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異世界転移

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知らない町、俺がいた日本ではない。
 何処か知らない場所に俺は来てしまった。

「どこだよ、はやく家に帰って寝たいのに!」

 俺の名はヒラメキ、30才、無職のオッサンだ!
 働きもせずに、家でゴロゴロしていたら、いつの間にか知らない場所にいた。

 小説でよく読む、異世界転移というやつだろうか?
 何の説明も無いまま異世界に来てしまった。
 普通神様からスキルを貰ったり、説明を受けたりするのが基本だと思うが。
 俺は何の情報も無いまま異世界に来てしまったのだ。

 行き交う人達との中には、動物の耳や尻尾が付いた人もいる。
 コスプレはありえないよ……そうなると獣人というやつだろうか?
 本当に異世界に来てしまった事を理解した、どうしていいか分からず、ぶらぶらと彷徨っていたが、歩き疲れてしまった。
 いつまでも彷徨っているだけでは埒が明かない事に気づき、試しに武器のマークが描かれた店に入ってみた。

「らっしゃい」

 不思議な事に言葉は分かる。
 店主にここが、何処なのか聞いてみた……

「ルーガの町だ。 そんな事も知らないのか……」

 よかった言葉も通じる。
 言葉が通じなかったら、かなり不便だったと思う。
 これで色々な情報を聞き出せるな。
 その事に俺は安心した。

「おいおい金も知らないのか……どっから来たんだよ……」

「かなり遠い別の国から!」

「はあ?」

 しかたないだろう俺は別の世界の住人なんだから、町も金のことも知るわけがない。

 店主にお金の事を教えてもらう。
 この世界で使用される貨幣は日本と一緒で紙のお札と、コインだ。
 通貨の呼び方はエント。
 店主の説明を聞くに大体……1円=1エントぐらいだと思う。

「若い兄ちゃんは弱そうだから、仕事は見つからないかも、しれねえな」

 若い兄ちゃん? 俺は30のオッサンだが!
 まあいいや、少し気に触ったが、今は情報を集める事に専念しよう。

 俺の様な非力で役立たずのニートには力仕事は向いていない。
 パワーを必要としない、仕事は無いだろうか?

「無いな! 専門的な職業なら力は要らないが、スキルが必要になる。
 トイレ掃除とかの雑用ならあるが生活する程は稼げねえ」

 やっぱりスキルがあるのか!
 どうやってスキルを確認するのか、教えて貰う。

「スキルは教会か、冒険者ギルドに行けば分かるぞ」

 おお! 冒険者ギルド!
 俺も冒険者になってみたいが、危険すぎるよな。
 パワーもない、戦闘も不得意、そんな俺が冒険者になれるだろうか?

「なれはする。 だが採取系の仕事ぐらいしか、できねえと思うぞ」

 確かにそうだ。
 戦闘できない俺では採取を専門にするしかない。
 こっちの世界でも無職で終わるのかヒヤヒヤしたが、少しだけ道が開けた。

「こっから真っ直ぐいけば右手に冒険者ギルドがある。
 冒険者は甘くねえから気をつけろよ!」

「ありがとう」

 俺の心配をしてくれる優しい店主に感謝を告げ、教えて貰った冒険者ギルドへ向かう。






「冒険者ギルドへようこそ!」

 笑顔で挨拶してくれる金髪美人な受付嬢。
 冒険者ギルドの建物に入るのが少し怖かったが、美人受付嬢のお陰で癒やされ落ち着いた。
 冒険者の人達は筋骨隆々で、一目で強いのが分かる。
 屈曲な冒険者達の中に、俺みたいな小者を相手にする奴はいないようだ。

 俺を見てる奴は誰もいない……それは、それで悲しいな……

「冒険者登録でよろしかったでしょうか?」
 
 悲しむ俺を置き去りにして、受付嬢は話を進めた。
 女の問に俺は軽く頷いて見せる。

「ああ、頼む!」

「かしこまりました……
 こちらの水晶に手を置いて下さい!」
 
 机の下から球体の水晶を取り出す。
 俺は黙って指示に従い、水晶の上に手を置く……

 パァッーンと輝き、少しづつ光が薄れる。
 光が完全に消え、俺の手の上に1枚のA4サイズの紙が現れた。


【名前】ヒラメキ 【年齢】 18
 
【スキル】 通販、 アイテムボックス


 俺から紙を受け取り、内容を確認する受付嬢。
 
「これで登録は終わりました。
 冒険者として登録できるのは15才からなので大丈夫みたいですね」

 おかしい! 年齢が若返っている。
 そうか! だから武器屋の店主は、俺を若い兄ちゃんと呼んだのか!!!
 30のオッサンが12才若返って、18才になった。 
 嬉しいかどうか問われたら、間違いなく嬉しい。  

「これは凄いですね!
 アイテムボックスは貴重なスキルですので、あまり人に言わない方がいいですよ」

 べた褒めしてくる受付嬢、アイテムボックスがどういうスキルなのか説明してもらう……

「物を無限に収納できます。
 収納してる間、中の時間は止まっているので劣化しません」

 便利なスキルだ! これで戦闘もできれば完璧だったが、俺自身は戦うのは苦手で、スキルも戦い向きじゃない。
 方針としては戦わずに稼ぐ、地道にお金を稼いで生きていこう。

「心の中で念じながら空間に触れればアイテムボックスが出現します。
 使い勝手がいいので、ベテランの冒険者から重宝されます。
 バレたら自分のパーティーに勧誘されますよ」

 それは嫌だ!!! 
 何が楽しくてゴリマッチョのオッサン共とパーティーを組まなければいけないのか……絶対に無理ぃぃ。
 
「通販? これは何のスキルでしょうか?
 今まで見た事も、聞いた事もないスキル。
 すみませんが、説明できません」

「大丈夫! 自分で試してみるから」

 受付嬢でも分からないスキルのようだ。
 何となく俺には分かるので説明は要らない。

「かしこまりました! それでは冒険者についての説明をします」

 説明はこうだ……

 冒険者は依頼をこなして、ランクを上げていく。
 最初が初心者、下級、中級、上級、特級の順番で上がっていく。
 全部で5段階だが、俺は初心者冒険者のままでいい。
 ランクが上がれば、上がるほど指名依頼が増えるようなので、なるべくランクは上げないようにする。
 というか、戦闘しないからランクが上がる事はないだろう

「特級に成れる冒険者はそういません。
 頑張っても上級までだと思ってください」

 特級は1人だけいて、それは勇者と呼ばれる少女ただ1人だけのようだ。
 下級で一端の冒険者、中級でベテラン、上級は冒険者のゴールライン。
 上級までいければ色んな特典を受けれるみたいだが、俺には関係ない。

「初心者はまず薬草集め等の採取がメインとなります……」
 
 俺は初心者スタート、そして初心者ゴールのつもりでいる。
 採取専門の冒険者になるつもりだ!

「ルーガの町を出ると、すぐに森があります。
 そこで採取を行ってください。」

「森の浅い所なら、あまり敵に遭遇する事はないですが、奥に進めば進むほど、敵の数が増え、強くなります」
 
「それと野良獣人には気を付けて下さい。
 危険という程ではないですが用心にこした事はないので」

 野良獣人??? 何のことだ???

 獣人について詳しく聞く……

 獣人は戦闘意欲が高く、強靭な肉体をしている。
 戦闘が好き過ぎて、自分より強いモンスターに勇猛果敢に挑むため、死者が多いのだとか。
 そのせいで親が死に、まだ幼い獣人が税金を払えずに町を追い出され、野良獣人になってしまうらしい……

 うーん??? 何か引っかかる

「町に入って仕事すれば、いいだけじゃ?」

「町に入るには入門税がかかります。 仕事にはスキルが必須になるので、戦闘系のスキルしかない獣人には冒険者になるしかありませんが、幼いので保護者無しでは無理です。」

 幼い子供が冒険者になるには保護者が必要みたいだ。
 だったら誰か保護者になればいい、それか教会の孤児院とか入れないのか?
 
「人間からすると獣人はあまり好かれていないので、保護者になってくれる人は中々いません。
 それに自分の子供でもないのに育てたいと思う親もいません」

「教会は人間の子供しか引き取って貰えないんです」

 打つ手なし!!! 野良獣人を救う事はできないみたいだ。


 
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