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弓師
しおりを挟む「ポヨポヨ」
「いきます!」
魔物が出る森で、武器屋で購入した弓を使い、スライムに矢を射る。
ラミアの攻撃を受けて、一撃で消滅してしまった。
これで五匹目。 何度か相手させてみたが問題ない。
スライムのドロップアイテムはお金にならないため拾わない。
いい加減、他のお金になりそうな魔物と戦わせても大丈夫だろう。
「ラミア。 ステータスを見てみろ」
「はい! 弓師になってたらいいな」
不安になっているが、弓の扱いがさらに良くなっている事から、間違いなくジョブは手に入っていると思う。
ステータスは他人にも見えるから、俺も横から覗きこむ……
【名前】 ラミア
【年齢】 20歳
【職業】 弓師(LV1)
HP(F) MP(F+) 体力(F+)
筋力(F+) 防御(F) 速度(F+)
技術(E) 魔力(F) 魔防(F+)
【武器】 木の弓(効果なし)
【防具】 革鎧(効果なし) 革の靴(効果なし)
【指輪】 銅の指輪(効果なし)
【スキル】 なし
【弓師】……ステータスは筋力と技術が高くなりやすく、中距離の戦闘を得意とする。 魔物、対人の両方で活躍できるジョブ。 雑魚敵には強く、使い手の力量次第ではヘッドショット一撃で勝負を決めることも。
無事にジョブを手に入れることができたようだ。
職業の詳細を確認したが、対人でも活躍できるから、俺の手伝いをさせてもいいな。
「はぁ~よかった。 これでご主人様と一緒に戦えますね!」
「ああ、よくやった!」
俺の職業は対人用のため、どの程度魔物に通用するか分からない
そうなるとラミアが攻略の鍵となる。
別に魔物と戦う必要はないが、仮の姿として冒険者になり、出会った人を殺した方が効率がよさそうなので、成りすますためにもコイツには頑張ってもらわないと、いけない。
お手頃な敵がいないか探索を再開する。
少し歩くと洞窟を発見した。
たぶんダンジョンだと思うが、入口を守るかのように五体のゴブリンが立っている。
いきなり複数の戦闘になるが、二人でなら楽勝だろう。
「ここで狙い撃て。 近づく敵は俺が倒す!」
鞘から銅の短剣を抜き、敵の接近に備える。
矢をつがえ、俺達に気づいていないゴブリンに先制攻撃をしかける。
目標をよく狙い、放たれた矢が眉間に刺さった。
「や、やりましたっ!」
ヘッドショットを決め、一撃で敵を沈めてしまった。
見事な腕前。 職業の詳細に書いてあったとおりだ。
木の矢だから肉を貫けるか不安だったが、このぐらいの魔物なら余裕みたいだ。
攻撃を受けゴブリンが、こちらに向かってきた。
俺も自分から敵に突っ込み、足止めをする。
速攻で倒すため略奪で奪ったスキルを発動して、重たい一撃を見舞う。
「はああああ、剣撃!!!」
短剣による一撃を受けて敵が倒れる。
ゴブリン2体の攻撃を剣で止めるが、拮抗してしまう。
殺人者の筋力では、これが精一杯みたいだ。
「ご主人様!」
ラミアが助太刀し、一体の頭に矢が刺さる。
またヘッドショットを決めやがった……とんでもない腕前だ。
俺も負けじと剣で相手を押し返し、斬りつけて殺す。
「きゃあ~」
なっ、しまった!?
気を取られているうちに、女の方に接近されてしまった!!!
まずいな、この距離どうすればいい、一瞬で相手の所まで攻撃を届かせるには……そうだ略奪で奪ったスキルがある!
させるかよ! 短剣を強く握りラミアに襲いかかるゴブリンへとスキルを使う。
「くらえ! 投擲!!!」
剣を思いっ切り投げて、敵の心臓に突き刺さる。
俺もなかなかの命中率だ……それもそうか、だって俺もラミア同様に、技術が高いから、当たってあたりまえか。
「ゴブ……ぐふぅ・・・」
戦いが終わり女の元に駆けつける。
殴られた時にガードして腕をやられたみたいだ。
急いでアイテムボックスから、前に道具屋で買った下級のポーションを取出して、飲ませてやる。
「ごくごく……はぁ、ありがとうございます。 腕の痛みが無くなりました」
ふぅー焦った。
ラミア如きどうなってもいいと思っていたが、まさかこんなに想っているとは……なんか嫌だ!
この変態を好きになりたくない。
「ご主人様~ごめんなさいぃぃ」
「知らん! 俺は今機嫌が悪い」
くそっ、肉便器如きに焦ってしまうなんて。
殺人者として、プロとして情けない。
こんな女に惚れるなんて悔しい。
落ち着きを取り戻し、ドロップアイテムである、ゴブリン肉と、木の棍棒を回収し終えると、ダンジョンから新たにゴブリンが出てきた。
「おかしいな! 魔物はダンジョンから出れないはずだが……」
俺一人なら相手してもいいが、ラミアが疲れているため、大事にならないように今回は見送る。
当初の目的だったジョブは手に入れた。
もう今日はこのまま帰って冒険者ギルドに、この事を報告するか。
「本当ですか? ダンジョンからゴブリンが出てきたのならスタンピードの恐れがあります。 即刻ダンジョンをクリアしないといけません」
やはり、スタンピードの前触れか!
冒険者ギルドの受付嬢の話に、納得する俺。
ダンジョンに生まれた魔物が増えすぎると、溢れ出して人間がいる町や村に攻めてくる事をスタンピードという。
クリアーの条件は一番したまで潜り、最下層のボスを討伐することだ。
ここはゲームで言うところの、始まりの町だからダンジョンの難易度も大した事はないが、冒険者のレベルも比較的に低くランクアップした職業の奴はいないだろう。
俺とラミアのレベルがもう少し上がればクリアできると思うが……
「ちょっと待ちな!」
「ナージャさん」
受付嬢がナージャと呼ぶ女。
オールバックの黒髪で、隣にはガタイのいい男が二人いて女番長みたいな雰囲気が出ている。
「そいつらは最近ギルドに入ったヒヨッコじゃないかい。 そんな奴等の証言なんて信用できるのかい?」
「姉御の言うとおりだぜ! 初心者がいきなり五体ものゴブリンに出くわして無事に戻ってこれるはずがねぇ」
話を聞いていたみたいだ。
まったくだ……こいつ等の言い分は筋が通っている。
当の本人だから真実を述べているつもりだが、他の初心者が言っていたら俺も信じられない。
信じようが、信じまいが、どちらでもいい。
この町の人が死んでも一向に構わないし、俺達が出しゃばる意味がないな。
「ご主人様が言ってる事は本当です!!! 疑うなら実際に見てみればいいじゃないですかっ」
俺が嘘つき呼ばわりされたのが感に触れたのか、普段は冷静なラミアが必死に説得している。
「そこまで言うなら案内しな! どうせ嘘だと思うけどね。 冒険者の先輩として、アタイ達が教育してやるよ」
教育なんてしてもらう必要はないが、この先輩達がなぜ絡んできたのか分からないので、下手に出ないようにした。
ヤンキートリオが同行することになり、ダンジョンへと案内する。
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