、、、お願いしますニャ!」

 必死すぎて笑ってしまう。
 甘い物に目が無く、言葉をまくし立てるレリム。

「いい子にしてたら、また出してあげようかな!」

「やっっったニャ!!! いい子にするニャ。 いい猫獣人ニャ」
 
「私もいい狼獣人ですぉん」

 また近いうちにお菓子を出す事を約束し、アイリスの歓迎会を終えた。



 

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