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銀狼獣人との出会い

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 呪いを解いたお礼として、ギルドマスターであるグラシアに教えて貰った場所へと向かっている。
 猫獣人のレリムが気に入りそうな町、港町スーシーロだ。

 分かってるさ!

 名前が寿司ぽいっと思ったが、気にしてはいけない!
 たまたま某有名寿司屋と被っただけだろう。

 いつも俺達が薬草を採取する森に連なる門とは、逆側の西門から出て一日程経過した。
 スーシーロ行きの馬車も出てはいるが、せっかくなので徒歩で向かう事にしたのだが、到着するのにもう一日程かかる。

 非力で体力のない俺にしては頑張った方だ!
 よくここまで動けたと、自分を褒めてやりたい。

「はぁ、、、疲れた、、、今日はここで野宿するしかないな!」
 
「ニャニャ? なんか悲鳴みたいなのが声が聴こえるニャ?」

 俺には何も聴こえないが、猫獣人のレリムは耳がよく、聴覚強化のスキルもあるため遠くの音でも聞き取れるのだ。

 レリムと共にダッシュで悲鳴がする場所へ向かう。



◆◆◆



「やっ、、、やめて下さいぃぃ キャイン」

「うるせえんだよ! 汚え獣人が喋んな!!! オラッ」

「痛ぃぃ、痛ぃです許して下さい、、、ごめんなさい、ごめんなさい、、、わぉん」

 若い冒険者風の男2人が、銀色の髪をした獣人の幼い少年を虐めている。
 俺とレリムは森の木々に隠れてこっそりと覗いている。

「役に立たない野良獣人が、物乞いなんてしやがって! 気に食わねえ!!!」

「そうだぜ! 俺たち冒険者様は必死に働いて命懸けで稼いでんだよ!
 それをお前ら野良獣人は、簡単にお金が貰えると思って舐めやがってよ!」

 ふざけんな!!!  聞いてられない!

 俺は見てられずに隠れていた木々から飛び出し、冒険者と野良獣人の少年の間に割って入る。
 
「なんだお前、獣人を庇うってのか? ゴラァ?」

「ああ! そうだ!!! 俺は獣人の味方だ。
 獣人が嫌いなのはいいけど、暴力まで振るうのは許せない!
 役に立たないとか、そんなの関係ないだろう!!!」

「テメェこの野郎! 庇うなら容赦しねえ! オラッ」

「ぶへっ!?」

 殴られて少年の方に倒れこんでしまう。
 見かねた仲間の冒険者達が俺と少年に蹴りを入れる。

「オラッ死ね!」

「きゃあっ!?」

 蹴られそうになる少年を守るために、俺は少年に抱き着いて庇う。

「あっ♥ わぉ~ん」

「大丈夫! 俺が絶対守るから、、、ぶへっ!?」

 冒険者の蹴りは強く、俺の背中にヒットする。
 
 く、、、苦しい息ができなぃぃ、、、ぅぅ。

 次食らったら耐えれない。
 もう駄目だ、、、と思ったが、一向に攻撃が来ない。

 ・・・ あれ? ・・・

 恐る恐る後ろを振り向く、、、

「ニャニャ! 暴力は許さないニャ!!!」

 最強猫獣人レリムが男2人の蹴りを、手で掴んで止めている。

「汚え獣人風情が! 触んじゃぃでぃで痛いぃぃ!?」
 
「ややや、辞めてくれ!? いでぇぇぇ、、、ペキパキ」

 ベキベキ パキパキ!!!

 冒険者2人の脚を純粋な握力でへし折るレリム!

 あ、圧倒的な暴力!!!  レベルが違いすぎる、、、

 暴力は駄目と言いながらも、一方的な暴力で解決してしまう豪胆さ!
 さすが最強猫獣人のレリム、大物の所業だ。

「仲間(ニャかま)に手を出した奴はボコボコにゃ!」
 
「お願いします許してぐだざぃぃ」

「もうじまぜんがらぁぁあああ」

 泣いて謝る男達。
 
「駄目にゃ! その娘(こ)が許してって言っても暴力を振るってたニャ。
 全部見てたニャ!」

 怒ったレリムは手に力を込め、男共を森の奥へと投げ飛ばしてしまった。

「「うわぁぁぁあああああ」」

 汚い悲鳴を上げながら消えてしまった。


「これにて悪は滅びたニャ!!!」

 いいのか、、、これで? 
 冒険者2体の事が少し心配になるが、それよりも獣人の少年が心配だ!!!

 アイテムボックスよりエナジーポーションを2本取り出して、少年に飲ませる。
 俺も初めて自作のポーションを飲むと、一瞬で痛みが引き全快した。

「もう大丈夫だよ! 悪い奴はレリムが倒したから」

「あ、ありがとうございます、、、あっ。きゃい~ん♥」

 お互いに抱き合い見つめ合ってしまう。
 少年は恥ずかしいのか顔を赤く染めている。
 
「乙女にゃ~」

 何か変な事を言い出すレリムを放置して、安全な場所へ向かいながら少年と話をする。

「狼獣人のアイリス、11才です。 銀狼(ぎんろう)獣人と呼ばれる事が多いですォン」

 狼獣人は銀狼獣人と呼ばれ、獣人の中でも珍しい種族のようだ。
 
「誇り高き銀狼獣人は素手で戦わなければいけないのですォン」

 強く誇り高い銀狼獣人は仲間を想いやる気高い種族で、素手で戦う事を義務付けられているみたいで、厳しい事に武器は禁止されているようだ。

「わぉん、、、スキルが無く、誰よりも弱いです」

 獣人の中でも最強と謳われる銀狼獣人。
 その中でもアイリスは珍しくスキルが無く、素手で戦う事ができないみたいだ。
 
「素手で戦えない銀狼獣人は恥晒しだから、出ていけと言われ追放されましたォン」

 銀狼獣人の代表である父親から直々に言われたようだ。
 可哀想な事に、その程度の理由で追放され野良獣人となったアイリス。
 
 最弱無能、役立たずの俺と似ているような気がして、なぜか少年をほっとけない。
 
「ニャ~ア! いい事思いついたニャ」

 何かを閃いたレリムが提案してくる、、、

「ご主人様が保護者になったならいいニャ」

「名案だレリム!!! 
 どうだろ俺が保護者じゃ駄目だろうか?」

 俺とレリムはアイリスを見る。
 照れているのか俯いて顔を見せない少年。

「でも私は弱くて役立たずの獣人ですォン。
 皆さんに迷惑をかけてしまいますォン」

 そんな事はどうでもいい!
 戦いに関しては俺も役立たずで、レリム1人に任せきりだ!
 だが恥じる事はない、元ニートの俺が戦う方がおかしいのだ!
 
 弱気なアイリスを抱きしめ諭す。

「弱くてもいいんだ、俺達はアイリスの仲間になりたいんだ!」

「わぉん、、、う、嬉しいですォン♥」

 決まりだ!!!
 銀狼獣人のアイリス少年が仲間になった。
 皆で自己紹介をして、これから仲を深めるために歓迎会を開く事になった。

「お兄様、お姉様、よろしくお願いしますォン」
 
「ああ! こちらこそよろしく!」

「そうとニャったら、、、美味しいお魚で新しい仲間をお祝いするニャ!!!」

「はわぁ~♥ お魚大好きですォン」

 絶対にレリムがお魚食べたいだけだと思ったが、狼獣人も魚は大好きみたいなので、とっておきの魚を出す事にした。



◆◆◆



 森を出て安全な場所へと来た。
 日が落ちて辺りは真っ暗になる。

 通販スキルを使いキャンプ用品、風呂に入りたいので入浴セットと、浴槽(シャワー付き)を購入する。
 浴槽は高く200,000エントもするが、コレだけは譲れない!
 日本人である以上、毎日風呂に入りたいのだ。
 全部で230,000エント程したが、ポーションで荒稼ぎした俺からすれば問題ない。

 またすぐに稼げるだろう。

「まずは風呂に入ろう!」

 食事の前に風呂に入って綺麗にしたい。
 浴槽に付いたパネルを操作すると、不思議な事に蛇口から丁度いい温度のお湯が出てくる。
 お湯がある程度貯まったところで、アイリスにお風呂に入るように伝える。

 せっかくなので男同士一緒に入らないか聞いてみた。

「い、一緒にですか? キャィィン♥ 恥ずかしいですォン!」

 さすがに会ったばかりで恥ずかしいみたいだ。
 仕方無いので今回は諦める事にした。
 風呂に入って仲良くなりたかったが残念である。

「あの、、、えっと、、、タオルで隠してもいいなら、、、大丈夫ですォン」
 
「皆で一緒に入るニャ!」

 2人とも隠すなら平気みたいで一緒にお風呂に入る事になった。
 俺が先にシャワーを使い身体を洗い終えて、2人に使い方を説明する。

「よーし! 俺が頭だけ洗うから」
 
 先にレリムの頭をシャンプーで洗う。
 猫耳をピコんピコんとさせ、喜んでいるのが伝わってくる。
 
「気持ちいぃニャ~」

 今度はアイリスの頭を洗い始める。
 ずっとお風呂に入っていなかったのか少年の髪は汚れている。
 シャンプーの泡が黒くなり、1度シャワーで流して、もう一回シャンプーで洗い直す。

「お兄様の手、気持ちいいォン」

 アイリスは俺の事をお兄様と呼ぶみたいだ。
 喜んで貰えて何よりだ。
 再びシャワーで泡を流すと、綺麗な銀色の髪が姿を現した。



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