異世界サバイバル……自然の中で生きていく。

１

辺り一面、木々で覆われた森の中。
　自然豊かな森の平地を歩く１人の女性。
　肩に届く黒い髪、上は黒いタンクトップ、下は茶色のズボンを着ている彼女こそ、この物語の主人公。
　名前は栗栖　葵くるす　あおい、年齢は１８。
　
　彼女は神様のせいで間違って死んでしまい。
　そのお詫びとして、この異世界へと転移させられた。
　
　同じ世界に生き返る事ができない、ということだったので、それなら森の中でひっそりと生きたいというのが彼女の望みだった。
　提案を受け入れた神様は、せめてもの救いとして彼女が異世界でも生き残れるように、【鑑定】と【アイテムボックス】スキルと、何でも切れるナイフを与えた。

　【鑑定】のスキルは、食べ物や飲み物が安全か、さらに何の材料か判断できる、サバイバルに優れたスキルだ。

　【アイテムボックス】は、異次空間に生き物以外を収納できる便利なスキルで、中は時間が止まっていて保存が可能だ。
　
　何でも切れるナイフは文字通り、石でも鉄でも関係なく切れる！
　欠けたり折れる心配が無く、永久に使える。
　
「まずは簡単な家みたいなのが欲しいな」

　普通サバイバルのセオリーは水を先に確保する事なのだが、何の知識も無い彼女は住まいを優先させる。

「すげぇ～斬れ味！？　竹がスパスパ切れる」

　神様が与えてくれたナイフを使い、竹を切り倒しては【アイテムボックス】に収納していく。

　物に触れて収納と念じれば、勝手に消えて中に入る。
　それを繰り返して、ある程度家を作る材料が揃い、今度は家を建てる場所を探す。

「水の流れる音がするな……」

　近くには川があり、流水音が葵の耳に入ってくる。
　音を辿り歩いていくと、すぐに到着した。
　
　石がたくさん散りばめられた川。
　ここなら魚等の食べ物にも困らないかもしれない。

「よーし、ここに建てるか！」

　先程取った竹をナイフで切り、大まかにサイズを合わせる。
　下地は竹を並べて床を作り、横３メートル、奥行き３メートルで正方形にする。

　竹をナイフで細かく縦に割いて紐のような物を作る。
　弾発性があっていい紐になった。

　出来た下地の角に１メートル５０センチ程の竹を立て、さらに横に竹を、先程作った紐で結び、四角い屋根が出来た。
　そこに残りの竹を乗せていき、雨漏りを防ぐ為に、その辺に生えている大きい葉っぱを乗せて屋根を完成させる。
　
「出来たっ！　初めてにしては上等だろう」

　壁は無いが竹で出来た見事な小屋。
　初めにしては、よくできている。